北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

十勝ホトトギス俳句会

昨日の26日は、

帯広駅前のふじもり食堂で、

十勝ホトトギス俳句会の、

「新同人の誕生を祝う会」が開かれた。

IMG_1142およそ2〜3年に1度、

ホトトギス誌には社告が出て

同人が推挙される。

今年の1月に、

北海道からは19人の同人が推挙され、

十勝管内では伊林美惠子さんと私の名があった。

それを受けて昨日は、

十勝の同人のまとめ役である

IMG_1143高橋まさしさん、とも子さんご夫妻、をはじめ

ホトトギスの誌友と、俳誌柏林の誌友の方々が

総勢19人も集まって

我々2名の新同人のお祝いをしてくれた。

昼食前にまず句会。

その後昼食。

IMG_1144句会で少し緊張した喉を

昼食の生ビールが

心地よく潤してくれた。

正月の記事に書いたことの繰り返しになってしまうが

私は約25年間

自分なりに

色々な俳句を

ああでも無いこうでも無いと迷いながら

作句意欲が落ちた戻ったりしながら

作り続けて来た。

そのうちに

ホトトギスの俳句

すなわち「花鳥諷詠詩」というものが

心の中に大きな位置を占めるようになり

ホトトギスの俳句こそ

私が求め進むべき俳句の道であると思うようになった。

そして、ホトトギス誌に投句し始めて約5年

主宰から、私の投句する俳句が

とりあえず、一応

ホトトギスの俳句として認められた

ということなのだと思う。

IMG_1145昨日開いていただいた

十勝ホトトギスの会は

そんな私の俳句に対する思いを

再確認させてもらえる

良い機会だった。

新同人の名が掲載された、先月のホトトギス誌の社告には

こういう言葉が添えられている。

「ホトトギス同人とは権利も義務もございません。ただホトトギスの伝統を正しく理解して、立派な作品を作る努力をして頂きたいのでございます。ホトトギスの正しい発展のためにお力をおかしくださいませ。」

この言葉を忘れずに

これから又

俳句を作ってゆこうと思う。


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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乳房からの出血

