北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

乳検データーから見えるもの(9)

この冊子の解説文を書いている無責任氏は、

課題 7 「分娩後に母牛・子牛の死廃事故率が多い」として

「北海道NOSAIの引き受頭数に対する死廃事故頭数・被害率をみても、地域別に差がありますが、毎年高い割合で推移しています。」

と言い、また

「振興局別に除籍率、母牛60日以内死廃率、子牛死産率をみると、地域によって大きな差がみられます。死廃率は全道平均では5.7%ですが、地域でみると4.2〜6.5%となっており、詳細な地域単位や酪農家単位では更に開きがあると推測できます。自らの農場における死産の発生状況を今一度確認して見ましょう。」

IMG_1444などと言っている。

ここで、無責任氏の言っていることに、それほど腹立たしいものはない。

しかし

無責任氏はここで

このデーターについての言及を終わりにしている。

なんだか、あっさりと触れているだけで

そのまま口を塞いで

無口になってしまったかのような印象がある。

気になるので

データーの細かいところを見てみたいと思う。

下に示した表は

北海道の乳検での

IMG_1444除籍率

母牛死廃率

子牛死産率

を地域(振興局すなわち支庁)ごとに並べた表である。

その中で

まず、気になるのは

母牛の分娩後60日以内の死廃率

その14地域(振興局=支所)ごとの内訳の中で

最も少ないベスト3は

  1位  胆振 4.9%

  2位  宗谷 5.2%

  3位  檜山 5.4%

最も多いワースト3は

 12位  十勝 6.4%

 最下位 釧路 6.7% (同率)

 最下位 網走 6.7% (同率)

となっている。

つぎに、気になるのは

子牛の死産率

その14地域(振興局=支所)ごとの内訳の中で

最も少ないベスト3は

  1位  宗谷 4.2%

  2位  檜山 5.0%   (同率)

  3位  留萌 5.0%   (同率)

最も多いワースト3は

 12位   十勝 6.1%

 最下位  釧路 6.5%    (同率)

 最下位  網走 6.5% (同率)


となっている。

私が注目したのは

母牛の分娩後60日の死廃率

子牛の死産率

どちらも

十勝・釧路・網走が

ワースト3
になっている

ということである。

それはなぜなのだろうか?

ここで1つ

興味深いデーターを重ね合わせてみよう。

それは

北海道の畜産振興局が出している

「振興局別家畜飼養個数・頭数」というもので

最新のデーターをホームページから見ることができる。

その中の乳用牛の部分を引用したのが下の表である。

IMG_1588





クリックして大きくして確認していただきたい。

この表の一番下の段に

一戸あたりの頭数

が、14地域(振興局=支所)ごとに示されている。

それによれば

一戸あたりの頭数の多い順に並べて見ると

 1位 十勝  161.7  頭

 2位 釧路  136.8  頭

 3位 根室  134.6  頭

 4位 オホーツク(網走) 118.0 頭


となっている。

これを素直に読み取るならば

一戸あたりの頭数の多い酪農

すなわち

規模の大きな酪農家が全道で最も多いのは

十勝であり


分娩後の母牛・子牛の死廃事故率が

十勝はワースト3 に入っている

ということになる。

さらに

規模の大きな酪農家が全道で2番目に多いのは

釧路であり


分娩後の母牛・子牛の死廃事故率が

釧路はワースト3 に入っている

ということになる。

さらに

規模の大きな酪農家が全道で4番目に多いのは

網走であり


分娩後の母牛・子牛の死廃事故率が

網走はワースト3 に入っている

ということになる。

規模の大きな酪農家の多い地域の

分娩後の母牛と子牛の死廃事故が

軒並み高くなっている


ということが

このデーターから

読み取れるのではなかろうか。

さて、また

前回の記事に立ち戻って

十勝の酪農の乳量の伸びを示した

新聞記事をもう一度

ここに貼り付けてみる

クリックして見ていただきたい。

IMG_1537




「1頭あたり乳量10年で1トン増」

「農家大規模化」

「米国流の飼料管理」

こんな見出しがついていて

喜ばしいことのように書かれているが

私に言わせれば

こんなものは全く

喜ばしいことではなく

憂うべきことである。

なぜ憂うべきことなのか?

この新聞記事の書き出しは

「道内の生乳生産を引っ張る十勝管内で・・・」

という言葉で始まっている。

もう一度言おう

規模の大きな酪農家が

全道で最も多いのは

道内の生乳生産を引っ張るという

十勝であり

分娩後の母牛・子牛の死廃事故率が

ワースト3 に入っているのが

道内の生乳生産を引っ張るという

十勝である。

十勝は

道内の生乳生産を

どこへ引っ張るのだろう?

これだけ事故の多い十勝の酪農

道内の生乳生産

間違った方向へ引っ張っているのではないか?

十勝の酪農家を相手に仕事をしている獣医師として

私は非常に残念で

なんだか

とても情けない。


(この記事続く)



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乳検データーから見えるもの(8)

乳検データーが示す北海道の酪農の、

「死亡や疾病で除籍頭数は増えている」

IMG_1442という課題。

その増加傾向をグラフで見ると

乳牛の除籍の理由である「その他」という項目が

特に2104年ごろから極端に増えていることがわかる。

そして「その他」の項目を詳しく見てゆくと、

その裏には

我々獣医師が

「治療しても治らない」牛たちの存在があることも前回の記事で書いた。

さらに

「治療しても治らない」牛たちの増加は

我々NOSAI獣医師が深く関わっている

「共済廃用」になる牛の増加

という形で現われ

さらに、共済保険の対象にもならない

「自家廃用」になる牛の増加

という形でも現われ

さらに、飼主が公表を避けたい

「伝染病」の牛の増加

という形でも現われている。

また、前回のコメントで指摘のあった

「書き方がよくわからない」

「書くのが面倒」

という理由もあるようであるが

いずれにしても

IMG_1555理由が明記されていない牛の除籍が

2014年頃を境にして

ジャンプアップしている
のは

注目すべき出来事である。

ここで

最近

ちょっと気になる新聞記事が出た。

IMG_1537それは左の写真の

5月12日の道新の

十勝の乳牛の年間の1頭あたりの乳量が

急激に伸びているという記事である。

注目すべきは記事の内容というよりも

掲載されているグラフである。

そのグラフをよく見ると

年間1頭あたりの乳量(折れ線グラフ)と

年間の生乳生産量(棒グラフ)が

IMG_15352014年頃を境にして

ジヤンプアップしている。

これはどういうことを意味するのだろうか?

理由が明記されない乳牛の除籍数の増加と

年間1頭あたりの乳量の増加と

十勝全体の生乳生産量の増加と

が、2014年頃を境にして

ことごとく急増している
のである。

新聞記事の内容は

それを肯定していて

喜ばしいことのように書いてあるが

私に言わせれば

それは全く逆で

非常に憂慮すべきことであると思う。

それを簡単に言えば

「乳量の増加」と

「治療しても治らない牛の増加」が

時を同じくして起っている

ということである。

これはどういうことなのか?

