北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

第36回北の年尾忌句会in小樽

26BE398A-6619-4F76-8756-E19613E80A9710月の第2月曜日は、

毎年小樽ホトトギス会主催の、

北の年尾忌句会が開催され、

今年で36回目を迎える。

年尾忌というのは正確には、

高浜虚子の長男の高浜年尾の亡くなった10月26日であり、

その日には鎌倉の寿福寺で句会が行われる。

しかし道内のホトトギス俳人にとっては、

そこへ馳せ参じることも難しく、

その前の体育の日が祭日ということで

毎年この日に年尾忌句会が小樽で行われるようになった。

高浜年尾はご存知の通り

小樽商大(当時は小樽高商)時代に4年間小樽に暮らし

数年下の伊藤整や小林多喜二などとも交流があり

当時の北海道文学を盛り上げた小樽ゆかりの俳人である。

私は4年前にこの大会に初めて参加してから

以来毎年欠かさず出席するようになった。

その理由はいろいろ有るけれども

94C28CDE-6F3B-4032-B35B-A786C649D501やはり

ホトトギスを中心とした伝統系の俳人たちが

高浜年尾先生を偲びながら真摯な気持ちで集い

句会の場を設けて句を詠みあうという

身の引き締まる句会であるからだと思う。

「ホトトギスの俳句」

「高浜年尾の忌」

という旗印を堂々と掲げて開催する句会は

北海道ではこの句会だけである。

正直、私は

ホトトギスの俳句とはどういうものであるか

高浜年尾先生とはどういう人だったのか

まだまだ良くわかっていない。

しかし、だからこそ

北の年尾忌句会に毎年参加して

ホトトギス俳句とはどういうものかを

高浜年尾先生はどういう人だったのかを

勉強したいのである。

この句会に参加すると

高浜年尾の生前にお会いしたことのある人もまだ多くいて

年尾のいろいろなエピソードを聞くことができる。

そういう方たちの詠む句は

私にはとても詠めない心のこもった句である。

会場にはいつも遺影とお花が供えられ

その和やかな遺影の表情からは

年尾先生の人柄が偲ばれる。

99BD4F5D-3C2F-49F1-8396-3B0016F36FC7私は今年から

この句会の選者を仰せつかってしまった。

今年の選者は私の他には

荒舩青嶺、岡本清、工藤牧村、桂せい久、辻井靖之(大会長)、

というバリバリの「ホトトギス俳句」の選者の方々であり

私は初めてで大変緊張したが

なぜか

年尾先生の柔和な遺影を見たら気持ちが楽になり

気持ち良く選と句評をすることができた♪

9971EB44-FE1D-467F-82B8-2234B8CDE776今年は参加者58名で5句の投句

総句数290句から15句を選び

さらにその中の5句を特選として

句評をさせていただいた。

参加者の中には

ホトトギス系の俳人ばかりではなく

私のよく知る道内の俳人が幅広く集まり

年齢も20代から80代までと

幅広い層の参加者による句会であり

忌日の句会としてはおそらく道内最大規模

920E8B1A-DF82-4CB8-847E-AE7C9E490B0Eその伝統は今なお盛んに引き継がれている。

私もこの句会のために

微力ながら今後も精一杯

お手伝いさせていただきたいと思っている。


 小樽のみ晴れて年尾の忌のふしぎ   豆作



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町民文芸「まくべつ」33号

町民文芸誌「まくべつ」33号が届いた。

もうかれこれ20年以上、

私は、地元の図書館が発行しているこの文芸誌に、

IMG_2402俳句と川柳を投稿している。

かつては漢詩やエッセイなども投稿したことがあった。

地元の文芸誌は、

何物にも替え難い、

特別なものという思いが私にはある。

それはまるで自分の家族や町内会のご近所さんが有志で作った雑誌、

というようなアットホームな雰囲気がある。

編集委員の方々や執筆者の顔ぶれを拝見すると

近所へ買い物した時によくお目にかかる人や

仕事や子供のつながり等で知っている人などがいて

実に身近な雑誌なのである。

そういう人たちが意外な作品や文章を寄せていたりして

新鮮で誇らしく

また、ちょっと照れくさいような

独特の感興を覚えながら読む雑誌である。

今回の特集は「幕別台風災害2016」だった。

それに関連する記事は

将来貴重な記録として残ることだろう。

その他いろいろバラエティーに富む記事の中で

私の俳句と川柳も

毎度お粗末ながら掲載させていただいた。


まずは俳句


IMG_2403  孕みたる牛のよく飲む日永かな  

  牛の首撫でれば春の日の匂ひ

  助産せし牛に我が身に寒の湯気

  往診の夜道しばれる雨上がり

  純心な牛涼しげや放牧地


俳句の方はいつも

仕事中に詠んでいるものを

5句投句した。

最近、仕事中に詠む俳句は

変わり映えのしないワンパターになっているのかもしれない。

しかし、それでも

仕事中の出来事を詠みたいという気持ちは変わらない。

そんな気持ちがある以上は

ずっと詠み続けることになるだろう。

そのまま詠み続けているうちに

いつかまた新しいものが出てくるだろうと

たかをくくっている。

意識して新しみを求めて

自分の句風を変えてゆこうなどとは

思わない方が良いと思っている。

自分の句風というものは

変わる時には勝手に変わってゆくものだろう

と私は思っている。


つぎに川柳


IMG_2404 酒気帯びを逮捕したらばウチの部下

 過労死の牛にも欲しい労基法

 農協が農競となるFTA

 使えない豊洲に入れよ核のゴミ

 原発の上も飛びますオスプレイ



20代の頃

私は

川柳ばかり作っていた。

しかし

川柳ばかり作っていると心が荒んでしまうので

今の私は

川柳を作ることには全く力を入れていない。

それでも

世の中には腹立たしいことが起こるもので

そういう時は、つい

川柳を作ってしまう(苦笑)。

今回投句した川柳は

そんな作品である。

ヒマつぶしに読んでいただけれは

幸いである。


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難産介助の強い味方

夜間当番の終了時間の間際、

◇牧場の従業員のS君から電話が入った。

「子宮捻転なんですけど・・・」

私は朝の診療所の通常の受付時間までには、

帰って来れないことを覚悟して、

◇牧場へ車を走らせた。

着いて手を入れてみると、

S君の言うとおりの子宮捻転ではあったものの

捻れはそれほど強くはなく

胎児の足と頭部には何とか触れることが出来た。

2次破水は終わっているようだった。

こういう場合も、まずは

用手整復法を試みる。

胎児の前肢を反捻れ転方向へ押す

胎児の頭部を反捻れ転方向へ押す

子宮の内壁を反捻れ転方向に押す

などの技を繰り出していると

胎児があるタイミングで

ぐるっと動いた。

子宮の捻れが解消されたようだった。

その拍子に胎水もあふれ出てきた。

そして

胎児の前肢が2本

産道へ押されて進入してきた

さらに頭部も押されて産道へ

進入してくる

はず

なのに・・・

「あれ?、頭はどこだ?」

頭部がうまく触れなくなった。

先ほど胎児が自分で動いたとき

胎児の頭部が前肢の陰に回り

