トウコツ1買って来た初妊の牛をタイストールで分娩させて

数日後、うまく立てなくなってしまったという稟告。

診てみると、右の前足がおかしい・・・

前に出すことができずにモタモタとしていた。

橈(トウ)骨神経麻痺である。

牛が分娩を境に、四肢の異常をきたすのは、多くが後肢

それも、ナックルとよばれる後肢の球節が出っ張った形になることが多いのだが

この牛の後肢はなにも異常がなく、前肢に異常が出た珍しい症例だ。

介助をして、患肢を伸ばしてやると、普通の姿勢で立つことができる。

トウコツ5しかし何かの拍子にガクッとなって

また最初の写真のようになってしまう。
 
正しい姿勢のときに、ギブスを巻いた。

ギブスを巻くのは、後肢よりもずっと楽だった。

軽く鎮静して立たせているだけでよい。

ただし、肩から腕節にかけて

トウコツ4力がうまく入らないので

すぐ下の写真のような姿勢になってしまった。

それでも、こうして固定することにより

球節を地面に着かせない効果は十分ある。

そのまま1週間放置。

ギブスがずれたり、割れたりすることもなく

トウコツ8無事に球節が保護されていた。

「少し牛が元気になって、食欲も出てきたよ。」

と飼主のмさんもほっとしたようだった。

そろそろギブスをはずしてもよいかと思ったが

痛がっている様子もないので

もう1週間そのままにしておくことにした。

トウコツ11そして、1週間後

牛はもう何の違和感もなく

寝たり起きたりも、自由にしているので

ギブスをはずすことにした。

腕節から近位の部分が若干はれぼったくなったが

前肢の動きは、まったく正常といってよい動きになっていた。

乳牛の橈(トウ)骨神経麻痺は、あまりお目にかからないが

治療法は10日程度のギブス固定くらいで治ってしまうようだ。

ちなみに・・・

馬の橈(トウ)骨神経麻痺の記述が、hig先生のブログにあった。

馬の場合は、横臥で全身麻酔した後、下になった肢がこうなってしまうことがあるらしい。

牛が横臥で麻酔をかけられても、こうなることは稀である。

しかし、今回の牛の例は

買ってきて慣れない場所で

長い時間、右の前肢を下にして分娩したために

こういう事態になったことが想像できる。

馬での話が、牛の橈骨神経麻痺の原因究明に役立った?!ということになる(笑)