北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

めすばら

DVC00003
Пさんの繁殖検診を終えて

繁殖台帳へ結果を記録していたら

この牛、むむ・・・なかなかの好成績なのだ。

1産目が平成16年6月20日♀。

つづいて翌年から、ほぼ1年1産で今年の7月21日まで無事に産んでいる。

そして、見事に

産子のすべてが♀。

しかも

平成20年は、♀♀の双子を無事に取っている!

写真がボケてしまって恐縮だが、こんな成績を残している牛は、家宝者である。

こういう牛は♀を産みやすい体質を持っているのではないか・・・

いわゆる、雌腹(メスばら)というやつ。

人でも、女系家族というのがあるけれど、牛には遺伝的なそういうものはないのだろうか?

それとも、ただの偶然に過ぎないのだろうか。

最近はX精液(X染色体を持ついわゆるメス精液)が普及してきたが、それでもまだオスが生まれることがある。

現場というのは確実ではないのだ。

繁殖学・遺伝学の教科書に従えば

卵子のほうには、性の決定権はない。

しかし、雌腹がもし本当にあるのだとすれば

それはもしかすると、卵子にX精液を受精させさせやすい卵管内環境や子宮内環境があるのかと思われる。

それとメス精液が組めば、鬼に金棒である。

メス卵管!?、メス子宮!?というのだろうか。

      *    *    *

DVC00001ピンボケ写真、ついでにもう一枚・・・

後の子供にピントが合ってしまった。

左下にいるのは

キリギリスなんですが・・・

キリギリスが鳴くのは雄のみらしい。

雌のキリギリスは、きっと蟻のように働きのもなのだろう(笑)

      草色の弦と弓もつキリギリス

 

ドナドナの現在

「ある晴れた 昼下がり 市場へつづく道」

というところは、現在も昔もあまり変わらないと思う。

ただし、当時の道は、土か砂利の道だっただろうけれど

今はアスファルトの舗装道路だ。

「荷馬車がゴトゴト 子牛を乗せてゆく」

というところは、昔と今では大きく違っている。

a4028b0d.jpg今はもちろん荷馬車ではなく

立派な家畜車である。

昔は子牛をどうやって荷馬車に積んだのだろう。

結構苦労して積んだのではなかろうか。

今では、写真のようにゴムの腹帯のついたロープで子牛を吊り上げる。

fecc4b6a.jpgロープの上にはバネ秤がついていて

体重が一発でわかるようになっている。

吊り上げた子牛を、家畜車荷台の横に取り付けた扉を開けて誘導して積み込む。

写真の子牛の体重は、40kgを指していた。

ホルスタインの子牛にしてはかなり小さめである。

この牛は実は、フリーマーチンだった。

「かわいい子牛 売られてゆくよ 悲しそうな瞳で 見ているよ」

このような情緒は、今の多頭数の飼養形態ではなかなか生まれないのかもしれない。

子牛を毎日のように売っていたら、いちいち感傷に浸っては入られない

というのが普通だろう。

でも

時々、そんなんでいいのかな?と思うこともある。

牛1頭1頭に対する、人の視線や思い入れが、ずいぶん減ってしまった。

牛と人との関係が、薄っぺらくなってしまったのではないだろうか?

