北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

十勝にカブトムシが・・・

3日前くらいから、

十勝地方の気候が、

ぐっと湿っぽくなったように思う。

「紙が、しっとり、してますよね・・・(笑)」 

同僚のS獣医師も、

その違いに気づいていたようだ。

カッパを着て、

繁殖の診療をすると、

いままでにないほどの汗が、

額から溢れ出てくるようになった。

明らかに、湿度が上昇している。

空には雨雲が立ち込め

青空がほとんど見えない。

そんな日がここ3日程続いており

今後もさらにジメジメした日が数日続くらしい。

IMG_5879往診から事務所に戻って

長靴を洗っていると

かたわらに、なんと

カブトムシがいた!

IMG_5880この辺りは夏になると

よくクワガタが出てくるが

この日はクワガタではなくカブトムシだった。

カブトムシが出てきたのは初めての事だった。

「珍しいですね・・・」

「カブトムシって、十勝にはいなかったんじゃないの?」

十勝地方の生態系も

温暖化の影響なのか

平均湿度の変化なのか

変わってきたのかもしれない。

道東方面に在住の方で

野生のカブトムシを見る人は

それほどいないのではないか、と思われるが

最近は、きっと増えているに違いない。

「カブトムシといえば、夏休みの匂いですよね・・・」

「匂い?(笑)、そっかー、そう言われれば、カブトムシの匂いってあるね。」

「懐かしい匂いですよね・・・」

「たしかに、なつかしいね。」

S獣医師は面白い事を言う。

「カブトムシの匂いと、コオロギの匂いと、スズムシの匂い・・・」

「え?、コオロギとスズムシも?」

「みんな違うんですよ、匂いが・・・」

「ほんとに?、俺はそこまではわかんないなー」

「嗅ぎ分けられるんですよ・・・」

「ほんとに?、すごいね、それは。」

「私、変な子だったんです・・・(笑)」

「いや、すごいよ、それは。」


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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ニコイチ去勢・普及順調♪

先日、オホーツクNOSAIの同僚のT獣医師から、

「あの、牛の去勢に使う捻転棒、分けてくれないか?」



という問い合わせがあった。

「それならね、今は帯広のMPアグロさんが取り扱ってくれているから。」

 「そうなん?」

「うん。俺はそれを売る資格持っていないから、俺からはもう売れないんだ。」

「わかった。聞いてみるわ。」

「よろしく。ぜひ使ってみてね。」 

こういう問い合わせが、

最近ぼちぼち来るようになった。

また、先日の和牛と馬の共進会の会場で

ブログをきっかけに知り合ったF獣医師から

「このあいだ、日高のH先生のところへ行った時、去勢を見せてもらったんです。

「そうですか。どうしてました?」

「そしたら、あの、ニコイチ捻転棒使われてました。

「そうですか。それはありがたい。」

「なんかもう、普通に使われている感じでしたよ。」

「それはよかった、嬉しいですね。」

「電動で回すよりも、加減ができるそうですね。」

「そうなんですよ。」

こういう話を聞かされると

ますます嬉しくなる。

牛にとどまらず

馬の去勢にも

このニコイチ捻転棒は

重宝しているらしい。

また、先日

S別地区のNOSAIの先輩獣医師からも電話があり

IMG_4073「安田君、あのねじり棒っていうのあるでしょ。」

「はい。」

「あの棒を1つ欲しいって言う人がいるんだけど、ある?」

「ウチには今はないですけど、帯広のMPアグロさんに問い合わせれば、売ってくれますよ。」

「あ、そうなの。わかった、聞いてみる。」

「よろしくお願いします。」

わずか半月足らずの間に

ニコイチ去勢の捻転棒の話や

その棒についての問い合わせが

全く別のところから

3件もあったというのは

この去勢方法が

順調に普及しつつあることを物語っているようで

嬉しくてたまらないのだった。

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「俳都」松山市の俳句ポスト

松山市役所から、

IMG_5870こんな郵便物が届いていた。

「松山観光俳句ポスト入選句集・第47巻」

というものだった。

はて、

最近は松山の方へ投句した憶えはないなぁ・・・

IMG_5871と思いつつ

冊子をめくってみると

松山市が取りまとめている俳句ポストに投句された俳句のうちの

昨年度の、特選句と入選句が掲載されていた。

それを見て私ははじめて

IMG_5872去年の四月に

東京の根岸の子規庵へ行った時

そこに設置してあった俳句ポストに

何句か投句をしたことを思い出した。

そして、その中の一句

IMG_5873 ひとひらの花子規庵に舞ひ込めり    豆作

が入選していたことを思い出した。

さらに、この入選については

去年の6月頃に

松山市役所から通知が届いていて

IMG_5877その時、記念品も頂いていたこと

を思い出した。

記念品まで頂いていたので

もうそれでおしまいかと思いきや

それから1年以上も経って

このような立派な入選句集が送られてくるとは

IMG_5878なんと手厚い扱いを受けたのだろう、と

感激してしまった。

入選句集をさらによく読んでみると

各地に設置してある俳句ポストの写真と

過去に投句された俳句の数と

IMG_5875過去に投句された投句者の数が

細かいデーターになって掲載されていた。

松山市の観光課が展開しているこの俳句ポストは

なんと、昭和44年から

毎年4回づつ、開函され続け

IMG_5874今年は47年目で、277回目の開函に当たっていた。

その投句の数は、毎年数千句を数え

その投句者も、毎年数千人を数えている。

約半世紀近くもの間

俳句ポストにこれだけの俳句が投句され続けていることは

IMG_5876なかなかできることではなく、素晴らしいことだと思った。

それは、俳句ポストに投句された俳句を大切に扱い

投句者がすでに忘れている頃になっても

投句者のことを忘れずにいてくれる

松山市の方々の姿勢と俳句を愛する気持ちの

賜物であろうと思った。

さすがは

「俳都」松山市は、ちがうな!

