初診は当歳馬たちに虫下しを飲ませた日の夕方だったという。

疝痛・・・にて上診、T38.3 P66、フルニキシン製剤注。

翌日の早朝、疝痛は治まってきたものの元気がないとのことで再び上診。

症状はほとんど変わらず、排便は僅かに数百グラムのみ。

補液と下剤を投与した・・・。

ここまでが、当番の獣医師からの伝言だった。

この日の昼は飼主の∵さんは病院へ治療と検査に行かねばならず、どうしても不在になってしまうという・・・

が、気になるので様子を見てきてほしいということで

私は、飼主不在の牧場へ、この当歳馬を診にいった。

パドックに放されているので、捕まえようとしても逃げてしまう。

何とか捕まえて、聴診器を当ててみた。

蠕動は弱く、食欲がほとんどない・・・T38.4 P70

直腸内には宿便が百グラム程度のみ。

目にいまいち活気がなく、時々後を振り返るような仕草をした

しかし何かしようとするとすぐ暴れて逃げようとした。

嫌な予感がした。

飼主の∵さんには連絡が取れないので、息子さんの携帯に連絡を入れた。

「なんだか余り良くなっていないようなんだけど・・・お父さんが帰ってきたらまた連絡してくれますか?、私、今夜当番ですから。」

と、息子さんに言っておいて、牧場を後にした。

夕方5時過ぎに、父さんから電話がかかってきた。

「全然食べないんだけど、診てくんないべか・・・」

日が落ちて暗くなった牧場に着いて、症状を診た。

T39.3 P106 R50 全く元気がなく、宿便は百グラム程度。

直腸へさらに深く手を入れてみると・・・

自転車のチューブのような腸管が、所狭しと膨らんでいた

嗚呼・・・これは・・・完全な通過障害・・・だ。

飼主夫婦と息子さんの前で、状況を説明するのが辛かった。

私たちの技術ではもう助ける事が出来ないことを告げた。

ダメもとで開腹手術をしてみるかとも言ったが、∵さんの同意は消極的だった。

私もここで開腹手術へ踏み切る気力がなかった。

「たぶん死ぬ、から・・・運び出しやすい所へ移しておいたほうがいいよ。」

こう言った時の、敗北感、情けなさ・・・

うーん・・まいった。

診療所に帰り、残業していた後輩獣医師の顔を見た。

・・・やっぱりダメでも、後輩達の経験のために開腹手術をしたほうが良かったかなぁ・・・

と、繰り返し繰り返し、思った。

考えていると、隣の地区の当番獣医師から電話が来た。

これから牛の帝王切開をするから、助手を頼む、と。

∵さんの馬の事は、牛の手術中にようやく吹っ切れた。

翌朝、電話が鳴った。

「あ、もし。あの当歳馬、死んだわ・・・」

∵さんの父さんからだった。

昼から、処理場で解剖をして、結果を教えることを約束して、電話を切った。

昼からの往診を少なくしてもらって、処理場へ向かった。

解剖の結果は・・・

馬回虫による腸閉塞。

場所は、回腸の遠位端と盲腸への開口部

駆虫剤でやられた回虫が殺到した所見だった。

∵さんの当歳馬たちは、いつもの年ならば

春の放牧前に、エクイバランペーストを飲ませるのだが

今年は∵さんの父さんが入院してしまいそれが出来ず

やむを得ず、秋の離乳時に、初めて駆虫をしたのだという。

その結果、こういう事故が起きてしまったのだった。

(※ 開腹手術の成功例をhig先生が記事にしてくれましたので、そちらも是非読んでもらって、馬回虫の腸閉塞についての知識を深めてもらいたいと思います。
http://drhig.blogzine.jp/equine/2009/10/post_b539.html?cid=23085468#comment-23085468
技術レベルが非常に高くて、私もたいへん勉強になりました。)

さて

解剖所見の写真は・・・

非常にショッキングなので、続きのページにアップしました。

勇気のある方は、どうぞご覧下さい。

         

とりあえず、画像を見ていただきありがとうございます。

最初の、腹壁をあけて内臓を取り出すまでは、処理場の職員の方に

やってもらったので、ちょっと腸管が破けたり、修羅場と化してしまいましたが

その後、腸閉塞の場所が大体わかる程度に、私が並べなおしました。

IMG_0233





















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 最後に、hig先生に教えてもらった言葉を書いておきましょう。

   『 寄生虫はいつも馬の能力を落とす。

          寄生虫はしばしば疝痛を引き起こす。

                    寄生虫はときどき馬を殺す。

                                 名言だなぁ・・・