「乳房から血が出ていて、止まらない・・・」

午後3時頃、#牧場から電話が入った。

乳房からの出血の治療は、

1週間前に♭牧場でもやったばかりだった。

よく当たるなぁ、

と思いつつ、

#牧場の牛を診ると、

IMG_1100右後肢の飛節以下が血で真っ赤に染まっていた。

乳房はそこに重なる面がやはり血で真っ赤に染まっていた。

牛の顔を見ると、

その部分をしきりに舐めていたのだろう、

鼻と口が血で染まっていた。

IMG_1122「どこで見つけたの?」

「フリーストールから牛を追い始めた時、ポタポタ血が垂れていたんです。」

「今は、血は止まってるみたいだけど。」

「そうですね。」

「でも、また何かの拍子に出血するといけないから、どこから出ているか見ておこう。」

IMG_1102「はい。」

「右の後肢をロープで縛り挙げてみようか、削蹄するときみたいに。」

「わかりました。」

従業員の@君は、搾乳パーラーの中で手際よく

牛の右後肢を上げてくれた。

IMG_1111「あー、ここから出てるみたいだねー。」

「ほんとだ。」

「縫って、止血しておこう。」

「はい。」

従業員の@君は、牛の頭をモクシで固定し

牛の尻側にもロープをかけて

この牛をしっかりと保定してくれた。

出血部分と見られる箇所は

乳房の内側を走る7mmほどの太さの静脈だった。

小型の針に吸収糸をつけ

IMG_1112まず2針縫い

糸の張りを緩めて

出血のなくなったかどうかを確認して

まだ少し

血が滲んでくるので

IMG_1118もう1針

血がほとんど滲まなくなって

ダメ押しのもう1針

きれいに止血されたところで

縫合を終了。

その後、止血剤(バソラミン)を注射して

IMG_1120治療を終了した。

「出血の原因、なんだろう、何か思い当たるものあるかい?」

「えーっと、だいぶ前、この器具に引っ掛けて出血した牛がいました。」

その器具とは

パーラーで搾乳する時に

IMG_1121ミルカーのチューブを固定するための金属製のフックだった。

「これか・・・。」

「でも・・・」

「搾乳する前にストールで見つけたんだったら・・・」

「つつかれた・・・」

「奴らに・・」

「やっぱり、カラスですか・・・」

「その方が、ありえるかもね・・・」

IMG_1126今日の#牧場の周辺には

カラスの鳴き声が響いていた。

近くの電線や

牛舎の屋根に止まって

こちらの様子を伺っているカラスたちに

IMG_1123携帯のカメラを向けると

賢いからスたちは

危険を察知したように

空に舞い上がり

近くのカラマツの林に移動していった。


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リスの出る日

「今日は、リスをよく見る日だったなぁ・・・」

と、先輩獣医師のSさんが、

カルテを書き終えて、そう言った。

「このあいだ急に暖かくなった時、冬眠から覚めたんだろうか・・・」

それを聞いた、同じく先輩のKさんが、

「エゾリスは、冬眠しないんですよ。」

「そうなの・・・」

「ええ。シマリスは冬眠しますけどね。」

「エゾリスはそうなんだ・・・」

それを聞いていた私。

「じつは、俺も今日、リス見ましたよ、エゾリス。」

「やっぱり、よく出る日なのかな・・・」

「そんな日、あるんですかね。」

「今日はほんとに・・・車に轢かれてたのも見ちゃったよ・・・」

車にはねられて死んでしまったのは可哀相だが、

私が今日見たりスも、ちょっと変で、

いつもとは違った場所で見かけたのだった。

1才馬の過敏症の治療で行った*さん宅

IMG_1093馬を出した後の馬小屋に

たまた目を向けると

馬柵捧の上になにやら動くものがいた。

鳥にしてはちょっと変だなと思ったら

エゾリスが

IMG_1089馬柵捧にとまる様に立っていた。

少し近づいて

携帯写真を撮ったら

馬小屋の奥へ隠れるように入っていった。

私が今までエゾリスをよく見かけたのは

IMG_1089ほとんどが林の中で

その多くが松の木で

松の木を渡り歩いている姿ばかりだったので

今日の、まさかの馬小屋での

エゾリスの出現にはちょっと驚いた。

IMG_1090そして

往診から帰ってきたら

先輩獣医師たちが、また

エゾリスの話をしていたというわけだ。

これは単なる偶然なのだろうか。

それともやはり

今日は

特別に

リスの出る日なのだろうか。


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辰巳奈優美、句集「氷絃」

辰巳奈優美(たつみなゆみ)さんの、

第3句集、「氷絃(ひょうげん)」、を読了。

IMG_1010奈優美さんは、

昭和34年生まれで、

私とは一つ違いの同世代、

旭川出身で札幌在住。

50歳代の半ばで、

第3句集を上梓するのだから、

その俳句のキャリアと実力は

いまさら言うまでもない。


 今生の頬まだぬくし春の雪


この一句の前書きには

 「四月三日 父美仁(紫明)逝く」

とあった。


 身に入むや抜け殻ほどの骨拾ひ


この一句の前書きには

 「八月二十二日 母セツ子逝く」

とあった。

10年前にお父様、5年前にお母様を見送り

「この辺で一つの区切りとして句集をまとめることを思い立った」

と、あとがきに書いてある。

IMG_1012奈優美さんとは

2年前の北海道俳句協会の懇親会で同席し

それ以来のお付き合いだが

俳句をまとめてじっくりと読ませていただいたのは

今回が初めてだった。

以下

心に残った句を挙げる。


 町なかや日向ひなたに雪解の香

 蝉時雨止むひと声もおくれなく

 いま吊りし風鈴の音を待つ机

 隣人のにはかに親し野分あと

 毀れゆく櫛のごとくに秋の虹

 小鳥来るたかぞらのなほ高きより

 厳寒の直情のごといたるかな

 ものの角そろへて寒に対ひけり

 雪雲をかくも籠めたる地平かな

 大鷲の眼火をいまし切に欲る

 月蝕のやはらやはらに木の芽時

 鳥雲に入る美しき角度もて



まだまだたくさんあるが

きりがないので、この辺で。

IMG_1086北海道の

同世代の俳人

として

辰巳奈優美さんの

これからの活動に強く期待し

私も

それに続いてゆきたいと思った。 



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2つの新聞記事(6)

乳牛の不健康。

乳牛の不足。

乳牛の輸入。

今、

酪農界は 

かつてないような異変が起きているように思う。

30年以上、酪農家に往診に回っている私はそう思う。

かつて、牛乳が生産過剰で、

生産調整をしたことは何回もあった。

たった5〜6年前にも、生産調整をしていたくらいだった。

それがどうだろう。 

酪農家の大規模化で

足腰を強くしたはずの酪農の

生乳生産力が

ガタ落ちしている。

乳牛は不健康になり

乳牛の寿命は短縮し

乳牛は不足し

乳牛の価格が高騰し

挙げ句の果てに

外国から乳牛を買ってくる始末。

この異変を

解決するためには

科学技術だけでは、もはやどうしようもない

獣医療だけでは、もはやどうしようもない 

農政担当の官僚の資質も、どうしようもない

そんな

出口の見えない状況になっているようだ。 

この異変を

牛乳を飲んでいる消費者の方々は

知っているのだろうか?

私は

この異変を

牛乳を飲んでいる消費者に

もっと知ってもらわねばならないと思っている。

消費者に知ってもらうためには

どうすれば良いか。

IMG_1063一番早いのは

値上げ、だろう。

それも

特殊なブランド牛乳の値上げではなく

誰もが普通に飲んでいる

IMG_1062最も売れている

「普通の牛乳」を

値上げしなければ意味がない。 

いちばん「普通の牛乳」の値段を

IMG_1053消費者が

「なぜ?」

と思うくらいまで

引き上げるのだ。

いつも飲んでいる牛乳が不足しているのだから

値上げは当然のはずだ。

そうすれば

マスコミも

IMG_1078異変を感じ

酪農界のことを

色々詳しく取材して

報道し始めるだろう。

先日の

2月11日(土)

近所のスーパーの乳製品コーナーでは

「普通の牛乳」が

1リットル175円で

相も変わらず

IMG_1060安売りされていた。

売り札には

「11日限り」

と書いてあった。

翌日の

2月12日 (日)

同じスーパーの乳製品コーナーで、また

同じ「普通の牛乳」が

1リットル175円で

またまた

安売りされていた。

IMG_1068売り札には

「12日限り」

と書いてあった。

あれ・・・?

2日続けて

1日限定(笑)

小売のスーパーさん

こんなことしてる場合じゃあないと思うんですけど・・・


(この記事、とりあえず、終わり)


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2つの新聞記事(5)

乳牛が足りなくなってしまったので、

乳牛をオーストラリアから輸入する。

そんな政策を進めている農水省の官僚の人たちとは、

いったい、どんな人たちなのだろう?、

そんな疑問を抱いていた矢先、

タイミングよくこんな時評が、

2月9日の十勝毎日新聞に掲載された。

IMG_1054筆者はおなじみの

元通産省官僚の古賀茂明氏。

古賀氏によると

官僚は3つのタイプに分けられるという。


第1は「消防士型」

第2は「中央エリート官僚型」

第3は「凡人型」


なのだそうだ。

そして

それぞれのタイプについて


ヾ盈修砲覆辰親圧

求める報酬

9駝院∋毀韻らの要請に対する態度

じ什澆梁垓に対する思い


という4つの項目についての違いで

3者を整理している。


「消防士型」は

〇毀韻鮗蕕襪海箸納匆颪帽弩イ靴燭ぁ

特別な報酬はいらない。強いて言えば、自分の仕事に対して「ありがとう」と感謝の気持ちを表してもらえればうれしい。

市民のニーズに何とか応えたい。今の仕組みで対応できなければ、予算、法律、条令などを変えてでも実現したい。

ずの待遇に満足、それ以上は望まない。

というタイプだそうだ。


「中央エリート官僚型」は

ー分が1番であることを証明したいので、1番難しいと言われる財務省に入った。

△舛笋曚笋気譴燭ぁ⊆分が偉いんだということを確認するためには、給料が高いということよりも、一般の人よりも大きな権限を持ち、みんなに頭を下げられるような地位にいることが大事。

市民はくだらないことを要求してくるので迷惑だ、しつこい奴らは「たかり」だ、1番優秀な俺たちが考えてやっていることに文句をつけやがって、うるさい連中だ。

て本一優秀な自分たちが夜中まで働いているのに、今の待遇は全く不十分だ、退職後においしい生活が待っているから何とか釣り合っている、天下り禁止なんて、全くおかしなことだ。

