今日は夜間当番、往診の2件目に難産が入って今さっき帰ってきたところです
黒毛和種の尾位(いわゆる逆子)で出てこないとの事
至急駆けつけて手を入れてみると、なるほど肢が2本蹄低を上に向けてのぞいている
でもそこから肢をだんだん奥へ触ってゆくと、尾位の場合はすぐ飛節に触るはず
今日の胎児も飛節のような尖がった所まで触れるのだがそこまで行かぬ所に関節が・・・
ははぁ・・・ちょっと経験のある獣医師なら、これは前肢だぞ、とすぐわかるのです
ということは、頭を確認しないといけない
あーあったあった産道の恥骨のすぐ向こうぐらいに遠慮がちにオデコが触れる
この頭の部分を産道に上げてくるには一度全体を押し戻してみるのが一番
難産介助は「引いてもダメなら押してみな」である
今回は小柄な黒毛和種ということもあって簡単に正常位に治すことができました
 
飼主との信頼関係をもっとも手っ取り早く結ぶには、勝負の早い難産介助だと私は思います
生きて出せれば一番いいけれど、たとえ子牛がダメでも、最善を尽くし飼主に誠意が通じればよろしい
慌てず冷静に、しかしはっきりと判り易く、周りの人たちに指示を出しながら、助産の場を仕切るべし
 
ひところ獣医師の個体診療は「火消し」と揶揄されていて
これからの獣医師は予防や群管理や生産獣医療を目指さねばならぬと盛んに言われていました
それはそうなんだけれど
個体診療(火消し)をまともにできない獣医師が予防や群管理に手を出すべきではないな、と私は思っています
まず火消しで飼主と苦労を共にして信頼関係をしっかり作ってからでないと、相手に何を言っても空回りだからね