北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

マルちゃんVSペヤング

東洋水産(マルちゃん)の、

袋入りインスタントラーメンの話題が出たついでに、

インスタントやきそばのことを少し。

数年前から、マルちゃんのインスタントやきそば、

すなわち「やきそば弁当」の勢いが止まらない。

北海道限定販売であったはずの「やきそば弁当」が、

今や、本州のスーパーやコンビニにも見られるようになった。

それも「やきそば弁当」1種類ではなく、

b8d4002d色々なバージョンの「やきそば弁当」が、

北海道はもちろん、本州にも、

販売攻勢を仕掛け続けているようなのだ。

大盛り、デカ盛り、激辛、濃い目、たらこ、塩味、・・・などなど

様々な「やきそば弁当」ファミリーが

これでもかと、店の棚を占領するようになった。

その大攻勢の原因というか

引き金になったのは

本州のインスタント焼きそば界を牛耳っていた

「ペヤングソースやきそば」に

数年前に発生した

異物混入事件だったのは

まだ記憶に新しいのではないかと思われる。

その数か月後から、

マルちゃんの「やきそば弁当」シリーズが

やたらと沢山

スーパーやコンビニの棚にあふれるようになったのだった。

「ペヤングソースやきそば」の足元を掬うような

マルちゃん「やきそば弁当」の鋭い販売攻撃に

ペヤングはじわじわと負け続けて

シェアを減らしてしまうのか・・・

正直ちょっと

心配をしていた。

ところが

先日、何気なく

我が町のいつものコンビニで買い物をしていたら

レジの近くに

驚く光景があった。

なんと

IMG_1239「ペヤングソースやきそば」

が売られているではないか!

本州でしか買うことのできなかった

「ペヤングソースやきそば」が

地元のコンビニに堂々と登場したのだ。

しかも

さらに驚くべきことに

いつものペヤングのパッケージではなく

表に大きく「納豆」の文字!

IMG_1240「ペヤングソースやきそば」の納豆バージョンなのだ。

マルちゃんの「やきそば弁当」フアミリーも数々あれど

納豆のバージョンは見たことがなかった。

マルちゃんの東洋水産も、この納豆バージョンには

きっとびっくりしているに違いない。

ここ数年さんざん

北海道のインスタント焼きそばの雄・マルチちゃん、に

攻められ続けていた

本州のインスタント焼きそばの雄・ぺヤング、がついに

反撃の狼煙を上げたのだ。

私は思わずこの

新しい納豆ペヤングを数個カゴに入れ

家に帰って早速食べて見た。

IMG_1241納豆とソース焼きそばの

斬新なコラボレーションである。

乾燥した納豆が

かやくに加えられて

食べる直前にそれをふりかけ

IMG_1242納豆を混ぜるようにして

麺にソースを絡めてゆく。

納豆独特の香りはそれほど強くなく

麺に絡んだ納豆の粘り気が

口当たりをスムーズにしてくれる。

IMG_1243実に、新しくって食べやすい

「ペヤングソースやきそば」

の健在ぶりに

エールを送りたくなる

美味しいやきそばだった。

マルちゃんVSペヤング

IMG_1814これはまだまだ

見ごたえのある攻防戦

いや

食べごたえのある攻防戦が

続きそうな予感がする。


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IMG_2775 







 

ダブルラーメンとハイラーメン

袋入りのインスタントラーメンは、

私のような昭和30年代生まれにとって、

切っても切れない、

深い関係にある食品ではないかと思う。

インスタントラーメンと、

我々の世代の日本人は、

共に育ち、

共に成長してきた、

と言ってもいいと思う。

その長い歴史(?!)の中で、

袋入りのインスタントラーメンは

色々なものが発売されながら

あるものは消え

あるものは生き残り

又あるものは名作として長く愛されてきた。

私の記憶に残るもので

袋入りインスタントラーメンの名作を

挙げるとすれば

「サッポロ一番・みそラーメン」

「明星・チャルメラ」
 
「日清・チキンラーメン」 

などが思い浮かぶ。

さらに、先日

これに加えねばならない名作インスタントラーメンに

はからずも遭遇してしまった。

IMG_1074それは

「ダブルラーメン」と「ハイラーメン」。 

どちらも東洋水産の製品

マルちゃんである。

IMG_1071そして

ダブルラーメンは北海道限定販売

ハイラーメンは静岡県限定販売 

なのだそうである。

IMG_1072その、どちらも

私にとっては非常に関わりの深いもので

北海道は

私の住んでいるところ

静岡県は

私の実家のあるところ

IMG_1075なのである。

これはなんという偶然か

 おヒマな方は↓をクリックして読んでいただきたい。

北海道十勝開拓の祖

依田勉三翁は静岡県出身であり

IMG_1076マルちゃんの東洋水産の創業者

森和夫氏も静岡県出身なのだそうである。


だからなんだと言われればそれまでだが

静岡出身の私としては何か心を高ぶらせるものがある。

ともあれ

先日その二つを食べ比べてみた。

どちらも薄い色の醤油味に仕上がっていて

同じような外見だが

微妙に違う。

IMG_1080ダブルラーメンに比べてハイラーメンは

スープの色が薄く

乾燥ネギの量が多く

麺のコシが若干強かった。

IMG_1077そして

どちらも

とても懐かしく

たいへんうまかった。


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IMG_2775 

乳房からの出血(三たび!!)

