「あ、もしもし、◇ですけど・・・昨日産んだ牛が、低カルみたいなんで、診てもらえるかな？」
「わかりました。」
当直の朝、７時過ぎの電話だった。
普通の低カルシウム血症かと思って、軽い気持ちで◇牧場牛舎に着き
牛を前にして驚いた。
投頚、呼吸速迫、泡沫性流涎、体表熱感、四肢震戦・・・
Ｔ（体温）４０．３℃、Ｐ（心拍数/分）１４０、Ｒ（呼吸数/分）８０
「１時間位前から、急におかしくなってきたんですよ・・・」
◇さんの奥さんが心配そうに言った。
「乳房炎はやってない？」
「はい、それは大丈夫だと思います。」
念のためＰＬテスターをかけてみたが、乳房炎の反応は無かった。
牛は非常に苦しそうで、体が熱く、荒い呼吸をしている。
（またまた、こういう症例に当たってしまった・・・）
私はまた、苦戦を覚悟した。
乳房炎ではないとすれば、やはり乳熱だとは思うが
この高熱と、心肺機能の激しい亢進は尋常ではない。
まず、採血し
それから、ショックを抑えるために
リンゲルとデキサメサゾンを投与し、抗生物質を投与してから、カルシウム剤を皮下に投与した。
治療中にショックで死んでしまうことは、避けねばならない。
（ここ約１ヶ月の間に、こういう症例、もはや４頭目だ・・・）
「じつは昨日ね、ボロカールを１本皮下に打ったんだけど、それでもやっぱり低カルかな・・・」
カルシウム剤を打ち終わった頃、◇さんがぽつりと言った。
「それとも脂肪肝だべか・・・この間のヤツもそうで、それは立てなくなって１週間で死んだんだよな・・・」
◇さんは、そんなことも言った。
「血液でカルシウムの他にも、肝機能も調べておきますか。じゃ、今日の昼近くにまた診に来ますね。」
私はそう答えた。
打ったカルシウムが劇的に効いてくれればいいのだが・・・と思った。
事務所に戻り、さっそく血清カルシウム、リン、マグネシウム、の測定をした。
結果はそれぞれ
Ｃａ ４．７（mg/dl）、ＩＰ ２．５（mg/dl）、Ｍｇ２．４（mg/dl）
昨日◇さんがカルシウムを皮下に、予防的に打ったにもかかわらず
カルシウムの低値が認められた。
これはちょっと普通じゃないかもなぁ・・・そんな考えがよぎった。
朝食を食べ
通常の勤務時間になって
２件目の往診を終えた時
緊急電話を引き継いだＯ獣医師から連絡が入った。
「はい、もしもしー。」
「あ、安田さん？今ね、◇さんから電話が来たんだけど・・・」
「・・・。」
「朝診てもらった牛なんだけど・・・」
「・・・。」
「さっき、死んじゃったって・・・」
「・・・あ、そう。・・・了解。・・・搬出の車に間に合うように、確認に行くよ。」
＊ ＊ ＊
産後３日以内の起立不能。
４０℃前後の高熱。
低カルシウム血症。
心肺機能の激しい亢進。
こんな症状が一気に現われる症例を
この１カ月で４例も立て続けに診た。
そのうち助かったのは、たった１例（パート��の症例）のみ。
ただし、パート�靴両瀕磴世院�血清カルシウム値が正常値だった。
パート�靴両瀕磴蓮⊆臂評�が乳房炎だった。
パート��とパート��と今回のパート�犬蓮▲�ルシウムが低かったので
いちおう乳熱という病名をつけたが
典型的な低体温や沈うつの症状は見せなかった。
これが、いわゆる
産褥性心筋症といわれるものなのだろうか・・・
＊ ＊ ＊
今回（パート�検砲竜蹐遼狂，魄様蠅靴拭�
「脂肪肝」だった。
◇さんの言っていたとおりであった。
また
腸間膜や腎周囲も
厚い脂肪組織に覆われていた。
こんな写真を見ると
生前の肝機能が相当落ちていただろうと思われるのだが
血液検査の値は
GOT 121（IU/ℓ）、 γ-GT 41（IU/ℓ） 、 遊離脂肪酸 0.41（mEq/ℓ）
これはほぼ、正常値
・・・なんだかなぁ（苦笑）
脂肪肝ではあっても、肝細胞は壊れていなかった、ということか？？？
また、肝心な心臓の所見は
「心肥大はあるも著変なし」であった。
産褥性心筋症という確定診断には
遠く及ばないような結末であった。
「わかりました。」
当直の朝、７時過ぎの電話だった。