さらに

荷馬車がトラックに変わってしまったことも、大きく情緒を殺いでしまった。

写真を撮ったこの子牛は

なかなか可愛いらしい顔をしていた。

「ドナドナドーナドーナ 子牛を乗せて ドナドナドーナドーナ 荷馬車が揺れる」

荷馬車を引く馬の、静かな優しそうな表情が

見たこともないのに、目の前に浮かんでくる。

この哀愁たっぷりの曲と、悲しげな歌詞

これは、迫害されたユダヤ人の歴史を表わしているという説もあるらしい。

一度聞いたら忘れられない。

名曲だと思う。





馬回虫

初診は当歳馬たちに虫下しを飲ませた日の夕方だったという。

疝痛・・・にて上診、T38.3 P66、フルニキシン製剤注。

翌日の早朝、疝痛は治まってきたものの元気がないとのことで再び上診。

症状はほとんど変わらず、排便は僅かに数百グラムのみ。

補液と下剤を投与した・・・。

ここまでが、当番の獣医師からの伝言だった。

この日の昼は飼主の∵さんは病院へ治療と検査に行かねばならず、どうしても不在になってしまうという・・・

が、気になるので様子を見てきてほしいということで

私は、飼主不在の牧場へ、この当歳馬を診にいった。

パドックに放されているので、捕まえようとしても逃げてしまう。

何とか捕まえて、聴診器を当ててみた。

蠕動は弱く、食欲がほとんどない・・・T38.4 P70

直腸内には宿便が百グラム程度のみ。

目にいまいち活気がなく、時々後を振り返るような仕草をした

しかし何かしようとするとすぐ暴れて逃げようとした。

嫌な予感がした。

飼主の∵さんには連絡が取れないので、息子さんの携帯に連絡を入れた。

「なんだか余り良くなっていないようなんだけど・・・お父さんが帰ってきたらまた連絡してくれますか?、私、今夜当番ですから。」

と、息子さんに言っておいて、牧場を後にした。

夕方5時過ぎに、父さんから電話がかかってきた。

「全然食べないんだけど、診てくんないべか・・・」

日が落ちて暗くなった牧場に着いて、症状を診た。

T39.3 P106 R50 全く元気がなく、宿便は百グラム程度。

直腸へさらに深く手を入れてみると・・・

自転車のチューブのような腸管が、所狭しと膨らんでいた

嗚呼・・・これは・・・完全な通過障害・・・だ。

飼主夫婦と息子さんの前で、状況を説明するのが辛かった。

私たちの技術ではもう助ける事が出来ないことを告げた。

ダメもとで開腹手術をしてみるかとも言ったが、∵さんの同意は消極的だった。

私もここで開腹手術へ踏み切る気力がなかった。

「たぶん死ぬ、から・・・運び出しやすい所へ移しておいたほうがいいよ。」

こう言った時の、敗北感、情けなさ・・・

うーん・・まいった。

診療所に帰り、残業していた後輩獣医師の顔を見た。

・・・やっぱりダメでも、後輩達の経験のために開腹手術をしたほうが良かったかなぁ・・・

と、繰り返し繰り返し、思った。

考えていると、隣の地区の当番獣医師から電話が来た。

これから牛の帝王切開をするから、助手を頼む、と。

∵さんの馬の事は、牛の手術中にようやく吹っ切れた。

翌朝、電話が鳴った。

「あ、もし。あの当歳馬、死んだわ・・・」

∵さんの父さんからだった。

昼から、処理場で解剖をして、結果を教えることを約束して、電話を切った。

昼からの往診を少なくしてもらって、処理場へ向かった。

解剖の結果は・・・

馬回虫による腸閉塞。

場所は、回腸の遠位端と盲腸への開口部

駆虫剤でやられた回虫が殺到した所見だった。

∵さんの当歳馬たちは、いつもの年ならば

春の放牧前に、エクイバランペーストを飲ませるのだが

今年は∵さんの父さんが入院してしまいそれが出来ず

やむを得ず、秋の離乳時に、初めて駆虫をしたのだという。

その結果、こういう事故が起きてしまったのだった。

(※ 開腹手術の成功例をhig先生が記事にしてくれましたので、そちらも是非読んでもらって、馬回虫の腸閉塞についての知識を深めてもらいたいと思います。
http://drhig.blogzine.jp/equine/2009/10/post_b539.html?cid=23085468#comment-23085468
技術レベルが非常に高くて、私もたいへん勉強になりました。)

さて

解剖所見の写真は・・・

非常にショッキングなので、続きのページにアップしました。

勇気のある方は、どうぞご覧下さい。

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49歳

3日前に誕生日を過ぎた。

いつの間にやら、49歳になった。

「四苦八苦」という言葉がある。

ウィキペディアによると

四苦八苦は、苦しみの分類だそうだ。

四苦八苦の四苦は、ご存知の通り

「生」。「老」。「病」。「死」。

「老、病、死」が苦しいのは、誰でもわかる。

しかし、「生」が苦しいものであることは、気付かなかった。

四苦八苦の筆頭が、「生」だなんてね・・・

たしかに生きる事は大変だし

生かす事もなかなか難しい。

生きていても、「死に体」になっていることもある。

気付いてみると、思い当たることがたくさん出てくるのだ。

49歳になって、あらためてこの分類が、奥深いものであるな、と感じた。

また、4×9=36 8×9=72 ・・・、で 36+72=108

108の煩悩の数になる・・・というのも、なんだか語呂遊びのようだが

うまく出来てるな、と思った。

若い人は

「早」「漏」「秒」「死」

に苦しむ人もいる?

これも煩悩ゆえなのか(笑)

 

子牛に供花

「生まれたばかりの子牛が、臍から腸が出てしまっていて、苦しそうなんですけど・・・すぐ来てもらえませんか!」

と、酪農家のдさんから電話が入ったのは、ちょうど朝の受付時間だった。

この時間に入る緊急往診は、バタバタしていてかえって出動が遅れてしまうことが多い。

行き先を素早く振り分けて、さあ子牛を診に行こう、と思った矢先にまた電話が入った。

「あのー、さっきの子牛、死んじゃいました・・・。今日出かける用事があっていなくなるんで・・・子牛を牛舎の前に置いておきますから、確認しといてください・・・」

残念ながら、出生後直死してしまったようだ。腸管がどれほど脱出しているのかはわからないが、死んでしまった原因を特定するのは、非常に難しく、おそらくはっきりした事は解からないだろう。

