武士道お座敷獣医師H先生のお勧め図書を読んでみた。

「武士道」 新渡戸稲造著 矢内原忠雄訳 1899

岩波文庫 青 118-1

17章から成り、著者の幅広い東西の知識と経験から、日本古来の思想である武士道をあぶりだしている。各章が簡潔で、論理的な筋立てがとても明快。この原文が英語だったということに驚く。外国人のために書かれたものだったのだ。

日清戦争の直後に書かれた物なのに新鮮な内容だ。しかし、この武士道がその後の日本人の皇民教育や太平洋戦争開始への思想的な下地になったことは、容易に想像できる。もちろんそれは、新渡戸博士の望んだ所とはまったくかけ離れたことだったに違いない。

戦後61年。高度成長が終り、経済至上思想が破綻した今、日本人が自分達の心の内を見つめ直すには必読の書かもしれない。

「日本人の心理を精察したらば、・・・、必ずやこの源泉の武士道にほかならなぬことを容易に確認しえたであろう。劣等国と見下されることを忍びえずとする名誉の感覚・・・」(16章・武士道はなお生くるか)

畜産業だけに限定しても、この本に書かれていることは大変示唆に富む内容だ。たとえば「誠」の章。「武士道は商業上の不名誉の流れを阻止するに無力であったか。その点を考えてみよう。」として、東西の実例を引き合いに出し「正直は最善の政策なり。」「結局正直が引き合うことを学んだのである。」と言っている。今の輸入牛肉問題や食品安全性論議において、武士道の精神が日本の畜産の精神的支柱になる可能性は無いか?

「花は桜木、人は武士」などといって、間違った戦争を引き起こし、ズタズタになってしまったように見える日本人の心。

バブルの崩壊から、経済至上主義が行き詰まり、心のヒーローやヒロインを求め、つくり上げられたヒーロー達にことごとく裏切られてきた日本人の心。

しかし、ここ数年のミュージックシーンにおける「さくらソング」(森山直太郎、河口恭吾、ケツメイシ、コブクロ、など)の連続ヒットをどう見るか。

新渡戸博士は「武士道は一の独立せる倫理の掟としては消ゆるかもしれない、しかしその力は地上より滅びないであろう。・・・その象徴とする花のごとく、四方の風に散りたる後もなおその香気をもって人生を豊富にし、人類を祝福するであろう。・・・」と、結んでいる。

以下は、いちごさんからいただいたコメントです。

彼女が明治神宮の散策を日課にしている話から・・・

「・・・でもこれが割と、ばかににはできない面白いものが並べてあるのだね。
最近は結構おセンスがよろしいのですよ。
(そうか…ガイジンがいっぱい一杯来るところなのでそうダサくもしておけないのだろうな。最近のガイジンは日本人よりも日本文化や東洋文化に深!造詣のオタッキーなのだから)

そこで、見てしまった。
昔(戦前)の教科書の復刻版を売っていたのだ。
小学一年生用の修身やら国語やらの。
嗚呼、よくも悪くも結構衝撃的だったぞよ。

対象は6歳だから、初めは絵解き。
これが何ともよい。
それぞれの場面を見て、そこから答えは自分で考え出すのである。
親切さや正直さ、迷惑をかけない事の大切さを説いてある。
誰が見ていなくても、隣人の所有物を掠め取ったりしてはいけない事等、絵だけで または簡単な文章で促している。
その細やかな内容は実に素晴らしいものであった。
現役の子供達に(子供は愚か しっかり体格だけ大人サイズの成人餓鬼どもにも)読んでもらいたいものだ。

でも初めと終わりはしっかり締めまくっているのが何とも恐ろしかったぁ。
表紙を開けるとまずは…
皇居前の皇軍?行軍風景から始まってたりしていて……げげ!ガビ〜ン。こわ。
最後近くになると、文章が長くなる。
【トラキチノオニイサンハヘイタイデス。
〜云々〜ジュウデテキヲウチマシタ。〜略〜
タマニアタッテシニマシタ。
デモサイゴマデラッパヲテバナスコトハナク、オクニノタメニリッパニシニマシタ…】
みたいなことが書いてあったのでありましたよ。

その昔、年端もゆかぬ児童であった頃、
我々の親はこういうものを読んでいたのだ。
当然、読まされていた筈なのだ。

昭和一桁生まれのの患者さんに聞いたことがある。
今、北朝鮮の現状ををまるで悪魔のように(ありえない=他人事だと)恐ろしげに報道しているけれどもね、日本だって、ついこの間まで、あんなだったわよ〜。
子供の頃に暗記させられた歌はね、未だにすらすらと諳んじられる(その場で聞かせてくれた)けど、こういう歌はマスコミで流れる事はいっさい無いのよね〜(当たり前だけれど)。

土産物売り場でこういうモノ(教科書復刻版)を堂々と売っている明治神宮はなかなかに勇気があると思ってしまう。
まさか靖国神社では売って無いだろうなあ。
(それって怖すぎる)
(でも、他には一体どこであんな本を土産として売ってるんだろうか?)」