と思った。


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誇るべき、日本の牛、日本の馬。

音更町の家畜共進会場で、

IMG_5849第47回十勝総合畜産共進会、

肉用牛の部、種馬の部、

が開催された。

私はこの日たまたま休日をもらっていたので、

前夜の激励会と、

当日の審査会を、

ゆっくりと拝見させてもらった。

ここで出品される肉用牛は全て、

黒毛和種である。

褐毛和種(いわゆる赤牛)の部も設けられているが、

やはり、日本全国的に

黒毛の需要が圧倒的に多いようだ。

その黒毛和種の

肉用牛としての改良レベルを

十勝全体で高め

上位に選ばれた牛たちは

さらに全道(全北海道)大会、全国大会へと

コマを進めることになる。

黒毛和種の生産は、世界の中でも

言うまでもく日本が最も盛んである。

IMG_5847他国の追随を許さぬ

世界のトップレベルの

誇るべき「日本の牛」の畜産と言うことができる。

ここが、実に

酪農業界のホルスタインの生産とは違うところ

であると思う。

同様に

馬の部に出品される馬たちは

全て、農用馬と呼ばれる重種馬である。

重種馬の生産目的は

もちろん、ばんえい競馬である。

ばんえい競走用の馬の生産の

改良レベルを

十勝全体で高めるのが

馬の部の共進会の目的である。

今や、日本の重種馬は世界のどこ馬よりも

大きく、太く、逞しくなっている。

それは世界でただ一つの

ばんえい競馬が存在しているからである。

それに供用される馬たちの改良は

言うまでもく日本が最も盛んである。

IMG_5848他国の追随を許さぬ

世界のトップレベルの

誇るべき「日本の馬」の畜産と言うことができる。

ここが、実に

軽種馬業界のサラブレッドの生産とは違うところ

であると思う。


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2016・大タテコン

5年〜7年ごとの不定期に開催される、

帯広畜産大学獣医学科の我が世代の同窓会。

IMG_5824最近はどういうわけか、

いつも、3学年に股がる、

大タテコン形式で行われるようになった。

1学年の同窓生の数は40名程度なので、

IMG_58081学年だけに声をかけたとすれば、

最近は大体半分程度しか集まらない。

しかし、3学年合同のタテコン形式にすると

その3倍の人数が集まることになり

IMG_5810大きく盛り上がる同窓会となる。

そんな理由なのかどうか、定かではないが

いつの間にやら我々の同窓会は

合同大タテコン形式で行われるようになった。

IMG_58123学年同志の仲がとても良いのだ。

そして、我が年代はその真ん中の世代である。

「タテコン」という名称に

そもそも懐かしい響きがある。

IMG_5813学生時代はこのタテコンをはじめ

追いコン、寿司コン、合コン、等々・・・

様々な学生コンパが開かれていたものだ。

卒業以来、約30年が経過しても

IMG_4740タテコンという言葉のもとに

集まった同窓生の方々の気持ちは

すぐに当時の気分に戻って

懐かしくも新鮮な

IMG_4733楽しい盛り上がりを見せてくれる。

それぞれの方々が

それぞれの道で

IMG_4731-1円熟味を増しながら

進んでいる進行形の話を

何の衒いも遠慮もなく

IMG_4736互いに語り合えるのは

このような同窓会以外にはないだろうと思う。

来賓として来られた先生方も

IMG_5814当時は新米教官だった方々ばかりで

教官というよりも

研究室の先輩というノリで

ずっと付き合って飲んでおられた。

総勢53名の大宴会の一次会は瞬く間に終わり

IMG_5816その締めには

やはり

帯広畜産大学逍遥歌〽︎・・・が出た♪

53名の逍遥歌は実に気持ちの良いものだった。

IMG_4749二次会は

そのままカラオケホールへ・・・

ここで歌われる曲も

IMG_4758同世代の懐かしいもの〽︎ばかり・・・

そしてさらに

三次会は

幾部屋にも分かれた部屋飲み・・・

IMG_4752話は尽きることがなく

夜を徹して飲み明かさんばかり・・・

皆さん50半ばから60の

熟年世代にもかかわらず

IMG_4756歳のことなど忘れて

飲み続けているようだった。

中には

IMG_5821それぞれの部屋を

渡り歩いて飲む人もいて

さながら

昔の学園祭の打ち上げのような雰囲気だった・・・

これも3学年合同の

「タテコン」というもののメリットなのかもしれない。


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重種馬の生産意欲の高まり

我が町の馬の繁殖シーズンも、

そろそろ大詰めを迎えている。

我が町の馬の・・・と言うよりも、

我が町を含めた道内の他町村の繁殖牝馬の・・・繁殖シーズン

と言ったほうがいいかもしれない。 

IMG_5804それだけ

我が町の重種の繁殖牝馬は

頭数が減ってしまっているのだ。

しかし

地元の牝馬の数は減っているものの

今年から供用されている

我が町の種牡馬の人気が

なかなかのものだったので

他所の町から種付けにやってくる牝馬が多く

その馬たちの発情鑑定や

IMG_5803不妊治療や

妊娠鑑定などの頭数が 

今年は、久しぶりに多かったように思う。

これはとてもありがたいことだった。

10数年前から

我が町の重種馬の飼養頭数は

恐ろしい勢いで減り続けていて

その歯止めが全くかからず

消滅寸前の様相を呈していた。

IMG_5805それにつれて

私が手がける馬の繁殖の仕事も

当然のように減り続けて

自分の仕事が激減したという虚しさだけに止まらず

重種馬の繁殖の獣医療自体が途絶えてしまうのではないかという不安が

年々増している状況だった。

ところが今年は久しぶりに

そんな不安を払拭できる要素が現れたのだ。

その最も大きな出来事は

やはり

昨年来の重種馬の高値

ということになるのだろう。

重種馬の高値がしばらく続けば

あちこちで生産意欲を高める人が

必ず現れるものである。

生産意欲が高まってくれば

その要求に従って

我々の仕事、すなわち

重種馬の繁殖の獣医療に対する期待も高まってくる。

今年の繁殖シーズンを振り返ると

そんな生産意欲の高まりと

我々の馬の繁殖獣医療に対する期待の高まりが

ほんの僅かであるけれども

感じられるようになった。

そんな期待に応えるために

我々は重種馬の繁殖診療の技術を

しっかりと継承してゆかねばならないと

あらためて思った。

今年はそんな繁殖シーズンだった。

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食料自給率1000%の十勝・・・今年は?

