DVC00068先輩獣医師のVさんが、母親の実家にあったという古い本を見せてくれた。

Vさんのお母様の実家は、岩手県の南部地方にあるそうだ。

「表紙が火事で焼け焦げたらしくてね、なんていうタイトルの本なのかわからないんだけど・・・・」

しかし、馬の獣医学の書物であることは一目でわかる。

DVC00070絵を見ていると、針灸のツボの解説であったり

簡単な解剖図と、内臓の位置関係の解説であったり

薬剤の調合レシピであったり
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非常に興味深い

「牛のやつもあったんだけどね・・・どこかにまぎれちゃって、今手元にはこれだけ。」

DVC00069100ページ以上はあるであろう和紙に

墨でていねいに書かれていて、色墨のところもある。

ところが・・・肝心の字が難しくて

殆ど全くといってよいほど、読めない!のだ。

「・・・読めないだろ?(笑)」

と、Vさん。

昔の人の毛筆の、ひらがなの崩し字というのは

専門的に勉強しないと、どーもこれが全く読めないのである。

同じ日本語だというのに・・・

短冊に書かれた俳句や短歌なども、崩してあると全く読めないが

それと同じもどかしさを感じたのだった。

DVC00072そんな中で、かろうじて

最後のページに、はっきりと

読める文字があった。

『宝暦八年、九月吉日』

宝暦八年を、年表で調べてみると

1758年であった。

徳川吉宗が亡くなったのが1751年。

それから7年が経過して

この年には田沼意次が大名になっている。

時代はまさに、享保の改革の後の混乱

江戸時代のど真ん中。

当時の交通手段は、海の船と、陸の馬。

馬の数だって、今とは比べ物にならないほど多かっただろう。

そのような時代に書かれた馬の医学書。

ああそれなのに

そこに書かれている字が読めないなんて

日本人として、獣医師として、情けない限りだねこれは・・・(泣)

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