この現象はすなわち

十勝の乳牛たちは

「乳量が増加」する一方で

病気になり

その病気は

「治療しても治らない」ような

深刻な病気にかかっている

と解釈できるのではなかろうか。

これは

十勝の乳牛を診療している我々にとって

まことに

憂慮すべきことなのではなかろうか。



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乳検データーから見えるもの(7)

私がなぜこれ程まで、

しつこい位に今回のシリーズ記事を書いているかというと、

この乳検協会の冊子の「乳検データー」から、

思い当たる事が、実に多いからである。

最近、私が日々の仕事の中でつくづく感じることを、

この冊子の「乳検データー」が、

みごとに裏付けてくれるデーターだからである。

私が最近つくづく感じていることを一言で言えば、

「治療をしても牛が治らない・・・」

ということである。

30年以上も牛の臨床獣医師をしていれば、

自分の獣医療の技術は少しは向上しているはずであるから、

以前よりも牛が治療に反応して

治癒率が向上してもよさそうなものであるが、

どういうわけか

治癒率が向上したという実感は、全くない。

それどころか

以前よりも牛が治療に反応せず

治癒率はむしろ下がっているのではないか

とさえ思えるのである。

「治療をしても牛が治らない・・・」

こう強く感じる事は

獣医師として、とても情けないことであり

恥ずべきことである。

しかし、現実はそれを日々感じつつ仕事をせざるを得ない。

これは非常にストレスのたまることであり

無力感にさいなまれることもしばしばである。

そんな日々を送っている時に見つけたのが

この乳検協会が出した冊子のデーターだったのだ。

何度もいうが

この「乳検データー」自体はたいへん素晴らしいものである。

ところが

それを解説する文章がまったくダメすぎて、お話しにならない

ということなのである。

では、また

その素晴らしいデーターと

それを解説する超劣悪な文章を

腹立たしさを我慢しながら読んでいきたいと思う。

超劣悪な解説文を書いている無責任氏は

IMG_1442課題5 「死亡や疾病で除籍頭数は増えている」

として

「図は年次別の除籍理由別頭数を示したものです。直近の除籍頭数は12万7千頭となり、増加傾向にあります。」

ここで「除籍」というのは

各酪農場から姿を消した牛のことである。

それぞれの折れ線グラフは、その除籍の理由ごとのグラフである。

無責任氏は続けて

「また、検定での除籍報告で、「その他」の項目が増えていますが、理由をあいまいなまま「その他」で報告しますと正確に除籍理由が把握できませんので、原因をしっかりと把握して除籍報告を行うように心がけましょう。」

などと言っている。

(もう無責任氏は何もわかっていないことに、ほとほと呆れてしまう)

飼主さんが、自分の牛を自分の農場から出すとき

あいまいな理由で出すなどという事は、ありえない事である。

考えに考え、悩みに悩んだ末に

飼主さんは、自分の牛を売ったり処分したりするのだ。

牛を処分する理由があいまいなどということは

実際を考えれば

そんな寝ぼけた除籍など誰もするわけがない。

「原因をはっきり把握して除籍報告を行うように心がけましょう。」

などと

間抜けなことを言っている無責任氏の頭の中こそ

はっきりさせた方が良いだろう。

(本当は、除籍の原因は、はっきりしているのです)

ただその原因を

飼主さんは

「明記したくない」から「その他」なのである。

ここで「明記されている」原因を

少ない方から挙げてゆくと

「消化器病」

「低能力」

「産後起立不能」

「乳器障害」

「乳用売却」

「運動器病」

「乳房炎」

「繁殖障害」

「死亡」

「その他」

となっている。

そして、除籍理由としての「その他」は

2014年から2015年の1年間に

5000頭近くも増えて、ダントツの1位になっている。

飼主さんたちがあえて「その他」として

明記を避ける除籍理由とはいったい何か?

第1に思い浮かぶのは

我々NOSAI獣医師が深く関わっている

「共済廃用」である。

そしてさらに

共済(NOSAI)保険の限度枠を使い切ってしまったために生ずる

「自家廃用」である。

この2種類の廃用は

我々獣医師が

「治療をしても治らなかった・・・」

牛たちである。

転売はもちろん、肉にもできない

飼主さんにとっては最も不本意なものであろう。

不本意な除籍の理由など

飼主さんはいちいち書きたくはないだろう。

そしてさらに

最も明記したくない除籍の理由として

「伝染病」がある。

その最たるものが

「法定伝染病」や「届出伝染病」

であるが

これもまた

「治療をしても治らない・・・」

牛たちである。

伝染病で除籍することは

飼主さんにとって不本意なばかりか

最も恐ろしく忌まわしいものであろう。

世間の目や風評なども気になり

そんな除籍の理由は

飼主さん達が明記することは

絶対と言って良いほど

ないだろう。


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乳検データーから見えるもの(6)

乳用雌牛(主にホルスタインの雌)の飼養頭数は、

この5〜6年の間に、

本州では7万頭も、北海道でも3万5千頭も、

減ってしまった。

それなのに、

今後ますますの「生乳生産拡大 」を目標に掲げている酪農行政の考え方に、

酪農の現場の片隅で働いている私は、

強い違和感を覚える。 

乳用雌牛(ホルスタインの雌)が、

なぜ、こんなに減ってしまったのか?

その理由をまともに検証もせずに、

「生乳生産拡大」という言葉を安易に吐くこと自体が、

信じられないのである。

乳用雌牛(ホルスタインの雌)が減ってしまったのは、

自らが推進してきた酪農行政にこそ、

その原因があるということに、

全く気づいていないような発言は、

まことに腹立たしいものがある。

ではまた、

そんな腹立たしい気持ちを我慢して、

例の冊子の「乳検データー」を解説する無責任氏の言葉を引いてみたい。

IMG_1441無責任氏は

課題4「個体価格も高くなっている」

として

「乳用牛の頭数が少なくなってきたため、最近は初生、育成、初妊、経産牛全てにおいて非常に
高騰してきており、いわゆる酪農バブルと呼ばれる状況にあります。特に、ただちに生乳生産に結びつく初妊牛などは史上初めて70万円を超えるという異常な状況となっています。」


などと言っている。

(今はもうそれ以上に初妊牛は高騰し、腹が和牛ETならば、軽く100万円を超えていますね)

そして、次が

聞き捨てならない問題発言・・・

「この結果、新規に個体を導入している農家は、メガファームやギガファームなどの大規模農家が中心となっており、家族経営の中では、新たに個体を導入することは、価格面から大きな支障が出ています。このため、自家生産でしっかり乳用後継牛を確保する対策が必要です。」

何とも変な文脈でわかりづらい文章だ。

この一文はおそらく

上の方から何度も訂正がかかって

訳のわからない文章になってしまったものと想像する。

「この結果」とは何の結果なのだろうか?

