北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

リンゴの木に!?

往診先の酪農家△さんの、

牛舎の南側は日当たりが良いので、

数年前にリンゴの木が植えられた。 

その木はすくすくと育ち、

見上げるほどの大きさになっていた。

 先日その木をふと見ると、

大きな黄色い実が生っていた。

IMG_4471「生ったんだよ(笑)・・・」 

「おー、すごい。でも黄色!?」 

「リンゴだと思った?・・・」 

「じゃ、無いの?」 

「わかる?・・・」 

IMG_4472「え?・・・何だこれは。」

「何でしょう・・・(笑)」 

「黄色い!?」 

「ハローウィンだから・・・」 

近づいてよく見ると

その生り物は

ミニカボチャだった。

IMG_4471 2「カボチャかい!」

「そう(笑)」 

「カボチャの木かい !」 

「リンゴはまだなかなか生らないしね・・・」

「本当に木に生ってるみたいだ(笑)」

よくよく見ないと

どうやって付けたのか

全くわからなかった。

「よくやるね、こんなこと(笑)」

「暇だったもんだから、こんなことばっかりやってるよ・・・(笑)」

酪農家△さんは

主な仕事を息子に譲り

 自適な生活を送っている。

今年のコーンや牧草の畑仕事も

IMG_4474ひと通り終わり

良い天気が続いても

特にする事が無かったようだ。

酪農家が

天気の良い日に

暇になるというのは

良いことだと思った♪


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2頭の起立不能牛の比較

同じΔ農場で、

2頭の産後起立不能症を診療した。

この2頭の牛の耳標番号は1つ違い、

すなわちΔ牧場で続けて生まれた2頭だった。

生年月日はそれぞれ

A牛は、平成25年4月30日

B牛は、平成25年4月15日

誕生日が15日違いの牛同志だ。

この2頭の牛は、生まれてから

ほぼ同じ環境で哺育され

ほぼ同じ環境で育成され

ほぼ同じ環境で受胎して

ほぼ同じ環境で分娩し

ほぼ同じ環境で搾乳され

ほぼ同じ環境で再び受胎して

搾乳牛としての生活を続けていた牛同志である。

2頭の牛が先日

ほぼ同じ時期に分娩した。

A牛は平成30年10月5日分娩

B牛は平成30年10月12日分娩

488FE51B-B9F3-4CD3-925E-AAEBF0A58180両方ともお産の直後に起立不能になった。

どちらの牛も

初診の獣医は私だった。

A牛は

翌日に起立可能となり

そのまま普通の搾乳牛群に戻った。

ところが

B牛は

翌日も立つことができず

その後5日間治療を続けたが

結局立つことができず廃用となった。

両者の運命を分けたものは何か?

