今日直検をした空胎馬。種付けを始めたんだけれど、排卵したかどうだか診てほしいと言うもの。
でも結果は、どちらも卵胞の直径が40mm程度(私の指幅で2.0程度)のまだまだ小さくて硬い卵胞を触るのみであった。重輓馬の卵胞は60mm以上にならないとなかなか排卵はしないものだ。この発情はだらだら続きそうだな、と私は思った。中身と外見がちぐはぐなのだ。
次に、膣鏡で子宮頚管の所見を診ると、ポッテリと融解している。子宮頚管の所見は、発情兆候との相関が高いので、当て馬は良い、ということで種付けをしているのである。
3月も終わり、4月に入るともう飼主は馬を早く受胎させたくて、とにかく一度交配しておきたいという気持ちになるものである。
また、種馬屋さんも、1頭でも多くのお客がほしいら、早く牝馬の種付けして(唾を付けて)おきたいのが人情である。
ところが・・・当然ながら牝馬自身はは全く焦っていないのである。
空胎馬の繁殖シーズン第1回目の発情と言うのは特別で、発情兆候が長い。普通の発情は7日程度でだいたい上がるのに、この時期はその倍以上ずっと発情兆候が続く馬も少なくないのである。なぜなのかは判らないが、おそらく牝馬の体が発情周期をはじめる「立ち上げ」「準備」期間なのであろう。
EQUINE REPRODUCTION という本によると、この空胎馬のシーズン第1回目の発情の事を特別に、Transitional stage(トランジショナルステージ=移行発情期・・・日本語の訳がじつはまだ確定していないようなのだが)と呼んで、2回目以降の発情と明確な区別をしている。そして、この発情は長いので、交配適期を掴みづらく、非常にイライラする発情である、という記述がある。
日本語で書かれた馬の繁殖の本に、この Transitional stage について触れているものは私は残念ながらまだ見た事が無い。
私は、ここ10年ぐらいそれが気になっている。日本の獣医師は、この特殊な時期の発情を理解しておかねばならないと思うから。
でも、飼主さんや種馬屋氏はこの発情の事を体験的に理解しているようだ。
「たまご、まだ小さいってかい?・・・」「腹空きの春先の発情は長いもなぁ・・・」「なんかおもしろくねぇ発情なんだよなぁ・・・」「今頃ってなかなか排卵しないぞなぁ・・・」「まだ雪が残ってるうちはホルモンの巡りも悪いんかなぁ・・・」「排卵促進の注射打っても効かねぇしなぁ・・・」「ま、種付け間隔長くしてゆっくり排卵待つしかねぇか・・・」「しばらくブン投げとくかぁ・・・」
などと、的を得た事をおっしゃるのである。それが正解のようである。私は、黙ってうなづくのみである。


そちらではライトコントロールは普及していますか?
単純に排卵窩が物理的に開かないなんてことはないんでしょうか?2回目の発情が逆の卵巣の卵胞によるものでも、排卵は早まりますか?