きっと、乳用後継牛が高騰した結果、という事にしたいのだろう。

(本当は、結果ではなく、原因なのに)

で、無責任氏はこう続けている。

「この結果、・・・」

(本当は、結果ではなく、原因でしょうに)

今は、そういう乳用後継牛が

高騰してしまっている状況の中で

目標とする「生乳生産拡大」のために

「我々酪農政策の担当者が推奨する

大規模経営のメガフアームやギガフアームが

それらの乳用後継牛を買わなくてはなりませんから

家族経営の皆さんは

後継牛を買うのは価格が高くて大変だと思いますから

後継牛を買うのはメガファームやギガフアームに譲って

家族経営の皆さんは

自家生産でしっかり乳用後継牛を確保してください。」

という風に読むことができる。

何という身勝手な考え方だろう。

家族経営の酪農家が

メガファームやギガファームの後継牛の生産を

一方的に担わされているような

そんな物の言い方である。

何という身勝手な考え方だろう。

無責任氏たちが奨励してきた大規模経営の

メガフアームやギガファームが

自分で後継牛を育てることを最初から放棄して

ハナから後継牛の育成をすることなど考えない経営で

自家育成を一切せず

ただ乳を搾る牛を確保するために

他所で育成した牛を買いあさっているからこそ

乳用牛の価格高騰が起こっているのではないか。

(価格の高騰は、アナタたちが進めてきた酪農の大規模化が原因で起こっているのでしょう)

それを棚に上げて

家族経営の酪農家に向かって

「自家生産でしっかり乳用後継牛を確保する対策が必要です。」

などと、ツラっとして

よくもまぁ言えたものだと思う。

ここもまた

無責任氏の無責任たる所以であろう。

酪農の大規模化によって

乳用後継牛が不足し

価格が高騰しているのである。


無責任氏が無知なのか

あるいは

知っているのに言わないのか

触れることを避けている

そういう今の酪農の現状を

私は毎日毎日

身に沁みて味わいながら仕事をしている。

次回はその具体的内容を

「乳検データー」から

もう少し読み取ってみたいと思う。


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乳検データーから見えるもの(5)

せっかく良いデーターがあるというのに、

それを発信して解説する文章が、

あまりにもひどくて、

ピント外れで、

上から目線の官僚臭プンプン、

という鼻持ちならぬ冊子。

題して

「乳用牛べストパフォーマンス実現に向けて」
   〜乳用後継牛の安定的確保のために〜
    (北海道版テキスト・支援者用・平成28年度)


IMG_1435という

52ページにわたる文書の

その、課題編を

続けてもう少し読んでいこうと思う。

書き手の無責任氏

課題3  「交雑種が増えている」

として

「図は北海道における乳用種並びに交雑種の頭数推移を示したものです。乳用種は2010年1月には108万8千頭でしたが、2016年1月では102万1千頭と6万7千頭も減少しています。これに対して、交雑種は、2010年1月には11万3千頭でしたが、2016年1月では13万6千頭と2万3千頭も増えています。」

と言っている。

さらに

「黒毛の種を付けるとホルスタインに比べて初生での個体価格が高く、また明らかに体が小さいため、分娩時の難産を防ぐことができるということで重宝される傾向があります。」

そして

「近年の肉牛価格の高騰から、交雑種(F1)の場合、飼養期間が短くても、高い収入が得られるということがあります。この結果、乳用種を生産する頭数が減少し、後継牛不足を招いているという負の部分があることも見逃してはいけません。」

(見逃しているのはアナタたち農政の方でしょうが。現場ではそんなことは承知の上でやっているのです。)

IMG_1440しかし、こんな状況になることを

本当に知らずに見逃してしまったというよりは

実は、農政の方々も承知していて

わざと見逃して

そのまま放置しているように

私には思えるのだ。

F1の仔牛の価格は

もう何年も前から

「いつか下がるぞ、いつか下がるぞ」

と言われつづけているにもかかわらず

じりじりと価格を上げて現在に至っている。

それは何故なのか?

ここでもう1つ見逃してはならないのは

交雑種(F1)の価格ではなく

純粋種の黒毛和種の価格である。

F1がお腹に入った初妊牛よりも

さらに価格が高騰しているのが

黒毛和種のET(受精卵)がお腹に入った初妊牛である。

先日は1頭120万円もの値段がついたという話を聞いた。

もうベラボーな価格になっている。

その初妊牛から生まれ落ちた和牛ETの仔牛は

1頭なんと50万円以上で買われてゆく。

これまたベラボーな価格である。

どうしてこんなに高いのか?

こんな価格では

黒毛和種の素牛を仕入れて

育成し肥育して販売する牧場は

コストがかかってパンクしてしまうはずである。

ところが

どういう仕組みなのかはわからないが

黒毛和牛の肥育農家さんには

「絶対に損をしないような手厚い保護政策」

がいろいろ施されているらしい。

そうでなければ

こんなベラボーな価格をいつまでも維持できるはずがないと思う。

この辺の事情に詳しい方々のご意見など

コメント欄への書き込みを

是非お願いしたいところである。

モヤモヤした疑問を

スッキリと解決させてくれるような

情報をお待ちしている。

ともあれ

この冊子の無責任氏は

交雑種(F1)のことを課題にあげているだけで

黒毛和種ETのことには何も触れていない。

無責任氏の無責任たる所以だろう。

IMG_1485交雑種(F1)の高騰の背景には

黒毛和種の生産状況と

それに対する

「手厚い保護政策」

があると思われる。

IMG_1540左の写真の記事には

「肉用仔牛の供給が落ち着けば、連動してホルスタイン種を含め、価格は落ち着くはず。」

などと書いてある。

要するに、肉用仔牛の供給が落ち着かない限り

ホルスタインの価格はずっと落ち着かないままでよいという

身勝手なことを平然と言っているのだ。

ホルスタインの雌の腹を借りて

黒毛和種の仔牛を産ませているのに

これを身勝手と言わずして何というのか!

このような状況になったのは

私が推測するまでもなく

日本の畜産農政の中心は

黒毛和種の生産であり

ホルスタインの生産は二の次

であるからだろう。

黒毛和牛の生産が第一であり

酪農の問題は後回しにされている。

乳検データーから

日本の畜産農政の

基本的な態度が

見えてくる


(この記事続く)



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乳検データーから見えるもの(4)

書き手が誰なのか全くわからないので、

その書き手を「無責任氏」と命名させてもらった冊子。

題して

「乳用牛べストパフォーマンス実現に向けて」
   〜乳用後継牛の安定的確保のために〜
    (北海道版テキスト・支援者用・平成28年度)


IMG_1435という

52ページにわたる文書。

その、課題編を

もう少し読んでいこうと思う。

無責任氏は

「では、北海道において、現状はどのような課題があるのでしょうか?大きく道内での生乳生産基盤が揺らいできた要因はどこにあるのでしょうか?具体的な数値をあげ検証してみましょう。」 

と言い

課題1  「経産乳用雌牛は減少している」 

IMG_1438として

乳用種雌牛の月齢24ヶ月以上の頭数推移のグラフを示し

「この6年間で、北海道では3万5千頭も減少・・・、府県では、更に減少が激しく7万1千頭も減少・・・」 

と言っている。 

さらに

課題2 「後継乳用雌牛も減少している」 

IMG_1439として

乳用種雌牛の月齢23ヶ月未満の頭数推移のグラフを示し

「この6年間で、北海道でも6千頭程度減少・・・、都府県では、3万頭近くも減少・・・」

と言っている。 

そして

「これからも、将来において更に乳用後継牛が減少していくようなことがあれば、今後の生乳生産拡大に向けての阻害要因となってしまいます。」 

と言っている。

(酪農の現場では、国の生乳生産量を考えて仕事をしている人などはいない。こういう事態に対処するのはアナタたちの仕事でしょう。) 

そしてこうも言う

「国内での生乳生産減少を食い止めなければ、海外からの乳製品輸入拡大への口実を与えかねず、TPPがらみでの悪影響も懸念されます。」 

(乳製品ばかりではなく、乳牛そのものさえも今、輸入する事態になっていますね。) 

無責任氏は

我々酪農の現場の関係者に向かってこんなことを言っているのだが

無責任氏は

現場の我々に

何を言いたいのだろうか

何を知らせたいのだろうか

何かをさせたいのだろうか

それとも

無責任氏自身の仕事の

愚痴を聞いてほしいだけなのか?