その最大の理由は

前回の分娩からの日数にあった。

A牛の前産は、平成29年9月2日

分娩間隔は、398日

B牛の前産は、平成28年8月21日

分娩間隔は、779日

約2倍の開きがあった。

623B87D2-AA8E-4BC2-8A41-D9737A603E92これだけの開きがあると

A牛とB牛の体型(ボディコンディション)は大きく違っていた。

どちらがオーバーコンディションだったかは言うまでもないだろう。

2枚の写真はいずれもA牛。

B牛の写真を撮っておけばよかったのだが・・・

ちなみに

血液検査において

差が見られた項目を書いておこうと思う。

A牛

Ca 3.5 、 NEFA 0.59 、Glu 124 、GOT 78

B牛

Ca 7.3 、 NEFA 1.38、Glu 76 、GOT 112

だった。

当然の結果

と言えるだろう。


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第16回「とかち文化まつり」inとかちプラザ

今年もまた、

10月17日〜21日までの5日間、

とかちブラザにて、

NPOとかち文化会議主催の、

「とかち文化まつり」が開催される。 

文芸部に所属する私も、

作品を1点出品した。

毎年同じようなことを言っているが

この「とかち文化まつり」は、

展示を見ることはもちろん面白いが、

気軽に出品して参加出来ることが最大の魅力である。 

まさに「参加することに意義がある」お祭りなのだ。 

参加することによって

文芸部門ばかりではなく

書道や写真や美術やその他色々のジャンルの人たちとの出会いがあり

色々な刺激を受けることができる。

その刺激こそに意義があり

それが新たな繋がりとなって 

自分にプラスの効果をもたらせてくれるのだ。

IMG_4451今回の出品には

私よりも若い俳人仲間の

金野克典さんと

吉岡簫子さんも

去年に引き続き、参加してくれた事がとても嬉しい。

お時間のある方は是非とかちプラザに足を運んでいただきたいが

その1部を簡単に紹介しておこうと思う。 

IMG_4441私の出した作品は


 牛産むと二十三夜を灯しをり   豆作


また

私と仕事もよく一緒になる

町職員の金野克典さんの作品は

道東旅吟6句で

その中の1句は


     麦秋やばんえいのしななね馬の鈴音なお高し   克典


IMG_4442また

私と同じ柏林・ホトトギスの

吉岡簫子さんは

ふくらはぎを題材に詠んだ4句

その中の1句は


     隆々とねぶた仕込みのふくらはぎ   簫子


私よりも若い俳人の方々が

同じ場所に参加してくれるというのは

とても嬉しく

また心強く感じるのである。

IMG_4443さらに

去年から

コラボレーション展示会でご一緒させてもらっている

書家の八重柏冬雷先生の

 「花鳥風月」

をはじめ

IMG_4448白石翠生さんの

 松浦武四郎が詠んだ短歌

あるいは

高橋玄禅さんの

 松浦武四郎が詠んだ漢詩

IMG_4446あるいは

写真家の古川こずえさんや

アートの阿部安伸さんらの作品も

同じ会場に展示されていて

この展示会場は

自分の作品を展示するばかりではなく

皆さんの作品を鑑賞できるという

これまたとても楽しい時間が

始まったのである。

「とかち文化まつり」は

見物することも面白いけれども

やはり何と言っても

自分の作品を出品して

参加すること

そここそ

最大の意義があるという

お祭り気分の

展示会であると

あらためて思うのである。

とかち在住の人なら

誰でもNPOとかち文化会議に参加して

この「とかち文化まつり」に

出品することができるのである。

心ある方は是非

来年からの参加をお勧めしたい。


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天高く「牛馬」肥ゆる秋

「天高く馬肥ゆる秋」という言葉は、

私のような畜産関係者の間では、

まだまだ身近な現実としてある。

しかし、

我が国に飼われている馬が、

これほどに減ってしまうと、

肥えた馬の姿を探すのが大変である。

特に減っているのは農耕馬と言われていた重種馬である。

我が国にはもう農耕馬などは存在しないと言ってよいだろう。

農耕の仕事の合間に生れた「ばんえい競馬」が、

辛うじて北海道の帯広競馬場に残り、

IMG_4040かつての農耕馬が、

ばんえい競走馬として、

辛うじて生きる道(就職先)を与えられている。

かつてはどこの農家にも居た馬が

ばんえい競走用に特化して飼養される様になり

その生産や育成は

ごく一部の農場で細々と行われているにすぎない。

IMG_4365そんなごく一部の農場も

後継者が少なく

多くが廃業してしまった。

「天高く馬肥ゆる秋」

そろそろこの言葉も過去の物になってしまうのではないか

という危機感を感じないでもない今日この頃である。

天高く〇〇肥ゆる秋

肥えるのは

もちろん馬ばかりでは無い。 

先日馬の往診に行った公共牧場には

その何十倍もの数の牛が

妊娠鑑定のために集められていた。

IMG_4366馬に比べて

牛の需要は

全く衰えを見せない。

特にホルスタイン(乳牛)の雌の需要は

かつて無いほど高まっている。

その理由は色々あるのだが

一つだけ挙げておきたいのは

生乳生産の省力化という名の下に

乳牛の雌の

酪農場における

過酷な労働がある。

公共牧場の広々とした放牧地に

のんびりと草を食んでいる牛たちの

IMG_4366幸せな姿は

多分ここで終わる。

彼女たちは下牧した後

しばらくして子牛を産み

その後

搾乳牛としての過酷な労働者となる。

労働環境のよい酪農家で飼われれば

彼女たちは長生きをして

天寿を全うすることもあるが

労働環境の悪い酪農家で飼われれば

彼女たちは疲れ果てて

おどろくほどの短命でこの世を去る。

乳牛の「使い捨て」である。

その結果、乳牛の数は減り

需要に追いつかぬ「負のスパイラル」となる。

最近

そんな労働環境の悪い酪農家が増えている様な気がしてならないのは

きっと私だけではないだろう。

彼女たちの労働環境の悪化に

歯止めをかけることは

農業軽視の我が国の経済状況の中では

なかなか難しい。

彼女たちにはもちろん

「労働基準法」

も、存在しない。


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「牛の足音」冨田美穂さんの木版画展

かねてから生で見たいと思っていた牛の木版画を、

とうとう見る機会に恵まれた。

冨田美穂さんという版画家による、

「牛の足音」という牛の木版画の展示会が、

十勝管内鹿追町の神田日勝記念美術館で開催されているのだ。

神田日勝という伝説的な画家と、

冨田美穂という新進気鋭の版画家との、

牛というテーマでつながった展示会である。

7007B159-58DF-4628-896C-AAB1C9C43BD8会場に入ると

まずは冨田美穂さんの

等身大のホルスタインの木版画が

目の前に待ち構えていて

初めからその迫力に圧倒された。

普通の絵画でさえ

これだけのリアリティーがあれば圧倒されるわけだが

それがなんと木版画であるということで

7AD696B9-7901-44D6-81A7-A1004594FE88さらにその驚きは大きくなる。

木版画であるということは

この大きな実寸大の牛の原画を用いて

何頭も何頭も印刷することが可能なのであろう。

詳しいことは版画の素人なのでわからないが

こんな大きな牛の版画が

何頭も何頭も作品として世の中に出現すると考えると

こんなことは未だかつて無い

驚異的なことだと思う。

そんな牛の版画を量産し続けている

冨田美穂さんというアーティストのすごいパワーを

いきなり最初の版画を見た時から

ドーンと感じてしまった。

その横奥にはさらに別の牛の

これまた等身大の牛の版画があり

その流れに合わせるように