普段通りに、死亡子牛の確認をするためにд農場へ向かった。

死んだ子牛はどこかな、と探す。

普通、死んでしまった子牛はビニールシートなどを被せて置いてあることが多い。

DVC00002目当ての子牛はビニールシートではなく

飼料を入れる袋が被せてあった。

風にあおられないように、石で押さえてある。

と、その上を良く見ると、何かが乗せてある。

「!。」

なんと、アジサイの花と、名前はわからないが野の草が・・・

供花・・・だった。

死んだ子牛を数え切れないほど見てきた私だが

今日のように、花を添えてあるのを見たのは初めてのこと。

дさんの、優しい気持が伝わってくる出来事だった。

架空手術のとばっちり

先月末まで私や同僚の獣医師達は、少々ストレスの溜まる仕事をさせられていた。

「ここに過去半年間に手術をした牛のリストがある。往診の合間に、手術歴のある牛の手術痕を確認して、本当に手術をしたかどうか確かめよ。」

という命令だった。

何でそんな事をしなければならなくなったのかというと

ある事件が発端になっていた。

関東地方の某県の某開業獣医師が、某牧場の牛の第四胃変位の手術をした。

その牛は共済に加入していたので、保険の診療代を請求をした。

ところが後になって、実際は手術をしていなかった事がわかった、というのだ。

すなわち、架空診療(カラ手術)が発覚したのだ。

これに対して、農水省は黙ってはいなかった(のだろう、きっと)。

日本全国の、保険で手術をした牛に対して、架空診療をしていないかどうかをチェックすることになった(のだろう、たぶん)。

で、そのお達しが、下々の診療所まで降りてきて、手術料の請求と実際の手術の有無を、確かめることになった。

保険金は半分が加入農家負担、残りの半分は国民の税金である。

不正請求がないかどうか確かめなければならないのは当然だし

カラ手術で架空請求をした開業獣医師を許すことは出来ない。

で結局、こんな獣医師がいるおかげで、真面目に手術をしている我々さえも、お上から疑いをかけられてしまったのだ。

獣医師として、全く遺憾なことであるが

しかし、同じような仕事をしている以上、同じ疑いをかけられるのも仕方がなく、情けないと言わざるを得ない。

ただ・・・

ストレスを感じるのはその先なのである。

手術の有無をチェックするのも、我々がやることなのか?

不正の疑いをかけた獣医師(我々)に対して、「お前の請求は信用できない」と言うのならば

その本人にチェックをさせてどうするの?そんなぬるいチェックでいいのか?

農水省自身か、あるいは第三者を派遣してチェックしなければ、このような不正を摘発する事は出来ないのではないだろうか。

ただでさえ診療で忙しく農家回りをしているのに、さらに時間を使って自分達でした手術の手術の痕を、自分達で確認して回るなどという仕事は

馬鹿馬鹿しくもあり、まったく余計なストレスの溜まる仕事以外の何物でもない。

手術リストにある牛を、飼主に捕まえてもらうだけでも、大変な仕事なのである。

おまけに、牛の腹を覗き込んだだけでは手術痕が判りづらく、危険を冒して腹の下にもぐり込み、手で触れてみて初めて判る手術痕も多い。

そんな現場の状況を、お上はわかっているのだろうか?

我々がイヤな思いをしてチェックし、ようやく出来上がった確認シートを

タダで受け取って、右から左へ提出し

「不正はありませんでした。」と、報告するお役人の顔を想像すると、またストレスがたまってくる。

     *    *    *

鳩山内閣になって、農水相も赤松さんとやらに変わった。

官僚主導から政権主導の政治へという流れが動き出したようだ。

FTAなどの大きな問題に対して、難しい舵取りを強いられそうな農水省。

大変ではあると思うが

小さなことでも、現場の声に耳を傾ける事を

忘れないでほしいと思う。

歳時記のすすめ

歳時記を読んでいると、じつに様々な物・現象・行事・動植物が季語として存在し、そこから無数の俳句が生まれていることがわかる。

俳句とは、季語に託した叙情詩である、と我が俳句の師原田青児先生は仰っている。

そんな叙情詩のエッセンスが満載の歳時記というものは、世界に誇れる書物ではないかと思う。

日本人の精神世界がこの書物に凝縮されているのだ。

四季がはっきりと、そして豊かに繰り返す中で

天体や気象現象の意思を畏れ

鳥獣や魚や昆虫の命を憐み

樹木や草花の心を感じ

そして人事の哀れを詠う

そこには、天体も鳥獣も草花も人間もはっきりとした境界線なく存在している。

それら全てに同様な意思と命と心が宿っているのだ。

全てが自然の一部であり、全てが同様に生きていて、区別なく尊いのだ。

歳時記を読めば読むほど

私はそんな世界観を感じるようになった。

植物愛護そんな視点で周りを見ると

たとえば、某動物愛護団体・・・

ある種類の動物ばかりを特別に保護しようとする行為などは

全く偏狭なものに見えてくる。

植物愛護者には過激な人はいない。

またたとえば、ベジタリアン・・・

植物は食べるが動物は食べないという行為も

同じ命なのにどうしてなのか

全く理由がわからない。

もし、我々人間に似通って赤い血が流れる生き物だから殺して食すのは可愛そうだ、という発想があるのなら

それは幼稚な発想だろうと思う。

植物に対して失礼ではないか。

もちろん、自分だけそうしているならかまわないけれど・・・

そんな人たちに、歳時記を読んでもらいたい、と思った。


PGF2αの効果(乳牛と重輓馬の比較)・(3)

くどいようだがもう一度、乳牛の平成18年度のデーターを見ると

 PG投与件数              9,001
 投与後7日以内授精件数      5,656
 授精率                 62.8(%)
  受胎率                 44.0(%)〔2,491/5,656〕
 妊娠率                 27.7(%)〔2,941/9,001〕
 授精した日のピーク          投与後3日目