そのまま子宮の奥のほうへ行ってしまったようだ。

ここで、頭部をキープしないとまずいことになる。

私はとっさに前肢2本を産道深く押し込み

スペースの空いたところで腕を奥に入れて

胎児の頭部を探った。

「あー、あったあった、頭が、でも、鼻先と下顎は触れるんだけど、その先が・・・」

鼻先や下顎に指先が触れるだけでは不十分であった。

頭部をキープするには、耳から後頭部にかけて

ワイヤーをまわすのがベストであり

それが出来なければ

せめて眼窩(眼の窪み)に指がとどかなければならない。

眼窩に指がとどけば

12D9EF2C-6433-4A83-9A41-9D6304704911そこに

難産介助の強い味方である

鈍鈎(どんこう)を引っ掛けて

胎児の頭部をキープすることが出来る。

ところが今

私の指先は、眼窩まではとどかず

下顎さえも、指で掴むことが出来なかった。

「・・・ちよっとS君・・・手袋はいて・・・手を入れてみてくれる?・・・」

「はいー」

「・・・S君なら、頭の下顎を掴めるだろ?・・・」

「どうかわかんないですけどー」

S君は身長183cmの大男で

手足も非常に長く

◇牧場のちょっとしたお産なら

簡単に介助できる腕を持っている。 

私は産道から手をぬいて

S君にバトンタッチをした。

「・・・頭のどこでもいいんだけど・・・手で掴める?・・・」

「はいー、なんとかー、」

「・・・掴めたら・・・少し揺さぶって・・・」

「こーですかー、あー、」

「・・・少し引っ張れる?・・・」

「こーですか、あー、なんとかー、」

「・・・よし、替わって!・・・」

S君から交代した私は

再び産道に手を入れた。

すると

胎児の眼窩が

私の手にとどく位置来ていた。

「おー、頭が来てるよ、さすがS君!。」

私は直ちに

鈍鈎を眼窩に引っ掛けて

胎児の頭部をキープした。

キープしてから

胎児の前肢2本に産科ロープを装着。

前肢2本をまだ引かずにそのままにして

キープした頭部の眼窩にかかっている紐を

7101953F-5ADA-4BAD-BD35-566198B7B283ゆっくりと牽引するよう指示。

すると

胎児の頭部が

ぐぐぐと、産道に乗ってきた。

「よし。これから先は、普通のお産と一緒。」

63B7E9D9-B48E-44D7-B08C-2E236E1168BE私はS君と共に

胎児を無事に介助娩出させた。

おおきなF1の♀の胎児だった。

産後の一通りの仕事を終えてから

私はS君と肩をくっつけ合わせて

BF0B3993-A4DE-4315-A6D5-27289406EF1B自分の腕とS君の腕の

長さを比べてみた。

写真のとおり

S君の腕はとても長く

私よりも

3688FD43-CC42-4C5A-BF88-EEA9EFB84ADC5cm近く長かった。

このS君の腕は

鈍鈎とともに

難産介助の強い味方

であった。

予想よりも早く仕事が終わり

帰路についた。

診療所の朝の始業時間までには

帰って来れないことを覚悟していたが

S君の腕のおかげで

遅刻せずに間に合うことがてきた。


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和牛の乳頭先端の腫瘤

「親牛の乳頭が腫れている、イボだろうか?」、

黒毛和種の繁殖をしている★さんからの往診以来だった。

乳頭の腫瘤や損傷の治療は、

乳牛では頻繁にある事だが、

肉牛ではそう滅多にあるものではないというのが、

我々十勝の酪農地帯で仕事をする獣医師たちの、

普通の感覚ではないかと思う。

和牛の乳頭には

ミルカーが装着されることもなく

IMG_2311仔牛の口以外のものに吸われることはない。

乳牛の乳頭のように

遺伝的に改良をされたり

酷使されることが全くない

IMG_2313自然な器官のままの乳頭である。

そんな和牛の乳頭が

今回は

異常な様相を見せていた。

IMG_2315先端に白くコリコリした腫瘤物があり

乳頭の二倍ほどの直径に肥大していた。

「だんだん大きくなってきたみたいなんだよね。」

「この牛、経産牛ですよね。妊娠してる?」

IMG_2318「そう。あと2ヶ月で産むんだけど、こんな乳頭じゃ・・・(笑)」

「仔牛も吸いづらいですよね。先っぼを切り落としますか?」

「お願いします。」

牛を枠場に保定して

IMG_2323鋏で切断。

切り口からポタポタと出血があったので

輪ゴムで止血処置。

輪ゴムは夕方外してもらい

IMG_2317抗生物質をあと3日間打つよう指示。

切り取った腫瘤物を

鋏で割ってみると

その中身は

IMG_2326均一な白い組織だった。

脂肪組織の塊のようだった。

和牛の体にはこのような

脂肪代謝に異常を来す部分が

IMG_2325多いのかもしれない。

それにしても

その場所が乳頭の先端とは

治療するには簡単な場所で

まことに有り難かった(笑)


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乳房からの出血(五たび!)

先日の往診の1件目は、

♯牧場の乳房炎の牛の乳汁サンプルを回収し、

乳房炎軟膏を薬治するという仕事。

訪問した獣医師が1人で勝手にできる、

非常に簡単な仕事からのスタート、

のはずだった、

ところが、

♯牧場に着くと、

従業員のK君が、

私の車を見つけてやって来た。

「・・・あの、安田さん。」

「どうかした?」

「・・・牛がまた、カラスにやられたみたいで・・・」

「え?、また?」

「・・・乳房から出血してるんすよ。」

「またかい!」

「・・・はい、全く同じところから・・・縫って欲しいんすけど。」

「わかったよ、でもこれで何回目?」

「・・・春に3回たて続けにやって・・・」

「♯牧場さんは、これで4回目かな(笑)」

「・・・そーっすね。」

「それも、何でいつも、俺が来た時なの?」

「・・・4回とも全部、安田さんすよね(笑)・・・」

簡易パーラーへ牛を診に行くと

IMG_2207またしても乳房の

外側に走る乳静脈から

血液が吹き出して

牛の右の飛節と床を

赤く染めていた。

全く同じ所からの出血。

これはまたカラスの仕業に間違いはなかった。

「・・・春先に鉄砲で追い払ってから、しばらくなかったんすけど・・・」

「この間、またカラスの軍団がこの辺を飛び回ってたよね。」

「・・・そうなんすよ。」

「また鉄砲で、やってもらわないと、また繰り返すよ。」

「・・・はい。」

「俺の時ばっかり、もう勘弁してほしい・・・」

「・・・(笑)」

私は自分の引きの良さ(?!)に呆れながら

乳房の縫合の準備を始めた。

過去4回の経験から

こういう出血を止血するには

IMG_2216写真のようなサイズの角針と吸収糸が

縫いやすいことを学習した私は

出血部位をまず鉗子で挟み

ビルコン溶液で洗い

IMG_2209巾着縫合で止血した。

出血した直後だったらしく

牛はいたって元気。

貧血も全くなし。

IMG_2210縫合処置以外のことは何もせず

この牛の治療を終えた。

それにしても

うちの診療所には

IMG_2213現在7人の獣医師が交代で勤務しているが

今年度の半年間で

カラスによる牛の乳房からの出血の

治療をしたのは

IMG_2214すべて私。

私以外の6名の獣医師はこの症例に当たっていないのだ。

なぜ私ばかりがこんなに当たるのだろうか???