今度は神田日勝の牛や馬の絵が

並べられていた。

そこから順路に従って見てゆくと

神田日勝の作品が多く並べられているコーナーを通り

二階へと続く階段のところから

再び冨田美穂さん版画のコーナーに戻ってゆく。

場内は撮影禁止だったので

それらの作品をカメラに収めることはできなかったが

神田日勝の牛馬の絵に負けない

冨田美穂さんの牛の版画の迫力が

場内にみなぎっていた。

階段を上がってゆくと

牛の版画は小さいサイズのものとなり

階段を登りきったところには

今度ははがきサイズの牛の絵がぎっしりと並んでいるコーナーがあった。

それは冨田美穂さんが

酪農場の従業員として働きながら

毎日一枚ずつ牛の絵を書いていたという

「一日一牛」のコーナーだった。

作品は小さくても

一枚一枚に牛への愛情が感じられ

それが日記の代わりとして

毎日毎日描かれていたものだということを知ると

そこでまた新たな感動がこみあげて来るのだった。

前半の木版画の圧倒的なパワーと

後半の絵と版画に込められた牛への愛情と

それに加えて絵と版画に対する

冨田美穂さんの強い情熱を感じた。

すべての作品を見終わったとき

私は得も言われぬ感動に包まれていた。

感動冷めやらぬままに

私は最初の大きな牛のところへ再び歩み寄り

牛の体に顔を近づけて

その緻密な皮膚と斑紋の描かれている筆跡

というか、版画であるから

彫刻刀による彫り跡

というべきものを観察した。

すると驚いたことに

すべての毛の一本一本が

同じような長さで彫られ

黒い斑紋の部分はその密度が低く

白い斑紋の部分ではその密度が高く

黒と白の部分それぞれに

皮膚の皺や血管の走りや筋肉のもの上がりによる

微妙な濃淡が描かれているのだった。

この緻密な彫り跡が

牛全体の本物感(リアリティー)をつくりあげているのだった。

それを見て私は

再々度の感動に襲われてしまった。

私は木版画には全然詳しくないが

生の木版画を見ることでこんなに強く感動したことは未だかつてなかった。

私は最後に

この大きな牛の

耳に描かれている個体識別番号を

BCD0399B-4229-4DF6-A996-6E270BCB690Cメモ帳に記した。

「0497503886」

帰宅してから

この識別番号をインターネットの検索で調べてみたら

この牛はオホーツク地方の小清水町の酪農家で

2006.10.1.に生まれ

乳牛として

約10年間飼養され

2015.9.13.に同牧場で死亡した牛だった。

冨田美穂さんはこの牛と多くの時間を共有し

この牛の木版画作品を創作し

その作品に

この牛の命を

永遠に吹き込むことに

成功したのである。


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ロバ(驢馬)の難産 (3)

残念な結果になってしまったロバ(驢馬)の難産だったが、

我々農業共済組合(NOSAI)の獣医師にとっては、

珍しい症例だと思ったので、

あえて記事にしてみた。

BlogPaint血液検査も一応しておいたので

ロバの難産後の血液所見も

ここに貼り付けておく。

ロバはポニーと大きさがほぼ同じであり、

ロバの診療はポニーの診療をするようなイメージでやれば、

それほど間違うことは無いと思われる。

使う薬品の量なども

ほぼポニーの診療に準ずればよいと思われる。

ただ

ここで問題なのは 

ポニーは共済の保険診療ができるのだが

ロバは共済の保険診療ができない

という事である。

ボニーは馬なので共済保険に加入できるが

ロバは馬とは見なされず

したがって

ロバの診療については

保険の効かない非加入畜の診療料金を

飼主に請求しなければならない。

実は

これがべらぼうな金額設定になっている。

共済保険に加入していない動物

すなわち、非加入畜の診療料金の設定は

我が組合では大きく分けて3つに分類されている。

すなわち

「小」動物・・・犬や猫など

「中」動物・・・羊や山羊など

「大」動物・・・牛や馬など

BlogPaintだが、これが

実はべらぼうな金額設定になっている。

ざっと比較すると

保険加入畜の料金を1とすれば

非加入畜「小」は、その約2倍

非加入畜「中」は、その約3倍

非加入畜「大」は、その役5倍

の診療費が請求される設定になっている。

もし

保険に加入していないポニーの診療があったら

ポニーは馬なので

「大」動物という料金設定の中で、診療費が計算される。

ポニーは成馬でも体重が100キロ程度の小さな体な馬なのだが

馬であるという事で

サラブレッドや重種馬と同じ診療料金が掛かり

ちょっとべらぼうな診療料金になってしまう。

だからポニーを飼う畜主は

自分のボニーを共済保険に加入して

何かあったときにべらぼうな診療費を払わずに済むようにしている。

では

ロバの飼い主はどうかというと

ポニーのように保険に加入することが・・・できない。

農業共済保険の対象としてロバは馬とは見なされないのである。

ところが

今回のように

ロバが病気になり

共済の獣医師の診療を受けなければならなくなった時は

診療料金はボニーに準じた計算方法

すなわち、非加入畜「大」が適用されて

べらぼうな診療費がかかってしまうことになる。

IMG_3241ロバは

保険の対象としては馬と見なされず、保険に加入できないのに

診療費を計算する時は馬のような「大」動物と見なされて

べらぼうな金額の診療費が請求される

これは

何かおかしくないだろうか?

ポニーであれば保険に加入すればいいが

IMG_3240ロバにはそれができないのである。

ロバに何かがあった時には

まったく何の保障も無い

無保険診療を受ける他は無いのである。

今の診療料金体制は

見直すべきではないだろうか。

ロバの診療を経験して

そんなことを思った

今回の症例だった。


(この記事終わり)


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ロバ(驢馬)の難産 (2)

難産したロバ(驢馬)は、

IMG_4110翌日の往診の時も、

立つことができなかった。

点滴と抗生物質の治療が続けられた。

その翌日の往診の時も、

立つことができなかった。

首を投げ出したままで、

頭を上げることもできなかった。

点滴などの懸命な治療が続いた。

食欲は全くなかった。

その翌日も

親驢馬の症状は変わらなかった。

「・・・助かるんでしょうか・・・」

「頭を上げて、立ってくれればいいんだけど・・・」

「・・・あの・・・それと・・ロバは共済の保険がきかないんですよね・・・」

「そう・・・」

「・・・もう七万円くらいかかっているって聞いたんですけど・・・」

「そうなんだよね・・・」

「・・・症状がよくならないのなら・・・このままずっと治療しても・・・」

「治療代がかさむだけになる・・・」

「・・・ちょっと考えさせてもらえますか・・・」

⌘牧場の奥さんは

⌘さんと相談して

翌日からは点滴治療などを中止して

自分で抗生物質の筋肉注射をしながら

この親驢馬の看病をしたい

という希望を伝えてきた。

獣医による治療をしてやりたいが

この先治癒する見込みの薄い親驢馬の

治療費かかさんでしまう

という現実からの

苦渋の結論だった。

我々獣医師としても

前例のない驢馬の

難産後の治療について

予後を正しく判断できる知識も経験もなかった。

結局

我々は⌘さんに抗生物質を預けて

治療を中止した。

それから5日後

⌘さんの奥さんから連絡が入った。

親驢馬の症状は改善せず

ずっと苦しんでいるようであり

このままではかわいそうなので

楽にさせてやりたい

すなわち

安楽死させてほしい

という連絡だった。

IMG_4129私は⌘牧場へ向かった。

親驢馬は

以前よりも苦しそうな息をしていた。

奥さんが見ていないところで

注射を打ち

親驢馬を旅立たせた。

合掌


(この記事もう少しつづく)