「乳房から、また出血してるのですが・・・」

#牧場からの往診依頼だった。

なんと・・・

またまた乳房からの出血である。

半ば呆れながらも、

事態は大変なことになりそうな気配もあるので、

いつものように緊張した面持ちで、

#牧場に到着してみると、

IMG_1250問題の牛はすでに、

パーラーの枠に入れられていて、

肢を上げられていて、

乳房の出血部位を治療する準備が、

全て万端に整っている状態だった。

前々回

前回

に引き続いて

今回もまた、全く同様に

乳房の外側面を走る静脈に

穴が開いて

そこからの出血だった。

IMG_1251「・・・またか。」

「・・・はい。」

3回目もまたもや

乳房のほぼ同様の箇所から

勢いよく出血している牛を目の前にして

この出血の原因が

カラスの仕業であることを

もはや誰一人として

IMG_1253疑う者はいなかった。

私は再び

いや、三たび

この乳房の出血部の血管を縫合し

止血剤を打ち

治療を終えた。

IMG_1254頻度のそれほど高くない

乳房側面の血管縫合

という手技を

ここ1ヶ月も経ぬ間に3回も

繰り返し行っていると

なにやら、時間が空回りして

タイムスリップしているような気分になった。

そして、更には

こころなしか

IMG_1255自分自身の

乳房の血管の縫合処置の

手際がよくなって

技術が上達したようにも感じていた。

短時間に反復練習

いや

反復「本番」を

3回も繰り返せば

誰だってきっとそうなるに違いないと思った。

「・・・カラス、何とかしないとね。」

「・・・そうですよね。」

短期間に3回繰り返された

カラスの獣害だが

このままではいつ4回目が起こるかわからない。

大事なのは

治療技術などよりも

予防対策であることは

もはや言うまでもない。


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IMG_2775

原発事故と家畜

東日本大震災の発生した年から数えて、

今年は6度目の3月11日を迎えた。

今年もまた様々な、

震災関係の催しが、

各地で開かれている。

そして、

震災直後に発生した、

福島第一原発の爆発事故は、

色々な問題を抱えたまま、

現在に至っている。 

先日、

私のブログにコメントを寄せてくれたこともある、

メイさんという、 

福島県南相馬市にお住いの方から、

IMG_1165一冊の本をいただいた。

タイトルは「被災牛と歩んだ700日」。

内容は

第一原発の爆発事故により

避難を余儀なくされた畜産農家の手記と

畜産関係者の方々の手記である。

酪農家や養豚家の方々が

自宅から避難するということは

飼っているいる家畜たちの世話ができなくなるということである。

畜産農家が飼っている家畜の世話を放棄しなければならないということが

IMG_1171一体どういうことなのかを

この本は教えてくれる。

それはもう、涙無しでは読むことのできない

とても悲しく衝撃的なことなのだが

畜産農家さんと関係機関の方々の

一人一人の手記を読んでいると

そこには一筋縄ではゆかない

色々な考え方や立場の違いも見えてくる。

悲しさや哀れさなどの感情的なことは

言うまでもないことなので

IMG_1170あえてそれは書かず

それ以外の事実で

私がここに書いておくべきだと思ったことを書く。

その一つ目は

牛や豚を置き去りにして避難するとき

飼い主さんたちの多くが

本当は囲いから

あるいは繋がれた状態から 

解放させてやりたかったのに

それをせずに避難したことである。

なぜ放さなかったのか

それは、もしそれをすれば

放たれた「放れ牛」や「放れ豚」によって

周囲に迷惑がかかるから、と

飼い主さんたちは考えたのである。

そうして結局、牛や豚の多くが餓死をしていった。

二つ目は

そうして置き去りにされた牛や豚たちの一部が

何者かによって放されたという事実。

動物保護団体などの外部の人々の手で

飼い主に断りもなく勝手に放された。

三つ目は

そうやって放たれた牛や豚を見て

畜産農家の人たちは

複雑な気持ちの中で

少しホッとした気持ちにもなったと言うこと。

四つ目は

しかし、そうして放たれた牛や豚たちは

やはり、予想通り町中を徘徊し

民家を荒らしまわるようになり

結局、「放れ牛」や「放れ豚」も

行政の指示で、全て捕獲され

殺処分をされることになったこと。

五つ目は

捕獲された牛のうちの一部は

研究機関の牧場に預けられ

獣医学の研究に提供されることになったが

その研究も資金面で継続困難になっているということ。

そのような事実が

この本には書かれている。

畜産農家が

そして畜産関係者と地域社会が

原発事故から受ける被害というものは

いかに恐ろしく

複雑な問題を抱えながら

当事者の飼主さん達と

それを取り巻く人々の

様々な考え方の渦巻く中で

結局は

救いようのない

悲惨な結果に終わることを

この本は伝えている。

表紙を1ページめくると

被災した畜産農家の方が詠んだ短歌が一首記されている。

IMG_1166 原発の
 二十キロ圏内
 避難する
 乳牛総べて
 置き去りにして

        渡部愛子


さらに1ページめくると

 一枚の写真が載っている。

IMG_1167繋がれて

置き去りにされ

餓死した牛が

空腹のために

かじっていた

牛舎の柱の写真である。


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俳句で知る「猫の妊娠期間」

毎日、

町内の牛舎巡りの仕事をしていると、

最近、

少しづつ、

IMG_1152牛舎の猫たちの行動が 、

活発になってきたことに気づく。

春は、

猫の恋の季節である。

歳時記の二月(早春)の項には

「猫の恋」という季題(季語)があり

その傍題として

「恋猫」「うかれ猫」「春の猫」「猫の妻」「猫の夫(つま)」「孕(はらみ)猫」 

などの言葉が載っている。


IMG_1154 濡縁に戸開くを待てり猫の夫    星野立子


また

さらにページをめくってゆくと

歳時記の四月(晩春)の項には

「子猫」という季題(季語)があり

その傍題として

「親猫」「猫の子」

などの言葉が載っている。


IMG_1153 紙とんでゐしにはあらず子猫かな   星野立子


この二つの季題

「猫の恋」(二月・早春)

から

「子猫」(四月・晩春)

まで

約2ヶ月の開きがあるのだが

この2ヶ月間という時間は

すなわち

猫の妊娠期間の2ヶ月間

ということになる。

古人は

IMG_1155「恋猫」から「子猫」へと

日々変化してゆく

猫という動物を観察し

それを俳句に詠み

文芸を楽しみながら

知らず知らずに

ほぼ正確に

猫の妊娠期間を言い当てている。

歳時記から読み取ることのできる

古人の感性と

観察力の鋭さに

あらためて

感心してしまった。



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乳房からの出血(再び!)