と考える、最もたちが悪いタイプで

これは財務官僚に多いそうだ。


「凡人型」は

\験彊堕蠅靴神験茲鯑世襪燭瓩砲聾務員が1番だ。

△修海修海竜詢舛搬狄Ω紊琉堕蠅靴神験菠歉磴ほしい。

F颪靴い海箸砲麓蠅鮟个靴燭ない、失敗したらバツがつくので、とにかく余計なことには関わらない。

い發少し給料を上げてほしい、天下りは生命線、何のために官僚になったのかわからなくなるじゃないか。

と考えるタイプだそうだ。


IMG_1054古賀氏は

この3つのタイプが

大体3分の1ずつ居る、という。

しかし、幹部クラスになると

「消防士型」の官僚はほとんどいなくなる、という。

ということは

「中央エリート官僚型」の多くが、財務官僚であることと

考え合わせると

農水官僚は

「消防士型」と「凡人型」がほとんどであるだろう。

さらに

農水省でも

幹部クラスには

「消防士型」がほとんどいなくなる

のであるから

農水省幹部の官僚は

ほとんどが「凡人型」の官僚

ということになる。

きっと

そういう「凡人型」の官僚たちが

今回の

乳牛のオーストラリアからの輸入

という政策を進めているのだ

と、思われる。

どおりで・・・

何も考えていない・・・

愚かな、政策・・・


(この記事、あと少しつづく・・・)


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2つの新聞記事(4)

声を荒げない 蹴飛ばさない 叩かない
フォークやスコップ等を持たない
観察が大事
人も牛も 同じ 生きもの
飼い主がしたくない されたくない事は
牛もされたくない
牛が喜ぶことは人も嬉しい それだけ
声かけが何よりも大事
生まれた瞬間から 声かけ」

これは、前々回の記事で、

うしらぶさんという酪農家の方から寄せられたコメントで、

あるベテランの70歳を過ぎた酪農家の言葉である。

この言葉はさらに続いて、

アニマルウェルフェア(家畜福祉、動物福祉)
動物の中には人間も入るんだもんね?
で、俺はね
酪農家のウェルフェア
やらなきゃいけないと思うよ。
やはり、酪農家が健全でなきゃ
健全な牛なんて
飼えるわけないのさ、うん。
この酪農家の健全性については
誰も問わないもんね。
規模拡大して、牛乳を沢山搾れって
税金使ったり、地域あげてやってるけど
やはり
酪農家の健全性を
どう皆で作り上げていくか?
で、どんなに頑張ったってね
人間が健全でなかったら
動物(牛)健全でなくなる。
じゃあ
酪農家の健全を
どうしたらいいか?」


前半の部分は

それぞれの農場で

いろいろな事情があるから

そっくりそのまま真似をすれば良いというものではないけれど

基本的な事として

「声かけが何よりも大事」

というのは

我々人間同士の付き合いもそうであり

核心をついていると思う。

さらに後半の部分で

「酪農家が健全でなきゃ、健全な牛なんて飼えるわけないのさ」

という言葉は

今とても必要なことを見抜いていると思った。

このベテランの酪農家さんの言葉をもって

乳牛のアニマルウェルフェア(動物福祉)についての話は

そろそろ終わりにしたいと思う。

ところが・・・

また、ところが、だ・・・

そんな矢先に

またまた新聞に

聞き逃すことのできない記事が出ていた。

乳用牛を生きたまま輸入するのに

補助金が出る

という話である。

輸入の相手国はオーストラリアだそうだ。

どういうことかというと

IMG_1008我が国の乳用牛の数が減り

乳用牛の値段が高くなってしまったから

外国から安い乳用牛を

輸入して

それを賄うというのだ。

こういう事をしたら

国内の

乳用牛を生産し

販売している酪農家の

個体販売の利益が

オーストラリアの酪農家に奪われてしまうことになる。

さらに

オーストラリアの牛の価格に引っ張られて

我が国の牛の市場価格が大幅に下がることが予想される。

いま

国内で乳用牛の個体販売で利益を得ているのは

多くが中小規模の

地道に子牛から乳牛を育てている酪農家である。

これに対して

子牛を育てることを放棄して

乳用牛を他所から買って

ただ搾っているだけの農場は

多くが大規模な酪農場である。

この新聞記事の内容は

売り手である中小規模の個体販売農家を苦しめ

買い手である大規模の搾乳しかしない農場を助ける

という政策のように見える。

外国で生まれ育った値段の安い乳用牛が

まるで奴隷のように

日本の大規模酪農場へ

次々と導入される。

日本の中小酪農家の

乳用牛の生産意欲はどんどん低下する。

その先には

日本の酪農全体が

乳用牛を外国から買わなくては生きてゆけない

巨大なギガファーム化してゆく

そんな姿も見えてくる。

こんなことを続けていれば

我が国の

「健全な酪農家」

どんどん減ってゆくだろう。

そして

我が国の

「健康な牛」

ますます減ってゆくだろう。


(この記事、もうちょっと続く・・・)


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2つの新聞記事(3)

