酪農情報誌などでは最近、暑熱対策(ヒートストレス対策)の特集が目白押しだ。

その中で、まず最初のポイントにあげられるのが牛の呼吸数である。

先日読んだ某酪農情報誌には

 「・・・正常値である50〜60回/分よりも多ければすでににヒートストレスを受けている・・・」

また、別の某団体の情報誌には

 「通常の呼吸数は50〜60/分程度のものですが、暑熱時には80回/分以上になり・・・」

という記述があった。

私は、これらを読んで

 「え?!」

と思った。

通常の牛の呼吸数はそんなに多かっただろうか?

で、調べてみると

名著で名高い

『牛の臨床検査診断(Clinical Examination of Cattle)』

G.Rosenberger 編 其田三夫 河田啓一郎 訳 P82

いわゆる「ローゼンベルガー」の記述には

 「正常な呼吸数は、成牛では15〜35/分、子牛では20〜50/分である・・・」

とあった。

ずいぶん違っているではないか。???。

そんな疑問をもって、ここ1ヶ月ばかり、往診先の牛の呼吸数を気にして見るようにした。

6月中旬は気温が低く雨がちだった。

健康な牛たちの呼吸は、おおかた2秒に1回程度。すなわち約30回/分だった。

6月下旬は急に晴天が続き暑くなった。

健康な牛たちの呼吸数を数えてみると、1秒に1回、すなわち約60回/分という牛も少なくなかった。

特に運動もしていないのに、黙って牛舎に居るだけなのに

牛の呼吸数というのは、環境の変化だけで、あっさりと2倍以上になってしまうようだ。

「ローゼンベルガー」の記述の続きを読んでみると

 「・・・呼吸数は、個体の変化(運動と興奮の影響)と環境の変化(特に気温)に影響を受けやすく、夏または風通しの悪い牛舎、あるいは若牛や妊娠末期の牛では、冬や戸外の場合、あるいは老齢雄牛または非妊娠雌牛に比べると、呼吸数はかなり多い。」

とあった。

なるほど・・・

ならば、初めに挙げた二つの雑誌の、通常50〜60回/分、という数字は

牛の正常呼吸数の「上限」として理解しておくのが良いかもしれない。

それと

地域の気候の差というものがある。

縦に長い日本列島、北海道と本州や四国・九州では、牛の通常の呼吸数には大きな違いがあることが想像される。

我々北海道の獣医師にとっては、疑問に思う呼吸数も

南国の獣医師にとっては、全く正常な呼吸数と思うかもしれない。

あなたの周りの牛の呼吸数・・・

実際、どれくらいですか?