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乳検データーから見えるもの(3)

「乳検データー」それ自体は、

検定員と呼ばれる人たちが、

乳検に加入している酪農家さんの、

搾乳時間に合わせて訪問して、

様々な検定の機器を使って、

乳検の生のデーターを取って回っている。

暑い時も寒い時も欠かさずに、

現場に赴いてデーターを取り続ける仕事をしている、

現場の検定員の方々には、

頭の下がる思いである。 

そういう人たちの働きで集積された「乳検データー」なのであるから

それを活用する酪農家はもちろん

それを総括する我が国の酪農行政も

「乳検データー」をありがたく活用し

そこから見えてくる業界全体の課題を解決するために

様々な政策を待ったなしで実行してゆくべきである。

ところが

その肝心な我が国の酪農行政が

全くわからない意味不明な事ばかりしているのは

何故なのだろう。

ではまた再び

「北海道酪農検定検査協会」のHPにリリースされている資料の

誰が書いたのか全くわからない

文責不明の執筆者である「無責任氏」の文章を読んでみたい。

今回はまずその3ページ目の

IMG_1453題して

「乳用牛BP実現に向けた考え方」

を見てみると

いきなり「BP」などと言われてもわかりづらいが

前回の記事に書いた通り

これは「ベストパフォーマンス」という言葉の略で

その言葉の意味は前回の記事に書いた通りである。

続けて、無責任氏は

「乳用牛ベストパフォーマンス実現に向けた取組を、地域畜産クラスター計画の重点テーマに位置付け、現地支援を推進することで、地域の畜産クラスター協議会が本腰を入れて取り組めるよう、また、地域での連携をより深めていけるようにとの思いがあります。」

と書いている。

ここで出てきた「畜産クラスター協議会」って何だろう。

そもそも「クラスター」って何じゃ?

「クラスター」を調べてみたら、「房」「集団」「群」の意味のようだ。

そういえば近頃

役場の農林課の課長さんなどが「クラスター計画が・・・」どうのこうの

と、よく口にしているが、その事業のことのようである。

要するに畜産関係者の「連携事業」のことなのだ。

「クラスター」などという聞きなれぬ外来語を

またもや登場させて

新しさを出しているつもりなのかもしれないが

こういうつまらぬ「カタカナ語のもてあそび」は関係者を惑わせるだけで

もういい加減にやめてほしい、と私は思う。

さらに資料のページをめくって

IMG_1484その12ページ目には

「畜産クラスター計画について」

と題して

無責任氏は

「現在、地域畜産クラスター協議会は各市町村が事務局となり(一部、農協単位有り)、各関係機関が連携して、地域における収益性の向上の取組を推進するクラスター計画を策定し、その実現に必要な施設整備や機械のリース等をクラスター事業で採択していますが、今回、地域での乳用牛BP実現に向けた取組について、なぜ地域での畜産クラスター計画の中で位置付けることが推奨されるのでしょうか。」

と、読み手に問いかけるように書いている。

もうこの、官僚臭さ丸出しの

非常にわかりづらい、鼻持ちならぬ文章を

こみ上げてくる憤りをぐっと我慢して

もう少し読み進んでゆくと

無責任氏はさらに続けて

「全道展開する手段としては、新たに推進体制を作るのではなく、地域での生産基盤の強化と収益性の向上を図る畜産クラスターの枠組みの中で推進することが、効率的かつ効果的です。何より、この畜産クラスター計画において、特に推進すべき取組のテーマに「飼養規模の拡大・飼養管理の改善」が挙げられており、乳用牛BP実現に向けた取組は、まさにこの重要テーマに合致しているからです。」

と書いている。

ということは

乳用牛ベストパフォーマンス(BP)実現に向けた取組

というのは

畜産クラスター事業の取組

の重要テーマ(課題)と一致していて

その中でも特に推進すべきなのが

「飼養規模の拡大・飼養管理の改善」

というテーマ(課題)であることが

はっきりと明記されている。

なるほど・・・

そうですか・・・

私は何かここに

とんでもない「大きな矛盾点」が

見えてきたような気がする。

「乳検データーから見えるもの」

と題して書き始めた今回のシリーズ記事の

3回目にしてやっと

本題に入ってゆけそうだ・・・


(この記事続く)



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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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 見ることが出来ます。






 

乳検データーから見えるもの(2)

公益社団法人「北海道酪農検定検査協会」の、

HPに貼り付けられている、

様々な「乳検データー」を総括して、

それに解説を加えた文書がある。

題して

「乳用牛べストパフォーマンス実現に向けて」
   〜乳用後継牛の安定的確保のために〜
    (北海道版テキスト・支援者用・平成28年度)


IMG_1435という

52ページにわたる文書である。 

その執筆者が誰なのかは全く書かれていない。

その文章の第1ページには

「乳用牛ベストパフォーマンス(BP)とは」

という見出しの下に

「乳用牛の増頭に向けた取り組みと併せて、コスト削減を図りながら、現在飼養されている乳用牛の泌乳能力と繁殖力を、牛に負担をかけずに最大限発揮させること。」

と書いてある。

これが要するに「乳用牛ベストパフォーマンス」という言葉の定義らしい。

(こんな都合のいいことばかり、牛に負担をかけずに!?、実現できるのだろうか・・・)

IMG_1451これを読んでいると

あまりにも見事に

机の上だけで書き上げたような文章に

私は辟易してしまう。

執筆者が誰なのかまったく書かれていない不思議な文章

つまり、文責者が誰なのか全くわからず

執筆者が一人なのか複数なのかも、全く不明なのだが

これを書いたのはきっと農水省のお役人だった方に違いない

と思った。

いきなり「ベストパフォーマンス」などという

聞きなれないカタカナ語を題名にあげて

それを「BP」などとアルファペット2文字に省略して

読み手に配慮なく連発してくる。

文責が誰なのか全くわからず

責任の所在が不明なのだが

誰かが書いているのは間違いのな事なわけで

あえてこの執筆者を「無責任氏」、と命名させていただこう。

この無責任氏はまず

「乳用牛のベストパフォーマンスという言葉に市民権を与えることが重要です。」

などと冒頭にぶち上げる。

(言葉に市民権を与える(=広く一般に根付く)のは市民の力であって、言い出した本人がリキんでもしょうがないでしょうに・・・)

そしてその次に

「何の為に、誰のために、それらすべての取組の先にあるのは、酪農経営の安定と消費者に安全で安心できる牛乳・乳製品を届けつづけるという使命があるからです。」

と書いてある。

(酪農家と消費者のためにこの取り組みがある、と一言で言えばいいのに・・・本当はそうではないことが透けて見えるよ・・・)

そしてその次に

「個々における経営の問題なので、各酪農家が、単に対応すればいいのではないかと捉えてしまうと、ゆくゆくは全体としての国内生産基盤が揺らいでしまうという危険性を孕んでいるということを認識しなければなりません。」

と書いてある。

(アナタたち農政こそ、一番それを認識していなかったのではないですか・・・)

そしてその次に

「今一度、なぜ、北海道で新たに策定した「北海道酪農・肉牛生産近代化計画」で「ベストパフォーマンスを発揮させる飼養管理の推進」が位置付けられているのか、皆さんで考えてみませんか?」