「乳房から、また出血しているのですが・・・」

#牧場からの電話だった。

#牧場では、たったの10日前に、

乳房からの出血で往診したはかりである。

またか・・・

最近多すぎるなぁ・・・

と感じつつ、#牧場のフリーストールへ行ってみると、

IMG_1177写真のように、牛床と通路が、

赤い血で染まっていた。

「今のところ、血は止まったみたいなんですが・・・」

「でも、この前と同じみたいだから、枠に入れて、縫っておいたほうがいいね。」

「わかりました。」

牛は歩いているうちに

IMG_1184また左の内股あたりから出血を始めた。

枠に保定して

左足を挙げて見ると

左足の下腿部に隠れていた出血部位が露呈し

消毒液で洗浄すると

乳房の周囲を走っている血管から

IMG_1187血が放物線を描いて噴き出した。

10日前の牛は

乳房の右側の血管に穴が空いていたが

今日の牛は

乳房の左側の血管に穴が空いていた。

その血管の傷は見事に

IMG_118810日前の症例と左右対称の

全く同じような位置にできた傷だった。

とりあえず、前回と全く同じ縫合をして

出血を止めて、止血剤を打ち

治療を終了した。

それにしても

たったの10日という短い期間に

乳房の出血に2例も遭遇するとは

IMG_1189いまだかつてない出来事である。

それも

乳房の左右の内股の部分。

それは・・・

牛が立っている時は

後肢の下腿部に隠れて見えない部分。

IMG_1125しかし・・・

牛が横臥した時だけあらわになる

そんな場所の血管が

集中して損傷を受けたのだ。

「これは、やっぱりカラスしかありえないよね。」

「そうですね。」

想像すると

BlogPaintカラスは左の絵のごとく

横臥している牛の

後肢の下腿の付近に止まり

そこから乳房の表面に走っている血管を狙って

嘴でつついて出血させたのだろう。

カラスのそんな姿が

浮かび上がってくるのだった。 


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フリーマーチン、語源の「新説」

仔牛の♂♀の双子のことを、

業界ではフリーマーチンと呼んでいる。

なぜそんな名称になったのかというのは、

意外にナゾで、

今のところ、

新得の畜産試験場の先生から教えて頂いた説が、

最も信頼できる説であるようだ。 

フリーマーチンの語源については

私もこのブログの約10年前の記事に書いたのだが

先日、なんとそこへ新しい書き込みがあり

フリーマーチンのマーチンというのは

正しく発音すると

マーチン(Martin)ではなく

マーシャン(Martian)である

という書き込みなのだった。

マーシャン(Martian)とは何かというと

日本語に訳せば

「火星人」である。

仔牛の♂♀の双子は

じつは火星人(マーシャン)と呼ばれていて

それが次第にナマって

フリーマーチンと呼ばれるようになったという説である。 

なるほど

こんなところにも 

地球の大気圏外の大宇宙の影響があったのである。

Unknown大宇宙からの影響・・・

といえば・・・

♂♀の双子のフリーマーチンが・・・

火星人(マーシャン)
ならば・・・

我々がよく遭遇する宇宙人・・・

すなわち子宮脱星人は

何と呼ばれるのだろう。

子宮脱は英語で Uterine  prolapse(プロラプス)であるから

子宮脱星人は

プロラプシャン(Prolapsian)

である。

お、なかなかいい呼び名じゃないか。

では子宮捻転星人は

何と呼ばれるのだろう。

子宮捻転は英語で Uterine torsion(トージョン)であるから

子宮捻転星人は

トージョニアン(Torsionian)

である。

おお、なかなかいい呼び名ではないか。

images




子宮脱星人(プロラプシャン)

子宮捻転星人(トージョニアン)

これは、なかなか

カッコいい♪


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深夜の雪

「お産なんですけど、破水したのに、陣痛が全く始まらないんです・・・」

「わかりました。すぐ行きます。」

携帯電話が鳴ったのは、

午後9時30分を過ぎた頃だった。

和牛の繁殖農家の⌘さんからだった。

夜道に診療車を走らせて約20分、

空には星が見えていたが、

どういうわけか、

細かい雪がチラチラと降り続いていた。

・・・夜の風花・・・?!