「動物福祉」にしろ「アニマルウェルフェア」にしろ、

それを実践することは、

特別なことでもなんでもない、

と私は思うのである。

苦しそうな牛を見て「・・・かわいそうだ。」と思い、

その苦しみを解いてやろうとする心。

飢えている牛を見て「・・・そうかそうか。」と思い、

その飢えを満たしてあげようとする心。

そういう心がなければ、

「牛を愛する心」がなければ、

乳牛など飼育できるものではない、

と私は思うのである。 

自分は酪農ビジネスとして牛を飼育しているのだから、

そいうい心は必要がなく邪魔でさえある、

などと言う人もいるが、

そんなドライな感覚の酪農家にさえ

「牛を愛する心」がゼロの酪農家はいない、

と、私は信じている。

乳牛は我々と同じ赤い血が流れ

空気を吸っては吐き

水を飲み食物を食べては排泄し

我々人間となんら変わりのない生き方で生きている

と思えばなおさらである。

「牛を愛する心」を持って

酪農を実践することは

特別なことでもなんでもないだろう

と、私は毎日酪農家を往診して回りながら

そう思ってやってきた。

そういう現場に

突然登場したのが

家畜福祉、アニマルウェルフェアの考え方に基づく

認定制度だった。

「牛を愛する心」というものを

科学的に分析をして

いろいろな項目に分け

その実践の程度をチェックして

客観的に評価して

そこに線引きをして

合格不合格の差別化を図り

合格したもののみを

特別に「アニマルウェルフェア認定牧場」に認定し

そこから生産された乳製品に付加価値をつける。

という活動を始めたのが

アニマルウェルフェア畜産協会である。

この活動について

私は基本的には素晴らしい活動であり

これからもっと普及してほしいと思っている。

しかし、同時に

この活動は科学的手法の限界をよく表している

とも思うのだ。

「牛を愛する心」を科学的に分析して

いろいろな項目に分けて

その実践の程度をチェックして

客観的に評価して

そこに線引きをして

合格不合格の差別化を図り

合格したもののみを

特別に「牛を愛する心の程度の高い牧場」に認定し・・・

・・・そんなことをやっていれば

不合格になって認定されない牧場の人たちは

IMG_0357気分を害し

怒り出す人も少なくないだろう。

科学的手法というものは

多くがこういうものであると私は思っている。

科学的手法は

「愛する心」という奥ゆかしい感情を

上から目線で観察するだけなのである。

気分を害された人たちは

IMG_0358「口で言わずに、手本をやって見せてくれよ!」

と言い出す人もきっといるだろう。

ところが

実際のところ

酪農家の牧場形態は十人十色であり

牛の飼い方や接し方は十人十色であり

「牛を愛する心」の「お手本」と言えるものを

IMG_0910具体的に示すことなど、

そう簡単にできるものではないだろう。

「アニマルウェルフェア」の基準が

曖昧になるのはそのためだろうと思う。

ここに、私は

科学的手法の限界を感じるのである。

「愛」や「心」に対する科学的研究は

可能だが

その成果を現場に還元した時の

貧弱さ、底の浅さ、腹立たしさ、虚しさ、は

人の恋愛心理学などの成果を見れば、容易に想像がつく。

そんな、科学的手法の限界を感じつつ

IMG_0940毎日毎日

今回掲載した写真のような

疲れ切った牛達を前にして

私は

治療の薬を手にしたまま

暗澹たる気持ちになるのである。

科学的手法に頼ることなく

もっと広く

もっとあまねく

特別なことでなく

普通に「牛を愛する心」を持って

IMG_1020全ての酪農家が

それを忘れず

それを実践しながら

「健康な牛」を飼えるようになる方法は

ないものだろうか・・・

そのヒントになることが

実は

前回の記事に寄せられたコメントの

最後の方に書かれているコメントの中に

あるような気がするのだが・・・


(この記事続く)


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2つの新聞記事(2)

「牛は機械ではない。一緒に働く同僚のはず。農業は工業じゃないんです。」

アニマルウェルフェア畜産協会の、妹尾哲也代表のこの発言は、

酪農の効率優先、大規模化を進める国に対して、

それを考え直すことを促す、力強い言葉だと思う。

さらに、このアニマルウェルフェア畜産協会は、

牛の体の清潔さや牛舎の明るさや、尾を切らないーなど

IMG_100650項目の基準を独自に定め、

現在、3戸の酪農家を審査中で、

来年度中には、協会の認証マーク付きの商品が

市場に出る見通しだという。

協会の認証マークの付いた牛乳が一般市場に出回り

その美味しさが消費者に認められ

乳牛を大切に優しく飼われることの価値が

一般社会に広まってゆくことは

大変素晴らしいことであると思う。

こういう新しい価値を持った牛乳が

市場に出回ることを

私は大いに期待している。

もしそんな牛乳をスーパーの店頭などで見かけたら

普通の市販の牛乳よりも値段が高いことが予想されるが

必ず買って飲んでみたいと思っている。

そうすることによって

アニマルウェルフェア協会の認定農場が増える力になれる。

それは

牛を大切に飼う家族経営の小規模な酪農家の数が増えることを意味する。

まことに喜ばしいことで

私はこういう方向性に大賛成である。

大賛成である・・・のだが・・・

どうしてもそれだけでは・・・

満足できない・・・というか・・・

それだけではちょっと・・・

物足りない・・・というか・・・

どこか腑に落ちない・・・というか・・・

そんな思いを拭い去ることができない・・・

それは、どういうことかというと

アニマルウェルフェア協会の認定マークの付いた牛乳が

一体どれだけのシェアを取れるのか

という事とも関係している。

協会の認定マーク付きの牛乳は

認定マークの付いていない牛乳と比べると

非常に数が少なく

値段も割高であることが予想できる。

牛乳市場におけるシェアは

僅かなところに落ち着いてしまうことが想像できる。

つまり

認定マークの付いた牛乳は

高級ブランドの貴重な牛乳であり

贅沢品ということになる。

アニマルウェルフェア協会が認定した牛乳は

贅沢品とみなされてしまうことになる。

乳牛を大切に優しく飼って

健康な牛から搾った牛乳が

贅沢品・・・

というレッテルを貼られて店頭に並ぶことになる。

ここが

私の腑に落ちないところなのである。

アニマルウェルフェアの実践は

贅沢品を作るためだけの手段ではないはずだ。

高級ブランド牛乳があることには

私は大賛成だが

それを作るための手段としてのみ

アニマルウェルフェアが有るわけではないはずだ。

乳牛のアニマルウェルフェアの実践は

高級ブランド牛乳を生産する牧場だけではなく

普通の値段で飲める日常的な生乳を生産する牧場にも

乳製品への加工用の原料乳を生産する牧場にも

どんな牧場にも

なされなければならないはずだ。

それが私の願っている

「牛の健康」の姿である。

高級ブランドの認定マークの付いていない

圧倒的多数のシェアを持つ

圧倒的多数の「普通の生乳」を生産する牧場と

そこで飼養されている

圧倒的多数の「普通の乳牛」に対して

IMG_1004あまねく実践されるべき課題。

「牛の健康」を守るための

重要な課題が

我々の目の前に

立ちはだかっていることに

我々畜産関係者は

気が付かなければならないのではないか

と、私は思うのだ。


(この記事続く)



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2つの新聞記事(1)

先週の十勝毎日新聞の記事は、

我が町の、

そして十勝地方の、

酪農関係者にとっては、

聞き逃すことのできないニュースだったと思う。

ノベルズグループ(延與雄一郎社長)の、

「幕別デーリィファーム」が、

3年後の2020年までに

幕別町の駒畠(こまはた)地区の26ヘクタールの民有地に

IMG_1004牛舎20棟を建て

ロータリパーラー1箇所

パラレルパーラー1箇所

を設置し

4300頭の乳牛を飼い

47000トンの生乳の出荷量を目指す

大規模酪農場を作る計画を

正式に発表した。

生産した生乳の出荷先は

JA幕別町になる見通しだという。

1月23日に

幕別町役場で記者会見が行われた内容を

翌日の新聞が報じていた。

さて

その一方で

1月30日の

北海道新聞の帯広・十勝版には

このような記事が出ていた。

帯広畜産大学講師の瀬尾哲也氏が

昨年5月に

アニマルウェルフェア畜産協会を設立し

代表理事に就任した。

この記事もまた

我々十勝地方の

酪農関係者には

IMG_1006聞き逃すことのできない記事であろう。

そこには

「効率優先、大規模化を進める

国や日本酪農への問題提起。」

として

「牛は機械ではない。一緒に働く同僚のはず。農業は工業じゃないんです。」

というコメントが載っていた。

奇しくも

わずか数日の間に

私の住む地域のニュースとして

このような対照的な出来事を報じる記事が

新聞に掲載されたのだった。


(この記事続く)