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ロバ(驢馬)の難産(1)

「・・・飼っているロバが立てなくなった。」

という電話が⌘牧場から掛かってきたのは、

先日の昼過ぎだった。

午後からの公共牧場の繁殖健診の前に、

IMG_4030⌘牧場のロバを診に行った。

ロバは写真のようにうずくまり、

なんとも苦しい表情をしていた。

「・・・昨日は普通に立って歩いたんですけど、さっき来たらこんなで・・・」

お腹が大きく膨らんでいる。

急性腹症かとも思ったが

直検をしようとしたら

胎児の肢が産道にあるのを発見した。

「お産の予定日はいつ?」

「・・・それはわからないです・・・」 

⌘牧場のロバたちは

雌雄同じ場所に飼われていて

いつ交配したのかは全くわからない状態であった。 

「普段は勝手に生まれているのね。」 

「・・・はい、そうなんです・・・」

「これはお産で、出なくて苦しいんだよ。」

「・・・そうだったんですか・・・」 

膣内を探ってみると

産道の奥に胎児の頭部も確認出来た。

IMG_4033しかし

前肢も頭部も潤いがなく

既に死亡しているようだった。

「とにかく、このお腹の子を引っ張って出すしかない。」

「・・・はい・・・」 

「粘滑剤作るからバケツにぬるま湯と、胎児を引くロープ持ってきて。」 

「・・・わかりました・・・」 

ロバの難産介助というのは

初めての経験だった。

ただし、これに似た仕事として

ポニーの難産介助はよくやるから

それに準ずればよかった。

しかし

ロバの胎児の頭部は大きかった。

ロバ(驢馬)の体型というのは

ポニーよりも四肢が細く

耳が大きく頭が大きく

四肢の割には胴体が太い。

いま難産している驢馬の胎児も

頭部がようやく出たものの

それから先が

なかなか出てこなかった。

粘滑剤をたっぷり入れて

滑車ロープで牽引するのだが

IMG_4036頭が出てからも

なかなかそれ以上進まず

親驢馬もろ共にロープで引きずられてしまう。

仕方がないので

親驢馬の頭側をもう一本のロープで固定して

胎児の前肢に付けたロープを牽引した。

滑車の強い牽引力をもってしても

IMG_40373人がかりの

キツイ難産だったが

ようやく親驢馬と胎児は

引き裂かれるようにして

なんとか娩出することができた。

産後の親驢馬はもちろん立つことはできず 

呆然と首を投げ出し

空虚になったお腹を晒していた。

IMG_4038既に死亡していた胎児は

毛が抜けて皮が露出している部分もあった。

私は親驢馬に点滴をセットして

明日また治療に来ること告げて

次の往診へ向った。


(この記事つづく) 



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当直三夜連続の帝王切開

夜の当番は、

毎月5回(5夜)のペースで回って来る。

その時の緊急往診の平均件数は、

年間に均せば1夜につき1件〜2件程度であるが、 

実際は、

1件も往診の入らない夜もあれば、

5件以上も来る夜もある。

またその内容も、

子牛の治療ばかりの夜があったり

乳房炎の治療ばかりの夜があったり

難産ばかりの夜があったり

と色々である。

9月に入って

私の夜当番の日は

なぜか急に往診が沢山入るようになっていた。

その内容は

お産がらみの往診ばかりが増えた。

9月11日の夜は

★畜産の難産だった。

初産で過肥の牛の産道が狭く

正常位にもかかわらず

胎児の頭部が産道に乗らず

経膣分娩をあきらめ

T獣医師に電話して助手を頼み

深夜の帝王切開となった。

胎児は既に死亡していた。

過肥でぶくぶくの親牛の術後の体調が心配されたが

若いのが幸いして普通に搾乳しているようだ。

9月17日の夜は

難産が3件もあった。

そのうち最も時間が掛かったのは

また★畜産の牛の難産だった。

従業員の経験が浅く

逆子(尾位)だろうと判断し

前肢を牽引してしまい

側頭位になってしまった難産だった。

頭部が触れないので

即決の帝王切開

従業員君たちを助手にして

手術室で深夜の帝王切開。

胎児は幸いにまだ生きていた。

9月26日の夜は

◉牧場の牛の子宮捻転だった。

用手整復を試みるも駄目で

ローリング法に切り替えると

捻転は整復されたが

胎児の位置が下胎向のまま

分娩予定日を10日以上も過ぎた大きな胎児の

肢が太く

頭部が産道に乗ってこないので

結局、帝王切開で出すことにした。

T獣医師に電話をして助手を頼み

IMG_4324手術室で深夜の帝王切開。

胎児は大きなホル♂だったが

幸いにまだ生きていた。

夜当番で帝王切開をするのは

よくある事だ。

しかし

当番のたびに

三夜続けて帝王切開をしたという記憶はなかった。

これはもしかすると記録的なことなのかもしれない。

しかも、また次の当直の夜に難産が入り

帝王切開することになるかもしれない。

IMG_4322そうなれば

四夜連続となるが

そうならない事を願うのみである。

9月に入り

私は職場から

休日をもらって

俳句大会やら

コラボ展示会やら

遊び呆けていたので

夜当番の時くらいはしっかり仕事をせよ

という

畜産の神様からのお告げなのかもしれない(!?)