田んぼがほとんど無い、

image十勝地方は畑作王国である。

特に、十勝の中央部では畑作が盛んである。

畑作よりも酪農が盛んなのは、

十勝北部の高原地帯や、

十勝南部の海岸地帯であり、

十勝中央部の肥沃な大地は、

image酪農の牧草地よりも、

畑作地のほうが圧倒的に多い。

十勝の中央に位置するわがM町の診療区域も

その例外ではなく

ばりばりの畑作地帯である。

image毎年この時期になると

あらゆる畑作物が

一気呵成に成育してくる。

土の見えていた畑の畝が

生長した作物によって

あっという間に隠されて

さまざまな作物の葉の色に染まった

巨大なパッチワークのような大地となる。

まさに万緑。

この十勝の畑作物の勢いを毎年見る度に

私はとても豊かな気持ちになる。

十勝の食糧自給率1000%を実感する一瞬である。

こんな大地に暮らしていれば

飢え死にする事はないだろうと思う。

imageしかし

そうは言っても

農業は天候に左右されるという宿命にある。

今年の我が町の畑をよく見て歩いていると

なんとなく

いつものような勢いが感じられない部分が見える。

image6月の2週間以上にわたる低温高湿度の影が見える。

ジャガイモの花がいつもより少ない気がする。

ビートの畝の土が葉に隠れていない部分が多い気がする。

豆の生育が遅く雑草が多いような気がする。

さらに

先日の烈しい雷雨と雹(ひょう)は

image我が町でもっとも肥沃な

十勝川沿いの畑作地帯を襲った。

小麦の大規模な倒伏があちこちに見られる。

ジャガイモの畝が泥流に崩れているところがある。

豆の葉が破れて土をかぶっているところが多く見られる。

私は今年の畑は、いつもより元気がないと感じている。

image「なんか、今年は、よくないんじゃないの?」

「・・・どーだかな。」

畑作と肉牛兼業のЭさんの父さんはそう言った。

「このあいだの大雨と雹もすごかったし。小麦がだいぶ倒れているね。」

「・・・あっちのほうはひどいって言ってたな。」

image「この辺はそれ程でもないみたいだけど。この辺は去年もよかったでしょ。」

「・・・いや、この辺も機械を入れてみないとわからんよ。」

「豆の葉も小さいし、ビートの畝もまだ見えてるし。」

「・・・まぁ、いつでも蒔けば取れるってもんじゃない。何年もやってたら、そんなもんだ。」

「なるほど・・・。」

「・・・若い衆らは、それをまだ、よくわかってないんだ。」

imageベテランの畑屋さんの父さんは

静観の構えだ。

長年のキャリアを感じる

重みのある言葉だった。

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どこの牛馬の肉なのか?