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乳房の膿瘍

稟告は「起立不能」だった。

牛が坐り込んでいるところへゆくと、

ずいぶんと疲れた表情の牛が、

一瞬、私を恨めしそうに見て、

また視線を遠くへ移した。

「ずっと乳房炎やっていたんですけど・・・今朝から、立てなくなってしまって・・・」

IMG_0940▲牧場の従業員は、

そう言って牛を立たせようとして、

体を揺すってみたりしたが、

牛は数センチ体を持ち上げただけで、

再びへたり込んでしまった。

「左の前の乳房が、ずいぶん腫れているね。」

「はい、そこがずっと悪かったんです・・・」

私は左の前の乳頭を掴んで

乳汁を絞り出そうと

乳房を押してみたら

ポチャ・・・ポチャ・・・

という音がした。

何か、液体が溜まっているような音だった。

乳房に液体が溜まる、と聞けば

乳牛を知らない人であれば

乳房に乳汁が溜まっている、と思うかもしれない。

しかし

乳房に蓄えられる乳汁というのは

乳腺細胞とその周囲にぎっしりと溜るので

乳房をどれほど揺すっても

決してチャポチャポというような

水分の溜まったような音は聞こえることはない。

この音は明らかに異常だった。

「何か悪いものが溜まっているんだね。」

私は即座に、これは乳房の膿瘍だと思った。

「針を刺して中身を吸ってみるね。」

IMG_0939車から注射器と留置針を取ってきて

乳房の問題の箇所へ

ゆっくりそおっと穿刺した。

「あー、やっぱり・・・」

刺した針の口から

水分の高い化膿汁が吹き出てきた。

▲牧場の従業員君はこれを黙って見つめていた。

IMG_0938「・・・。」

「ずいぶん我慢したねぇ・・・」

「立てるようになりますかね・・・」

「わからないけど、やるだけやってみよう。」

私は、穿刺した針をそのままにして

この牛の治療の準備を始めた。

補液剤と抗生物質を持ってきて

投与を開始しようと牛に近づいた時

IMG_0941牛はもがきながら

足を踏ん張って

バタつきながらも

なんとか自力で起立した。

「あ、立った!」

▲牧場の従業員君は少し驚いたようだった。

この牛に、どれ程の気持ちがあったのかは

未だに不明だが

不健康な体ながらに

この牛が

一生懸命生きようとしていることは

間違いのないことであり

毎日数キロに満たない乳汁を

搾り出しながら生きていることも

間違いのないことであった。

BlogPaint後日

この乳房の膿汁の

細菌検査の結果が来た

それによれば

αーstreptococcus

が検出された。


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重種馬つながりの新年会

「研修所のM木先生が講義に来られるので、その晩飲みませんか?」

帯広畜大のN保先生からの電話だった。

私は二つ返事でもちろんOK。

その日を楽しみに待ち、

先日、帯広の居酒屋へ集合した。

私が小上がりで待って居ると、

まずN保先生がやってきた。

続いて、M木先生がやってきた。

「あともう一人は・・・?」

「I井先生です。もう少し待ちますか。」

「I井先生と飲むのは、久しぶりですねー♪」

しばらくして、I井先生がやってきた。

「どうも、お待たせしました。」

「お久しぶりですねー。」

「この面子と聞いたら、外せないですよ(笑)」

 「・・・では、乾杯。」

和やかにはじまったプチ新年会は

私の敬愛する先生方ばかりの

嬉しい飲み会だった。

今回の4人の獣医師の共通項といえば

重種馬の繁殖である。

かつて重種馬の繁殖管理や分娩管理についての

データーを集めて共同研究をしたことがあった。

その後

M木先生は十勝NOSAIから野幌の研修所へ

I井先生は畜大から開業へ

N保先生はJRAから畜大へ

と、それぞれの道を進まれて

重種馬の繁殖に止まらず

皆さん、多方面で

八面六臂の活躍をされている。

そんな獣医療界の最先端をゆく3人の先生方と

気のおけない飲み友達で居られる私は

つくづく幸運であると思った。

これも、重種馬の繁殖に興味を持って

今まで仕事をしてきたおかげかなと思った。

重種馬に感謝である。

M木先生とは、もうかれこれ30年近い付き合いになるし

I井先生とN保先生とも20年以上、いろいろとお世話になってきた。

若い頃は

このメンバーで飲んだ時は

仕事の話ばかりをしていたような記憶がある。

各地方の色々な獣医学会などへ

私がたまに参加する時には

3人の先生方は、必ず講師や座長などで参加されているので

私にとっては、3人とも学問の師という思いがある。

夜遅くまで飲んでも

学問と仕事の話ばかりをしていたのは

皆さん本当に、真摯に仕事に打ち込まれているからだろうと思う。

今回の飲み会も、そういう感じで始まったが

少し違ってきたのは

それぞれのご家庭のことやら趣味のことやら

プライベートな話題でも

いろいろと盛り上がるようになってきたことだ。

私もついつい、日頃の由無し事を話しまくって

気持ちよく発散をさせていただいたような気がする。

みなさんそれぞれ

色々な人生の荒波を乗り越え?!