その確率をざっと計算してみると

IMG_22157分の1の確率が5回連続だから

35分の1という確率になる。

35年に1度訪れる当たり年(?!)

ここにまた

過去の4回の乳房出血の記録を

この記事に貼り付けておこう。


 2月24日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月8日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月17日の乳房からの出血(♯牧場にて) 


 8月20日の乳房からの出血(∩牧場にて)



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第15回大とかち俳句賞全国俳句大会

NPO十勝文化会議と十勝毎日新聞社主催の、

第15回大とかち俳句賞全国俳句大会が、

IMG_2381先日の9月23日に開催された。 

全国大会と名乗っている以上、

全国的に著名な選者による選がなされる大会であり、

前回の第14回大会では、道外の特別選者として

金子兜太、水原春郎、嶋田一歩、の三氏が選をしていた。

しかし今年の道外の特別選者は

嶋田一歩氏1人だけとなった。

また、道内の選者も、前回選をした

佐藤冬彦、杉野一博、深谷雄大、依田明倫、各氏が引退した。

その代わりに、新たな選者として

竹内直治、石川青狼、十河宣洋、五十嵐秀彦、辻脇系一、の各氏が加わった。

今回の大会は

いつになく選者の世代交代が進んだ大会となった。

選者が変わって新しくなるということは

その大会に選ばれる俳句の傾向も

変わって新しくなるということである。

大とかち俳句大会も15回目を迎えて

転換期を迎えたようである。

主催者のNPOとかち文化会議の文芸部事務局の方もまた

今年からメンバーが変わり

全てが新しく生まれ変わったような大会だった。

事務局のスタッフが新しくなったのは

とても良いことではあるのだが

新しくなったスタッフの方と

地元の俳人の方々との「連携」が

若干薄くなってしまった感があることは否めない。

その表れとして

司会者の勝毎スタッフの方の

選者や俳人の名前(俳号)の読み誤りが多かった。

また、今回新たな選者になった方の中で

辻脇系一、五十嵐秀彦、の両氏が

本大会にわざわざ足を運び、出席してくれたのだが

その両氏の選の講評の場を設けていなかったのは

まことに惜しく、残念なことだった。

これは来年に向けての課題だと思った。

せっかく選者に迎えた著名な俳人が

遠路はるばる来ていただいているのだから

その選句の講評を生で聞き

今後の大とかち俳句賞の選の傾向を知るきっかけにしたかった。

その選の傾向というか、方向性が

本大会の特色や行く末に影響を与えるものだと思うからである。

大会の後は

十勝の俳人の各結社や

各自気の合うグループの方々が

とかちプラザの一階の喫茶店などで

アフター句会を楽しんでいた。

以前は主催者のNPO十勝文化会議のスタッフの音頭で

大きな懇親会があったのだが

それは数年前に無くなってしまった。

やはり、アフター句会はあった方が楽しい。

私の所属する俳句結社「柏林」の方々は7〜8人出席していたので

私はまずそのグループでお茶会をした。

さらにその後

札幌から来てくれた青山酔鳴、五十嵐秀彦、両氏を囲んで

十勝の若手俳人(!)である

三品吏紀、金野克典、鹿野英岳、吉岡簫子、そして私の7人が

帯広市のとある店に集合して食事会を楽しんだ。

IMG_2382やはり、お茶だけではなく飲み会があった方が良い(笑)。

その席ではなんと

この日が私の誕生日だったということで

バースディケーキのプレゼントをいただいた。

IMG_2384全く思いもよらぬサプライズだったので

とても嬉しかった♪

皆さんありがとうございました!

さらにその後

IMG_2385二次会は最近おきまりの

俳人マスター山下敦氏のジャズバー「PAGE1」へ。

ここでもまた最近おきまりになりつつある

袋回し句会が行われた。

IMG_2386朝から晩まで

俳句漬けの一日。

俳句大会の日は

こうあるべきなのだ(笑)


 秋分の句会となりし誕生日  豆作



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新生子牛の中手骨骨折・再び(4)

8月3日に生まれたこの仔牛は、

その日のうちに右中手骨を骨折し、

即日、

キャストを巻いて固定し、

その後、

8月23日にキャストを巻きなおし、

BlogPaintさらにその後、

9月4日に再びキャストを外し、

その日の患肢の状態を見て治癒と判断して

治療をめでたく終了した・・・

はずだったのだが・・・

翌日に

♯さんからまた電話がかかって来た。

その往診依頼の内容は

「昨日キャストを外した前肢が太く腫れている。」

というものだった。

もしや

まだ骨折部位がしっかりと融合しておらず

再び骨折してしまってのではないか

という不安が一瞬よぎったが

まずは実物を見なけれ始まらない。

♯さん宅へ、図らずも

昨日に引き続いて今日もまた

この仔牛の治療に来た私は

IMG_2203恐る恐る

仔牛の右前肢を覗いてみた。

体重は支えているが

肘付近から蹄冠まで太く腫れあがっていた。

「・・・これは・・・ずいぶん、腫れちゃったねぇ・・・」

「だいじょうぶでなんですか?」

私は子牛の前肢をつかんで

骨折部位を触診した。

IMG_2206「・・・これは・・・骨はきっと大丈夫だと思うけど・・・」

「こんなに腫れてるのは?」

「・・・昨日キャストを外すとき、傷つけたのかな・・・」

「傷ですか?」

「・・・うん、ギブスカッターで傷つけたのか、それともキャストの擦り傷なのか・・・」

「わからない?」

「・・・ばい菌が入ったみたい・・・」

「菌?」

「・・・だろうね、一晩でこんなに腫れたんだから、細菌感染だと思う・・・」

「注射か何か打ちます?」

「・・・うん、しばらく抗生物質(マイシリン)を毎日打って欲しいんだけど・・・」

私はこの仔牛にマイシリンを打ち

その後1週間♯さんに打ち続けてもらうように指示した。

それから1週間後の

9月13日には

BlogPaint左の写真のように

患肢の背側面からは腫れも引いた様に見えるが

掌側のちょうど骨折癒合の部分には

赤いびらんが残っているのが認められた。

さらにそれから10日経った

9月22日には

IMG_2376写真のような掌側のびらんは

少し縮まったが

そのやや遠位内側の位置にも

小さなびらんが見られた。

この部分のびらんは

ギブスカッターで傷つけられたとは考えにくいので

IMG_2377これはやはり

キャスト擦れによって細かい傷が出来

そこに細菌が感染して

前肢が腫れ上がった物と思われた。

という事は

キャストの巻き方に

あるいは

下巻きの材質などに

まだまだ問題があると

言えるのではないかと思った。



(この記事終わり)