牛肉が原料の「コンビーフ」と、

馬肉と牛肉が原料の「ニューコンミート」、

IMG_5736どちらもパッケージを新しく変えて、

スーパーマーケットの棚に並び、

月間お買い得商品になっていた。

「スマートカップ」という新しいパッケージなのだそうだ。

あの昔懐かしい独特のアルミ缶の

缶の裾をコキコキと巻き上げてゆく缶詰から

とうとうモデルチェンジしたのだ。

「コンビーフ」と「ニューコンミート」の味の差は

ちゃんと食べ比べたことがないので、

私はまだよくわからないが、

どちらもまぁ似たようなものではないかな、と私は思っている。

「ニューコンミート」と「コンビーフ」との味の差を

ちゃんと説明できる人に、私はまだ出会ったことがないし 

「俺は絶対にコンビーフだっ!」 、とか

逆に、「絶対にニューコンミートの方がうまい!」とか

両者の味の差にこだわっている人にも

私はまだ出会ったことがない。 

そんな商品で

この価格差。

コンビーフはニューコンミートよりも50%も高い。

驚くほどの価格差ではないか。

要は原材料。

コンビーフやニューコンミートの原材料になる

牛肉と

馬肉と

その原料価格の差が現われていると考えてよいと思う。

いったい

どんな牛肉がコンビーフになり

どんな馬肉がニューコンミートになるのだろう。

牛はホルスタインなのか和牛なのか

国産牛肉なのか輸入牛肉なのか

馬はサラブレッドなのか重種馬なのか小型馬なのか

国産馬肉なのか輸入馬肉なのか

どなたかご存知の方がいたら

教えていただきたい。


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舌切り仔牛

おとぎ話の「舌切り雀(したきりすずめ)」は、

自分の怪我を治してくれたお爺さんの家の、

障子を張り替えるために使う糊(のり)のご飯粒を食べてしまう。

それを知った欲深いお婆さん(お爺さんの妻)の怒りを買い

お婆さんに鋏で舌を切られてしまい、

家から追い出されてしまう。

IMG_5417さて、今回

私が今から2ヶ月ほど前に診た「舌切り仔牛(したきりこうし)」の場合は、

酪農家のФ牧場の牛舎で今まさに生まれようとしていた。

キツいお産だったらしく、産道に頭が進入してしばらく止まっていたらしい。

その時、鼻先と舌を、膣の外へ覗かせたところを

運悪く、牛舎で餌を狙っている狡猾なキツネに見つかり

IMG_5415そのキツネに舌の先を食いちぎられてしまったのだ。

ここで

おとぎ話の「舌切り雀」の場合は

家を追い出された後

仲間たちと合流して普通に暮らしたことになっている。

舌を切断されたままで

普通に食事が出来たのか心配だが

どうやら問題なく

普通に採食ができていたようである。

では

今回の「舌切り仔牛」の場合は

どうなのだろう。

「・・・どうなんですか?」

Ф牧場のスタッフのK君が私に質問してきた。

「どうなんだろうね・・・。」

私も、じつはちゃんと答える自信がなかった。

「・・・ダメですか?」

「前任地のメガファームの仔牛がやっぱり舌を食いちぎられて、こんなだったのを診たことあるけど・・・」

「・・・どうでしたか?」

「その時は、うまくミルクが飲めないし、手間がかかるからって、「獣害」で廃用にしたはず・・・」

「・・・かわいそっすね。」

「うん・・・。」

「・・・この仔牛、バケツでやっておくと、いつのまにかなくなってるんで、飲んでるようなんですよ。」

「そうなんだ。それなら、なんとか自力でミルクのがぶ飲みして、育ってくれるかもね・・・。」

IMG_5700「・・・そっすね。」

この仔牛をよくみると

舌べらだけではなく

右耳の先端もちぎれてなくなっている。

狡猾なキツネの仕業に違いなかった。

それから約半月後

この「舌切り子牛」はミルクを難なく飲み干し

その隣にあるバケツ入りのスターター(仔牛用配合飼料)も

IMG_5416細かいところは食い残してしまうが

与えた分だけ、なんとか食べているようだった。

さらにその約1ヵ月後

「あの、舌切れた仔牛、どうだい?・・・」

「・・・あー、あれですか、普通っすよ。」

「ちょっと見せてくれる?」

「・・・はい。えーっと・・・どこに居たっけかなー」

Ф牧場のスタッフのK君も

例の仔牛がどこのハッチに入れられているか

わからなくなっていた。

という事は、つまり

他の仔牛と比べて、何の見劣りもなく

BlogPaint普通に餌を食べ

普通に育っているようなのだ。

「・・・あー、ここに居ました、これっすね。」

「ちゃんと食べてるかい・・・。」

「・・・大丈夫みたいっすよ、配合もきれいに食べてるみたいだし。」

配合飼料のバケツを覗くと

IMG_5704以前は

隅々に食べ残しがあった飼料が

今ではもう

ほとんど残さずに

きれいに平らげたあとだった。

「うまいこと食べるもんだねぇ・・・。」

「・・・どうやって食ってるんですかね(笑)」

おとぎ話の「舌切り雀」は

のちに

育ててくれた恩人のお爺さんに

宝物の入った小さな行李箱をプレゼントするのだが

今回の

この「舌切り仔牛」は

自分を育ててくれた恩人の

Ф牧場のスタッフのK君に

何をプレゼントしてくれるのだろう


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地元の世界的アスリート

人口2万7千人程度の我が町には、

牛が1万5千頭ほど飼育されている。

そんな、ありふれた、

北海道の一つの町である。

だが

オリンピックイヤーが来ると、いつも思うのは、

世界的アスリートのよく出る町なのではないか、

ということだ。

今年もまた、

往診の途中のN地区の一角に

横断幕が出ていた。

IMG_5738日本一速い女!

陸上短距離の

福島千里さんの

オリンピック応援の横断幕だ♪

圧倒的な強さを誇るアスリートゆえに

横断幕も、その都度何度も使えるように

あまり余計なことが書いてない(笑)