そんな風情のあることを考えている間も無く

⌘さん宅に到着。

「分娩予定から、もう2週間遅れてるんです。」 

牛は大きな和牛で

今回が6産目だという。

「全然いきまないので、心配で・・・。」

手を入れると、胎児は生きていたが

産道の開きがまだ不十分だった。

「お産をさせる前に、まずカルシウム剤を打ちましよう。」 

和牛といえども

6産目ともなると、低カルシウム血症になることがあるし

今の産道の状態では

いきなり助産をするには少し早い気がしたので

カルシウム剤を打ちつつ

ひと呼吸置いてから、ゆっくり助産した方が良いと判断した。

それに加えて

⌘さんの和牛は半月ほど前に

お産の発見が遅れて、胎児が死んでしまった事故があったばかりだった。

そういうことがあると

次のお産の時は

絶対に死なせたくないという思いから

早く獣医を呼んで、万全を期すということになる。

私は、そういう⌘さんの気持ちを強く感じていた。

そういう場合、実際には

呼ばれるのが早すぎてしまうこともある。

カルシウム剤を打ち終わり

ひと息ついてから

「じゃあ、始めましょうか。ロープと滑車をセットして・・・」

「はい。」

「産道が狭いから頭にもワイヤをかけますね。」

「はい。」

「まず頭だけ軽く引いて・・・そう・・・」

「・・・」

「頭が・・・産道に・・・よし、乗ってきた。こんどは足をゆっくり引いて・・・」

「・・・」

「そのままゆっくり・・・仔牛のおデコが全部出たら・・・滑車を強めに引いて・・」

「・・・」

「よし、頭が出た。・・・引いて、引いて・・・」

IMG_1129ここは絶対に

生かして出さなければならなかったので

私も少し緊張したが

胎児は無事に誕生した。

IMG_1130大きめの♂だった。

産科道具を片付けて

挨拶を交わして

帰路につくと

来るときには星が見えていた空は

雪雲に覆われて

雪が盛んに降り始めていた。

途中の道ではさらにそれが激しくなり

IMG_1132分岐点や交差点が

降る雪でよくわからなくなってきた。

慣れている道だというのに

曲がる交差点を一つ間違えて

IMG_1134あらぬ所へ向かいそうになり

また引き返し

さらに激しくなる吹雪の中を

対向車にも気をつけながら

路肩にも落ちないように気をつけながら

IMG_1137ようやく

宿泊している事務所まで帰ってきた。

帰りの道のりは

行きの道のりの

倍近くかかったような

深夜の雪の中の往診だった。


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十勝ホトトギス俳句会

昨日の26日は、

帯広駅前のふじもり食堂で、

十勝ホトトギス俳句会の、

「新同人の誕生を祝う会」が開かれた。

IMG_1142およそ2〜3年に1度、

ホトトギス誌には社告が出て

同人が推挙される。

今年の1月に、

北海道からは19人の同人が推挙され、

十勝管内では伊林美惠子さんと私の名があった。

それを受けて昨日は、

十勝の同人のまとめ役である

IMG_1143高橋まさしさん、とも子さんご夫妻、をはじめ

ホトトギスの誌友と、俳誌柏林の誌友の方々が

総勢19人も集まって

我々2名の新同人のお祝いをしてくれた。

昼食前にまず句会。

その後昼食。

IMG_1144句会で少し緊張した喉を

昼食の生ビールが

心地よく潤してくれた。

正月の記事に書いたことの繰り返しになってしまうが

私は約25年間

自分なりに

色々な俳句を

ああでも無いこうでも無いと迷いながら

作句意欲が落ちた戻ったりしながら

作り続けて来た。

そのうちに

ホトトギスの俳句

すなわち「花鳥諷詠詩」というものが

心の中に大きな位置を占めるようになり

ホトトギスの俳句こそ

私が求め進むべき俳句の道であると思うようになった。

そして、ホトトギス誌に投句し始めて約5年

主宰から、私の投句する俳句が

とりあえず、一応

ホトトギスの俳句として認められた

ということなのだと思う。

IMG_1145昨日開いていただいた

十勝ホトトギスの会は

そんな私の俳句に対する思いを

再確認させてもらえる

良い機会だった。

新同人の名が掲載された、先月のホトトギス誌の社告には

こういう言葉が添えられている。

「ホトトギス同人とは権利も義務もございません。ただホトトギスの伝統を正しく理解して、立派な作品を作る努力をして頂きたいのでございます。ホトトギスの正しい発展のためにお力をおかしくださいませ。」