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新生仔牛の中手骨骨折・再び(3)

今回の中手骨骨折の治療は成功しそうだ、

ようやくそんな気持になれたのは、

治療から2週間が経った時に撮った、

X線画像を見た時だった。

そしてその翌日、

早速私は、

♯さん宅へ往診に向かい、

キャストを巻き直すことにした。

IMG_2078前回のように

キャストを外して行くにしたがって

異臭が漂ってきたり

患肢が冷たくなっていたり

IMG_2079していないだろうかという不安は

今回は

昨日見たX線画像によってほぼ払拭されており

確実に治癒に向かっているという

IMG_2080安堵の心持ちでキャストを外すことができた。

キャストを外すと

蹄の先まで暖かく血が通い

骨折部位が癒合を始めている前肢が現われた。

化膿したり壊死していたりしていないことを確認し

IMG_2081私は再び患肢に

伸縮包帯と

アルミホイルと

キャストを

IMG_2084順に巻いて行った。

今のところ、私が行っている骨折の外固定は

こういう方法なのであるが

前回の記事のhig先生のコメントにあるように

IMG_2085もっと良く、もっと相応しい材質の下巻き

ストッキネット、エバーウールシート等、があるようなので

これをお読みの現役の獣医師の皆さんは

ぜひこれからは

IMG_2087hig先生のコメントを参考にして

より良い材質の下巻きを診療所に常備して

それを使えるよう努力して頂きたいと思う。

さて

2回目のキャスト固定が終わり

その日からまた

2週間が経過した。

IMG_2194私は再び♯牧場へ赴き

この仔牛の最後の治療をすべく

ギブスカッターで

キャストを外した。

BlogPaint患肢はほぼ完全に

骨融合をして

仔牛の中手骨骨折の治療は

これをもって終了の宣言をして

♯牧場を後にした。

ところが・・・

翌日

♯さんから

電話がかかってきた。



(この記事続く)



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新生子牛の中手骨骨折・再び(2)

産科チェーンによる牽引で、

仔牛の左右の中手骨を骨折させてしまった、

酪農家の♯さんは、

その後産科チェーンを使わず、

産科ロープを使って無理な牽引は止めている様であった。

ところが今回、またしても、

生まれたばかりの仔牛の右前肢の中手骨の骨折。

なんという不運であろうか。

そして、それを治療した獣医師の私は最初、

♯さんの稟告が嘘で、

本当はまた、チェーンの牽引によって骨折させたのではないかと疑っていた。

それも♯さんにとってはまことに不本意なことであったに違いない。

しかし

エックス線画像を診ることによって、

今回は、牽引による骨折ではなく、

親牛に踏まれたことによる骨折である可能性が高いことがわかった。

ということは

今回の骨折部位周辺の軟部組織のダメージは

前回の骨折部位周辺のダメージよりは軽度であろう

と推測することが出来た。

私も、♯さんも

今度こそは

骨がちゃんと癒合して

仔牛が助かってくれることを

心から願っていた。

そんな思いを抱きつつ

2週間が経過した。

♯さんの仔牛はとても元気だった。

BlogPaint前回の失敗したときの仔牛も元気だったから

子牛の外見からは

中手骨がちゃんと癒合しているかどうかは

全くわからない。

仔牛を寝かせて

子牛の前肢のエックス線撮影をした。

そしてその足で東部診療所へ走り

エックス線フィルムのカセッテを

現像機械へ挿入した。

祈るような気持ちで画面を見る私の

目の前のモニターに現れた画像は

左のような画像だった。

IMG_2072「・・・。」

「癒合してるんじゃないですか?」

一緒に画面を覗いていた後輩のM獣医師がそう言った。

「・・・そう?」

「大丈夫ですよ。」

IMG_2071「・・・そう、・・・だといいんだけど。」

「いいんじゃないすか。」

「・・・これがね、骨折した翌日に撮った写真なんだけど。」

私は、携帯電話に保存されている2週間前の

この子牛の骨折部位の画像をM獣医師に見せながら

それを、目の前のモニターに映し出された今日の画像と

IMG_2074比較してみた。

上が2週間前の画像で

下が今日の画像。

「・・・白い部分が出てきているみたいなんだけど。」

IMG_2075「あー、比べてみるとよくわかりますね。」

私は、今回の骨折が

何とか治癒に向かいつつあるとを確認し

胸をなでおろしたのだった。

ちなみに

最後の2枚のエックス線画像は

IMG_1843今回の症例ではなく

前回の失敗例すなわち

左右の中手骨がどちらも癒合しなかった症例の画像である。

今回のものと比べて明らかなのは

2週間たっても

IMG_1844骨折部位には

白い化骨細胞の出現が

全く見られず

むしろ黒く変化して

壊死していることである。



(この記事続く)



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新生子牛の中手骨骨折・再び(1)

「生まれたばかりの仔牛の足がおかしい・・・」

酪農家の♯さんからの電話だった。

♯さんといえば、

つい最近の1ヶ月ほど前に、

産科チェーンで仔牛の前肢を牽引し、

両前肢の中手骨を骨折させて、

結局治せずに処分したばかりの酪農家である。

なんと・・・また仔牛の骨折か・・・、

到着して、仔牛の右前足を診ると

着地不能でひどく腫れている。

「・・・これは、折れてるよ。」

IMG_2006「ほんとに?」

「・・・また助産で引っ張ったの?」

「いや、引っ張ってない。」

「・・・ほんとに?」

IMG_1996「ほんとに引っ張ってないよ、自然に生まれてたんだ。」

「・・・ほんとに?」

「ほんとだって。」

「・・・とにかく、またキャスト巻かなきゃダメだね。」

IMG_2008「よろしく頼みます。」

「・・・とにかく、今度こそ、治さないとね。」

あらためて触診してみても

仔牛の右前肢は間違いなく骨折していた。

IMG_2010それも、中手骨の遠位の

ちょうど産科チェーンをかけて牽引する位置である。

私は♯さんが嘘をついているのではないかと

ずっと疑っていた。

IMG_2011本当はまた産科チェーンをかけて牽引して

また仔牛の前肢を骨折させてしまったけれども

私に呆れられることが恥ずかしくて

咄嗟に嘘がついて出たのではないかと

IMG_2012ずっと疑いつつも

♯さんをそれ以上は追求せずに

前回と同じような方法で

前肢を牽引して

IMG_2017下巻きはバンデージのみ

その上にアルミホイルを巻き

その上からキャストを巻いた。

抗生物質を投与し

翌日

エックス線撮影をした。

IMG_2018その画像が

下の写真である。

骨折部位が真っ直ぐではなく

前方向に屈折したまま

キャストを巻いてしまっている。

前肢の牽引方向が悪かったことを示している。

牽引する包帯の結び目を

仔牛の前肢の掌側ではなく背側にすべきだったのだ。

そのご指摘は甘んじて受けることにして

骨折した部分をさらによく見ると

IMG_2022この骨折は

中手骨の掌側よりも背側の方に

ダメージの大きい折れ方をしていた。

これは

何か大きな圧力が

IMG_2020背側から掌側の方向へ掛って

その圧力によって骨折をしたような折れ方をしていた。

すなわち、これは

産科チェーンの牽引による骨折ではなく

親に踏まれたことによる骨折ではないか

と想像される骨折の画像だった。

♯さんは

つまらぬ嘘をついていたわけではない・・・と

この画像を見た私は

そう思い

♯さんの発言を

やっと信用することができた。


(この記事続く)