 

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俳句朗読×トリニテ曲(Dies Irae ・「神々の骨」より)

トーチカをテーマにしたコラボ展示会も、

今日が最終日となった。

職場にわがままを言って連休を頂き、

こんな事ばかりしているのは、

ちょっと申し訳ないのだけれども、

私の中では重要な活動の一つになりつつある

今回のコラボレーションであった。

職場関係の方々にも案内状を送ったら

多くの同僚の獣医師が足を運んでくれたのは

とても嬉しいことだった。

その御礼というほどのことでもないが

私の展示した俳句30句の

朗読の動画を貼り付けておこうと思う。



俳句の朗読自体は全く素人だけれど

BGMに使わせてもらったトリニテさんの曲が素晴らしいので

そのおかげで

私の朗読も少し雰囲気を出せたかなと思っている。

トリニテの曲を使うことを快諾してくれた作曲家のShezooさんには

心から感謝を申し上げたい。

準備から色々と手間がかかった今回の展示会も

いよいよ今日が最終日。

原寸大のトーチカの模型は

作るのも大変だったが

これから壊すのも

また大変な作業になりそう・・・(笑)

職場の同僚の皆さんには誠に申し訳ないけれど

今日もう1日

休みを頂きます・・・m(_ _)m


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第16回大とかち俳句賞全国俳句大会

大とかち俳句賞の大会も、

今年で16回を迎える事になった。

私は確か6回大会頃から参加しているので、

かれこれ10年以上この大会に関わっている。

この大会が始まったきっかけは、

東北海道現代俳句協会の鈴木八駛郎氏が

同人の俳誌「海程」主宰・金子兜太氏へ

選者を依頼して始まったもので 

当時の道外特別選者は

金子兜太、水原春郎、島田一歩、の3名だった。

それに幾人もの道内選者を加え

現代俳句から伝統俳句まで

幅の広い選者による俳句大会だった。

その流れは今でも続いているが

16回を数えるようになると

選者の面々も様変わりをする。

水原春郎氏が2年前に亡くなり

金子兜太氏が今年の2月に亡くなり

島田一歩氏が今年は高齢を理由に選者を辞退された。

また道内の有力選者だった依田明倫氏も昨年の11月に亡くなった。

そのような状況の中で

今年から道外選者が交代し

片山由美子氏と宮坂静生氏になった。

今年の第16回大とかち俳句大会は

そんな大きな転換期を迎えた大会になった。

選者が一新しつつある大会を

さらに盛り上げてくれたのは

当日会場に来て頂いた十勝管外の選者の方々である。

IMG_4290講演をして頂いた辻脇系一氏をはじめ

五十嵐秀彦氏、石川青狼氏、に

それぞれの持ち時間で特選句の講評をしていただき

さらに十勝管内の選者3名も特選句の講評をするという

道内有力俳人6名による

豪華な特選句の句評会が実現した。

それぞれ皆さん方の話は

大変個性豊かで面白く

多くの選者の方々による講評会というものは

これはきっと、今後の

大とかち俳句大会の目玉になってゆくのではないか

という感触があった。

その後は恒例になっている

写真を付けた入賞句の披講と

中屋岳想先生の俳句吟詠が続き

IMG_4291最後に受賞者の表紙様式と

受賞者の新聞掲載用の写真撮影をして

無事に大会を終える事が出来た。

私は司会を担当したのだが

去年よりも1時間長い

充実した大会の進行役を

楽しませていただいた。

とかちプラザの402号室が

ほぼ一杯になるほどの盛況は

久しぶりの事で

参加していただいた全ての皆さんに

心から感謝を申し上げたい。

大会のあとは

有志で打ち上げの夕食。

IMG_4292ここでなんと去年と同じ

サプライズが待っていた。

まさかの誕生日ケーキが出て来て

それを美味しくいただく事が出来た。

私も今日で58歳になりました。

どうもありがとうございました♪


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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Freedom of Expression 2018.9.20.〜 in帯広

帯広駅地下1階、

帯広市民ギャラリーにて、

IMG_4278本日9月20日〜25日まで、

コラボ展示会が開催される。

テーマは「トーチカ」、

天井の低い、

地下のギャラリーに、

IMG_4269なんと

実寸大のトーチカ

が 出現する。

前代未聞のその製作に

私も関わっているのだが

IMG_4260何しろ全てが初めてのことばかりなので

試行錯誤を繰り返し

行き当たりばったりの活動である。

しかし

有志が集まって

IMG_4261誰もやったことがないことに挑戦する

というのは

何事にも代えがたいワクワク感があるものだ。

そんなワクワク感の中で

十勝海岸に通い

IMG_4262トーチカの実物に触れて

その感じを俳句に詠み

30句ができた。

その30句の中から

他の参加メンバーの書家の方に

IMG_4273コラボ作品をつくっていただき

それを展示した。

また

先日の地震や停電にもめげず

IMG_4275段ボール箱を集めて

それに色を塗って組み立てて

数日がかりで

実寸大のトーチカを

帯広駅の地下のギャラリーに造り上げた。

IMG_4274「トーチカ」というテーマは

やはり重いものがある。

太平洋戦争が残した負の遺産として

今でもその姿をさらけ出している。

さらけ出しながら

IMG_4272次第に風化し

十勝沿岸の砂浜の中に

少しづつ埋没しつつある。

トーチカ群は

そのままだんだんと海の中へ埋没し続け

IMG_4271将来は全て海の中へ

消えてゆく運命にある。

我々を含め十勝沿岸地方の町村の人々の

記憶の中からも

トーチカはいずれ

IMG_4276消え去ってしまうかも知れない。

各自治体の間にも

トーチカの保存運動などが盛り上がることはなく

むしろこの負の遺産を

お荷物と感じている雰囲気さえある。

IMG_4277そのような雰囲気の中で

大樹町旭浜出身の写真家

古川こずえさんが中心となって

今回のコラボ展示会が開催される。

参加者だけが盛り上がるのではなく

IMG_4258展示を見に来ていただいた方々全てが

この展示会を通して

トーチカというものの存在を

心にとめて

何かを感じていただければと思う。

9月23日の13時30分からは

トーチカの俳句30句の朗読と

トーチカに関するギャラリートークが行われる。

時間をあわせて

来ていただけると嬉しいです!