普通の低カルシウム血症かと思って、軽い気持ちで◇牧場牛舎に着き
牛を前にして驚いた。投頚、呼吸速迫、泡沫性流涎、体表熱感、四肢震戦・・・
Ｔ（体温）４０．３℃、Ｐ（心拍数/分）１４０、Ｒ（呼吸数/分）８０
「１時間位前から、急におかしくなってきたんですよ・・・」
◇さんの奥さんが心配そうに言った。
「乳房炎はやってない？」
「はい、それは大丈夫だと思います。」
念のためＰＬテスターをかけてみたが、乳房炎の反応は無かった。
牛は非常に苦しそうで、体が熱く、荒い呼吸をしている。（またまた、こういう症例に当たってしまった・・・）
私はまた、苦戦を覚悟した。
乳房炎ではないとすれば、やはり乳熱だとは思うが
この高熱と、心肺機能の激しい亢進は尋常ではない。
まず、採血し
それから、ショックを抑えるために
リンゲルとデキサメサゾンを投与し、抗生物質を投与してから、カルシウム剤を皮下に投与した。
治療中にショックで死んでしまうことは、避けねばならない。
（ここ約１ヶ月の間に、こういう症例、もはや４頭目だ・・・）
「じつは昨日ね、ボロカールを１本皮下に打ったんだけど、それでもやっぱり低カルかな・・・」
カルシウム剤を打ち終わった頃、◇さんがぽつりと言った。
「それとも脂肪肝だべか・・・この間のヤツもそうで、それは立てなくなって１週間で死んだんだよな・・・」
◇さんは、そんなことも言った。
「血液でカルシウムの他にも、肝機能も調べておきますか。じゃ、今日の昼近くにまた診に来ますね。」
私はそう答えた。
打ったカルシウムが劇的に効いてくれればいいのだが・・・と思った。
事務所に戻り、さっそく血清カルシウム、リン、マグネシウム、の測定をした。結果はそれぞれ
Ｃａ ４．７（mg/dl）、ＩＰ ２．５（mg/dl）、Ｍｇ２．４（mg/dl）
昨日◇さんがカルシウムを皮下に、予防的に打ったにもかかわらず
カルシウムの低値が認められた。
これはちょっと普通じゃないかもなぁ・・・そんな考えがよぎった。
朝食を食べ
通常の勤務時間になって
２件目の往診を終えた時
緊急電話を引き継いだＯ獣医師から連絡が入った。
「はい、もしもしー。」
「あ、安田さん？今ね、◇さんから電話が来たんだけど・・・」
「・・・。」
「朝診てもらった牛なんだけど・・・」
「・・・。」
「さっき、死んじゃったって・・・」
「・・・あ、そう。・・・了解。・・・搬出の車に間に合うように、確認に行くよ。」
＊ ＊ ＊
産後３日以内の起立不能。
４０℃前後の高熱。
低カルシウム血症。
心肺機能の激しい亢進。
こんな症状が一気に現われる症例を
この１カ月で４例も立て続けに診た。
そのうち助かったのは、たった１例（パート��の症例）のみ。
ただし、パート�靴両瀕磴世院�血清カルシウム値が正常値だった。
パート�靴両瀕磴蓮⊆臂評�が乳房炎だった。
パート��とパート��と今回のパート�犬蓮▲�ルシウムが低かったので
いちおう乳熱という病名をつけたが
典型的な低体温や沈うつの症状は見せなかった。
これが、いわゆる
産褥性心筋症といわれるものなのだろうか・・・
＊ ＊ ＊
今回（パート�検砲竜蹐遼狂，魄様蠅靴拭�「脂肪肝」だった。
◇さんの言っていたとおりであった。
また
腸間膜や腎周囲も
厚い脂肪組織に覆われていた。
こんな写真を見ると
生前の肝機能が相当落ちていただろうと思われるのだが
血液検査の値は
GOT 121（IU/ℓ）、 γ-GT 41（IU/ℓ） 、 遊離脂肪酸 0.41（mEq/ℓ）
これはほぼ、正常値
・・・なんだかなぁ（苦笑）
脂肪肝ではあっても、肝細胞は壊れていなかった、ということか？？？
また、肝心な心臓の所見は
「心肥大はあるも著変なし」であった。
産褥性心筋症という確定診断には
遠く及ばないような結末であった。
心電図などはどうなんでしょうね。昨年の北海道産業動物獣医学会で発表があったと思いました。安価なECGを持っていれば、カルシウム値を測定する前に心電図から予測できると。
どうしても助からないものならあきらめるしかありませんが、病態もわからないままというのは悔しいですよね。