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日本伝統俳句協会全国大会in群馬

日本伝統俳句協会の第28回の全国大会が、

IMG_22649月9.10日の2日間にわたり、

群馬県は榛名山麓の伊香保で開催された。

私がこの大会に出るのは、

4年前に札幌で行われた大会以来2回目だ。

群馬は私の所属俳句誌「桑海」の編集部があり

私の敬愛する俳人村上鬼城の活動した土地であり

IMG_2269私の娘の住むところでもあり

何かとご縁か深い場所。

娘に会うことや桑海の句友の皆さんと会うことなど

いろいろな理由を重ねて

職場から休みを頂いて

大会に参加して来た。

開催地は終日好天に恵まれ

たいへん気持ちの良い吟行をすることが出来た。

IMG_2272吟行の気持ち良さに加えて

会場の宿の温泉に浸かる心地よさと

懇親会のお酒のうまさも加わり

申し分なく楽しさを満喫することができた。

しかし

あまりにも心地の良い時間のなかで

当日、詠んだ俳句のほうは

全く成績が振るわなかった(笑)

そのような大会での

稲畑汀子会長の講評はいつものように

「選に入らなくても良いのです。こうして皆さんと俳句を作るという事が良いのです。」

IMG_2300という、優しい言葉を聞き

今回もそのお言葉に慰められることになった(笑)

いつまでもそんな事ではいけないのと思うのだが。

それでも我が花鳥諷詠の若干の進歩といえば

今大会の事前に行われる募集句の部において

IMG_2271稲畑汀子会長の選に

私の一句


 雨のまだ降り手にとどきさうな虹   豆作


が入ったこと。

当日は全然ダメでも募集句の方でなんとか

進歩を感じ得たのはちょっと嬉しかった。

さらに

大会の講演で

「西洋の詩と東洋の詩、特に日本の詩」

と題した有馬朗人(ありま・あきと)氏の講演が大変面白かった。

有馬朗人氏は国際俳句交流協会の会長さんで

俳句をユネスコの無形文化遺産に登録することを目指している方である。

俳句をそういう無形文化遺産というものに登録することについて

IMG_2301色々意見はあるようだが

私はそれも結構なことではないか

と思っている。

俳句を文化遺産に登録しようがしまいが

俳句という日本の文芸は揺らぐこと無く

この世界に生き続けるものであろうと思うからである。

歌舞伎や能、和食あるいはヨガなども

すでにユネスコの無形文化遺産に登録されているらしいが

それらと同様、俳句も揺らぐことはないだろう。

ユネスコの無形文化遺産のリストを見ると

そこに登録されているものの共通点は

「西洋人の知らない文化」

という西洋中心の考え方が根底にあるように思える。

歌舞伎や能は登録されているが

ミュージカルやオペラは登録されていない。

和食は登録されているが

フランス料理は登録されていない。

そういう西洋人の勝手に基づくユネスコの文化遺産運動など

俳句にとっては針小な事だと思う、が

西洋人に俳句というものを理解させる一助になるのであれば

それも結構なことだろう、と私は思う。

今回私は、有馬朗人氏の講演をはじめて拝聴したが

さすがに東大学長や文部大臣などを務めた方の話は

非常にわかりやすく、聞いていて飽きのこない楽しいものだった。

まさに講演のプロ、教壇に立つプロ、だと思った。

西洋の詩歌と東洋の詩歌を比較することでその違いが浮き彫りになり

だからこそユネスコの無形文化遺産に俳句を登録すべきではないか

という有馬氏の考え方は、とても明瞭でよく理解することが出来た。

ただ、有馬朗人氏はこの運動に積極的だが

稲畑汀子先生はこの運動に対しては

勝手におやりなさい

というスタンスに見えた。

ともあれ

今回の吟行会は

榛名湖畔の花野だったが

私にはもちろんはじめての経験だった。

その中で、私の収穫出来た事といえば、何と言っても

IMG_2289北海道ではなかなか体験することのできない「季題」との出会いであった。

すなわち、左の写真の上から順に

「ゆうすげ」

「松虫草」

IMG_2279「吾亦紅(ワレモコウ)」

「女郎花(オミナエシ)」

「藤袴(フジバカマ)」

などの秋の植物だ。

IMG_2283こういう北海道ではなかなか出会うことのできない季題を

生で体験できる機会は

北海道に住んでいる限り

そう多くはない。

IMG_2296インターネットで未知の季題の写真を見たり動画を見たりしても

それは視聴覚だけの刺激であり

大きさも拡大と縮小がなされており

本物の季題とは程遠く

IMG_2291結果、良い俳句を詠むことはできない。

未知なる季題と対面し

それを生で感じることが出来たのは

とても有意義なことだった。


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重種馬の蹄病治療用ドリル

重種馬の蹄病を治療する機会は減ってしまった、

しかし、減ったとはいっても、

我が診療地区に重種馬が飼われている限り、

ゼロになることは無い。

1年に数回くらいの頻度ではあるが、

重種馬の蹄病治療の依頼が、

忘れそうになる頃にやってくる。

それに備えて私なりの準備をしていることは

以前の記事にも書いている。

約8年前の私のブログに書いた

電動ドリルを使った蹄病の治療法である。


その記事には

当時の私の蹄病治療の考え方と

IMG_2217手動ドリルではなくて

電動ドリルを使った治療法が書いてある。

基本的な考え方は当時と今と変わっていないのだが

8年前に比べて

重種馬の蹄病治療の機会は

明らかに減ってしまい

そして

私は8年前から比べて8歳年をとった(当たり前だ)。

その間

私の蹄病治療の考えや方法を

私よりも若い獣医師たちに

どれだけ伝達することが出来たのか・・・

と、考えると

これが大変お寒い状況であることに

今更ながら気付いた。

今もし

重種馬の蹄病の治療の依頼があったとき

私が出勤していれば私が対応することになるが

それだけでは若い獣医師たちに伝達することができないので

若い獣医師たちと一緒に往診へ向かい

彼らと一緒に治療の場に臨まなければならない。

そこで実際に治療をやって見せなければならない。

しかしそれだけではまだダメで

やって見せた手技を

こんどは彼らが実際にやってみなければ

本当の技術の伝達ができたことにはならない。

さらにそのためには

私の使っている道具を

いちいち私から借りて使うのではなく

私の使っている道具と同じ道具を

若い獣医師たちにも常に持っていてもらわなければならない。

ここでちょっと思案をした。

重種馬の蹄病治療のポイントは

蹄の炎症箇所を特定することであり

さらに特定した箇所に向けて

蹄底からドリルで穴を開けることが重要になる。

そのために必要な道具が

治療用のドリルである。

しかし

若い獣医師たちにいきなり

私が使っている電動ドリルを勧めるには

技術の取得の流れとしてはちょっと無理がある。

まずは手動ドリルを持ち歩き

それを使いこなせるだけの経験を

ある程度積んでからでないと

この技術を伝達することは難しいと考えた。

そこで

いつも懇意にしている重種馬の削蹄師

N坂氏に電話をして

手動のドリルを作ってもらうことにした。

自分でドリルを作れない私は情けないが

こういう事はその道のスペシャリストに頼んだ方が

良いものを作ってくれるものである。

IMG_2185左の写真は

そのN坂削蹄師に作ってもらった

重種馬の蹄病治療用の

手動ドリルの3点セットである。

IMG_21843点セットを3人分

我々獣医師のために

作ってくれた

削蹄氏のN坂氏に感謝!