地元の中の地元、N地区の公区の皆さんの

気持ちと苦労がにじみ出るような横断幕だ。

2枚目の写真は

わが町の役場の支所に張られた横断幕。

こちらは新しく立派な、普通のもの。

IMG_5740福島千里さんの他にも

わが町出身のアスリートが

今年もオリンピック出場を決めている。

女子ラグビーの

桑井亜乃さん(初出場♪)と

マウンテンバイクの

山本幸平さんの2名。

山本さんのお父さんは獣医師で私の同僚だった人

北京オリンピックから続いて

今年もリオデジャネイロまで応援に行くのだろう。

実に羨ましい話だ♪

同じ町民として

楽しみなオリンピックになるが

テレビの生中継では

福島さんくらいしか見れないだろうなー


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類似症状の鑑別

《症例1》

稟告「牛舎の通路で滑って転倒し、立てなくなっている。」

体温、心拍数、ともにやや上昇、

d74d5f22食欲不振。

後肢開脚、

蛙様姿勢。

意識は明瞭だが、

起立を促しても反応なく、起立不能。

ハンガーにて吊起するも、起立に至らず。

消炎鎮痛剤などを投与するが、

翌日も、症状に全く変化なし。 

食欲減退、活気なし。

起立不能。

「股関節脱臼」にて予後不良。

使用価値喪失、3号廃用と認定した。 


《症例2》

稟告「牛舎の入口でくつろぎ、立とうとしない。」

体温、心拍数、ともに正常、

IMG_5508食欲旺盛。

後肢開脚、

蛙様姿勢。

意識は明瞭で、

起立を促すまでもなく、自由に起立する。

ハンガーのサイズは合わず、吊起する必要もなし。

消炎鎮痛剤などを投与する必要なし、

翌日も、症状に全く変化なし。 

食欲旺盛、よく吠える。

起立自由。

「股関節の単なる開脚」にて予後良好。

使用価値あり、牛舎の門番と認定した。 


《考察》

症例1の患畜の体重は約650圓任△襪里紡个靴

症例2の患畜の体重は約15圓任△

この体重の差が

同じ症状であるにもかかわらず

予後の良し悪しを決定付けたものと思われた。

また

症例1はホルスタイン

症例2は雑種であり

この種差が

同じ症状であるにもかかわらず

予後の良し悪しを決定付けたと考えられた。

今後

症例をさらに集め

より精緻な比較検討が

必要であると考えられた。


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天気と往診

半月ほどぐずぐずと雨が降り続いた天気が、

ここへきてようやく回復し、

久しぶりに青空と太陽を拝めるようになった。

町内の畜産農家さんたちは、

待ちに待った牧草の収穫を、

一斉に開始している。

シーンと静まり返っていた牧草畑に、

トラクターが入り

あちらこちらで牧草を刈り倒す音が聞こえるようになった。

それと時を同じくするように、

うちの診療所の朝の電話の音は、

鳴りを潜めておとなしくなってきたように思う。

朝の診療の受付時間に

往診の依頼の電話が少なくなってきたのだ。

ということは

朝から持ってゆく往診の件数が少なくなってきた事を意味する。

しかし

朝から持っゆく往診の件数が少なくなったからといって

牛や馬の病気の数が減ったわけではない。

病気の数がそれほど簡単に減るわけがない。

それはただ単に

飼主さんの意識が

牧草の収穫に集中し始めたからである。

こういう日は

夕方や夜に往診の電話が増えるのだ。

早朝から夕方まで、日の高いうちは

ずっと牧草の収穫に集中していた飼主さんが

日が暮れて、牛舎へ戻ってみると

・・・なんだかやっぱり牛の調子がおかしい・・・

ということになって

そこで初めて、往診依頼の電話が鳴ることになる。

牧草収穫のできる良い天気が続くと

診療の受付時間内に来る電話が減り

受付時間外の緊急の電話がよく鳴るようになる。

そんな日々が数日続き

牧草の収穫がひと段落して

再び雨模様の天気になると

また診療の受付時間内に鳴る電話が増え

急ぎの診療ではない繁殖や去勢などの受付が増えてくる。

天気に左右される家畜の診療は

こういう波を繰り返すように思う。

その波の中で

今の一番牧草収穫時期が

最も大きくはっきりと

忙しい波が押し寄せる季節であるようだ。

まさに

猫の手も借りたいほどの忙しさであろう。

しかし実際には

牛舎の猫たちは手を貸してはくれないらしい(笑)

IMG_5642飼主さんのいない牛舎へ往診に行くと

忙しい飼主さんとは裏腹に

猫たちが

ゆっくりとくつろいでいる。

せめて

IMG_5719猫の目でいいから

牛の体調を監視して

早期発見して

我々に教えてくれれば良いのだが

それもしてくれそうにない(笑)

IMG_5673カメラを向けても

猫たちはマイペース

たまに

顔を洗う仕草をするくらいで

にゃんとも、これではどーもにゃらん・・・


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五十嵐秀彦さんの「寺山修司俳句論」

昨日、Facebookでたまたま五十嵐秀彦さんのページを覗いていたら、

目が釘付けになった。

秀彦さんの「寺山修司論」が、現代俳句協会のHPから読めるようになったのだ。

早速、PDFファイルを印刷して読ませていただいた。

IMG_5713じつは、私は学生時代、寺山修司にハマったことがあった。

とある書店でたまたま寺山修司の文庫本シリーズを手にとって、

ページを開いたときに飛び込んできたフレーズに、

なぜかとても心を打たれるものがあって、

それから数年間、寺山の著作を意識して読むようになった。

それは私が帯広畜産大学の5年生の頃だったと思う。

特に今でも心に残っているフレーズは

「競馬が人生の比喩ではなく、人生が競馬の比喩なのだ。」

あるいは、引用のフレーズで

「政治を軽蔑する人は、軽蔑する政治しか持つことができない(トーマスマン)。」

今思い出せるものの中で

この二つの言葉は特に印象に残っている。

何か大人の世界に誘ってくれるような強い力を、寺山修司の言葉から感じたのだった。

そんな寺山修司は、私の青春時代に大きな影響を与えてくれた1人だった。

五十嵐秀彦さんが寺山修司論を書いていることは、知っていたが

ついに、それを読むことが叶って

今、大変嬉しく読ませていただいている。

秀彦さんの「寺山修司俳句論」を読んでいるうちに

おぼろげに思い出すことがあった。

そういえば・・・

寺山修司の俳句全集・・・

だいぶ昔に書店で買って、ロクに読まずに置いていたはずだ・・・

そんな記憶がよみがえり、自分の部屋の本棚の奥を探ってみたら

IMG_5714あった・・・!

「寺山修司俳句全集」(あんず堂)

この本は、秀彦さんの論文末の参考文献の筆頭に挙げられていた。

論文では、寺山修司の俳句を

寺山が俳句に没頭していた高校時代から20才頃までに詠まれたらしい句・・・A群

と、それ以降の寺山が俳句から離れたとされている頃に詠まれたであろう句・・・B群

という2種類の群に分類して、その比較検討をしている。

その比較検討を通じて、寺山修司の膨大な芸術活動を

IMG_5716俳句という切り口から再検討している。

従来の寺山の俳句の評価は

膨大な寺山文学の中の「前史」という見方で済まされていたが

それはA群の俳句(青春俳句)に対するもので

寺山の俳句全体に対してその評価は「片手落ち」である、と秀彦さんは言っている。

そのことをB群の俳句を検討することで明らかにし

寺山の俳句が、寺山文学の中で「前史」というよりも

生涯にわたって、大変重要な意味を持ち続けていたことを浮き彫りにさせている。

詳しい内容は、論文のPDFをプリントアウトしてぜひ読んでいただきたいが

寺山の俳句は、決して「異端」ではなく、「前衛」でもなく、

むしろ俳句の「本流」とさえ言うことが出来る、と秀彦さんは結んでいる。

とても読み応えのある論文で、ひと通り読んだだけではまだまだ理解が不十分だが

私がかつて買った「寺山修司俳句全集」(あんず堂)を片手に

IMG_5717ページをめくりながら、秀彦さんの論文を読み返してゆくと

とても面白く、時間を忘れてハマり込んでしまう。

ハマり込みながら

私は、いつもの「癖」が出た。

寺山修司の俳句の中から

牛や馬を詠んだ句を拾ってみたのだ・・・(笑)


 一塊の肉となる牛家族の冬       修司


 秋つばめ海見し牛のながし目に      同


 牛の腹草に触れゆく秋の星        同


 馬の尻と男の唄がすすき過ぐ       同



 演習区春泥に馬の力みしあと       同


 朝焼坂つましく売られゆく馬か      同


これらの句を拾って読んでみても

なるほど

寺山修司の俳句は

単なる「前史」でも、「異端」や「前衛」でもないことがわかる。

秀彦さんの論文によって

私は、自分なりに

寺山修司の俳句を再検討することができた。

やっぱり俳句って、面白いなぁ・・・ 


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分娩後、牛のふらつきの正体は?