IMG_0987円熟味を増して

ますます進化し続ける

3人の先生方なのであった。

「またやりましょう!」

楽しい時間は瞬くまに過ぎ

またの再会を約束して

それぞれ

深夜の帯広の街を

後にしたのだった。


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大寒の朝の樹木

1月20日の大寒の日は休日だったが、

いつもの時間に起床して、

夜が明けてくる窓を何気なく眺めていたら、

我が家の周囲の木々が、

ずいぶんと白く、

いわゆる霧氷がたくさん付いていることに気がついた。

今朝は何か、いつもと違う異変が、

起こっているような軽い興奮を覚えた。

これはもしや・・・

私はいそいそと防寒着を着て

自動車のエンジンを掛け

暖気もそこそこに

札内川方面へ車を走らせた。

その目的は

いつも定点観測をしている

あの

楡の大木

の姿を見るためである。

途中・・・

国道周囲の樹木たちは

いつもと違う真っ白な霧氷に包まれて

どれもこれも、いつになく

荘厳な雰囲気を醸し出していた。

札内の国道の中央分離帯に設置された温度計をみると

IMG_0950マイナス17℃を表示していた。

大寒のこの時間の気温としては

特に低いわけではないが

大きく違ったのは

湿度だった。

湿度を示す表示はどこにもなかったけれど

周りの樹木の枝という枝が

真っ白になっているところを見ると

湿度は非常に高かったに違いない。

札内川を渡り

目的の、あの

楡の大木のそばに車を止めて

携帯のカメラとともに

車外へ出た

寒っ・・・

IMG_0960しかし

今日の楡の大木は

今までに見たことのないような姿で

朝日に光り輝いていた。

この瞬間の気象条件は

IMG_0964きっともう2度と起こらないかもしれない

千載一遇のシャッターチャンスかもしれない。

そんな楡の木を写真に収め

帰り道の札内川を渡っていると

周囲の樹木も

IMG_0970なんと美しく

真っ白な霧氷に覆われていることか。

橋の近くの駐車場に車を再び止めて

しばし、朝の霧氷の樹木たちを

IMG_0972あれこれと

シャッターに収めて回った。

霧氷の樹木たちは

朝日を浴びて

IMG_0975どれもこれも

いまだかつて見たこともないほどの

美しい姿で立っていた。

国道には

朝の通勤車が

IMG_0969途絶えることなく行き来していた。

車を走らせている人達は皆

仕事に向かっている人たちだろう。

そんな中で

たまたま休日をもらった私だけが

IMG_0965札内橋の袂で

ウロウロと

霧氷をまとって輝いている

樹木の写真を撮っている。

ああ、これはきっと

幸せなことなのだろう

と思った。



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仔牛の跛行の原因は・・・

生まれて1週齢の仔牛が、

突然、

右の後肢を引きずり始め、

立つことさえままならず、

その症状は、

次第に悪化してきた・・・という

そんな稟告で向かった★ファーム。

問題の仔牛を診てみると

哺乳欲はそこそこにあるが

介助をしないと立つことが出来ない。

右の後肢を動かすことが出来ない。

立たせて歩かせてみると 

右後肢の懸垂跛が著しい。

股関節付近が

大きく腫れ上がっている。

股関節付近の打撲か?

股関節炎か?

股関節の脱臼か?

親牛に踏まれたのか?

骨盤の骨折か? 

などの症状が頭をよぎる中

触診をしてみると

ソフトボール大に腫脹した

右の股関節付近には

波動感があった。

「針を刺してみよう。」

超音波装置は

一人一台づつは持ち歩いていないので

こういう腫れ物の内部を診断するための

手っ取り早い方法は

穿刺検査である。

注射針を刺してみると 

IMG_0911「ああ、これは・・・」

トロリとしたクリーム状の

化膿汁が吸引されてきた。

股関節部に形成された

大きな膿瘍だった。

どうしてこんなに大きな膿瘍が

このような場所にできたのか

理由はよくわからなかったが

治療方法は簡単だ。

「切って出しましょう。」 

私は

膿瘍の切開術の準備を始めた。

ここまでくればもう

この先は一本道である。

IMG_0914仔牛を寝かせて

抗生物質を注射し

切開部分の周囲の毛を刈り

洗浄消毒して

IMG_0916メスを入れる。

切開部からは

思った以上の

大量の膿汁が溢れ出てきた。

IMG_0919指で圧迫すると

さらに大量の膿汁が溢れてきた。

ゆびを入れると

膿瘍の内腔は

IMG_0921私の拳が入ってしまいそうな大きさだった。

内容をほぼ全部絞り出すと

仔牛の右後肢は

左右対称の正常な姿に戻った。

IMG_0924治療はこれで

無事終了した。

念のため

化膿汁をスワブに採り

細菌培養を依頼した。

BlogPaint結果は写真の通り

「好気性菌の発育を認めず 」

という

コメントが返ってきた。


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北海道人・気質

我が地元の、

かたくり俳句会の初句会は、

IMG_0930普段は午後からの句会だが、

年の初めだけはいつも午前中から始まり、

昼食を皆さんで囲み、

食後は恒例の、

百人一首の歌留多取りが行われる。

北海道の百人一首は

本州の「紙」の百人一首とは違って

IMG_0931「木」の札である。

木の札に、墨で

毛筆の下の句が書かれている。

誰が最初にこういう札を作ったのかは知らないが

北海道開拓時代の名残が感じられる

実に北海道らしい

とても興味深い百人一首である。

遊び方も

読み手は普通、上の句を読まずに

下の句だけを読み

取り手は、下の句だけを聞いて

下の句の札を取り合う方法が普及しているようで

これもまた実に

勇ましく

流暢なことはしない

北海道人の気質がよく出ている遊び方である。

しかし

我々地元の俳句会の人たちは

IMG_0933読み手は、下の句ばかりではなく

上の句から全部読み上げることにしている。

下の句ばかりで遊ぶよりも

上の句から歌の全体の意味を味わいながら遊んだ方が

ずっと奥ゆかしく

読み上げを聞いている時の

歌の調べもすばらしく

とても気持ちの良い歌留多遊びになるということを

いつ頃か気づき

それを楽しむようになった。

北海道の百人一首の

一歩進んだ新しい遊び方だと思って

私はとても気に入っている。

さすがに

文芸好きの人たちの集まりだと思う♪


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寒月と札幌2往復

1月8日の夜は事務所に宿直し、

9日の夕方帰宅したその夜、

妻と息子と3人で、

道東道を千歳まで移動して、

亡くなった義兄の家で焼香して、

その夜は千歳のホテル泊。

翌10日の午前中は

私1人JRで札幌へ行き

かでる2・7での北海道ホトトギス同人会に出席した後

午後の伝統俳句協会新年句会に投句だけを済ませ

再びJRで千歳まで戻った。

千歳シティホールで義兄のお通夜

この夜は悲しい酒になった。 

翌日の葬式と法要を終えて

妻と息子と3人で道東道を帰宅。


 高々と寒月葬の帰り道  


翌11日の朝は

再び1人JRで札幌へ行き 

IMG_0927午後からの

北海道俳句協会賞選考会に出席し

続く俳句協会合同委員会

さらに続く新年交流会に参加。

今年の北海道俳句協会賞は

私のイチ押しの人の作品が受賞することになったので 

この夜は嬉しい酒になった。 

翌12日は 

昼から札幌駅北のエルプラザで

荒舩青嶺さんらとのライラック句会

その後JRで帯広へ

帰宅したのは夜更けだった。


 我が顔の上に寒月汽車の窓


 
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後肢吊り上げ法による子宮「脱」整復(2)