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臍ヘルニア + 臍膿瘍 (2)

初診時は明らかなヘルニアだった子牛の臍が、

数週間後にはヘルニア輪が判らなくなり、

その代わりに臍帯の膿瘍が、

急激に大きくなって、

ヘルニア輪を埋めている。

今回の子牛の臍がそういう状態になっていたことが

手術を進めているうちに

明らかになってきた。

理想を言うならば

手術のメスを入れる前に

より詳細な超音波検査などで状態を十分に把握し

それに適した術式を選択して

手術に臨むべきところだったのだろう。

しかし

我々の診断力と経験の蓄積は

そのレベルまで至らず

臍ヘルニアと膿瘍とが

どのような具合になっているのかは

半信半疑のままで

いわゆる試験的な開腹という意味を含んだ手術だった。

IMG_2125その結果

膿瘍らしき部分を

丸ごとそっくり衛生的に摘出する事はできず

腫瘤物の腹腔側の根本にメスを入れたとき

化膿汁が吹き出るという事態になった。

IMG_2127そうなってしまったからには

そのままとにかくも切り進み

摘出できるものは出来るだけ摘出し

噴出した化膿汁は出来るだけ排除し

摘出した後の腹膜から

IMG_2128臍帯につながっている

いろいろな腹腔内の構造物を

ともかくも出来る限り洗浄した。

洗浄してからは

腹膜、僅かな筋層と皮下組織、皮膚

IMG_2131と縫い進み

閉腹して

手術を終了した。

飼主さん宅に帰ってからは

この牛には毎日

IMG_2132抗生物質の投与が行われている。

現在もまだ

抗生物質の投与を続けているが

今ところ

この仔牛はたいへん元気である。

IMG_2134気になっていた下腹術部の熱感と腫脹は

非常にゆっくりではあるが

すこしづづ治まって

正常な腹壁に戻りつつあるようだ。

そして先日

IMG_2162この牛を最後に診た同僚の獣医師も

熱感と腫脹は確実に治りつつある

という判断をしたが

念には念を入れて

さらに10日間

抗生物質だけは打ち続けてもらうように指示して

この子牛の治療を

終了した。


(この記事終了)


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臍ヘルニア + 臍膿瘍 (1)

「へそが腫れている」、

という稟告で診たホルスタインの仔牛の、

症状は少し複雑だった。

初診時の症状は臍ヘルニア、

腹壁には明瞭なヘルニア輪が触知でき、

そのヘルニア輪はまだ小さかったので、

しばらく様子を見ていたところ、

「へその腫れがだんだん大きくなってきた」

ということで再診をした。

IMG_2091すると

あったはずのヘルニア輪が触知出来ずに

腹壁に腫れた部分の根元は

太い臍帯で埋まっていて

可動性が無く

臍の部分は硬くて丸みを帯びた腫瘤物となっていた。

その日に往診したT獣医師が

腫れた部分を穿刺してみたら

最初は硬い漿液が少々

場所と角度を変えて再び穿刺すると

今度は茶色い腸管内容物が採取されたという。

腫れた部分を穿刺した時の内容が変化するとは

いったいどのような腫れ物なのか

これは一筋縄では行かない

複雑な症例のような気がする。

様子を見ていると腫れはどんどん大きくなってしまうようだ。

こうなってしまった以上、出来るだけ早いうちに

外科的処置を施したほうが良いだろう。

我々獣医師はそういう判断に至った。

翌日

IMG_2094午後一番にこの仔牛が運ばれてきた

一般症状が悪いわけではないので

元気一杯だったが

手術台に寝かせて

まずは超音波検査の端子を当ててみた。

IMG_2095腹壁から前後方向斜めに切り取った画像には

黒く抜けた部分にキラキラと白く光る模様が見えた。

これは典型的な膿瘍の画像だった。

そ例外の部分にも丁寧に端子を当ててみたが

結合組織ばかりで他に特徴的な画像は見えなかった。

IMG_2106腸管のヘルニアと思われた部分は

腹腔の中へ

落ちているのだろうと推測できた。

しかし、ヘルニア輪とおぼしき穴は

どこにも開いてはいなかった。

IMG_2114次に、毛刈りをして

切皮して

結合組織を剥がしつつ

腫瘤物を出来る限り

術創から独立させて

IMG_2113それを手でつかみ

もう一度穿刺を試みた。

すると、

漿液と化膿汁の混ざったものが採取された。

これはやはり膿瘍なのか。

IMG_2122根元の部分を糸で縛り

腫瘤の根元の臍帯移行部にメスを入れて

根本を切断し

膿瘍と思われる部分を

丸ごと摘出しようと取り掛かった

IMG_2124すると

メスを入れた臍帯部から

クリーム色の硬めの農汁がはみ出してきた。

「あー、やっぱり膿瘍だね。」

これは予想通りの事だったが

IMG_2125その部分から臍帯を通じて

腹腔内へ

クリーム色の農汁が

こぼれないように注意をしながら

腫瘤物を摘出するという

少々緊張する手技が必要になった。


(この記事続く)