釧路地区NOSAIの先生方がまとめられたものだ。

PGF2αを日々使っているものとして、この数字はとても参考になる。

この論文にはさらにつづきがあり

酪農家別の数字が出されている。

 農家   投与頭数  授精率(%)  受胎率(%)  妊娠率(%)

   A           310             66.8             37.7             25.2
   
    C             221             67.9             50.7             34.4

    H             157             78.3             28.5             22.3

    L              132             37.1             65.3             24.2

総投与数は9001頭となっているから、上記4件はその一部なのだろう。

多くの酪農家の中で、特徴的な家の数字をピックアップして出しているのかもしれない。

Cさんの妊娠率は素晴らしい。

PGF2αの投与効果が最も上がっている家といえる。

Hさんは、とにかくPGF2αを打った牛には何が何でも授精するようにしているようだ。

しかし授精するわりには受胎率が低く、PGF2αの効果が上がっていない。

想像するに、Hさんは自分で精液を持っていて、自分で授精している酪農家ではないだろうか?

自家授精している家では、Hさんのような数字になりやすいと私は思っている。

Hさんは授精の方法やタイミングをもう少し見直してみる必要がありそうだ。

一方、Lさんの授精率は、Hさんの半分以下である。

こういう家は発情発見の方法に問題があるかもしれない。

しかし、Lさんの牛の受胎率は非常に良い。

これは、発情の発見はしても、授精に慎重になっている姿が想像できる。

授精の適期は掴んでいるようだ。

しかし、PGF2α投与の適期を掴んでいるとは言い難い。

Lさんの牛にPGF2αを打つときは、もう少し黄体の確認をきちんとやる必要がありそうだ。

さて

私の重輓馬でのデーターは、例数が少なくて、農家ごとの数字は出していなかった。

だが、乳牛のデーターと同じように、農家ごとの効果の違いは感じていた。

パーセンテージや確率といった数字は

各々の事象が、コインの表裏ややサイコロの目ように、同じように起こることが大前提となっている。

『同様に確からしい。』という懐かしい言葉(笑)を思い出す。

しかし

その数字について、ものを言う場合

畜産の現場では、牛や馬、そして飼主はみんな個体差や個性があり

『同様に確からし』くはないのである。

いろいろな数字を出しても、数字の遊びに終ってしまう恐れが出てくるのである。

今回のデーターでは

PGF2αのワンショットで、およそ4頭に1頭が受胎する、という数字が出ているが

その効果を、今後より上げてゆくための対策事項は

それぞれの農家で全然違ってくる。

私のデーターも、もう少し役立つものにするには

各農家ごとの数字までちゃんと出しておくべきだったのだ。

今回のデーターの比較をしてみて

このことを付け加えておきたかった。


PGF2αの効果(乳牛と重輓馬の比較)・(2)

さてもう一度、乳牛でのデーターを見ると

 PG投与件数              9,001
 投与後7日以内授精件数      5,656
 授精率                 62.8(%)
  受胎率                 44.0(%)〔2,491/5,656〕
 妊娠率                 27.7(%)〔2,941/9,001〕
 授精した日のピーク          投与後3日目


重輓馬のデーターを見ると
 
 PG投与件数                242
 投与後21日以内交配件数      125
 交配率                  51.7(%)
  受胎率                 48.8(%)〔61/125〕
 妊娠率                 25.2(%)〔61/242〕
 交配した日のピーク          投与後6.5日目

となっている。

繁殖障害でPGF2αを投与する時

牛の場合、馬と違って

直検での黄体の触診は容易であるから

PGF2αを投与する場合はおそらくほとんどの場合

直検で卵巣に黄体を確認していると思われるが

この乳牛のデーターには、直検による黄体の確認があったのかどうかは書かれていない。

私の馬のデーターはもちろん黄体の確認をしていないデーターだが

それと、成績が似ていることから考えると

この乳牛のデーターも黄体の確認をせずにPGF2αを投与して得た成績も入っているかもしれない、と推測される。

それはそれで貴重なデーターだが

黄体の確認をしっかりとやってから、PGF2αを投与すれば

おそらく、このデーターよりももっと良い成績が得られたのではないか、と推測される。

あくまでも推測であるが・・・

黄体の確認という行為は、今後のPGF2αの投与を成功させる為には、必須の事項になってくるはずである。

やはり、エコーカメラを常に持ち歩くなど、直検の精度を上げる方向で

これからの繁殖障害の診療は発展してゆくのだろうと思う。

「エコーを使い始めたら、もう手放せませんよ。」

ある牛の開業獣医師の言葉が忘れられない。

ともあれ、黄体の確認のほかにも

PGF2αによる治療の効果を上げるためのポイントは、まだまだいっぱいあるようだ・・・

<この項もうちょっと続く>

PGF2αの効果(乳牛と重輓馬の比較)

(社)北海道家畜人工授精師協会 発行の雑誌

「繁殖技術」 Vol.29,No.2,September 2009

に、興味深い論文が出ていた。

『乳牛の繁殖障害治療におけるPGF2αの投与効果の現況』

 高橋俊彦ら (釧路地区農業共済組合・繁殖部会)