「昨日お産した牛が、ふらついてエサ食べなくなったんで・・・カルシウム打ってくれないべか・・・」

そんな電話の往診依頼で、&牧場に行ったのは夕方だった。

しゃがんでいるその牛の前まで来ると、&さんが言った。

「この牛ね、毎年お産の後いつも低カル(低カルシウム血症)になってぶっ倒れるんだよ・・・」

「産んだばっかりにしては、ちょっと痩せてるね。」

「そう、この牛歯が悪いみたいで、食べた草吐き出したりするんだよ・・・」

「思うように食べられないのね。」

「たぶん、配合(飼料)は食うんだけど・・・」

こういうエサを充分食い込めない牛は

乾乳後期も当然エサを充分食えないので

分娩後に低カルシウム(乳熱)になりやすいものである。

カルシウムを打たねばなるまい、と思い

この牛の体温と、心拍数を計ろうとしたら

意外にも、牛はすっくと立ち上がり

逃げて嫌がるしぐさをした。

意識がはっきりしているのだ。

耳は温かい。

更に体温を見ると40.3℃だった。

私は、単純な低カルシウムではなさそうだと感じた。

「乳房炎・・・やってないかい?」

「あー、それはないと思う。」

「そうなの、でもいちおう、調べてみようか。」

「搾るのに触った時、なんともなかったよ。」

「熱出てるし、念のためね。」

私は、診療車へ戻って、PLテスターをとり

imageこの牛の乳汁をプレートに絞った。

搾るとき、牛はかなり嫌がって

後肢をばたつかせた。

乳汁は4本とも乳白色をしていた。

凝固物(ブツ)もそれほど目立たなかった。

その搾った4本の乳汁に

PLT液を添加してみた。

imageすると・・・

4本の乳汁のうちの3本が

見る見ると青緑色に変化して

さらに、ドロドロと粘り気が出てきた。

右前の乳汁だけは

サラサラのままで色も変化しなかった。

「あー、これは乳房炎だよ。」

「・・・そうか・・・ほんとだ。」

「右前だけ無事で、あとの3本全部いってるね。」

「・・・触っただけじゃわからなかったな。」

「熱が出てるのはこのせいだと思う。」

「・・・うん、低カルじゃないのか。」

「低カルじゃないと思う。乳房炎治療の点滴と抗生物質、打っとくね。」

「・・・うん。」

image今回の牛の

分娩後のふらつきの正体は

どうやら、乳房炎だったようだ。

よくある古典的な類症鑑別であるが

雨の続く湿度の高い今の季節は

乳牛の乳房炎が

特に増えてくる時期でもあるから

この基本的な類症鑑別も

特に心して

注意しなければならない季節である。

image





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最後の1頭、誕生♪

昨夜の深夜1時半頃、

枕元の携帯電話が鳴った。 

「・・・袋が見えてきたから、大至急頼む。」 

分娩遅延の馬のいるΑさんからの往診の依頼だった。

急いで馬小屋まで車を飛ばして、

到着した時には、

IMG_5650写真のように、 

すでに生まれていた。

仔馬の後肢2本はまだ胎胞に覆われて、

臍帯(へその緒)はまだ微かに脈を打っていた。 

生まれたばかりの仔馬と

産んだばかりの親馬は

共に寝そべり

鼻で呼吸をしていた。

その傍らに

飼い主のΑさんがしゃがんでいた。

「無事に出てよかったね。」 

「・・・。」 

「オス、メス、どっち?」

「・・・まだわからん。」 

「おっきな子だね。」

「・・・そうでもないんでないか。」 

「いやぁ結構でかいよ。」 

 「・・・ずいぶん遅れたからな。」

IMG_5663「何日遅れたの。」 

「・・・24日。」 

「予定日は?」 

「・・・24日。」 

「5月24日・・・が予定っていうことは・・・」 

「・・・だから24日だって。」 

「そっか(笑)じゃあ発情1周期まるまる遅れたっていうことだ。」

「・・・そうだ。」 

仔馬が頭を上げ始め

親馬が仔馬のことを気にし始めた。

「いま頃のお産は、寒くなくていいね。」 

「・・・。」

「メスみたいだね。」 

「・・・そうか、ま生きとったら、どっちでもいいわ。」 

「やっぱりでかいよ。」 

「・・・メスにしては肢が太いかもな。」 

「種馬はどこの?」

「・・・Mさん。」 

「いい子できたね。」 

「・・・ま、こんなもんでないか。」 

「こいつだけどうしてこんなに遅れたのかね。」 

「・・・この親は、おととしも遅れて、その時は死産だったからな。」 

「それで心配で、アリナミン何度も打ってたんだ。」 

「・・・そうだ。それが効いたんでないか。」 

「それはどうかわかんないけどね。結果オーライだね。」

「・・・この親、自分ばかり肉つきやがって。」

「そういう親、いるよね。お腹の仔がなかなか育たないのかね。」 

「・・・だから遅れんのか。」

「栄養分の行き先のちがいで、遅れたり早くなったりなのかもね。」

「・・・。」 

親馬が仔馬を舐め始めた。

「・・・一服するべ。」

私たちは

Αさんの家に上がり

居間の監視モニター画面の前に座り

この親仔を引き続き見守りながら

お茶で一服することにした。 

1時間ほど経ったところで

再び馬小屋へ行ってみると

IMG_5667親は立ち上がり

引き続き仔馬を舐めていた。

胎盤(後産)がまだぶら下がっていたので

オキシトシンの注射を打ち

そのまま帰路に着いた。

翌朝

往診の1番最初にΑさん宅に寄ってみた。

昨日の親子は

特に問題なく

普通の親仔馬の姿で

馬小屋の中に立っていた。

「後産は出たの?」 

「・・・今朝、おまえが帰ってからすぐ出た。」

「仔馬のうんち出た?」

「・・・でた。浣腸もした。」

「じやあもう大丈夫だね。」

「・・・なかなか乳首に吸い付かんのよな。」

「これだけ元気に乳探ってれば、大丈夫だよ。」

IMG_5668仔馬は親の乳を探り

親馬は仔馬の鼻先へ白い乳を漏らしていた 。

仔馬が乳首に吸いつくのは

もう時間の問題だった。

私はひと安心して

次の往診地へと向かった。 

かくして

わが町の重種馬の

今年最後のお産も 

ようやく無事に終わったのだった。 


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尾椎欠損

「ちょっとついでに、奇形の牛も診て欲しいんですけど。」

繁殖検診の時に*さんがそう言った。

「どんな奇形なの?」

「尻尾がないんです。」

「仔牛?」 

「じゃなくて、診てもらう育成牛の中の1頭なんです。」