牛を吊る道具もなく、

場所も状態も制限されたために、

止むを得ず採用することになった、

後肢吊り上げ法による、

子宮脱の整復だった。

しかし、

採用してみると、

これが実に楽で、

スムーズに子宮を腹腔内へ完納することができる、

IMG_0897なかなか良い方法だった。

子宮の整復を終えた後

IMG_0902

陰部を巾着縫合して

吊った牛を下ろし

後片付けをしていると

「あれっ・・・」

牛の様子がおかしくなってきた。

断続的に大きく

四肢をばたつかせるようになった。

目を見開き

口を大きく開けるようになった

「あっ・・・これはヤバイ・・・」

気付いた時はもう

四肢のばたつきと

開口露舌の繰り返しは止まらず

眼光はしだいに彼の世へ向かって

死出の旅立ちを始め

数分後には

息を引き取ってしまった。

「・・・ダメだったか・・・」

「・・・ダメでしたね・・・」

「・・・親子で逝っちゃったか・・・」

「・・・そうですね。」

「・・・助けられなくて申し訳ない・・・」

「・・・いや、でもなんかこの牛、こうなっちゃうような気がしたんですよ。」

£さんの

落胆と慰めの混ざったような言葉に

妙に納得させられた私だった。

それから私は

淡々と後片付けを続け

診断書を書いて£さんに手渡し

次の往診へと向かった。

BlogPaint翌々日

血液検査の結果が来た。

検査項目には

これと言った大きな異常値は見られないようだった。

最も気になっていた

カルシウム濃度は

7.2 m/dl

と、

低値ではあるが

それが影響しているとは言い難い

微妙な値だった。

今回の牛の

子宮脱の原因は

いったい、何だったのだろうか・・・

そして

子宮脱の整復した直後に

死亡してしまった原因は

いったい、何だったのだろうか・・・





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後肢吊り上げ法による子宮「脱」整復(1)

1月2日の午前、

往診2軒を終えて3軒目へ移動中に、

携帯電話が鳴った。

 「£さんの牛が子宮脱らしい。頼みます。」

緊急携帯を持っているS獣医師からの連絡だった。

 到着した時、親牛は

首を投げ出して横臥していた。

「朝7時頃産んだんですけど、その後、9時頃来たら子宮が・・・」 

仔牛は残念ながら死産、

親牛も力なく頭を上げることもできず

牛舎の柵に背中を向けて横臥していた。

「これでは、牛の腰にハンガーを掛けられないね。」 

BlogPaint起立不能の牛の子宮脱を整復するには

横臥したままでは腹圧が強くてうまく行かないので

骨盤(産道)を高い位置に保定する必要がある。

その場合、私は普通はカウハンガーを腰に取り付けて

骨盤(産道)を持ち上げて整復する。

ところが今回の場合は

それがうまくできそうにない。

「とりあえず、まずカルシウムを打って・・・」

£さんの牛は和牛だった。

しかし、子宮脱で起立不能で

経産牛の場合は

経験上ほとんどが低カルシウム血症であったから

私は採血の後、ためらわずカルシウム剤を投与した。

カルシウム剤を打ちながら£さんとしばし思案。

「このままだと吊れないし・・・」 

「ハンガーはかけられないですね・・・」 

「寝返りもできないし・・・どうしよう・・・」 

「後ろ足を縛って吊り上げますか?」 

「それ、いいかもしれない・・・やってみようか・・・」

£さんの機転で治療方針が決まった。 

後肢吊り上げ法である。

後肢吊り上げ法・・・というのは

普通は

子宮「捻転」を整復する時に採用する方法だ。

しかし、今回は

子宮「脱」を整復するために採用することになった。

私には初めての試みだった。

IMG_0886記念すべき瞬間(!?)の到来となったので

準備をしながら

£さんの奥さんにカメラマンをお願いした。

後肢を吊り上げて

骨盤(産道)を適当な位置まで持ち上げると

IMG_0892これがなかなか

整復するのに良いポジションとなった。

今回の子宮は胎盤停滞はしていなかった。

微温湯で洗浄し

IMG_0893用手整復に取り掛かった。

子宮は脱出してからまだ数時間以内で

半分程度の脱出で

浮腫もなかった。

IMG_0896怒責もあまり強くなかった。

子宮脱はあっさりと

整復されて

腹腔内に戻すことができた。


(この記事続く)