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乳熱 + 乳頭損傷

前々日の深夜、

同僚のT獣医師が当直の時、

産後起立不能症で診た☆さんの乳牛は、

血液検査の結果低カルシウム血症だった。

立てることは立てるのだが、

まだ足元がふらついているということで、

通常時の往診でまた☆さんの牛を診ることになった。

その牛は繋ぎ牛舎の一角でうずくまっていた。

「あれから立ち上がったんで、足場の良いところに移動したんですが・・・」

浮かない顔の☆さんは話を続けた。

「またすぐ寝て、その後また立ったんですが、同居の牛に乳頭を踏まれたみたいで・・・」

「あらま・・・どこの乳頭?、寝たままじゃあ分からないけど、今は立てるの?」

「なんか、また立てないんです。」

「じゃあ、まず吊って立たせて。」

「はい。」

私はカルシウム剤とリンゲルと抗生物質を用意

その間に☆さんはこの牛の吊起の準備をした。

吊ればなんとか立つらしいので

IMG_2145まずは吊起をして立たせて

踏まれたという乳頭を診察した。

踏まれた乳頭は左前の乳頭の先端部だった。

先端から約3センチ程度が黒く変色し

皮膚が剥がれ乳管が挫滅して
IMG_2142
泌乳することができなくなっていた。

「あー・・・これは、この部分は切って落としたほうがいいね。」

「はい。」

「今、注射セットしてから、切る準備するから。」

「お願いします。」

IMG_2155私は抗生物質を打ち

カルシウム剤などの補液を開始して

再び診療車に戻り

消毒液とハサミと輪ゴムを準備した。

再び吊起ハンガーで腰を挟んだままの牛の元へ戻り

IMG_2156やっと自力で立っている牛の

左前の乳頭を掴んで洗浄し

その先端の挫滅部位がすべて取れる長さを

切断した。

IMG_2146牛はほとんど動かなかった。

痛みもあっただろうが

それよりも全身症状によって

痛がる余裕もなかったのだろう。

IMG_2149切断した乳頭の先端からは

溜まっていた乳汁が噴き出してきた。

しばらくその乳汁の勢いが続き

次第にその勢いが衰え

IMG_2152ほとんど出なくなったところで

こんどは輪ゴムを三重にして

乳頭の切断面ら1センチ程度のところに掛けて

切断面の止血をした。

IMG_2151この処置はいつもの方法と全く同じである。

「取り合えず、これでよし、注射が終わったら外してね。」

「はい。」

「乳頭に付けた輪ゴムは搾乳の時に外してね。」

IMG_2154「はい。」

私はすべての処置を終えて帰路に着いた。

翌日

同僚のK獣医師に診察してもらった時

この牛はもう立って歩くようになっていたので

その時点でこの牛の治療は終了した。

その後☆さんからは何も連絡はないので

経過は順調のようだ。


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現役獣医師が書いた小説!