などと問いかけてくる。

(アナタたち農政が何も考えてなかったからこういう事態になったんでしょ、アナタたちこそ胸に手を当てて、今一度よーく考えてごらんなさいよ・・・)

まったく

最初の1ページを読んだだけで

たったの1ページを読んだだけで

これほど腹立たしくなる文章を

私は未だかつて読んだことがない。


(この記事続く)


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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乳検データーから見えるもの(1)

いわゆる「乳検データー」というのは、

乳検組合に加入している酪農家の間では、

お馴染みのデーターであり、

酪農家の個々のきめ細かな数字びっしりと並んでいる「あれ」である。 

個々の酪農家はそれぞれ、

自分の牧場の「乳検データー」を見ながら、

自分の牧場の課題を見つけて、

それを個々に解決する努力をしていると思われる。

それが「乳検データー 」の

第1の活用法であろう。

しかし、

それと同時に

個々の「乳検データー」を総合して

北海道あるいは都府県という

大きな括りによって

「乳検データー」の集積統計を眺めてみると

北海道全体の、あるいは都府県、の

酪農情勢の「推移」というものを見ることができ

そこに、大きな「課題」が浮き上がってくる。

昨年から、その大きなデーターが

「北海道酪農検定検査協会」

という団体のHPから発信されている。

なにやら物々しいが、要するに

農水省の外郭団体と富士通という企業が手を組んで

乳検情報をWebで発信しているのだ。


IMG_1435団体の性質上

この情報の発信元は

農水官僚臭が非常に強くて

まったく鼻持ちならない印象なのだが

その内容については

他では得ることのできない貴重なデーターである。

各ページに色々ついている解説文も

その執筆者が誰なのか全くわからないという

まったく鼻持ちならない文章なのだが

腹立たしさを我慢して

数字だけを素直に読み取って見ると

これが意外に面白くためになりそうな数字であり

その数字の先に何か見えてくるものを感じるのだ。

それは

今の日本の酪農業界の抱える「課題」である。

HPでは、この「課題」を5つに分類して挙げている

曰く

「乳用雌牛の減少」

「交雑種の増加」

「個体価格の高騰」

「除籍頭数の増加」

「分娩時事故が多い」


IMG_1437この5つの課題は

乳検データーの推移を見て

採り上げられたもののようだ。

この5つの課題は

私が日頃

現場回りで感じていることと

よく一致しているので

なかなか的を得ているのではないか

という印象を持った。


(この記事続く)



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こんなに大きくなりました。

このX線写真は、

IMG_4963去年の1月に撮影した、

多頭飼育の酪農家▲牧場の、

和牛子牛の右後内側の蹄骨の関節炎と骨髄炎。

(蹄骨は骨膜を欠くので骨膜炎とは言えないらしい。)

今から約15ヶ月前の写真である。

当時この腫脹した患部の治療について、

2月の初めに何回かに渡って記事にした際、

IMG_4885初診時の対応や、

その後の診断や、

その後の治療方法や、

従業員との意思疎通のまずさ、

などに対して、

多くのコメントをいただいて、

予想外の盛り上がりがあったことを、

記憶している方もいらっしゃるかもしれない。

その当時の記事のリンクを貼り付けたので

和牛の蹄のレントゲン画像(1)

和牛の蹄のレントゲン画像(2)

和牛の蹄のレントゲン画像(3)

興味のある方は過去の記事とコメントを

クリックして是非とも読んでいただきたいと思う。

IMG_4893読み返してみると

同業の獣医師の方々からは

かなり厳しいご意見と

ご批判があったことがわかる。

そのおかげで私も

大いに反省するとともに

随分と色々なことを学ばさせていただいた。

IMG_4895しかし

その後の経過がどうなって行ったのか

という報告の記事は

なかなか書く機会がなかった。

あれから15ヶ月が経った今

IMG_4955この牛はまだ▲牧場で飼われ続けている。

当初目標としていた完治の状態に

ようやくたどり着いてくれたようだ。

その間、何度か

足の患部の状態の写真を撮り続けてきた。

IMG_5069発病して約半年後には

まだ患部に腫脹があり

自壊した部分の皮膚が

覆っていない状態だったが

10ヶ月以降は

IMG_0947自壊部分に肉芽が覆い

外見では自壊部分が

わからないような状態になっていた。

写真を撮ってゆくにつれて

当然のことながら

IMG_0944牛はだんだんと大きく成長し

右後肢の内蹄骨部分は

特に言われない限り

全く普通に見える状態となっていた。

写真を撮ろうとすると

私が餌をくれると思って

とても人懐こくなっていた。

この▲牧場は

IMG_1344その後も相変わらず

従業員達の雇用が長続きせず

私も相変わらず

病牛の治療方針について

経営主への説明と同意に

労力を費やしている状況は

まったく変わっていない。

IMG_1341ただ、この和牛を

今後どうするのかについて

従業員達から

話を又聞きして分かったのは

自家肥育して食べるらしい

ということだった。



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仔牛の上腕骨骨折

「仔牛の右肘(ひじ)が腫れて、着けない。」

という酪農家の⌘さんから電話が来た。

休日の当番だったK獣医師が往診へ行き、

とりあえずの処置として、

消炎剤と抗生物質を投与した。

IMG_1286翌日、

K獣医師から伝言を受けた私が、

この仔牛を診た時、

「昨日と変わっていないです。」

という飼主の⌘さんの言葉に、

IMG_1289私はこれはちよっと厄介かもしれないと感じた。

肘の関節の炎症で腫れているのは間違いないのだが、

関節の深部や骨に異常がないないかどうか、

確かめておかねばならない。

「じゃあ、レントゲン写真撮ってみましょう。」

私はそう言って、

昼から出直して、

ポータプルのレントゲン装置を積んで、

この仔牛の右肘(ひじ)の腫れている部分の写真を撮った。

腫れている部分の内側に

立ったままで脇の下にカセットフィルムを当てても

胸部につかえて患部に届かない。

そこで、仔牛に鎮静剤をかけて寝かせ

仰向けの状態にして

前脚を開いた姿勢にして

カセットフィルムを患部の外側に当て

寝かせて仰向きになっている仔牛の

患部の内側から外側に向かって

X線を照射するようにして

なんとか

肘(ひじ)の部分の写真を撮ることができた。

写真の現像は

隣町のT町の東部事業所まで

撮ったカセットフィルムを運び

そこにあるデジタル解析装置の中へ

IMG_1290カセットを差し込めば

デジタル画像化されたレントゲン写真が

画面に現われる。

その結果がこの2枚の写真である。

IMG_1291ちょっと分かりにくいが

よく見ると

上腕骨の遠位端が

ポッキリと折れて

後方へ変位しているのが見える。

BlogPaint最後の写真は

牛の肘の部分の

骨格模型に

その状態を記入したもの。

「あー、これは、いっちゃってますねぇ・・・」

「ほんとだ。」

現像機械を操作してくれたM獣医師と私は

画像を眺めて、ため息をついた。

「これは、厳しいんじゃないですか・・・」

「・・・うん。」

私は、しばらく画像を見て

この牛は我々の手には負えないと判断した。

そして翌日

私はこの仔牛の廃用の認定を

共済の連合会に申請し

そのまま承諾された。

仔牛は約2ヶ月齢だった。

私は

今回のような

上腕骨の遠位の骨折を

X線画像で診断したのは初めてだった。

さて

記事をお読みの獣医師諸君でも

上腕骨骨折の症例を経験された方は

少なからずいると思うので

ご意見を聞きたいと思う。

私には手に負えなかった症例だが

どなたか

仔牛の上腕骨骨折の整復に

成功した方は

おられますか?