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「牛の乳房炎」のガイドブック

北海道はすっかり秋らしい気候になって来た。

普段なら、

秋の爽やかな空の下で、

夏バテ気味の牛たちの健康は回復し、

日々の往診件数は少なくなり、

獣医師の仕事は時間的に余裕が出来る。

出来た余裕で、

秋の学会シーズンを迎え

新しい勉強に励んだり(学問・読書の秋)

色々なイベントに参加して

自分の趣味に打ち込んだり(芸術・スポーツの秋)

する季節である。

しかし

今年はちよっと勝手が違う。

先日の大地震と

それに伴う大停電によって

牛たちの、特に乳牛たちの健康が

いつものように回復していない。

我が診療地区の乳牛たちは

JA(農協)や出荷先(よつ葉乳業)の

停電に対する防災意識が比較的高かったおかげで

大事に至る事は無かった。

しかし、乳牛の職業病である

乳房炎はなかなか減ってくれない。

そのような中で

麻布大学のK合先生をはじめ

私の身近に居る

乳房炎に詳しい獣医師の方々から

IMG_4263「乳房炎抗菌剤治療ガイドブック」 

という冊子が

紹介されたので

ここに貼り付けることにした。

酪農関係者の方々に目を通していただき

活用して頂いて

乳牛の健康を少しでも取り戻す為に

役立てて欲しいと思う。 


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続々・大停電

私は日頃いつも、

農産物の消費者は、

その農産物の生産現場を知るべきだ、

と言い続けている。

牛乳を飲んでいる人(消費者)は、

牛乳を生産している人(生産者)をもっと知って欲しい

と言い続けている。

今回の北海道の地震とそれに続く大停電で

私は電気の大切さを

あらためて思い知らされたのだが

それは

自分が電気の消費者である

という事を思い知らされたわけである。

私が日頃

言い続けている言葉を借りるならば

電気の消費者は

電気の生産現場をよく知っておくべきだ

という事になる。

ところが

私は今まで

電気の生産現場のことに関して

全く無知であった

ということが

今回の北海道の大停電を経験して明らかになった。

自分が使っている電気が

どこで生産されているのかを知らなかったのだ。

十勝地方に住んでいる人の電気は

十勝地方のどこかの北海道電力の発電所で作っているのだろう

と、漠然と思っていた。

しかし

それは全く違っていた。

私が毎日使っている電気は

今回の震度7の地震の直撃を受けた

苫東厚真火力発電所で作られていたのだ。

IMG_4214しかも

十勝地方の電気ばかりではなく

釧路根室地方を含む道東全域で使う電気が

全て苫東厚真火力発電所で作られ

日高山脈を越えて供給されていたのだ。

IMG_4239私があらためて知ったのは

十勝はもちろん

道東地方全域には

北海道電力の主要な発電所は一つも無いという事実。

私は自分の無知を恥じるとともに

少なからずショックを受けた。

これが今の北海道の

電気の生産現場だったのだ。

今回の地震で亡くなった方や被災された方は

私が日頃ずっと使っていた電気が生産されている発電所の

すぐ近くに住んでいる方達だったのだ。

IMG_4242それを思うと

心の痛みが何度もぶり返してくる。

あらためてご冥福をお祈りし

今なお続いている不自由な暮らしに思いを寄せさせていただきたい。

振り返って、我が身にも

当然いつそのような災難が襲ってくるかも分からない。

IMG_4245その状況は今後全く変わらないだろう。

北海道から地震を無くすことは出来ない。

地震の予防をすることができず

いつかどこかでまた地震や停電は必ず起こるだろう。

できるかぎりの防災準備と

IMG_4246心構えをもつ以外に方法が無い。

いままで

私の心構えはできていたのだろうか。

自分自身の心構えと同時に

我々日常の社会の心構えはできているのだろうか。

農産物の消費と生産と同じように

電気の生産と消費について

我々電気の消費者はもっと真剣に考えざるを得ないのでは無いかと

今回の地震でつくづく思った。

そして自省を込めて思い知った事は

IMG_4248電気への依存(貪り)

発電に対する無知(愚かさ)