というタイトルで、乳牛の現場でのPGF2α投与後の効果を検証している。

平成17年度と18年度に分けてあるが、ほとんど変わらないので18年度のみを、かいつまんで記載させていただくと

 PG投与件数              9,001
 投与後7日以内授精件数      5,656
 授精率                 62.8(%)
  受胎率                 44.0(%)〔2,491/5,656〕
 妊娠率                 27.7(%)〔2,491/9,001〕
 授精した日のピーク          投与後3日目

ざっとまとめるとこうなる。

実は私もかつて、ほとんど同じような項目を

重輓馬を対象にして調査した事がある・・・のは以前にも書いた。

私のデーターは平成8年から12年までの5年間の述べ件数で

例数もずーっと少ないけれども・・・

それをざっとまとめて記載すると
 
 PG投与件数                242
 投与後21日以内交配件数      125
 交配率                  51.7(%)
  受胎率                 48.8(%)〔61/125〕
 妊娠率                 25.2(%)〔61/242〕
 交配した日のピーク          投与後6.5日目

となっている。

上の乳牛でのデーターと

下の重輓馬でのデーターと

比べてみると、授精率、受胎率、妊娠率、は

それぞれ、かなり似た数字になっているのではないだろうか。

そして、違っている数字は、授精(交配)までにかかる日数だ。

乳牛にPGを打つとおよそ3日後に発情が来るが

重輓馬にPGを打つとおよそ6.5日後に発情が来る

そして、その発情で受胎する確率は

乳牛も重輓馬も、おおよそ25パーセント

すなわち、4回のチャレンジで1回成功する

ということが、これらのデーターから読み取れると思う。

乳牛にPGを打つことは

牛の臨床現場で働く獣医師ならば、誰でもやっている事だと思う。

だが、重輓馬にPGを打った経験がある獣医師は少ないと思う。

このデーターを比較すると

投与後の授精(交配)適期は大きく異なるが

授精(交配)率、受胎率、妊娠率には大差がないことがわかる。

両者を非常に大雑把に比較してみたが

なかなか面白いデーターだな、と思った。

酪農地帯では、まだ僅かながら

しぶとく重輓馬の生産をしている人たちが居る。

そんなところへ往診に行く機会があったら

是非この比較データーを、参考にしていただきたいと思った。

 <この項つづく>

面疔(めんちょう)

面18月の始め、なんだか鼻が痛くなってきたなと思ったら

大きなデキモノだったという。患者名はあえて記さない(笑)。

にきび(毛包炎)よりもでっかい、面疔になってしまった。

面2病院へ行って、抗生物質の錠剤と軟膏をもらってきた。

セファ系の抗生物質だった。

炎症の起きている部分はにきびより広く

面3複数の毛穴から炎症性のショウ液が吹き出し

それが痂皮(かさぶた)になり

顔を洗ったりすると、また剥がれる。

面4そんな状態を繰り返しながら

病巣部は次第に小さくなり

痛みもそれに連れて少なくなっていった。

面9顔面の異変というのは、隠しようがない・・・

「赤ハナ先生ですか(笑)」、後輩からはひやかされ

「真っ赤なオ・ハ・ナ・の♪ってかい(笑)」、往診先のかぁさんに言われ
面5
また、気付いているはずでも、遠慮して、鼻のことには触れないでいてくれる優しい飼主もけっこう多かった。

でも、それはそれで、なんだか照れくさかった。

面6「めんちょうってさ、ばい菌が脳に入ってて死んじゃう事あるんでしょ・・・」

と、心配してくれる人もいたが、それは抗生物質のない頃の話だろう。


面7「おまえ、札幌行っていかがわしい事してきたんじゃないの?」

とひやかす先輩獣医師もいた。

鼻骨が侵されてハナモゲラになるという梅毒の末期症状だ。

面8だが、これはもちろん昔の遊郭時代の話。

最後の写真は、9月6日現在。

若干の瘢痕が残っているが、ほぼ治癒。

全治約1ヶ月、貴重な経験をさせてもらったけれど

顔は清潔にしておかねばイケナイですね・・・(省)

マイ・グラインダー

先日、Бさんのホルスタインの蹄病を2頭診療した。

蹄が非常に硬かったので、蹄刀で削るのを止め

Бさんの家のグラインダーを借りて、蹄を削り

2頭の蹄底潰瘍の治療を終了した。

数日後・・・

先輩獣医師のMさんが来て言った。

「この間Бさんとこの蹄、グラインダー借りて治療したの安田?」

「はい。」

「なんかね、今度来た獣医、グラインダー持ち歩いてないのか、って言ってたらしいぞ。」

「えっ。俺は、いつも借りてやってるんですけど・・・」

「なんかね、借りたのが気になってたらしくてね、ちゃんと蹄のこと診れる獣医なのか?って言ってたらしいぞ(笑)」

「えっ。そーなんですか・・・いやー・・・まいったな。」

うちの診療所には、蹄病治療用のグラインダーは常備してあるが

私はそれをいつも持ち歩いているわけではなかった。

畜主のグラインダーをいつも借りて事を済ませていたのだった。

『ちゃんと蹄病を診れる獣医師なのか?』

なんてことを、飼主に言わせているようでは

・・・ううむ・・・プロとして失格だ・・・

そこで、早速グラインダーと粗目のディスクを(自腹で)購入した。

グラインダホームセンターでいろいろ物色すると

値段はピンからキリまである。

買ったのはキリの方(笑)。

なんと、1480円!