(追記)

この記事をアップした後

コメントしていただいたTamさんという獣医師から

黒毛和種仔牛の上腕骨骨折の

治療中の写真を送っていただいたので

以下に貼り付けました。

Tam先生、ありがとうございます!

BlogPaint










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俳句の天才・依田明倫翁

4月17日(月)の道新の「新・北のうた暦」に、

私は「春愁(しゅんしゅう)の吾(われ)をとりまく楡の幹」という句を出した。

IMG_1378華やいだ春の雰囲気の中で、

ふともの憂い気分になった作者を、

大地に太く生えている楡の幹が取り囲んでいる様を詠んだ句だ。

この俳句の作者は、

依田秋葭 (しゅうか)氏。

すなわち、

依田明倫(めいりん)氏の改名以前の一句である。 

この句の鑑賞文の最後に

「秋葭」氏は、俳号を「明倫」変え

さらに、今年から「あきよし」変えた、と書いた。

じつは、この事を書くとき

本当にそうなのか

事実を間違って書いてはいけないと思って

私は、依田明倫翁に直接電話をして確認しておいた。

「もしもし、豆作です・・・お久しぶりです。」 

「はい。」 

「あの、ちよっとお聞きしたいことがあるんですが。」 

「何。」 

「明倫先生って、今年から名前を『あきよし』に変えたっていう噂、本当なんですか。」 

「そうだよ。」 

「・・・本当なんですか、またどうして・・・」 

「いつまでも『明倫』じゃあ面白くないだろ。」 

「・・・そうですか?」 

 「そうだよ、面白くないだろ。」

「・・・そう・・・ですか?」

「面白くなきゃダメなんだよ!」 

「・・・はい・・・ところで先生・・・」 

「何。」 

「今度私、新聞のコラムに先生の一句を載せたいんですけど・・・」 

「ああそう。」 

「春愁の吾をとりまく楡の幹、っていう句を・・・」 

「もっとマシな句にしなさいよ。」 

「・・・いえ・・・これがいいんです。」 

「まぁ、好きにしたらいい。」 

「ありがとうございます。」 

「どんどんおちょくってくれ。」 

「・・・いえ・・・おちょくるわけではなくて・・・」 

「なんぼでも、おちょくってくれ。」 

「・・・」

「オレは、おちょくられるのが好きなんだよ!」 

明倫翁は昭和3年生まれの90歳。

老いてますます盛んな

北海道いや日本の俳壇の巨人であり

俳句の天才の一人である。

天才はいつでも新鮮だ。

IMG_1298電話の後

しばらく経ってから

明倫(あきよし)翁から

翁が主催している雑誌「夏至」が送られてきた。

そのページをめくってみると

IMG_1299確かに

俳号が「よだあきよし」になっていた。

俳人が自分の俳号を変えるというのは

普通はなかなか勇気のいることのはずで

心のうちに何かよっぽどの思いがなければ

出来ないことだと思う。

IMG_1301「秋葭」という当時のビッグネームを

「明倫」に変えて

再びその名を全国に知らしめ

今度はまた

「あきよし」として

また今年から

新たな俳人としてのスタートを切った翁。

春の愁いを軽々と振り払い

IMG_1300あくまでも進化する翁。

天才の心の中は

計り知れない大きなエネルギーが

潜んでいるのだ。

と、私は

そんな事を

道新のコラムの中で言いたかったのだが

字数が200字ではとても言い足りなかったので

このブログ記事で

補っておく。


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四月の雪はあたりまえ、と言うけれど・・・

北海道で暮らしているからには、

四月に降る雪などは、

至極当然のことで当たり前 、

驚くべきことでも何でもないのだが 、

IMG_1379やはり、

真っ白に雪が積もっている風景に、

季節が逆戻りしてしまったという感じを抱き、

実際に肌で感じる寒さに震え、 

まだ雪掻きをするのかと落胆し、

それらの感覚が重なって、

四月の雪というのは、

おそらく多くの人にとって

IMG_1380全く歓迎できない

腹立たしく

面白くない

そんな感情を

抱かざるを得ないものではないかと思う。

仕事をしていても

嬉々としている人は誰もいない。

身体に感じる寒さに加えて

重たい春の雪は

身体が濡れやすく

着ている服も湿ってくる。

巡回する診療車のエアコンは

真冬と同じ程度に暖気を全開にしておかないと

IMG_1381身体が冷え切ってしまう。

往診中にメモを取れば

そのメモ紙に雪が舞い込み

たちまち書きづらくなり

紙がふやけてしまう。

IMG_1382道路に積もった重たい雪は

こたこたのワダチになり

ハンドルを取られやすくなり

車のスピードは半減せざるを得ない。

往診の時間もそれに連れてどんどん遅れてゆく。

IMG_1387車に乗って仕事をしている人たちは

みんな同じような気持ちで運転しているに違いない。

昨日は

雪の悪路に捕まって

スリッブしてガードレールに衝突している車が一台

路肩から落ちて動けなくなった車が一台

IMG_1394私が目撃したものだけでも二件あった。

我が町だけでもこうなのだから

十勝管内ではいったい

どれだけの車が立ち往生したのか

心配になってくる。

今日もまだ

昨日降った雪が

解けずに残っている。

今日の出勤も

往診も

気をつけないと・・・



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北海道獣医師会「文芸部」

北海道獣医師会誌の今月号に、

IMG_1371私の拙文が載った。

「支部リレー通信」という欄で、

今回は十勝支部の回り番になったようで、

先月、十勝獣医師会長のA部さんから

「何でもいいから、書いてくれ。」

と頼まれていたのだ。

支部の通信報告欄であるから

28年度の十勝支部の活動報告などを

簡潔に、さっと書くだけでいい

と、安易に引き受けたが

「何でもいいから、書いてくれ。」

などと言われると

書きたがり屋の虫がちょっと騒いで

つい、余計なことを

書き添えてしまった(笑)

書き添えた余計な事、とは

IMG_1372写真に撮った記事を

拡大して見て頂ければわかるのだが

文章の前半は

支部の活動報告。

その後に

蛇足として

余計なことの一つは

私と、敬愛する文芸派獣医師の頑黒和尚氏とで

毎年3月に札幌で開いている「575王国句会」についての宣伝と

その句会を発展させるために

北海道獣医師会「文芸部」の設立の

準備を始めたという事を書いておいた。

文芸部の設立準備などといっても

俳句や漢詩などの短詩文芸に興味を持っていそうな人の

自作品と連絡先を

メールで募集するだけである。

このブログ上でも、ついでに

俳句や漢詩などの短詩文芸に興味を持っていそうな

獣医師や獣医学生諸君にも

連絡先のメールアドレスを公開しておこうと思う


mocking@mint.ocn.ne.jp     安田豆作 宛て


でありますので

どうぞお気軽に作品を

豆作のほうへメールしていただきたいと思う。

どうぞ宜しく!