この言葉を忘れずに

これから又

俳句を作ってゆこうと思う。


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乳房からの出血

「乳房から血が出ていて、止まらない・・・」

午後3時頃、#牧場から電話が入った。

乳房からの出血の治療は、

1週間前に♭牧場でもやったばかりだった。

よく当たるなぁ、

と思いつつ、

#牧場の牛を診ると、

IMG_1100右後肢の飛節以下が血で真っ赤に染まっていた。

乳房はそこに重なる面がやはり血で真っ赤に染まっていた。

牛の顔を見ると、

その部分をしきりに舐めていたのだろう、

鼻と口が血で染まっていた。

IMG_1122「どこで見つけたの?」

「フリーストールから牛を追い始めた時、ポタポタ血が垂れていたんです。」

「今は、血は止まってるみたいだけど。」

「そうですね。」

「でも、また何かの拍子に出血するといけないから、どこから出ているか見ておこう。」

IMG_1102「はい。」

「右の後肢をロープで縛り挙げてみようか、削蹄するときみたいに。」

「わかりました。」

従業員の@君は、搾乳パーラーの中で手際よく

牛の右後肢を上げてくれた。

IMG_1111「あー、ここから出てるみたいだねー。」

「ほんとだ。」

「縫って、止血しておこう。」

「はい。」

従業員の@君は、牛の頭をモクシで固定し

牛の尻側にもロープをかけて

この牛をしっかりと保定してくれた。

出血部分と見られる箇所は

乳房の内側を走る7mmほどの太さの静脈だった。

小型の針に吸収糸をつけ

IMG_1112まず2針縫い

糸の張りを緩めて

出血のなくなったかどうかを確認して

まだ少し

血が滲んでくるので

IMG_1118もう1針

血がほとんど滲まなくなって

ダメ押しのもう1針

きれいに止血されたところで

縫合を終了。

その後、止血剤(バソラミン)を注射して

IMG_1120治療を終了した。

「出血の原因、なんだろう、何か思い当たるものあるかい?」

「えーっと、だいぶ前、この器具に引っ掛けて出血した牛がいました。」

その器具とは

パーラーで搾乳する時に

IMG_1121ミルカーのチューブを固定するための金属製のフックだった。

「これか・・・。」

「でも・・・」

「搾乳する前にストールで見つけたんだったら・・・」

「つつかれた・・・」

「奴らに・・」

「やっぱり、カラスですか・・・」

「その方が、ありえるかもね・・・」

IMG_1126今日の#牧場の周辺には

カラスの鳴き声が響いていた。

近くの電線や

牛舎の屋根に止まって

こちらの様子を伺っているカラスたちに

IMG_1123携帯のカメラを向けると

賢いからスたちは

危険を察知したように

空に舞い上がり

近くのカラマツの林に移動していった。


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リスの出る日

「今日は、リスをよく見る日だったなぁ・・・」

と、先輩獣医師のSさんが、

カルテを書き終えて、そう言った。

「このあいだ急に暖かくなった時、冬眠から覚めたんだろうか・・・」

それを聞いた、同じく先輩のKさんが、

「エゾリスは、冬眠しないんですよ。」

「そうなの・・・」

「ええ。シマリスは冬眠しますけどね。」

「エゾリスはそうなんだ・・・」

それを聞いていた私。

「じつは、俺も今日、リス見ましたよ、エゾリス。」

「やっぱり、よく出る日なのかな・・・」

「そんな日、あるんですかね。」

「今日はほんとに・・・車に轢かれてたのも見ちゃったよ・・・」

車にはねられて死んでしまったのは可哀相だが、

私が今日見たりスも、ちょっと変で、

いつもとは違った場所で見かけたのだった。

1才馬の過敏症の治療で行った*さん宅

IMG_1093馬を出した後の馬小屋に

たまた目を向けると

馬柵捧の上になにやら動くものがいた。

鳥にしてはちょっと変だなと思ったら

エゾリスが

IMG_1089馬柵捧にとまる様に立っていた。

少し近づいて

携帯写真を撮ったら

馬小屋の奥へ隠れるように入っていった。

私が今までエゾリスをよく見かけたのは

IMG_1089ほとんどが林の中で

その多くが松の木で

松の木を渡り歩いている姿ばかりだったので

今日の、まさかの馬小屋での

エゾリスの出現にはちょっと驚いた。

IMG_1090そして

往診から帰ってきたら

先輩獣医師たちが、また

エゾリスの話をしていたというわけだ。

これは単なる偶然なのだろうか。

それともやはり

今日は

特別に

リスの出る日なのだろうか。


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辰巳奈優美、句集「氷絃」

辰巳奈優美(たつみなゆみ)さんの、

第3句集、「氷絃(ひょうげん)」、を読了。

IMG_1010奈優美さんは、

昭和34年生まれで、

私とは一つ違いの同世代、

旭川出身で札幌在住。

50歳代の半ばで、

第3句集を上梓するのだから、

その俳句のキャリアと実力は

いまさら言うまでもない。


 今生の頬まだぬくし春の雪


この一句の前書きには

 「四月三日 父美仁(紫明)逝く」

とあった。


 身に入むや抜け殻ほどの骨拾ひ


この一句の前書きには

 「八月二十二日 母セツ子逝く」

とあった。

10年前にお父様、5年前にお母様を見送り

「この辺で一つの区切りとして句集をまとめることを思い立った」

と、あとがきに書いてある。

IMG_1012奈優美さんとは

2年前の北海道俳句協会の懇親会で同席し

それ以来のお付き合いだが

俳句をまとめてじっくりと読ませていただいたのは

今回が初めてだった。

以下

心に残った句を挙げる。


 町なかや日向ひなたに雪解の香

 蝉時雨止むひと声もおくれなく

 いま吊りし風鈴の音を待つ机

 隣人のにはかに親し野分あと

 毀れゆく櫛のごとくに秋の虹

 小鳥来るたかぞらのなほ高きより

 厳寒の直情のごといたるかな

 ものの角そろへて寒に対ひけり

 雪雲をかくも籠めたる地平かな

 大鷲の眼火をいまし切に欲る

 月蝕のやはらやはらに木の芽時

 鳥雲に入る美しき角度もて



まだまだたくさんあるが

きりがないので、この辺で。

IMG_1086北海道の

同世代の俳人

として

辰巳奈優美さんの

これからの活動に強く期待し

私も

それに続いてゆきたいと思った。 



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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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2つの新聞記事(6)

乳牛の不健康。

乳牛の不足。

乳牛の輸入。

今、

酪農界は 

かつてないような異変が起きているように思う。

30年以上、酪農家に往診に回っている私はそう思う。

かつて、牛乳が生産過剰で、

生産調整をしたことは何回もあった。

たった5〜6年前にも、生産調整をしていたくらいだった。

それがどうだろう。 

酪農家の大規模化で

足腰を強くしたはずの酪農の

生乳生産力が

ガタ落ちしている。

乳牛は不健康になり

乳牛の寿命は短縮し

乳牛は不足し

乳牛の価格が高騰し

挙げ句の果てに

外国から乳牛を買ってくる始末。

この異変を

解決するためには

科学技術だけでは、もはやどうしようもない

獣医療だけでは、もはやどうしようもない 

農政担当の官僚の資質も、どうしようもない

そんな

出口の見えない状況になっているようだ。 

この異変を

牛乳を飲んでいる消費者の方々は

知っているのだろうか?

私は

この異変を

牛乳を飲んでいる消費者に

もっと知ってもらわねばならないと思っている。

消費者に知ってもらうためには

どうすれば良いか。

IMG_1063一番早いのは

値上げ、だろう。

それも

特殊なブランド牛乳の値上げではなく

誰もが普通に飲んでいる

IMG_1062最も売れている

「普通の牛乳」を

値上げしなければ意味がない。 

いちばん「普通の牛乳」の値段を

IMG_1053消費者が

「なぜ?」

と思うくらいまで

引き上げるのだ。

いつも飲んでいる牛乳が不足しているのだから

値上げは当然のはずだ。

そうすれば

マスコミも

IMG_1078異変を感じ

酪農界のことを

色々詳しく取材して

報道し始めるだろう。

先日の

2月11日(土)

近所のスーパーの乳製品コーナーでは

「普通の牛乳」が

1リットル175円で

相も変わらず

IMG_1060安売りされていた。

売り札には

「11日限り」

と書いてあった。

翌日の

2月12日 (日)

同じスーパーの乳製品コーナーで、また

同じ「普通の牛乳」が

1リットル175円で

またまた

安売りされていた。

IMG_1068売り札には

「12日限り」

と書いてあった。

あれ・・・?

2日続けて

1日限定(笑)

小売のスーパーさん

こんなことしてる場合じゃあないと思うんですけど・・・


(この記事、とりあえず、終わり)


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2つの新聞記事(5)

乳牛が足りなくなってしまったので、

乳牛をオーストラリアから輸入する。

そんな政策を進めている農水省の官僚の人たちとは、

いったい、どんな人たちなのだろう?、

そんな疑問を抱いていた矢先、

タイミングよくこんな時評が、

2月9日の十勝毎日新聞に掲載された。

IMG_1054筆者はおなじみの

元通産省官僚の古賀茂明氏。

古賀氏によると

官僚は3つのタイプに分けられるという。


第1は「消防士型」

第2は「中央エリート官僚型」

第3は「凡人型」


なのだそうだ。

そして

それぞれのタイプについて


ヾ盈修砲覆辰親圧

求める報酬

9駝院∋毀韻らの要請に対する態度

じ什澆梁垓に対する思い


という4つの項目についての違いで

3者を整理している。


「消防士型」は

〇毀韻鮗蕕襪海箸納匆颪帽弩イ靴燭ぁ

特別な報酬はいらない。強いて言えば、自分の仕事に対して「ありがとう」と感謝の気持ちを表してもらえればうれしい。

市民のニーズに何とか応えたい。今の仕組みで対応できなければ、予算、法律、条令などを変えてでも実現したい。

ずの待遇に満足、それ以上は望まない。

というタイプだそうだ。


「中央エリート官僚型」は

ー分が1番であることを証明したいので、1番難しいと言われる財務省に入った。

△舛笋曚笋気譴燭ぁ⊆分が偉いんだということを確認するためには、給料が高いということよりも、一般の人よりも大きな権限を持ち、みんなに頭を下げられるような地位にいることが大事。

市民はくだらないことを要求してくるので迷惑だ、しつこい奴らは「たかり」だ、1番優秀な俺たちが考えてやっていることに文句をつけやがって、うるさい連中だ。

て本一優秀な自分たちが夜中まで働いているのに、今の待遇は全く不十分だ、退職後においしい生活が待っているから何とか釣り合っている、天下り禁止なんて、全くおかしなことだ。