「育ってるんだ。」

「はい、でも小さくて、ちよっと変なんです。」

「直検するの?」

「はい。」

そう言われてやってきた育成舎には

なんとなく小柄で華奢な1頭が混ざって繋がれていた。

「なんとなく目がつり上がってるでしょう。」

「・・・?」

育成牛の群れの外から見ると

どれがその牛なのか、よくわからなかった。

「今繋ぎますから。」

そう言って*さんは、配合飼料をすくいながら

育成牛を連動スタンチョンに呼び込んだ。

「いいですよ。右から3番目の牛です。」

ペンの中に入って、その牛の背後に立った。

IMG_5637「・・・なっ、これは!・・・」

「尻尾がないでしょう(笑)」

「ほんとだ、全くないね。」

「ちゃんと繁殖できるでしょうか。」

「こんな見事に尻尾がないのを診るのは、初めてかも。」

IMG_5640そう言いながら私は

この牛の肛門から直腸に手を入れた。

「尻尾が邪魔しないから、入れやすいね。」

「そうですか。中はどうですか。」

子宮や卵巣などを触診した。

IMG_5641「うーん。べつに異常な感触はないね。」

「そうですか。」

「これなら、発情来たら、授精してもいいんじゃないかなー。」

「そうですか。」

「尻尾の骨(尾椎)が全くないから、お産は楽かもね。」

IMG_5639「そうですか(笑)。これから夏場がかわいそうです。」

「・・・?」

「ハエやアブを払えない。」

「なるほど(笑)。」

そんなちょっとビックリな牛も混じえて

検診を終えて

帰ってきた。

尾椎欠損の牛の写真と

隣の正常の牛の写真を並べてみると

見事に尾椎が欠損していることがわかる。

これからこの牛は、ちゃんと乳牛として

一生を全うすることができるのだろうか?

それは授精してみないとわからない。

ただ、尾椎がないから

尾椎硬膜外の麻酔と

尾椎からの採血は

不可能だ・・・


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第29回日本伝統俳句協会総会に

6月というのは、馬の繁殖シーズンの大詰めの時期で、

毎年この時期に仕事を休んで遠出することなど、

就職して以来したことがなかった。

imageしかし今年は、連休を頂いて、

東京と、その後実家の静岡へ、

二泊三日の旅をさせてもらう事が出来た。

image馬の生産者の皆さんにはご迷惑をかけ

診療所の皆さんにはご苦労をかけ

たいへん申し訳ないと思いつつ

恐縮しながらこの記事を書いている。

image旅の初日は

東京のど真ん中で

伝統俳句協会の総会と懇親会に出席。

何もかもが初めての経験だったので

image緊張気味で総会を終えた。

懇親会は、稲畑廣太郎先生の肩のこらない司会トークのおかげもあって

緊張もほぐれて、美味しいお酒を堪能する事ができた。

懇親会と表彰式の顔ぶれを

今になって振り返ってみると

image汀子会長をはじめ

伝統俳句協会の錚々たる顔ぶれが揃っていたことに気づく。

大輪靖宏先生、岩岡中正先生、井上泰至先生ら

俳人かつ文学者の方々や

各俳句総合誌の編集部の方々も顔を揃えていた。

image特に印象が深かったのは

稲畑汀子先生が育てて来られたと思われる

女性俳人の方々の元気の良さだった。

名前をすべて挙げるのはここでは無理だが

今をときめく伝統俳句の作家が一堂に会し

image私はそれに圧倒されていた。

それらの俳句作家の方々と

1人でも多く言葉を交わしたかったのだが

あまりの数にそれは叶わなかった。

あっという間に時間が過ぎ

来年の第30回記念大会に向けての締めの挨拶となった。

それを聞きながら

今日の経験は、自分の俳句にとって

新たなスタート地点に立ったことに過ぎない

という気持ちが湧いてきたのだった。

きっと、これからなのだ。




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馬の分娩遅延

我が町内で飼養されている重種の繁殖牝馬の、

IMG_5514今年のお産も、

とうとう残す所あと1頭 となった。

かつては毎年100頭近く生まれていた仔馬も、

今では20頭を割ってしまった。

さみしい限りの状況だが、

せめてその仔馬たちの全てが、

無事に生まれてほしい。

今年は今のところ、全頭無事に生まれている。

しかし、気がかりなのは

この最後の1頭の

分娩予定日は5月の24日だということだ。

今日は6月11日だから

もう予定日から18日も遅れていることになる。

馬の分娩が、予定日から大きくずれるのはよくある事で

私も過去にそれに関する記事を書いたことがある。

しかし、よくある事と言いながら

その理由は未だによくわかっていない。

よくわかっていないから

予想ができなくて苦労をする。

苦労をしながら、みんないろいろ考える。

そして

馬の分娩遅延の理由には色々な俗説が生まれる。

例えば

(1)交配時の排卵遅延説・・・

最終交配日から排卵が大きくずれて、そのまま分娩も遅れるという説だ。

しかし、排卵は遅れてもせいぜい1週間が限度だろうし

分娩の遅延は説明できても、分娩が予定より早まる事は説明できない。

(2)個体差説・・・

妊娠期間が先天的に長い個体がいるという説。

これは、調べればそういう傾向を持つ個体が見つかるかもしれない。

逆に妊娠期間の短い個体も見つかるかもしれない。

しかし、本気で調べたデーターにはお目にかかっていない。

(3)栄養説・・・

妊娠中に摂取した栄養(エネルギー)が少ないと、分娩が遅れるという説。

母馬の栄養ばかりではなく、胎児の成長にも影響している事は推測できる。

この説はまるで、桜の開花予想に積算気温が関係しているという説に似ている。

高栄養の馬群は分娩が予定より早く

低栄養の馬群は分娩が予定より遅れる

あるいは

なんらかの理由で長期間採食量が落ちている個体は

分娩が予定より遅れる傾向がある

というのは、私の過去の経験を振り返っても

その傾向は、無くは無い・・・ような気もするのである。

しかし、これも本気で調べたデーターにはお目にかかってはいない。

他にも、どんな俗説があるのか

興味深い所ではある。

ともあれ、今はわが町の

残りあと1頭となった重種牝馬のお産が

無事に終わってくれる事を

祈るのみである。


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ミニチュアホースの腹膜炎(3)