さらに

余計なことのもう一つは

IMG_11463月から始まった

北海道新聞紙上の

「新・うた暦」のコーナーの宣伝。

これは道内の俳人5人と歌人3人による

俳句と短歌の鑑賞文を

リレーで回すコラムのコーナーで

私はその執筆者の中の1人で

IMG_1249月曜日を担当している。

こちらのほうも

ぜひ、毎日

チェックしていただけると

とても嬉しいです!



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東北海道現代俳句交流会・帯広句会

最近、私が楽しみに通い始めた句会がある。

東北海道現代俳句交流会・帯広句会、

というもので、

偶数月の第2日曜日、

帯広市内の藤丸デパート8階・市民交流センター研修室、

午後1時から4時頃までの約3時間、

たっぷりと現代俳句を堪能できる句会である。

この句会が面白くて、

ちょっと病みつきになりそうなのである。

その訳は、

句会をする面子と、その内容である。

まず、この句会の代表の

png鈴木八駛郎
(やしろう)さんは

東北海道現代俳句会長で、金子兜太主宰「海程」同人。

また、この句会に必ず見えるのが

IMG_1369 3山陰進
さんで

北海道の現代俳句の草分け的な俳句雑誌「氷原帯」主宰。

そしてこの句会の世話人をされているのが

IMG_1370粥川青猿さんで、句集「冬の象」で道新俳句賞、十勝文化賞と

立て続けに受賞され、今北海道で最も注目されている俳人のひとりだ。

青猿さんは俳句雑誌「樺の芽」の主宰でもある。

この3名の先生方は

十勝の現代俳句のビッグ3と言える人たちだと思う。

IMG_1322この3人の方と一緒に

隔月で必ず句会ができるというのは

実はとても幸運なことで

こんなチャンスを

みすみす逃す手はないのである。

その句会の内容は当然

いわゆる花鳥風月には拘わらず

自由度の高い、なんでもありの

バリバリの現代俳句の句会である。

IMG_1366句会の進行も

披講(句の紹介)を簡単に済ませて

それぞれ互いに選句した後は

作者名の名乗りなどは後回しにして

その前に延々と

1句1句に対する鑑賞と批評

そして、それについてのディスカッション

に多くの時間が費やされる句会

というのもまた、刺激的である。

私がいつも出ている

伝統俳句系の句会とは

一と味も二た味も違う句会で

とても新鮮で勉強になる句会なのである。

先日、私がこの句会に投句して

そこそこの評価を受けた一句は


 春風に動き始めし池の中   豆作


お題「縦」では


 縦長に座る社員の春愁ひ   豆作


だった(笑)

私自身はもちろん

地元十勝の若い世代の

俳句に興味を抱いている方々にも

是非この句会に参加して

多くの刺激を受けて欲しいと思って

色々な人にお誘いの声を掛けているところだ。

先日は

帯広在住の30代の若き俳人

三品吏紀
さんも2度目の参加をしていた。

彼も、この句会の面白さに気づいているようだった♪

この記事をお読みの、あなたも

少しでも興味のある方は

私と一緒に

この句会に出てみませんか?

面白いですよー♪


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仔牛の下顎の腫れ(毎度!)

すっかりお馴染み(!?)、

IMG_1205となった仔牛の顎の腫れ。

そのほとんどは、

口腔内の細菌が、

歯肉(はぐき)に感染して、

それが歯肉深く侵入し、

IMG_1207下顎をぷっくりと腫らして膿瘍になる。

私の記憶の中ではすべてが下顎で、

上顎が腫れた仔牛を見た憶えがない。

下顎が好発部位であるようだ。

なぜそうなのか?

IMG_1210それはまだよくわからないが

牛の下顎とその周辺には

細菌感染しやすい構造と

その後の

膿瘍を形成しやすい構造が

IMG_1213きっとあるのだろう。

今回の腫れも

その例に漏れぬ

典型的な下顎の膿瘍だった。

穿刺をして

IMG_1217膿瘍であることを確認し

そのまま頭部を保定して

メスで切開。

中の膿汁を絞り出して

軽く洗浄して

IMG_1219抗生物質を投与して

創部はそのまま開放して

終了。

後日

綿棒に採取した膿瘍の

細菌検査の結果が送られて来た。

αーstreptococcus(レンサ球菌)

BlogPaintが検出された。

仔牛に限らず

牛の体にできた膿瘍を

出来るだけ綿棒で採取して

細菌検査に出すことにしているのだが

症例数がそれほど多くないので

なかなかデーターが集まらず

牛の体表の膿瘍における

感染細菌の菌株の傾向

というものは

まだなかなか掴むことができていない。

っても、まぁ

傾向など掴めなくても

特に困ったことにはならないから

そうなっている訳なのだが。


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ピアス(耳標)落ち牛

「子牛の耳から血が出てます・・・」

そんなFAXが、

和牛生産者の¢さんから送られて来た。

「縫ってもらいたいので、よろしくお願いします・・・」

いつもは

電話での往診依頼が来ることの多い¢農場だが、

この日ばかりはなぜか、FAXによる往診依頼だった。

FAXの印刷でそう言われてしまえば仕方がない、

縫合の準備を完璧にして¢農場へ向かった。

「耳標が取れちゃったんです・・・」

「あー、ほんとだ。」

生まれてまだ数日の仔牛だったが

とても元気が良く

捕まえることさえ大変な

IMG_1324やんちゃ坊主だった。

耳標を付けたばかりなのに

その耳標を何かに引っ掛けて

引き千切ってしまったのだろう。

IMG_1325出血していた耳は

大きく裂けていた。

「このまま放っておいてもいいかなとも思ったんですけど・・・」

「こんな小さいうちから耳裂けじゃあねぇ。」

「そうなんです。このままずっとこんな耳では・・・」

「見た目が悪いと、いろいろね。」

「そうなんです。それに、耳標をまた付けなきゃならないと思うと・・・」

「ちゃんと繕っておいた方がいいですよねぇ。」

「そうなんです・・・」

耳を触られるのを嫌がる仔牛を

セラクタールで鎮静して

IMG_1326縫合に取り掛かった。

乾燥していた創面に

カミソリを当てて

剃毛を兼ねて新鮮創にし

IMG_1327角針で縫合した。

縫合を終えて

アンチセダンで鎮静を解くと

仔牛はたちまち元気になり

IMG_1328ロープを強く引っ張って暴れ始めた。

やはり相当なやんちゃ坊主である(笑)

耳標(ピアス)の落ちた牛は

親牛では良く見かけるが

IMG_1329それらはすべてそのまま放置されている。

それを一々縫合して繕うことは

私は、かつて一度も経験がなかった。

しかし

耳の裂けた牛は

どこか哀れな感じがする。

まだ小さな仔牛の時から

そんな哀れな姿で一生を送るのは

ちょっとかわいそうだと思う。

それに加えて

牛の個体を確認をする場合

耳の裂けた牛は

番号がわからないので

確認に手間がかかる。

牛の外見を良くするためばかりではなく

牛の管理の徹底のためにも

こういう耳の縫合の仕事は

もっとあってもいいのかな

と思った。


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また乳房の出血かと思いきや(!?)