他のメーカー品は皆5000円以上するのに・・・

ちょっと安すぎないかなー、と不安になったが

壊れたらまた良いやつを買えばよい

そう思わせるほどの安さだったので、これにした(笑)。

ところで

我が診療所では、グラインダーを持ち歩いている獣医師と、持ち歩いていない獣医師と、両方まだいるようですが

これをお読みの牛の臨床家の皆さん・・・

みなさんは「マイ・グラインダー」お持ちですか?

エジンバラ大学生

エジンバラ1英国のエジンバラ大学と日本の北海道大学の獣医学部が

今年から始まった交流事業ということで

両大学の学生達と先生が、大動物(牛馬)関係の農場や施設の見学にやってきた。

午前中は和牛の生産牧場と

エジンバラ2酪農のメガファーム

昼からはうちの診療所で、NOSAIの説明会と

手術の見学をしていった。

写真は四胃変位の手術風景。

同僚のH君とOさんが術者として頑張っていた(笑)。

北海道と英国のエジンバラの在るスコットランド地方は

気候風土的にも共通点が多いらしい。

北大の学生は英国の大学や大動物の生産現場へは今までも行っていたらしいが、その逆はなかったそうだ。

手術を食い入るように見ていた学生もいれば、手術を見ずに隣の準備室で座って、日本の観光ガイドブックを開いている学生もいた。

一行は今日中に日高山脈を越えて浦河へ泊まり、明日はJRAの育成牧場などを見学して帰る予定だという。

彼らは日本の北海道の牛馬の生産現場を見て、どんな感想を持つのだろう。

いつかゆっくり聞いてみたいものだ。

気腫胎

「あ、当番の獣医さんですか?あの、お産で、逆子で引っ張ったんですけど・・・なんか乾いちゃってて・・・子牛がおなかから半分に千切れちっゃって・・・」

電話が鳴ったのが午前4時すぎ、Иファームの従業員の∀さんだった。

「・・・わかりました、すぐ行きます。」

朝一番の往診の稟告としては、かなりハードな仕事になるのを覚悟しなければならない稟告だ。

牛の臨床獣医師にとって、最も好まれない仕事の一つ・・・

そう、気腫胎。

到着すると、寝て呻っている親牛の後方には、子牛の臍から下だけの下半身が横たわっていた。

親の外陰部からは一見後産に見える袋状のものがぶら下がり、手にしてみるとそれは子牛の胃袋だった。

「あー、これはもう死んじゃってて、少し腐ってきてたんだね。」

尾位の気腫胎だった。

腫れがひどくて、そのまま牽引したら上半身がつかえてしまい

腐敗により、胎児の各組織が脆弱になっていたので

下半身だけ千切れてしまったのだった。

「うーん、とりあえず、まず粘滑剤を作るから、バケツにぬるま湯持ってきて。」

粘滑剤パナカヤクF気腫胎の難産になくてはならないのが粘滑剤である。

いろいろ出ているようだが、私は「パナカヤクF」という飼料添加物をスピッツ間に小分けにして持ち歩いている。

牽引する力が産道の摩擦力よりも大きければ、胎児を出せるわけだから

摩擦力をできる限り小さくする事は、引っ張る前にすべき処置として非常に重要である。

バケツのお湯に溶いた粘滑剤を、カテーテルで胎児と子宮の間隙に、できるだけ広範囲にたっぷりと注ぎ込む。

鈎とチェーンマジックハンドそうしておいて、胎児の牽引に取り掛かる。

ところが・・・鈎をかける良い場所がない。

とりあえず、胸椎の間隙に写真左の鈍鈎をかけて引いてみた。

肝心な所で椎体が外れて、ご丁寧に肋骨1本と椎体一つがもげてくるのみ。

次に胸椎の一部や、皮膚を束ねたりして、写真右の鈎にかけて引いてみた。

皮膚も結合組織も弱くて裂けてしまい、これもダメ。

そうこうしているうちに、また胎児に乾燥感が出て来たので

再び粘滑剤を注入・・・こんな繰り返しを三度。

三度目の注入の時に、子宮との間隙に余裕が生まれ、胎児の左肩甲骨に触れることができた。

方針を変更して、鈍鈎を肩甲骨前縁に掛けてみた。

「滑車使ってゆっくり引っ張って・・・」

胎児の上半身が少しずつ出てきた、が、肩甲骨がめりめりっと皮膚を破って露出してきた。

「ちょっとストップ・・・チェーンに変えるから。」

露出しかけている肩甲骨の上腕骨との関節部分のくびれに産科チェーンをかけて

再び粘滑剤をたっぷりと注入して、ゆっくりと牽引。

ずぼずぼっ・・・と左前肢の肘が出てきた、と同時に

そのまま、肩が抜けて余裕ができたのか

丸々と腫れ上がった頭と右前肢がくっついたまま

その全貌が、産道を抜け出てきた。

「・・・いやー、きつかったね・・・」

「こんなの僕初めてですよ・・・」

「俺もね、胎児が千切れたのは何頭かやったけど、今までのは背骨を引っ張ったら出てきたんだよね。今日みたいに背骨がもげちゃって使えなかったのは、初めてだなー・・・」

まさかのために、もう一頭胎児がいないかどうか手を入れて確認し

親牛の子宮内と、筋肉内に抗生物質を投与し

道具を片付けて、足を洗い

親の耳標番号と授精月日(20年12月1日)を確認して

車に乗ったのは、6時ちょっと前だった。

北欧から一句

DJ我が俳句を連載させていただいている酪農情報誌

『Dairy Japan』

は、いつも仕事の合間に読んでいる。