と考える、最もたちが悪いタイプで

これは財務官僚に多いそうだ。


「凡人型」は

\験彊堕蠅靴神験茲鯑世襪燭瓩砲聾務員が1番だ。

△修海修海竜詢舛搬狄Ω紊琉堕蠅靴神験菠歉磴ほしい。

F颪靴い海箸砲麓蠅鮟个靴燭ない、失敗したらバツがつくので、とにかく余計なことには関わらない。

い發少し給料を上げてほしい、天下りは生命線、何のために官僚になったのかわからなくなるじゃないか。

と考えるタイプだそうだ。


IMG_1054古賀氏は

この3つのタイプが

大体3分の1ずつ居る、という。

しかし、幹部クラスになると

「消防士型」の官僚はほとんどいなくなる、という。

ということは

「中央エリート官僚型」の多くが、財務官僚であることと

考え合わせると

農水官僚は

「消防士型」と「凡人型」がほとんどであるだろう。

さらに

農水省でも

幹部クラスには

「消防士型」がほとんどいなくなる

のであるから

農水省幹部の官僚は

ほとんどが「凡人型」の官僚

ということになる。

きっと

そういう「凡人型」の官僚たちが

今回の

乳牛のオーストラリアからの輸入

という政策を進めているのだ

と、思われる。

どおりで・・・

何も考えていない・・・

愚かな、政策・・・


(この記事、あと少しつづく・・・)


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2つの新聞記事(4)

声を荒げない 蹴飛ばさない 叩かない
フォークやスコップ等を持たない
観察が大事
人も牛も 同じ 生きもの
飼い主がしたくない されたくない事は
牛もされたくない
牛が喜ぶことは人も嬉しい それだけ
声かけが何よりも大事
生まれた瞬間から 声かけ」

これは、前々回の記事で、

うしらぶさんという酪農家の方から寄せられたコメントで、

あるベテランの70歳を過ぎた酪農家の言葉である。

この言葉はさらに続いて、

アニマルウェルフェア(家畜福祉、動物福祉)
動物の中には人間も入るんだもんね?
で、俺はね
酪農家のウェルフェア
やらなきゃいけないと思うよ。
やはり、酪農家が健全でなきゃ
健全な牛なんて
飼えるわけないのさ、うん。
この酪農家の健全性については
誰も問わないもんね。
規模拡大して、牛乳を沢山搾れって
税金使ったり、地域あげてやってるけど
やはり
酪農家の健全性を
どう皆で作り上げていくか?
で、どんなに頑張ったってね
人間が健全でなかったら
動物(牛)健全でなくなる。
じゃあ
酪農家の健全を
どうしたらいいか?」


前半の部分は

それぞれの農場で

いろいろな事情があるから

そっくりそのまま真似をすれば良いというものではないけれど

基本的な事として

「声かけが何よりも大事」

というのは

我々人間同士の付き合いもそうであり

核心をついていると思う。

さらに後半の部分で

「酪農家が健全でなきゃ、健全な牛なんて飼えるわけないのさ」

という言葉は

今とても必要なことを見抜いていると思った。

このベテランの酪農家さんの言葉をもって

乳牛のアニマルウェルフェア(動物福祉)についての話は

そろそろ終わりにしたいと思う。

ところが・・・

また、ところが、だ・・・

そんな矢先に

またまた新聞に

聞き逃すことのできない記事が出ていた。

乳用牛を生きたまま輸入するのに

補助金が出る

という話である。

輸入の相手国はオーストラリアだそうだ。

どういうことかというと

IMG_1008我が国の乳用牛の数が減り

乳用牛の値段が高くなってしまったから

外国から安い乳用牛を

輸入して

それを賄うというのだ。

こういう事をしたら

国内の

乳用牛を生産し

販売している酪農家の

個体販売の利益が

オーストラリアの酪農家に奪われてしまうことになる。

さらに

オーストラリアの牛の価格に引っ張られて

我が国の牛の市場価格が大幅に下がることが予想される。

いま

国内で乳用牛の個体販売で利益を得ているのは

多くが中小規模の

地道に子牛から乳牛を育てている酪農家である。

これに対して

子牛を育てることを放棄して

乳用牛を他所から買って

ただ搾っているだけの農場は

多くが大規模な酪農場である。

この新聞記事の内容は

売り手である中小規模の個体販売農家を苦しめ

買い手である大規模の搾乳しかしない農場を助ける

という政策のように見える。

外国で生まれ育った値段の安い乳用牛が

まるで奴隷のように

日本の大規模酪農場へ

次々と導入される。

日本の中小酪農家の

乳用牛の生産意欲はどんどん低下する。

その先には

日本の酪農全体が

乳用牛を外国から買わなくては生きてゆけない

巨大なギガファーム化してゆく

そんな姿も見えてくる。

こんなことを続けていれば

我が国の

「健全な酪農家」

どんどん減ってゆくだろう。

そして

我が国の

「健康な牛」

ますます減ってゆくだろう。


(この記事、もうちょっと続く・・・)


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2つの新聞記事(3)