「乳房から出血してるみたいなんですけど・・・」

そんな往診依頼がまたやって来た。

(またか・・・) 

と思って、話を聞いたら、

今回はさすがに、♯牧場の牛ではなく、

♭ファームの牛だった。

♭ファームに到着して

出血をしているという牛を診ると、

今度の出血は

乳房表面を走る静脈からではなく

乳頭の損傷部からの出血だった。

IMG_1281右後の乳頭が

写真のごとく

縦に裂かれる様に

約10儷瓩損傷している。

しかし、損傷は

乳頭管まで達しておらず

この乳頭の生命線は守られているようだった。

「・・・うーん、縫ったらなんとかなるかなぁ・・・」

「これを見つけた搾乳担当の人が、そうしてほしい、って言ってました。」

「・・・いつ頃、見つけたの?」

「午前中の搾乳の時だそうです。」

「・・・じゃぁまだ、半日くらいしか経っていないね。」

「そうだと思います。」

「・・・んじゃぁやってみるか。」

「お願いします。」

「・・・それにしても・・・汚い乳房だねぇ・・・」

「そうですね。」

IMG_1282♭ファームの従業員君は

どこか他人事の様な口振りだったが

言われた事はちゃんとやってくれた。

損傷した乳頭に触ると

牛が嫌がって暴れるので

枠場に入れて治療をしたいところなのだが

IMG_1283この♭ファームには

枠場がない・・・。

仕方がないので

牛を壁ぎわに繋いで

フリーバーンの扉を寄せて来て

細長い三角形の中に牛を挟み

牛が尻を振らないように保定し

IMG_1284そこで鎮静剤をかけて

扉の外側にしゃがんで

そこから手を伸ばし入れて

乳頭の縫合をすることにした。

損傷部の汚れを洗っていると

この乳頭の乳房が

乳房炎になっていることもわかった。

「・・・乳房炎にもなってるから、ちょっと腫れてるね・・・」

「そうですか。」

「・・・縫ったところがちゃんと付くかどうかわからないよ・・・」

「そうですか。」

「・・・このあと、もっと腫れるよ・・・寝床も汚いしねぇ・・・」

「そうですね。」

「・・・抗生物質の注射も打つからね。」

「わかりました。」

相変わらず他人事のような従業員君だが

言った事はちゃんと理解してくれたようだ。

ともあれ

乳頭損傷の応急的な縫合を終えて

道具を片付けて

帰路に着いた。

乳牛を飼う場所が

スタンチョンの繋留から

フリーストールやフリーバーンのような

繋がない形式にする酪農場が増えた昨今

乳頭損傷の事故は

減って来たように思うのだが

最近はそれが

そうでもなくなったように思う。

その理由として

フリーストールやフリーバーンにおける

牛の過密状態

があるのではないかと

私は思っている。


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なつかしき獣医師スタートの日

今から33年も前の話。

昭和60年、

4月1日の朝、

私はM別町農業共済組合の、

新規採用の新人獣医師として、

臨床獣医師としてのスタートを切った。

この日の朝、

診療所に初出勤した私は、

完全に二日酔いだった・・・ 

それはなぜかというと

3月31日の夜

いよいよ明日から社会人として働くのだなーと

胸を膨らませながら

軽く寝酒を飲み

布団に入ってウトウトしていたところへ 

玄関のベルが鳴った

と、思うまもなく 

鍵をかけていない家の中へ

その日の夜間当番だった獣医師のM川所長が

ドヤドヤと入ってきて

「馬のお産だから、すぐ起きろ。行くぞ。」 

と、叩き起こされて

そそくさと助手席に乗って

仕事へ向かったのだった。

馬屋のH坂さん宅に着いて

早速助産開始。

正常位であることは確認できているが

なかなか出てこないので

痺れを切らせたH坂さんと

手伝いに来ていたG嶋さんと

我々2名の獣医師とで

仔馬の足にロープをつないで

牽引介助を始めた。

初産の親馬で

牽引の途中に仔馬が止まってしまった。

仔馬の骨盤が引っかかり

ヒップロック状態になったのだ。

牽引していた4人は

ここぞとばかりに

渾身の力でロープを引いた。

ドッ・・・と

仔馬の下半身が全て現われた時

ロープを引いていた我々4人は

もんどり打って

寝わらの中に倒れこんだ。

「いやーきつかったな。」

「仔っこは大丈夫だべ?」

「オンつか?」

「いや、メンつだ。」

「良かった良かった。」

「まぁ、上がっていっぷくするべ。」

時計の針は午前0時を過ぎ

4月1日になっていた。

「あんたは、今度新しく来た獣医さんかい。」

「はい。」

「そうかい、まぁ飲みなさい。」

「あ、どうも。」

目の前に出されたガラスのコップには

大きなペットボトルから直接注がれた甲類焼酎が

なみなみと入っていた。

(飼主さんから出されたお酒はできるかぎり飲むべし)

そう教えられていた私は

コップに注がれた甲類焼酎をくいくい飲んだ。

H坂さんとG嶋さんはニコニコしながら

私のコップの焼酎がなくなる前に

すぐに注ぎ足してくれるのだった。

しばらくは

M川所長とH坂さんとG嶋さんの馬談義を聞いていた。

教科書に載っていない専門用語が飛び交い

その内容はほとんど理解できなかった。

そのうちに

焼酎が体全体に廻り始め

私の記憶はそこから曖昧になった。

ただ、最後に

ふらふらと酔いながら

IMG_1275心地のよい夜風の中を馬小屋まで行き

先ほど生まれた仔馬が立ち上がって

母馬の乳を探り始めたのを見たことだけは

よく覚えている。

IMG_1277そうして迎えた

4月1日の

朝の初出勤の朝礼は

完全な二日酔いだった・・・

IMG_1280というわけだ。

当時は

M別共済に加入していた馬は

900頭以上いた。

それから

IMG_132333年の歳月が流れ

現在

我が診療区域内で共済に加入している馬は

50頭以下になってしまった。

これからの

IMG_1330我が町の馬産は

そして

十勝の馬産は

どうなってしまうのだろう・・・


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S木牧場さん!

北海道獣医師会雑誌の今月号に、

十勝の広尾町の酪農家、

S木牧場さんが紹介されていた。

IMG_1313「私の職場紹介」

というシリーズの記事だ。

執筆者は、

元十勝NOSAIの獣医師だったNさんで、

このS木牧場に嫁ぎ、そこを職場として紹介している。

私はかつて、Nさんとは

同じ診療所の同僚の獣医師として、

約5年間一緒に働いたことがある。

Nさんが現在の自分の職場

IMG_1310すなわちS木牧場で

主婦として

母として

そして獣医師として

頑張っている姿を

獣医師会雑誌の記事を通して

知ることができた。

読んでいるうちに

一緒に働いていた頃のNさんの面影と

往診に通っていた頃のS木牧場を思い出し

とても懐かしく思った。

IMG_1316と同時に

S木牧場が

多くの困難を乗り越えながら

現在に至り、素晴らしい酪農家として

さらに日々進化しつつあるということが

Nさんの文章の隅々から伝わってきた。

その文章は

理路整然としていて

堅実かつ謙虚

そして

地にしっかりと根を張った

酪農家としての自信と

獣医師としての自負が

至る所で感じられる好文章である。

興味のある方は

特に

酪農家の方々には

是非クリックして

全文を読んでいただきたいと思う。

この文章の中で

最も、私の心に響いたのは

「今後の北海道酪農に望むこと」

という章の中の

「欧米のやり方を真似しても成功しません。『日本の土と草で牛を飼う』を忘れてはいけないと思います。」

IMG_1312というNさんの言葉だ。

この言葉は

酪農家であり

かつ

獣医師である

Nさんだからこその

説得力があり

とても重みのある言葉だと思う。


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