「先生よ、最近おらの牛下痢するようになってよ、このあいだの子牛らも治療してもらったらすぐ治ったんだけど、そいつらが生後1ヶ月ぐらいすると又下痢になるのよ・・・コクシジウムだべか?」

夕方、カルテを書いていると、Kさんが事務所に来るなりこう言った、Kさんは我が町でも指折りの和牛生産農家で、繁殖は50頭以上、共進会にも毎年上位に入る優良農場である

「Kさんの家にここ数年、下痢で治療に行ったこと無かったもんねぇ、この前の治療はほんと久しぶりだったけど、どうかしたのかな、なんか思い当たることある?」

K牧場は分娩管理や子牛管理がしっかりしていて、私は他の和牛農家さんに対して、K牧場の飼養管理を「模範」として引き合いに出している、そんな農場で下痢が多発されては困るのであった

「それがよ、うちのバァさんにまかしてたコクシの予防薬、一年くらいやるのサボってたらしいのよ、薬やらんでも下痢にならんかったしな・・・それが最近急に出てきて・・・アワくってこの間残ったやつ全部飲ませたのよ、足りなくなったから又貰いに来たさ」

Kさんが取りにに来た薬は、スルファモノメトキシンの液剤であった、さすがはKさん!、私が何も言わなくても病状の把握は的を得ているのだ

「コクシジウムはしつこいからねぇ、完全には消えないから、やっぱりこれをマメに飲ませながら抑えていくしかないのかな、でも、下痢の原因に思い当たることがすぐ見つかってよかったね・・・」

私はただ薬を渡すだけ、やることやってくれている飼い主さんのところの治療は、ホントらくちんなのである