 
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淑気?、粛気!満つ。

今年は元旦と二日が勤務の日だった。

本年初めての往診1件目は、

◉さんの和牛の治療だった。

治療を終えて車に乗ろうとすると、

◉さんが隣のD型牛舎の入り口で、

私に向かって手招きをしている。

何かなと思って、

D型牛舎のそばまで行くと

「先生、今ね、隼が来てるんですよ。」 

「ハヤブサ・・・?」 

「そう。めちゃくちゃ緊張してますよ。」 

「緊張・・・?」 

「ええ。いつもこのD型には鳩や雀の鳴き声がすごくうるさいんですけど、今日はもう・・・」 

「今日は・・・?」

「しーんと、静まり返ってるでしょう。」 

「あ・・・そう言われれば、そうだね。」

「今この中、めちゃくちゃに張り詰めてますよ。」

◉さんはそう言って

D型牛舎の入り口を細く開けて

そぉーっと、中に入って行った。

私も◉さんの後について

そぉーっと、足を踏み入れた。

「あそこらへんに、やられた鳩の死骸が落ちてるはずなんですけど。」 

「隼にやられたの・・・?」

「はい。たしかこの辺に・・・あれっ?、無いな、おかしいな・・・」

「・・・?」

「そうか、きっと猫が持って行っちゃったんだな。」

IMG_0876「・・・。」

「でも、ほら!、ここに鳩の羽根が散らかってるでしょ・・・」

「あっ、本当だ。」

IMG_0878「この上に、いるんですよ。隼が、ほら!、あそこの簗に、止まってるでしょ・・・」

「あっ、本当だ。」

「隼って、意外に小さいんですよ。」

IMG_0877「ほんとだ・・・、鷹とか鳶よりも小さいんだね。」

「でも凄く速いですよ。」

「だろうねー・・・」

「鳩なんて、今日はもうビビりまくってますよ。」

「・・・うん。」

「雀もたくさんいるのに、簗のかげに隠れてて、1羽も見えないですから。」

「ほんと全然見えないね・・・いないみたいだけど。」

「でもいるんですよ。あ、・・・あそこに鳩がいますね。」

「あっ、本当だ。」

IMG_0879「首だけ出して、様子を伺ってる。」

「ずいぶん首長くしてるね。」

「いつも鳩と雀でうるさい牛舎が、こんなに静か。」

「面白いもんだねー。」

「しばらく隼を逃さないで、こうしておこうと思って(笑)」

元旦の朝の牛舎に

淑気(しゅくき)満つ、ではなく

静粛なる恐怖に満ちた

粛気(しゅくき)満つ、である。

1件目の初仕事の家で

初夢の縁起物の

鷹ではないけれども

同じ猛禽類の

隼を見ることができたのは

何か縁起が良い知らせ!?

と、いう事にしておこう

と思った。


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新年は俳句の話題から・・・

あけましておめでとうございます。

IMG_0874今年も又、

拙い当ブログを、

懲りずに読んでいただいて、

感謝いたします。

どうぞ好き勝手に読んでいただいて、

忌憚なきコメントを書き込んでいただけると嬉しいです。

さて

獣医師としての豆作は、

去年から引き続いて、

今年も相変わらずの低空飛行だと思いますが、

職場の先輩や後輩に助けてもらいながら、

牛馬の飼主さん達に支えてもらいながら、

ボチボチとやって行ければ有難い、と思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

一方

俳人としての豆作はというと・・・?!

これがどーも・・・だんだんと

俳句という底知れない文芸の魅力に

止めどなくハマってゆく自分を

どうすることもできないような状況になっている。

自ら自覚的に、そのような状況を作り上げ

IMG_0871家族からは呆れられ

巷を徘徊しつつ

日々俳句を詠み

他人の詠んだ俳句や評論を読み

暇さえあれば俳句に没頭する毎日となっている。

現在私が毎月購読している俳句雑誌は4冊。


,通椶

IMG_0871 2日本伝統俳句協会の機関紙「花鳥諷詠」。

伝統俳句協会の会長は現在

稲畑汀子先生であるが

ご存知の通り、大俳人高浜虚子のお孫さんである。

高浜虚子が提唱した俳句の理念「花鳥諷詠」に興味を持ち

それに関わりを持っている俳人には必読の雑誌であると思う。

全くの余談だが

12月29日の十勝毎日新聞の「文化この一年」という記事の中に

IMG_0869ごく小さく一言

文芸では私一人

伝統俳句協会賞佳作入賞、とあった。

写真の記事の中を、探して見て欲しい(笑)

私も伝統派俳人として

十勝の文化の端くれに居ることを確認した。

ともあれ

伝統俳句に興味のある方は

この「花鳥諷詠」誌を、是非一度読んで欲しいと思う。



△通椶

IMG_0871 4地元十勝の俳句結社の月刊誌「柏林」。

地元十勝の俳人集団の雑誌であるが

札幌などの十勝管外の俳人も投句を寄せている雑誌である。

十勝にゆかりのある人で

俳句に興味のある人がいたら

是非この「柏林」を一度読んで見ていただきたいと思う。

実は先日

柏林主宰の中屋吟月先生から電話があり

IMG_0872今年度の柏林奨励賞を私が戴くことになった。

最新号に私の句と一文が載っていた。

俳句結社「柏林」は

私の俳句のホームグラウンドといえる。


つ目は

IMG_0871 3群馬県の高崎市に発行所のある

俳句結社「桑海」。

群馬の高崎というのは

私の敬愛する俳人、村上鬼城の活躍した地で

私は村上鬼城顕彰会の会員でもある。

主宰の清水舞子先生は高崎の人

副主宰の須藤常央先生は前橋出身で、現在静岡市に住んでいる。

静岡は私の故郷でもあり

群馬は私の娘が住んでいることもあり

そんないろいろな縁がある俳句結社なのである。

私は昨年から「桑海」誌に、毎月エッセイを書いている。

タイトルは「牛馬漫録」

正岡子規の「仰臥漫録」にあやかったネーミングなのだが・・・

IMG_0873左の写真は

今月号の、私の一文

興味のある方は是非一度

「桑海」誌を読んで欲しいと思う。


い通椶

俳人ならば誰でも知っている、「ホトトギス」。

IMG_0834明治30年に創刊され

柳原極堂、正岡子規、高浜虚子、高浜年尾、稲畑汀子、稲畑廣太郎、と

主宰が引き継がれて現在に至る、全国規模の老舗の俳句雑誌である。

高浜虚子が引き継いだ初期の頃には、俳句雑誌というよりは

総合文芸誌として、夏目漱石の「吾輩は猫である」などの小説も掲載された。

大正から昭和にかけては、多くの有名俳人が「ホトトギス」に投句していた。

平成になっても、全国の伝統派の俳人が多く投句していて

その中で、北海道在住者だけでも「ホトトギス」へ投句している俳人は

ざっと数えると、現在およそ130人程度である。

IMG_0836今年の最新号の社告には

約3年に1度発表される

ホトトギス同人の推薦の記事があり

北海道からは新しく19名のホトトギス同人が誕生した。

ついでのことだが

私もその中の1人に選ばれていた。

さらについでのことだが

今月号の、稲畑汀子選「天地有情」欄の

IMG_0835巻頭に近い7番目に

私の投句した2句があった。

今まで私の句はずーっと

数えきれないほど後ろの方に載っていたのだが

今回ばかりは、最初のページに掲載された。

こんなことは全く初めてだったので

驚きと嬉しさに加えて

身の引き締まる思いがした。

他誌にはない「ホトトギス」誌ならではの

達成感と緊張感を経験したのだった。

「ホトトギス」誌に興味のある方は

インターネットで見本誌を取り寄せることができるので

是非、読んで見ていただきたいと思う。


以上

私が今現在毎月読んでいる俳句雑誌を挙げてみた。

巷ではもちろん、

これ以外の色々な俳句雑誌が満ち溢れているし

俳句雑誌ばかりではなく

電子媒体の俳句サイトなども満ち溢れている。

そのどれを取っても面白そうなものばかりである。

それでは最後に

私の年頭のご挨拶に替えて、ひとこと・・・


「俳句をやりましょう!」



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