「動物福祉」にしろ「アニマルウェルフェア」にしろ、

それを実践することは、

特別なことでもなんでもない、

と私は思うのである。

苦しそうな牛を見て「・・・かわいそうだ。」と思い、

その苦しみを解いてやろうとする心。

飢えている牛を見て「・・・そうかそうか。」と思い、

その飢えを満たしてあげようとする心。

そういう心がなければ、

「牛を愛する心」がなければ、

乳牛など飼育できるものではない、

と私は思うのである。 

自分は酪農ビジネスとして牛を飼育しているのだから、

そいうい心は必要がなく邪魔でさえある、

などと言う人もいるが、

そんなドライな感覚の酪農家にさえ

「牛を愛する心」がゼロの酪農家はいない、

と、私は信じている。

乳牛は我々と同じ赤い血が流れ

空気を吸っては吐き

水を飲み食物を食べては排泄し

我々人間となんら変わりのない生き方で生きている

と思えばなおさらである。

「牛を愛する心」を持って

酪農を実践することは

特別なことでもなんでもないだろう

と、私は毎日酪農家を往診して回りながら

そう思ってやってきた。

そういう現場に

突然登場したのが

家畜福祉、アニマルウェルフェアの考え方に基づく

認定制度だった。

「牛を愛する心」というものを

科学的に分析をして

いろいろな項目に分け

その実践の程度をチェックして

客観的に評価して

そこに線引きをして

合格不合格の差別化を図り

合格したもののみを

特別に「アニマルウェルフェア認定牧場」に認定し

そこから生産された乳製品に付加価値をつける。

という活動を始めたのが

アニマルウェルフェア畜産協会である。

この活動について

私は基本的には素晴らしい活動であり

これからもっと普及してほしいと思っている。

しかし、同時に

この活動は科学的手法の限界をよく表している

とも思うのだ。

「牛を愛する心」を科学的に分析して

いろいろな項目に分けて

その実践の程度をチェックして

客観的に評価して

そこに線引きをして

合格不合格の差別化を図り

合格したもののみを

特別に「牛を愛する心の程度の高い牧場」に認定し・・・

・・・そんなことをやっていれば

不合格になって認定されない牧場の人たちは

IMG_0357気分を害し

怒り出す人も少なくないだろう。

科学的手法というものは

多くがこういうものであると私は思っている。

科学的手法は

「愛する心」という奥ゆかしい感情を

上から目線で観察するだけなのである。

気分を害された人たちは

IMG_0358「口で言わずに、手本をやって見せてくれよ!」

と言い出す人もきっといるだろう。

ところが

実際のところ

酪農家の牧場形態は十人十色であり

牛の飼い方や接し方は十人十色であり

「牛を愛する心」の「お手本」と言えるものを

IMG_0910具体的に示すことなど、

そう簡単にできるものではないだろう。

「アニマルウェルフェア」の基準が

曖昧になるのはそのためだろうと思う。

ここに、私は

科学的手法の限界を感じるのである。

「愛」や「心」に対する科学的研究は

可能だが

その成果を現場に還元した時の

貧弱さ、底の浅さ、腹立たしさ、虚しさ、は

人の恋愛心理学などの成果を見れば、容易に想像がつく。

そんな、科学的手法の限界を感じつつ

IMG_0940毎日毎日

今回掲載した写真のような

疲れ切った牛達を前にして

私は

治療の薬を手にしたまま

暗澹たる気持ちになるのである。

科学的手法に頼ることなく

もっと広く

もっとあまねく

特別なことでなく

普通に「牛を愛する心」を持って

IMG_1020全ての酪農家が

それを忘れず

それを実践しながら

「健康な牛」を飼えるようになる方法は

ないものだろうか・・・

そのヒントになることが

実は

前回の記事に寄せられたコメントの

最後の方に書かれているコメントの中に

あるような気がするのだが・・・


(この記事続く)


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2つの新聞記事(2)

「牛は機械ではない。一緒に働く同僚のはず。農業は工業じゃないんです。」

アニマルウェルフェア畜産協会の、妹尾哲也代表のこの発言は、

酪農の効率優先、大規模化を進める国に対して、

それを考え直すことを促す、力強い言葉だと思う。

さらに、このアニマルウェルフェア畜産協会は、

牛の体の清潔さや牛舎の明るさや、尾を切らないーなど

IMG_100650項目の基準を独自に定め、

現在、3戸の酪農家を審査中で、

来年度中には、協会の認証マーク付きの商品が

市場に出る見通しだという。

協会の認証マークの付いた牛乳が一般市場に出回り

その美味しさが消費者に認められ

乳牛を大切に優しく飼われることの価値が

一般社会に広まってゆくことは

大変素晴らしいことであると思う。

こういう新しい価値を持った牛乳が

市場に出回ることを

私は大いに期待している。

もしそんな牛乳をスーパーの店頭などで見かけたら

普通の市販の牛乳よりも値段が高いことが予想されるが

必ず買って飲んでみたいと思っている。

そうすることによって

アニマルウェルフェア協会の認定農場が増える力になれる。

それは

牛を大切に飼う家族経営の小規模な酪農家の数が増えることを意味する。

まことに喜ばしいことで

私はこういう方向性に大賛成である。

大賛成である・・・のだが・・・

どうしてもそれだけでは・・・

満足できない・・・というか・・・

それだけではちょっと・・・

物足りない・・・というか・・・

どこか腑に落ちない・・・というか・・・

そんな思いを拭い去ることができない・・・

それは、どういうことかというと

アニマルウェルフェア協会の認定マークの付いた牛乳が

一体どれだけのシェアを取れるのか

という事とも関係している。

協会の認定マーク付きの牛乳は

認定マークの付いていない牛乳と比べると

非常に数が少なく

値段も割高であることが予想できる。

牛乳市場におけるシェアは

僅かなところに落ち着いてしまうことが想像できる。

つまり

認定マークの付いた牛乳は

高級ブランドの貴重な牛乳であり

贅沢品ということになる。

アニマルウェルフェア協会が認定した牛乳は

贅沢品とみなされてしまうことになる。

乳牛を大切に優しく飼って

健康な牛から搾った牛乳が

贅沢品・・・

というレッテルを貼られて店頭に並ぶことになる。

ここが

私の腑に落ちないところなのである。

アニマルウェルフェアの実践は

贅沢品を作るためだけの手段ではないはずだ。

高級ブランド牛乳があることには

私は大賛成だが

それを作るための手段としてのみ

アニマルウェルフェアが有るわけではないはずだ。

乳牛のアニマルウェルフェアの実践は

高級ブランド牛乳を生産する牧場だけではなく

普通の値段で飲める日常的な生乳を生産する牧場にも

乳製品への加工用の原料乳を生産する牧場にも

どんな牧場にも

なされなければならないはずだ。

それが私の願っている

「牛の健康」の姿である。

高級ブランドの認定マークの付いていない

圧倒的多数のシェアを持つ

圧倒的多数の「普通の生乳」を生産する牧場と

そこで飼養されている

圧倒的多数の「普通の乳牛」に対して

IMG_1004あまねく実践されるべき課題。

「牛の健康」を守るための

重要な課題が

我々の目の前に

立ちはだかっていることに

我々畜産関係者は

気が付かなければならないのではないか

と、私は思うのだ。


(この記事続く)



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2つの新聞記事(1)