1枚目の写真は腹腔洗浄した翌日。

それから3日間、この馬は餌を全く食べなかった。

IMG_5299排便はほとんどなく、

下腹部の術創周辺には、

盤状の冷性の浮腫(むくみ)があらわれ、

縫い終わった創部からは、

僅かだがポタポタと漿液(腹水か)が漏れ出ていた。

ドレーンを装着していれば

そこからスムーズに廃液されたと思われた。

体温は37℃台に下がり、心拍数は遅めの50台

血液検査で目立ったのは、血清たんばく質の低下だった。

リンゲル液とアミノ酸製剤の輸液と

抗生物質を投与し続けた。

2枚目の写真は腹腔洗浄をしてから5日目。

IMG_2076食欲が現れた。

便の量は僅かに増えたが、

硬い便と泥状の軟便を繰り返し排泄した。

下腹部の浮腫は少しづつ縮小し

漿液の漏出も止まっていた。

体温は37 ℃台で、心拍数も5〜60台だった。

血清タンパク質は上昇傾向に転じた。

さらにリンゲル液とアミノ酸製剤と

抗生物質の投与をし続けた。

3枚目の写真は腹腔洗浄してから10日目。

IMG_2075食欲は上昇し、活気が出てきた。

便の量も増え、形状も安定した。

外に出たがる仕草をするようになったので

日中は放牧することにした。

体温は38℃台、心拍数は7〜80台になった。

血清たんばく質も6mg/dl台に回復。

治療を中止して

様子を見ることにした。

IMG_54384、5枚目の写真は

それから1ヶ月以上経った時のもの。

他の馬たちとは、別の牧区に入れられていたが

元気、食欲、排便、歩様

全て問題はなかった。

普通の健康なミニチュアホースと同様に

IMG_5440牧場の中を元気に走り回っていた。

やっとの事で捕まえて

下腹部の術創を見たが

創部の状態も良好だった。

(今回の症例は、今年9月の上旬、旭川で開催される北海道獣医師会の学術三学会で演題発表をする予定です。興味のある方は、どうぞ聴きに来てください。)

(この記事おわり)


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ミニチュアホースの腹膜炎(2)

災いは忘れた頃にやってくる・・・

という言葉もあるように、

私はこのミニチュアホースのことをほとんど忘れかけていた。

図3そんな私の眼の前に、

救いようのなさそうな腹部の膨隆している、

苦しそうなその馬と再会してしまったのだ。

これはもはや、ダメではないのか・・・

図4そんな第一印象だった。

だが、飼主の△さんは、なんとか命だけでも助からないかという。

ダメもとで、外科的な処置をするほかはない・・・

そんな思いで、診療所に戻り

午後からの開腹手術の準備をした。

ドミトール+ケタラールで倒馬し

GGEとのトリプルドリップ法で麻酔を維持する。

推定の体重がわずか50圓覆里如普段使う量の10分の1だ。

IMG_2997仰臥保定して、バリカンで毛を刈り

パンパンに膨らんでいる腹部に超音波を当ててみた。

どこを当てても、エコーフリーな黒い画面がほとんどで

どこがどうなっているのかは全く把握できなかった。

「切ってみますね。」

私は立ち会っていた△さんにそう言って

正中部を約5僂曚廟擲した。

IMG_5240その途端・・・

黄色く混濁した腹水が飛び出てきた。

まるで、液体を入れた風船に穴を開けたような勢いで

創口から噴水のようにアーチを描きながら飛び出てきた。

IMG_2002「すごい量だ・・・」

手術に参加した人たちの視線が、腹水のシャワーに釘付けになった。

「やっぱり腹膜炎だ・・・」 

黄色い腹水に混ざって

卵とじのようなフィブリン様の絮片も

時折創口から飛出してきた。

腹水がほとんど出終わったところで 

助手をしているS獣医師が

創口から手を入れて、腹腔内を探索した。

すると、骨盤腔の付近に20僉15冂度の塊に触れ

その周りにフィブリン様の物質が付着していたので

それを手で剥がした。

それは、腹腔内膿瘍の自壊であることが想像できた。

(実は、一昨日の十勝獣医師会の学術研究発表会の時、「腹腔内の所見はどうだったのか」、というご質問をいただいた。その時私は、自分では腹腔内に手を入れていなかったので、はっきりした探索所見を答えることができなかった。そこで昨日助手をしたS獣医師に、腹腔内を探索した所見を聞いたところ、上記のような腹腔内の様子を語ってくれたので、ここにあらためて、質問の答えを書かせていただきました。) 

この後はもう

腹腔内を大量の洗浄液で洗うしかない・・・

「タンク、使いましょうか。」

そこで、機転を利かせたのはもう1人の助手のO獣医師だった。

重種馬の子宮洗浄に使う20リットル入りのタンクに生理食塩水を作り

IMG_5245その中に抗生物質を入れて、腹腔洗浄液とし

その液をシリコンチューブで創口へ導き

洗浄液が溢れ出てくるまで注入した。

注入したところで、腹腔内に手を入れて、液を隅々まで行きわたらせ

その後、馬を手術台ごと傾けて、洗浄液をほぼ全量排出させ

その操作を2回繰り返したところ、排液は透明感を帯びてきた。

排液が全て終わった後、生理食塩水のボトルに抗生物質を入れたものを

IMG_5249腹腔内へ注入し、閉腹した。

術後、馬は直ぐに立ち上がり

車に乗って、帰宅した。

(この記事続く)


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