である。

電気の供給に限界のあることを忘れ

それを湯水の様に使い

「発電の実情」

を知らず

電気を貪る暮らしを続けている。

これはまるで

「電気中毒」

ではなかろうか。

発電の難しさや危険性を顧みず

電気を貪りつづける

我々の心は

「電気依存症」

になっているのではないだろうか。


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続・大停電

あいも変わらず、

酪農家を往診して回っていると、

IMG_4213出て来る話は、

やはり今回の停電による搾乳不能と、

その対策の自家発電機の調達の話題。

さらに搾った生乳の出荷先の、

乳業メーカーの工場の稼動不能と、

IMG_4213それに伴う牛乳の廃棄の話題。

我が町の酪農家の生乳の出荷先は

大きく分けて2つ

明治乳業とよつ葉乳業である。

明治乳業の生乳加工場は停電で2日間ストップした。

IMG_4215だが

よつ葉乳業の生乳加工場は非常用電源があって稼働した。

明治乳業へ出荷している地区の酪農家は

搾った生乳を2回廃棄した。

しかし

よつ葉乳業へ出荷している地区の酪農家は

IMG_4217搾った生乳を廃棄せずに出荷した。

聞くところによると

北海道内の大手乳業メーカーの生乳加工場で

今回の停電で停止しなかったのは

よつ葉乳業の加工場だけだったらしい。

明治乳業に出荷していた酪農家の一部は

緊急処置でよつ葉乳業へ出荷することによって

生乳の2回目の廃棄を免れた家もあるらしい。

そのようなわけで

各酪農家の停電の被害状況は様々で

各大手乳業の間にも

停電に備える危機管理に

差があったという事がわかった。

ともあれ

よつ葉乳業の工場だけでは

搾った生乳を加工処理するのには限界があるから

北海道内の乳牛から搾られた生乳の多くは

2日間ほとんどが廃棄

という憂き目に遭ったようだ。

全体でどれだけの廃棄処分がおこなわたのか

そのうち取材などで明らかになるだろうが

その影響の実態は

近所のスーパーマーケットに買い物に行けばすぐ分かる。

IMG_4234写真は9月9日の夕方のフクハラ札内店。

乳製品は

ほぼ棚から消えている。

1リットルの牛乳パックをはじめ

ヨーグルトもほとんど無く

IMG_4235チーズやバターさえも

ほとんど姿を消している。

保存食であるはずの

チーズやバターまでが

店頭から消えているのは

IMG_4236ちよっと意外だったが

乳製品というのは

それだけデリケートな商品である

という事なのだろう。

一方で

コカコーラなどの清涼飲料や
IMG_4237
お茶や水などは

普通に棚に並んでいた。

いまや

牛乳とほとんど同じ小売価格の

清涼飲料水やお茶や水が

涼しい顔をして

店頭に並んでいるのを見ると

棚から消えてしまった

牛乳が

気の毒に思えてならない。


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大停電

これを書いている今から、

約48時間前の未明、

我が家の携帯電話が一斉に、

緊急地震速報を鳴らしたたと思いきや、

たちまち強い揺れが襲って来た。

十勝は幸いに震度4程度の揺れで済んだが、

それからトイレに行こうと電気のスイッチを入れたら、

停電になっていた。 

夜が明けてもまだ停電が続いた。

出勤してもまだ停電。

IMG_4174停電のまま往診に回ると

発電機を持っている酪農家は

発電機を回しながら仕事をやりくりしていた。

IMG_4184集乳車の運転手のK崎さんの話だと

発電機のない酪農家の集荷は後回しにしているとのことだった。

往診から帰って来てもまだ停電が続き

IMG_4188この日に予定されていた午後からの牛の手術は

機械が動かないのですべて延期となった。

我々獣医師が書くカルテは電子カルテという物で

今日の診療内容を打ち込むためには電源が要る。

この日のカルテは診療車のシガーソケットからの電源をつかって書く事になった。

昼間の仕事をなんとかほぼ普通に終えて帰宅。

その日の夜は久しぶりの

電気の点かない夜だった。 

かつて釧路沖地震(1993年)の時

あれは真冬の1月15日の夜だったと思う。

地震の後に停電が起こり

じわじわ寒くなって来たので

家族で防寒着の厚着をして不安な夜を迎えたことを憶えている。

幸いその時の停電は数時間で復旧した。

IMG_4192あれからもう四半世紀経った

なんていう事を思い出しながら

ローソクとランタンの灯りで

携帯ラジオの情報を聴きつつ

夜を過ごした。

帯広のアパートから食材を持ってきた次女が

夜空の星の綺麗さに感動していたが

私にとってはいつも夜間の往診でながめる夜空と

それほど変わるものではなかった。

夜が明けて7日になっても

まだ停電は続いていた。

我が家は水道とガスは無事だったので

朝の日の光の中で朝食を作り

次女は出勤して行った。

私はこの日は午前中に歯医者の予約と

午後からは能楽同好会の稽古の予定があり

休日をもらっていた。

しかしどちらも中止になると思い

妻から手渡された買い物リストを持って

IMG_4204帯広の街へ買い出しに出かけた。

帯広の街の碁盤目の道は

信号機が点いている交差点と消えている交差点が

まだらに混ざり合っていて

緊張の連続で非常に疲れる運転を強いられた。

IMG_4196大手スーパーマーケットでは

野外テントを張って特設販売をしていた。

1人1点づつという制限付きで

パンや即席麺や水のペットボトルなどに

長い行列ができていた。

その時、携帯電話が鳴った。

予約をしていた歯科からだった。

てっきり診療が出来ないものと思っていたら

診療可能なのだという。

我が家とその歯科医院は

300メートルほどの距離だったが

歯科のほうは国道沿いにあるので

停電はすでに復旧していたのだ。

買い物を済ませて

歯医者の治療を終えた。

午後からの能楽の稽古はさすがに中止。

そこで、日の当たりの良い部屋で

ゆっくりと読書をする事にした。

IMG_4211夕方になっても

まだ我が家の停電は続いた。

携帯電話のバッテリーの蓄電が

妻のも私のも無くなってきたので

役場が開設している充電サービス会場へ行き

IMG_4212充電をしながらまた読書。

充電を終えて家に帰ると

我が家に電気が点っていた。

明るい部屋の中で

仕事を終えて帰って来た次女が

晩飯を食べていた。

約40時間ぶりに

電気のある生活が

戻ってきた。


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台風21号

明け方3時ころ、

唸る様な音がして、

ふと目が覚めた。

台風21号の雨と風の音だった。 

いつもの雨風の音とは違って、

18090503遠くの地の果てから、

地鳴りがやってくる様な、

不気味な音だった。

それが数十秒間隔で

何度も繰り返してやって来た。

TYs-600台風の風が

息を継いでは 

何度も繰り返される

まるで大きな息をしている様だった。

北海道の西側を北上する台風のときは

いつもこのような大風が吹く。

