「分娩後、次第に食欲不振・・・」 という稟告。

T40.0 P126 R28 食欲不振、第一胃運動減退

ピングサウンド(−)、乳汁ケトン体(±)

可視粘膜蒼白、黒褐色泥状悪臭便・・・

貧血牛患畜は左の牛である。

右の健康な牛と比べると

乳房の色がまったく違う。

かなりの貧血があるのは間違いない。

RBC(赤血球数) 191万    WBC(白血球数) 18500 

ヘモグロビン(血色素量) 3.7 (g/dl)   ヘマトクリット 12.1 (%)

血清総蛋白 4.4 (g/dl)  

・・・うーん、これは、かなり激しい貧血だ。

「出血性の第四胃潰瘍」と診断した。

内視鏡で確かめたわけではないが、ほぼ間違いはないだろう。

止血剤と輸液、抗生物質の投与をしばらく続ける事にした。

・・・じつは、この症状は

2年ほど前に、私自身もなったことがある。

詳しくはこのブログの2年1ヶ月前のページをご覧下さい(笑)。

私の病名は「出血性十二指腸潰瘍」だった。

自分の体に血の気がなくなり、真っ黒い泥状便が出るのだ。

私は医師に輸血を勧められたが、ちょっと待ってもらい

結局、輸血はせずに、静養と内服薬と食事療法で治していただいた。

ちょっと動くと、すぐ動悸・息切れを繰り返し

背中や腹部に鈍痛がある。

・・・この牛を診たとき、これはもう他人とは思えなかったのだった(笑)。

胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因は何か。

ズバリ『ストレス』だと私は思う。

そして牛にも、ストレスに弱い体質があるようだ。

今回のこの牛は、非常に繊細な神経を持っていて

搾乳の時、親父さんが乳頭を拭く時は、とてもおとなしいのに

それ以外の人が拭くと、いつも必ず嫌がって動いて、気難しい牛なのだという。

血管注射を刺す時も、うるさくて何度も暴れられた。

かく言う私はどうかというと・・・

やはり、ストレスに弱い人間と言わざるを得ない。

内視鏡を飲む時も、嫌がって暴れて、何度やってもゲボゲボと涙を流した。

自分の性格は、自分では極めて温厚、従順、質直柔軟、だと考えているが

自分のペースを乱されるのが嫌いで、納得しないと行動できない。

それをストレスとして抱え込んでしまうのだ。

他人様から見たならば、気難しい所もきっとあるのだろう。

そしてこの消化管の潰瘍というのは、何度も再発を繰り返すのである。

以前は、便が真っ黒になる出血を年に一度は繰り返していたのだった。

ところが・・・

私の場合、胃の中の「ピロリ菌」を除去してから、約2年と数ヶ月

それらしき症状の再発は全くない。

職場の環境を変えて頂いたせいもあるのだろうけど

この「ピロリ菌」の除去が、再発防止に大きく貢献していることは間違いないと思われる。

・・・牛の場合はどうだろう。

牛の第四胃の中に、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)のような潰瘍の引き金になる菌は、いないのだろうか?

どなたか、興味のある方、調べてみませんか?

採材のお手伝いしますよー(笑)。