一字一字に目を通す事で、なんとか酪農の話題には遅れをとらずについていけているような気がしている。

そんな中で最近

『デーリィ・ワールド・ウオッチ(海外情報)』

のコーナーが気になっている。

アメリカ・カナダ・ヨーロッパ・北欧・オセアニア・中国、などの記事が出ているのだが

私が注目をしているのは『北欧だより』のレポーター

スウェーデン在住の山?一大(やまざきかずお)さんだ。

記事の始めや終わりに必ず

一句が添えてあるのだ(笑)

初出の2008.10月号には

 8月といっても日本の秋かなと思う

それから今月号までの作品を拾ってみると

 いつ降るの雪の日を待つスウェーデン

 モーでなくムーといいますスウェーデン

 春遠し寒さ深まるスウェーデン

 寒いのか牛も牛舎で冬すごし

 やっと咲くスノードロップ春近し

 肌寒くコートを脱げぬ北欧の春

 お天気になってくれよと夏至まつり

 ムシ暑いコトバはないと北の夏

いやー、これはもう立派な俳句になっていますね。

レポート記事も、もちろん面白いが

それよりも、山?さんの今月の一句が楽しみになっている私。

北欧の気候風土がしのばれて、いい味出てるんですよね。

私も負けぬよう頑張らないと・・・?!

山?さんとは、もちろん面識もなにもないのだけれど

ちょっと同じ匂いを感じる方なので(笑)

DJ関係者の方かどなたか

連絡先を教えて頂けないでしょうか・・・

万馬券

十勝で臨床獣医をしていた同僚のWさんは

どうしても馬を中心とした仕事をしたいということで

今年の春から日高へ鞍替えをした。

先日、ひょっこりと我が家へやってきて、サラブレッドの繁殖の事など、いろいろ話をしてくれた。

なかなか充実した日々を過ごせているようでよかった、と思った。

万馬券
その時に持ってきてくれたお土産

銘柄は北海道産「ななつぼし」。

それを万馬券とは

なかなか、ストレートなネーミング・・・

これも、馬産地日高ならではだなー(笑)。

日高地方は馬はもちろんだが

米も穫れるし、魚も獲れる。

したがって寿司がとてもうまいそうだ。

私もかなり昔、静内で寿司を食べた記憶があり、たしかにうまかった。

米がほとんど穫れない十勝の人達は、米の穫れる地方から米を買っているわけだが

この辺の小売店に出回っている米は、ほとんどが旭川周辺すなわち上川地方の米である。

日高産の米はほとんど見かけない。

収量も違うのだろうけど、天馬街道を越えて運んでくれば、上川よりも日高の米のほうが運賃安いんじゃないのかな?どうなんでしょう。

      *      *      *

最近余裕がなくて、馬券を買わなくなってしまったが

熱中していた頃は毎月計1万円くらい、馬券を買っていたときもあった。

年間で12万円以上馬券につぎ込んで、リターンは・・・微々たるものだった、そんなもんです(笑)。

万馬券はたった一度だけ取ったことがある。

あれは確か、7年くらい前の安田記念、外国馬同志のワンツーフィニッシュだった。

遊びに来ていた子供達の前で我を忘れてテレビ観戦。

決まった瞬間、派手なガッツポーズをして

その次の日、子供達の父さん等から、「おめでとう!万馬券取ったんだって?」

とか言われて、照れくさかった覚えがある。

続々・デントコーン畑

デントコーン2少々しつこいが

また、デントコーンである。

往診に行くと、この話題が必ず出るので仕方がない。

それも大方、「今年は悪いねー」、なのである。

8月3日の上の写真から
デントコーン4
約3週間たった今日の写真が下。

今朝は天気が悪く

出た穂が風になびいていた。

幹が細く、色も淡く、実が小さい感じがする。

この辺は海から数キロ足らずのところなので

十勝地方の中では、最もコーンを収穫するには厳しい地方だ。

それでも、マルチをかけて手入れした畑は、背丈が揃っている。

デントコーン
これは同じく8月3日の

手入れが悪いほうの畑。

雑草が多いので心配だったが

下の写真を見ると

3週たてば、それなりに伸びているようだ。

デントコーン5少々の雑草より

デントコーンは伸び勝って

雑草が隠れてしまうようだ。

しかし、収穫してサイレージにしたときの栄養価には

やはり影響してくるだろう。

8月初めに、「今年のデントコーンはいつもの7割だなー・・・」と、言っていた◆さん。

今日会ったら、「今年のデントコーンはいつもの6割だなー・・・」と、この3週間で、下方修正をしていた。

 伸びきって山を隠すや黍畑

という句を以前作ったが・・・

今年はそうならない畑も出てきそうだなー

トリカブト

トリカブトお盆を過ぎて

採草地や放牧地の縁などには

色々な草の花が

様々な様相で

力強く、時にはつつましく

咲き始めている。

そんな中

もっとも鮮やかに咲いているのは

トリカブトだろう。

ご存知の通り、根にはアコニチンという猛毒があり

古人はこれを使った毒矢をつくり、狩をしたといわれている。

でも倒した動物には毒が廻っているから、

その後の獲物の解毒はどうしたんだろうか?!

