「この牛、予定日なんだけどなーんとなく元気がなくてね。」

DVC00633そんな漠然とした♬さんの稟告

で診せられたのが

写真のような牛だった。

「陰部がずいぶん腫れてるね・・・」

「あー、それね。お産のときいつもこうなんのよ、この牛。」

「膣脱・・・でもなさそうだし・・・むくんだ感じだね・・・」

「うん、後ろ足も、なーんとなく腫れてんだよね。いつもそうなのよ。」

「なにかの過敏症なのかな・・・」

「良くわかんないんだけども、なんかペニシリンかなんか打っといてくんないべかな。」

「・・・発熱は特にないみたいだけど・・・」

とりあえず体温、心拍数、は正常範囲。

特に抗生物質を打たなくても良いとも思ったのだが

この腫れ方はちょっと異常に見えた。

外陰部と後肢には浮腫があるのだが、膣内、子宮、はともに正常所見だった。

子宮外口の開きはまだだったが、粘液には透明感と流動感があった。

「ついでにさ、獣医さん。こいつの分娩、子牛を出させる注射とか、打っといてくんないべか。なんか心配で。」

「・・・まぁいいけど・・・」

分娩はもう近いようだ。

陰部の浮腫や後肢のむくみが、何かの過敏症であるならば

副腎皮質ホルモンも、分娩誘起と浮腫軽減の一石二鳥効果が期待できると思ったので

結局ペニシリンとデキサメサゾンを投与した。

「明日の晩くらいまでには、産むと思うから、良く見ててね。」

私はそういって帰路についた。

翌日の午後

この牛は、無事に出産したらしい。

外陰部や後肢の腫れは、そう簡単には引かないかもしれないが

その後、何も言って来ないところをみると

きっと、良くなっているのだろうと思う。

後で知ったのだが

この牛は、♬農場の最長老牛なのだそうだ。

そしてお産のたびに、毎回このように陰部が腫れるのだそうだ。

しかし、いつもお産は、無事なのだそうだ。

ならば

やっぱり、私が治療などしなくても

この牛、おそらくきっと無事に産んでいただろう・・・(笑)

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