201809050600-00十勝地方からは

その進路がかなり離れているので 

一昨年に直撃した台風と違って

大雨や洪水や土砂崩れの心配はない。

しかし

この大風によって

牛の飼料作物である

デントコーンの倒伏被害が心配である。

先程

部屋の窓を開けて

外を覗いたら

いつになく湿度の高い

生温い風が

あたりに充ち満ちていた。

台風が運んできた

南方の空気だった。


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北海道玉藻俳句大会in苫小牧

苫小牧へ日帰りの俳句の旅、

星野高士主宰の「玉藻」の北海道大会に出席してきた。

ゆっくりと一泊したかったのだが、

9月はいろいろと行事が目白押しで、

もちろん仕事もしなければならないので、

とんぼ帰りの汽車の旅だった。

しばらく続いていた雨も上がり

この日はすっきり爽やかな秋晴れとなった。

IMG_4159苫小牧駅に着くと

小樽の北嶋さくらさんと

札幌の岡本清さんにばったり会い

この日はそのまま3人でランチをし

句会の開始時間まで吟行(俳句散策)をする事にした。

俳句の仲間というのは

いきなり会っても直ぐに意気投合出来るのが良い。

苫小牧市民会館から海岸まで歩き

秋日和の海岸を約1時間ほど吟行して10句を得る。

IMG_415815時からの句会に5句を投句。

前日句会は出席者40名そこそこの句会だった。

私は互選の披講を担当し

高士・椿・両先生の選の披講は

玉藻編集長の阿部信(まこと)さん。

私の一句


  秋風に立ちて海へとなびく髪   豆作 



  海ばかり眺めし後の実玫瑰(み・はまなす)  豆作


が椿選に入選♪

IMG_4164どちらもさっき作ったばかりの句で

1句目は海を眺める北嶋さくらさんを詠んだものだった。

高士主宰選の披講になり

上記の2句が今度は特選に選ばれてしまった♪♪

玉藻の句会に出るのは初めてのことで

IMG_4162いきなり両先生の選に入ったのは

驚きと嬉しさの混ざり合った幸せだった。

やはり吟行はしてみるものだ

とつくづく思った。

句会のあとは大きなホテルの16階へ移動して

眺めのよいレストランで懇親会。

IMG_4161晴れていたので

苫小牧市と太平洋を一望できる

贅沢な眺めを満喫した。

懇親会では

星野高士先生に

IMG_4160お願いすることがあった。

それは

来年の「大とかち全国俳句大会」の

選者になって頂くというお願いだったが

気さくで陽気な高士先生は

二つ返事で快く引き受けて下さった。

これで「大とかち全国俳句大会」の

メインの選者は

 金子兜太→ 宮坂静生

 水原春郎→片山由美子

 島田一歩→星野高士

という3人の先生へと

世代交代をすることが出来た。

今年の募集はもう終了したが

来年からは

さらにフレッシュな充実した選者になるので

これを詠んでいる俳人のみなさま

どうぞふるって

「大とかち全国俳句大会」への

投句をお願いしておきたいと思う。

まだちょっと気が早いけど(笑)


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予告(コラボ展)

北海道東部の海岸線には、

太平洋戦争の終わり頃、

敵国の海からの、

本土上陸に対抗するために、 

沢山のトーチカが造られた。

様々なトーチカが造られたが

IMG_3380そのどれひとつとして

一度たりとも

使われることが無かった。

というより

使う理由も意味も稀薄だった

IMG_3365という方が正しいだろう。

ただ命令を受けて

ひたすらトーチカを造っていた

当時の日本兵の方々の

ご苦労とその心中を思うと

複雑な思いが湧いて来る。

IMG_3357コンクリートで作られたトーチカは

現在でも海岸線に点在し

滑稽かつ無様な姿を

晒しつづけている。

造られてから73年の時が経過した今

そのトーチカを

IMG_3978帯広駅の地下の

帯広市民ギャラリーに

原寸大の模型として再現してみよう

という企画が 始まった。

大樹町旭浜在住の写真家

古川こずえさんが

IMG_3976今年も

T.A.L.(Tokachi Art Links)

という活動を始めている。

私はそのメンバーの1人として

参加することになった。

どんなかたちで参加するかは

じつは

私自身もまだよく解っていない(笑)

企画の準備会議に足を運びながら

この企画の意味を理解してゆき

自分にできることは何なのかを

IMG_4127模索してゆくという

いつもながらの

とても不思議な

コラボ展なのである。

開催日時は

9月20日(木)〜 9月25日(火)

帯広市民ギャラリーにて。

また

9月23日(日)には

参加者全員によるギャラリートークと

私の俳句朗読のパフォーマンスを

予定している。

時間のある方は

ぜひご来場ください!


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牛のピアス

日本で飼われている牛は、

必ず耳にピアスをしている。

ピアスと呼べば洒落てはいるが、

かなりダサいピアスであり、

正式な名前?は、

個体識別番号が印字された、

黄色い下地の四角い耳標である。

全国共通の10ケタの番号で、

個体の識別のために用いられている番号だから

同じ番号の牛は

当然どこにも居ない。 

この耳標は

かつてBSE(牛海綿状脳症・いわゆる狂牛病)の牛が

日本で発見されたとき

牛の生産履歴(トレーサビリティ)すなわち

牛の出どころを突き止めるための法律が整備され

日本国内の全ての牛の耳に

装着することが義務付けられた。

それはとても画期的なことで

私は当時の畜産農政をすばらしいと思ったのを

今でも覚えている。

この牛のピアスに書かれている番号によって

日本の全ての牛の出どころが判るので

伝染病の蔓延などの問題の出どころを

突き止める事が出来るようになったのである。

その事で

日本の牛肉や乳製品は 

他国の牛肉や乳製品よりも 

安心と安全が守られているといっても良い。

外国から輸入する牛肉や乳製品は

日本のような生産履歴はない。

外国から生体で輸入される牛たちも

日本の検疫所で初めて耳標が装着されるので

IMG_3820それ以前の出どころは定かではない。

日本の牛はこのピアス(耳標)によって

外国ら輸入される牛よりも

安全と安心のレベルを保っている。

しかし、最近

この耳標が

IMG_3821外れている牛をよく見かけるようになった。

耳標が外れているものばかりではなく

耳がちぎれて耳標が取れてしまっているものも

少なくない。

どこの飼主の家でも

IMG_39411頭や2頭の

耳標落ちの牛を見かける。

牛の耳標か外れやすい材質になっている

とも聞いている。

日本の牛の安全安心レベルを保つためにも

IMG_3943牛の耳標の落ちた牛は

直ちに装着しなおしていただきたい

と同時に

耳から落ちにくいように

耳標の改良を進めていただきたいものである。



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