先週の十勝毎日新聞の記事は、

我が町の、

そして十勝地方の、

酪農関係者にとっては、

聞き逃すことのできないニュースだったと思う。

ノベルズグループ(延與雄一郎社長)の、

「幕別デーリィファーム」が、

3年後の2020年までに

幕別町の駒畠(こまはた)地区の26ヘクタールの民有地に

IMG_1004牛舎20棟を建て

ロータリパーラー1箇所

パラレルパーラー1箇所

を設置し

4300頭の乳牛を飼い

47000トンの生乳の出荷量を目指す

大規模酪農場を作る計画を

正式に発表した。

生産した生乳の出荷先は

JA幕別町になる見通しだという。

1月23日に

幕別町役場で記者会見が行われた内容を

翌日の新聞が報じていた。

さて

その一方で

1月30日の

北海道新聞の帯広・十勝版には

このような記事が出ていた。

帯広畜産大学講師の瀬尾哲也氏が

昨年5月に

アニマルウェルフェア畜産協会を設立し

代表理事に就任した。

この記事もまた

我々十勝地方の

酪農関係者には

IMG_1006聞き逃すことのできない記事であろう。

そこには

「効率優先、大規模化を進める

国や日本酪農への問題提起。」

として

「牛は機械ではない。一緒に働く同僚のはず。農業は工業じゃないんです。」

というコメントが載っていた。

奇しくも

わずか数日の間に

私の住む地域のニュースとして

このような対照的な出来事を報じる記事が

新聞に掲載されたのだった。


(この記事続く)


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乳房の膿瘍

稟告は「起立不能」だった。

牛が坐り込んでいるところへゆくと、

ずいぶんと疲れた表情の牛が、

一瞬、私を恨めしそうに見て、

また視線を遠くへ移した。

「ずっと乳房炎やっていたんですけど・・・今朝から、立てなくなってしまって・・・」

IMG_0940▲牧場の従業員は、

そう言って牛を立たせようとして、

体を揺すってみたりしたが、

牛は数センチ体を持ち上げただけで、

再びへたり込んでしまった。

「左の前の乳房が、ずいぶん腫れているね。」

「はい、そこがずっと悪かったんです・・・」

私は左の前の乳頭を掴んで

乳汁を絞り出そうと

乳房を押してみたら

ポチャ・・・ポチャ・・・

という音がした。

何か、液体が溜まっているような音だった。

乳房に液体が溜まる、と聞けば

乳牛を知らない人であれば

乳房に乳汁が溜まっている、と思うかもしれない。

しかし

乳房に蓄えられる乳汁というのは

乳腺細胞とその周囲にぎっしりと溜るので

乳房をどれほど揺すっても

決してチャポチャポというような

水分の溜まったような音は聞こえることはない。

この音は明らかに異常だった。

「何か悪いものが溜まっているんだね。」

私は即座に、これは乳房の膿瘍だと思った。

「針を刺して中身を吸ってみるね。」

IMG_0939車から注射器と留置針を取ってきて

乳房の問題の箇所へ

ゆっくりそおっと穿刺した。

「あー、やっぱり・・・」

刺した針の口から

水分の高い化膿汁が吹き出てきた。

▲牧場の従業員君はこれを黙って見つめていた。

IMG_0938「・・・。」

「ずいぶん我慢したねぇ・・・」

「立てるようになりますかね・・・」

「わからないけど、やるだけやってみよう。」

私は、穿刺した針をそのままにして

この牛の治療の準備を始めた。

補液剤と抗生物質を持ってきて

投与を開始しようと牛に近づいた時

IMG_0941牛はもがきながら

足を踏ん張って

バタつきながらも

なんとか自力で起立した。

「あ、立った!」

▲牧場の従業員君は少し驚いたようだった。

この牛に、どれ程の気持ちがあったのかは

未だに不明だが

不健康な体ながらに

この牛が

一生懸命生きようとしていることは

間違いのないことであり

毎日数キロに満たない乳汁を

搾り出しながら生きていることも

間違いのないことであった。

BlogPaint後日

この乳房の膿汁の

細菌検査の結果が来た

それによれば

αーstreptococcus

が検出された。


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重種馬つながりの新年会

「研修所のM木先生が講義に来られるので、その晩飲みませんか?」

帯広畜大のN保先生からの電話だった。

私は二つ返事でもちろんOK。

その日を楽しみに待ち、

先日、帯広の居酒屋へ集合した。

私が小上がりで待って居ると、

まずN保先生がやってきた。

続いて、M木先生がやってきた。

「あともう一人は・・・?」

「I井先生です。もう少し待ちますか。」

「I井先生と飲むのは、久しぶりですねー♪」

しばらくして、I井先生がやってきた。

「どうも、お待たせしました。」

「お久しぶりですねー。」

「この面子と聞いたら、外せないですよ(笑)」

 「・・・では、乾杯。」

和やかにはじまったプチ新年会は

私の敬愛する先生方ばかりの

嬉しい飲み会だった。

今回の4人の獣医師の共通項といえば

重種馬の繁殖である。

かつて重種馬の繁殖管理や分娩管理についての

データーを集めて共同研究をしたことがあった。

その後

M木先生は十勝NOSAIから野幌の研修所へ

I井先生は畜大から開業へ

N保先生はJRAから畜大へ

と、それぞれの道を進まれて

重種馬の繁殖に止まらず

皆さん、多方面で

八面六臂の活躍をされている。

そんな獣医療界の最先端をゆく3人の先生方と

気のおけない飲み友達で居られる私は

つくづく幸運であると思った。

これも、重種馬の繁殖に興味を持って

今まで仕事をしてきたおかげかなと思った。

重種馬に感謝である。

M木先生とは、もうかれこれ30年近い付き合いになるし

I井先生とN保先生とも20年以上、いろいろとお世話になってきた。

若い頃は

このメンバーで飲んだ時は

仕事の話ばかりをしていたような記憶がある。

各地方の色々な獣医学会などへ

私がたまに参加する時には

3人の先生方は、必ず講師や座長などで参加されているので

私にとっては、3人とも学問の師という思いがある。

夜遅くまで飲んでも

学問と仕事の話ばかりをしていたのは

皆さん本当に、真摯に仕事に打ち込まれているからだろうと思う。

今回の飲み会も、そういう感じで始まったが

少し違ってきたのは

それぞれのご家庭のことやら趣味のことやら

プライベートな話題でも

いろいろと盛り上がるようになってきたことだ。

私もついつい、日頃の由無し事を話しまくって

気持ちよく発散をさせていただいたような気がする。

みなさんそれぞれ

色々な人生の荒波を乗り越え?!

IMG_0987円熟味を増して

ますます進化し続ける

3人の先生方なのであった。

「またやりましょう!」

楽しい時間は瞬くまに過ぎ

またの再会を約束して

それぞれ

深夜の帯広の街を

後にしたのだった。


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