ともあれ

毒のあるものは美しくて魅力的だ。

トリカブト(鳥兜)は歳時記では、秋の季語になっている。

 牧場に人集りあり鳥兜

放牧の牛や馬がフラフラになり

毒草による中毒が疑われる症例に遭遇することがある。

十勝の南部地区へ異動になってから

放牧の牛馬が多いせいだろうか

2年足らずで、中毒症状の疑われる症例に

私も既に遭遇した。

しかし、それが毒草によるものかどうか

確定診断することは、とても困難なのである。

ポニーのインフルエンザ予防接種

b9ddf729.jpgJAの馬担当のTさんから、ポニーのインフルエンザ予防注射をしてほしいと連絡が来たのが、ちょうど1ヶ月前だった。

「それがですね、飼い主が町の人でね、来月の馬市場で売りたいらしくて・・・飼っている場所も町の自宅の小屋らしいんですけど・・・説明しづらいんで・・・地図、FAXしますね。」

現場に到着して、注射を打ち、飼い主の●さんに言った。

「この馬の登録証あります?」

「いや・・・なんもないんだわ。」

「じゃ生年月日とか、わかります?」

「いや・・・それもわかんないんだわ。去年買ってきたんだけどさ。」

「買ったところで、生年月日とか確認しなかったの?」

「いや・・・確かこの馬4歳なのよ。」

「明け、4歳?」

「うん。」

「じゃぁ平成19年生まれだ。何月に生まれたとかは、わかんない?」

「うん・・・▲さん(この馬の売り手)も、いつ生まれたんだかよくわかんねって言うし。」

「・・・、あー▲さんとこね。あそこはマキ馬だしねぇ・・・。」

「生年月日、適当に決めといてよ。」

「・・・。」

そんなやり取りで先月、第一回目のインフルエンザ予防接種
を終了した。

     *     *     *

そして、昨日。

四週間後の第二回目の予防接種を予定していたので、●さん宅へ時間あわせの電話を入れた。

「もしもし・・・NOSAIの安田ですが、今日昼からポニーの予防接種、二回目を・・・」

「・・・あ、あぁ・・・。あのポニーね、売っちゃったんだわ。」

「・・・。」

「O町の△さんにね、売っちゃったんだわ。」

「・・・そうですか。じゃ、今日はキャンセルってことですね。」

「はい・・・どーも、すみませんねー」

・・・うーむ・・・

小型馬の生産現場っていうのはどうも・・・

指導機関としての責任もチョッと感じるけれど・・・

     *      *      *

市場を通さない小型馬の個人売買に際しては、インフルエンザの予防接種は義務ではないようだ。

買い手が条件をつければ別だけれど。

馬インフルエンザは、競馬場で流行すると、開催が出来ないので損害が大きいが

生産現場では、それほど深刻な病気ではない。

ましてポニーの場合は、愛玩動物だ。

でもせっかくの予防意識改革のチャンスでもある。

この際、インフルエンザの単味ではなく

それよりずっと恐ろしい破傷風と日本脳炎との

3種混合ワクチンの予防接種をしてほしいというのが、私の願いなのだが

なかなか浸透してくれないなー・・・

御三家

虻5昨日の午後は、公共牧場で牛の妊娠鑑定。

ここ数日、天気が良く気温がぐっと上がり暑くなったら

・・・虻がすごい!

一枚目の写真は『メクラアブ』

この辺では最も良く見られる虻だ。

人が刺されるのも、この虻に刺されるのが一番多いと思われる。

虻3メクラアブよりだいぶ大きなサイズで

目が緑色の大きな虻が

『ウシアブ』だ。

昨日行った公共牧場はこのアブが多かった。

メクラアブほど刺さないけれど

診療の準備をしている時に

こいつが5匹も6匹もまとわり付いてくると

うるさくて仕方がない。
虻4
3枚目の写真は

ウシアブよりさらにでかくて

オレンジ色をした『アカウシアブ』。

スズメバチのような色模様をしていて

こいつがやってくると大きな羽音がして
腰が引けてしまう。

この虻を「B−29」と呼んでいた馬屋の親父がいた。

ウシアブは牛の腹側、アカウシアブは牛の背側を主に狙うのだという。

そんな役割分担しなくていいのにねぇ(笑)

もちろん人も刺すらしい。

虻1虻の飛び方というのは

蜂や蠅にくらべると

どうも品がないというか

乱暴というか

それでいて

手や帽子などで叩くと

すぐヒットして

あっという間にやられてしまう

間抜けさというか

世間ズレしていないような

可愛らしい所もあるような気もする。

ま、でも

私は基本的に昆虫は苦手です・・・(笑)
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