先日何気なく、

我々の職場の機関紙「月刊NOSAI」の、

平成28年8月号が回覧で回ってきて、 

パラパラとめくっていたら、

私の目が、

ある記事に釘付けとなった。 

IMG_2047それは、

「自著自薦」というページ だった。

そこに紹介されていたのは

『獣医さんのイタイ恋』 文芸社  

という本で

著者は

ちばNOSAI連 西部家畜診療所 八千代出張所

に勤務する現役の獣医師 清水秀茂 氏


だった。 

その内容は

NOSAIの家畜診療所を舞台とした小説だった。

それも恋愛小説だという。

早速インターネットの書店から購入し

IMG_2046先日読了した。

読後の感想は

今まで味わったことのない感動的なものだった。

それは何と言っても

話の内容が「あまりにも身近すぎる!」からだった。

我々十勝NOSAIと

この小説の舞台になっている千葉NOSAIとは

規模の大小はあれども

仕事の内容は全く同じと言って良い。

登場するNOSAIの獣医師たちも

登場する酪農家の数々も

どこにでも居そうな人達と、どこにでもありそうな農場ばかりだ。

そこで繰り広げられるさまざまなシーンも

蹄病治療、乳房炎、繁殖障害、第四胃変位、難産、子宮脱、子宮捻転・・・

さらに家畜伝染病の予防や緊急時の対応まで・・・

我々が毎日遭遇している牛の診療のシーンなのだ。

そのシーンを書いている本人が現役の臨床獣医師であるから

描写がリアルなのは当然と言えば当然なのだが

その筆の見事なことに感動してしまう。

さらに、そのリアリズムは

往診の現場ばかりではなく

診療所に戻ってきて行うデスクワークや

さまざまな臨床検査まで及ぶ。

さらに、そのリアリズムは

複数の獣医師スタッフが協力しながら運営する

NOSAIの診療所が抱えている

さまざまな人間関係にも及び

その内部の詳細まで赤裸々に描かれている。

その組織運営の描写は

NOSAI組織の上層部の獣医師にとどまらず

その上の理事さんたちにも及び

それも実にリアルなのだ。

読んでいて「あまりにも身近すぎる!」ので

私は何度もうなづいたり笑ったりしながら

感動のうちに読み終えることができた。

その中で最も感心したことは

我々臨床獣医師の現場のリアリズムに満ち溢れたこの小説が

恋愛小説になっているということ。

牛の臨床獣医師の職場で

職員同士の間で恋愛物語が生じるのは

最近の獣医師の男女比から見れば当然で

我々の十勝NOSAIも例外ではないだろう。

それがまた

この小説の大きな魅力になっている。

畜産の生々しい現場と

若者たちの初々しい恋愛とは

一見ミスマッチのようなイメージが湧くけれども

実はそうではなく

畜産という動物の生命が躍動する現場と

恋愛という人間の生命が躍動する現場は

非常に共通するものが多く

根本は同じなのではないか

そんな思いを抱かせる小説だった。

畜産も恋愛も

考えてみれば

どちらも生々しいのである。

ともあれ

現役の臨床獣医師の方々はもちろん

畜産関係者の皆さん

畜産関係に進む学生諸君などに

是非一読をお勧めしたい

素晴らしい小説である。


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顔の高さの大膿瘍

「腰角(ようかく)の辺りが腫れている・・・。」

そんな稟告だった★さんの搾乳牛。

IMG_2060腫れた部分を触診すると、

波動感があった。

こういう場合は、

ほとんどが膿瘍、

あるいは血腫である。

「針を刺してみましょう。」

IMG_2061空の注射器で穿刺すると、

クリーム色の膿汁が、

穿刺部分から溢れて来た。

「切開しましょう。」

腰角の大膿瘍であることが確定したので

メスで切開することにした。

汚い膿汁が床にこぼれても良い場所へ

牛を移動させて切開することになった。

最も良いのは

牛を枠場に入れることなのだが

★さんの家の枠場はもうほとんど使われておらず

土間の片隅に埃をかぶって仕舞い込まれていて

引き出して使うのも大変なので

土間の一角に頭を結んで保定して

そのまま切開をすることにした。

結果的に

これがマチガイの大元だった。

枠場に保定しておけば

牛のお尻は自由がきかない。

しかし

頭だけ繋いだ状態では

牛のお尻は扇状に

いくらでも横振りすることができる。

私はそれを甘くみていた。

さらに

この牛の膿瘍の大きさと

それが目の高さにあるということを

あまり考慮せずに

いつものように

長い手袋を履いただけで

切開手術を行ってしまった。

すなわち

カッパを着用しなかったのだ。

これもまた大きなマチガイだった。

顔の高さにある牛の大膿瘍を

枠場に保定せずに頭を繋いだだけで

カッパも着ないで

切開手術をするとどうなるか。

IMG_2062結果は

写真のごとく

切開のメスを入れた瞬間に

牛は驚いて尻を振り

私の胸から下の着衣は

嫌な匂いの膿汁を

大量にかぶり

IMG_2063カッパを着ていなかったおかげで

悲惨な状態になってしまった。

生ぬるい膿汁にまみれた私は

自分の着衣を洗いながら

30年以上

牛の臨床獣医師として仕事をして来た

自分の技術の

全く成っていないこを

大反省・・・

下手クソ・・・

ああ恥ずかしい・・・

膿汁が噴き出す写真などを撮ろうとして

肝心なことを忘れていた自分を恥じた。


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逆襲なるか

たかがインスタント焼きそば、

されどインスタント焼きそば、

北海道では何と言っても、

マルちゃん(東洋水産)の「やきそば弁当」 の右に出るものはいない。

00535246「やき弁」は、北海道において絶大なシェアを誇り、

その数とその種類は年々増えつづけ、

まさにそれは「やき弁」の王国を作り上げていると言ってよい。

その勢いはとどまることなく、

数年前のある事件をきっかけにしてさらに加速し、

津軽海峡を渡り、

本州へと拡がって行った。

そのある事件とは、

本州のインスタント焼きそばの王様である

ペヤング (まるか食品)「ソースやきそば」の、

異物混入事件だった。

それを境にして

「やき弁」は様々なバージョンの商品を従えて

本州へ一気に攻め入った。

これで

我が国のインスタント焼きそばの勢力地図は

大きく変貌し

「やき弁」が天下を統一するのではないか

と、思われたが

受けて立つ「ペヤング」は負けなかった。

本州のコンビニやスーパーでの

「ペヤング」人気は衰える気配を見せず

「やき弁」の猛攻をこらえにこらえて

少しづつ体力を取り戻し

IMG_1239ついに

今年の春

北海道へ逆襲を始めた。

それが「ペヤング」の

「納豆やきそば」だったことは

以前の記事で書いた。


IMG_2057そして先日

私は

近所のスーパーで

「ペヤング・ソースやきそば」の

普通バージョンの姿を発見した。

とうとう、ついに

基本バージョンどうしの

IMG_2058いわば、大将どうしの

ガチンコの勝負が

北海道のわが町の

スーパーの店頭でも

始まったのだ。

「ペヤング」はいったい

どこまで本気なのだろうか?

「やき弁」の王国は

果たしてどうなるのだろうか?

目が離せない状況になって来た。


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乳房からの出血(四たび!)

「乳房から血が出て止まらないんだけど・・・」

緊急用の携帯に、酪農家の∩さんの声が響いた。 

「とりあえず、押さえるかつまむかして、止めておいて・・・」

私はそう言って、∩さん宅へ診療車を走らせた。 

出血をしている牛は乾乳牛だった。

パドックの連動スタンチョンに1頭だけ繋がれた牛の

腹の横にしゃがみ込んで

IMG_2036∩さんの息子が

乳房の出血部位を布で押さえていた。

「ちょっと出血しているところを見せてくれる?」

∩さんの息子が押さえている布を少し離すと

乳房の血管から血液が勢いよく吹き出て来た。

IMG_2037「あー、了解、ここだね。縫って止血する準備するから、もう少し押さえててね。」

私は縫合の準備をし

出血部位をまず鉗子で挟み

止血縫合してから

止血剤を投与して

IMG_2038治療を終えた。

しかし

また

乳房の左右に浮き出ている乳静脈からの出血!

「これは、カラスのしわざに違いないね。」

IMG_2039「カラスっすか?」

「うん、間違いないね。」

私は傷を見たときから

そう確信していた。

それは

IMG_2040約半年前

♯牧場で

わずか3週間の間に

3頭がまったく同じ部位から

出血しているのを

IMG_2041立て続けに治療した経験に基づいた確信だった。

参考のために

過去の3回の出血の記録を

この記事に貼り付けておこう。


 2月24日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月8日の乳房からの出血(♯牧場にて)


 3月17日の乳房からの出血(♯牧場にて) 


このとき

♯牧場には

カラスの大群が

牛舎の周りを取り囲み

大きな声で鳴いていた。

その後♯牧場では

ハンターを呼んでカラスの大群を追い払って 

乳房からの出血事故は

ぱったりと無くなった。

あれから半年

♯牧場で追い払われた吸血カラスの1羽が

今度は∩牧場にやって来て

また悪さを始めたのではないか

などと

心配してしまう症例だった。

∩牧場の乾乳パドックの

傍で

数羽のカラスが鳴いていた。 


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重種1才馬の鼻梁の外傷(2)

「安田君、@さんの馬の傷、化膿してるよ。」

私が初診してから4日目、

@さんに往診に行って来た同僚のK獣医師がそう言った。

「・・・そうですか。」

「あれじゃあ、共進会は出られないな。」

「・・・そう・・・ですか。」

今回の馬の外傷の処置について、

私はきれいに治せる「強い自信」は持ってはいなかったものの

なんとか治ってくれるだろうという「普通の自信」はあり

その漠然とした期待の中で

この馬の傷についてさほど気にかけていなかった。

しかし、同僚の獣医師からそう言われると

これは、失敗してしまったか・・・

という反省の気持ちが急に膨らんできた。

それから3日後

私が今度は@さんの馬を診た。

枠馬に入れて傷をよく見ると

IMG_1901なるほど、傷口は

きれいに縫い合わさってはおらず

10cmほどに渡って

腫脹して肉芽が盛り上がり

痛々しい状態になっていた。

「・・・化膿させてしまって、申し訳ない。」

「・・・。」

「・・・縫った糸は、ほどけちゃった?」

「取れてはいないようだ。」

「・・・でも、共進会は出せないか。」

「いや、出すよ。」

「・・・そうなの?」

「だから治してくれって言ってるべや。」

私は@さんがまだ

この馬の共進会出場を諦めていないことを確認した。

しかし、こうなってしまった以上

あとは、抗生物質を注射し続けて

この馬の傷口が早く

目立たなくなるのを待つことしかできなかった。

その次の@さんの診療日は

同僚のS獣医師に行ってもらった。

「安田君、@さん、共進会に出すの断念したよ。」

帰ってきたS獣医師がそう言った。

「・・・そうですか。」

「結構、傷が深かったみたいだね。」

「・・・ええ、上手く縫えたかと思ったんですけど。」

「あの腫れはなかなか引かないね。」

それから3日後

私は再び@さんの馬を診に行った。

やはり傷はきれいに治っていはなかった。

IMG_1906「・・・共進会、出すのやめたの?」

「ああ。」

「・・・そうなの?」

「これじゃお前、カッコ悪いべや。」

「・・・。」

私は@さんに

きれいに治すことができなかったことを詫びた。

最善を尽くしたつもりだったが

創口を縫合する前に

もっと清潔に洗い

メスなどで新鮮な創面を作ってから

もっと慎重に縫合すべきだったと

反省点を挙げた。

それから

数日後

共進会が終わり

この馬を治療する予定だった日に

@さんから連絡があった。

この馬を、育成屋さんに売ったので

もう治療に来なくても良いという連絡だった。

私は、売れてよかったという気持ちもあったが

無事に売れたというわけではない、と思った。

本当であれば

@さんは、この馬を共進会に出品し

商品価値が最も高くなったところで

高い値段で売りたいと思っていたに違いない。

しかし、それはできなかった。

いろいろと

反省点の多い症例となってしまった。

買われて行った先がどこかわからないので

この馬の傷の状態は

もはや確認するすべも無くなってしまった。

あとはこの馬の鼻の腫れが引いて

きれいに治ってくれることを

祈るのみとなってしまった。

反省点の多い症例だった。


(この記事終わり)


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