豆作さま

「大人のための句集を作ろうコンテスト」において最優秀賞を頂き
賞品として句集を作って貰いましたので
一部送らせて頂きます。ご笑読下さい。
 
                               鈴木 牛後

DVC00924そんな添書きとともに

句集 「根雪と記す」 鈴木牛後 

が送られてきた。

俳句のメッカ、松山を拠点に全国的な活動を展開する

あの俳句甲子園でも有名な、夏井いつき組の雑誌

「100年俳句計画」の特別付録として、この句集が発刊されたのだという。

牛後さんはこのもブログに何度か登場している、北海道上川郡の俳人・酪農家である。

このたび、第一回「大人のための句集を作ろう!コンテスト」において

牛後さんが最優秀賞に輝き、全国的な応募数60作品(各81句づつ)の中の頂点を射止めたのである。

その賞品として、この句集が作られたのだという。

これはもう、半年前の牛後さんの角川俳句賞最終選考残留に次ぐ連続大ヒットと言えるだろう。

牛後さんの俳壇進出の、勢いが止まらない♪

大変喜ばしく、また羨ましい限りである。

夏井いつきさんの選後の評は以下の通り

「牛を飼うという生活のリアリティーに圧倒される。命と共に暮らす現場にある音、匂い手触り、息遣いが読み手の五感を刺激する。牛だけではなく、犬、鹿、蝶、猫、兎、鼠、山羊、かたつむり、地虫など生きるものへの眼差しも深く、一句一句が博物誌のように楽しくもある。労働、風土、作者の人生がどっしりと臭うように迫ってくる実力派の作品として高い評価が集まった。」

句集の81句を鑑賞してみると、まさにその通りだと言えるのだった。

さっそく、私の心に残った句を拾い出してみると・・・

 寒明の飛び散る乳のほの甘き

 かげろふに濡れて仔牛の生まれ来る
 
 蘖(ひこばえ)の突つついてゐる牛魂碑

 牛啼いて誰も応へぬ大夏野

 牛死して高く掲げる夏の月

 秋澄みて牛に涙のやうなもの

 満月や牛の数だけある怖れ

 牛の眼の空を湛へて牧閉す

 蹴られたる凹みアルミ戸凍てにけり
 
 牛舎の窓開けて四温を招き入る
 
生意気な事を言わせてもらえば、この辺の句は

私の詠む俳句とテイストがほとんど似通っていて

同じ畜産の現場で俳句を詠む者として、強い共感を覚えたものの

さほど驚きはしなかった。

しかし

次に挙げるような句を見ると、それはもう感服せざるを得ない・・・

たとえば

 我が牧は四十町歩揚雲雀

の『我が牧』。

また

 まだ誰も踏んでゐない俺の夏草

の『俺の夏草』。

また

 冬来れば冬のかほなる牛を飼ふ

あるいは、タイトル名となった

 根雪と記し農作業日誌閉づ

などの句は、『一人称』で酪農を詠んでいる。

すなわち自分で牛を飼い、自営していなければ放てないフレーズの句で

私のような関係団体のサラリーマンには絶対真似の出来ない強さがある。 

また

 歯車の濡れて動かぬ雪解かな

 抱くやうにハンドル廻す濃紫陽花

 零したる軽油たちまち虹捕ふ

などの句は、農業機械を動かす人ならではの句材の力を感じる。

また

 野に出でて空気を吸ふといふ遊び

 牛糞を吸うて汚れぬ夏の蝶

 懐に地虫かくまふ捨案山子

 甲冑魚のごとくに雪の底にゐる
 
 牛の息ふしゆうふしゆうと白く伸ぶ

などには、牛後さんの独特の詩情・感性を感じ

これまた私などには遠くおよばぬ個性・才能が光っていると思う。

こうやって鑑賞していると

やはり、賞を取るべき人が、正しく評価されて受賞したのだな、という思いがしてくるのである。

同じ畜産の現場で仕事をしながら俳句を詠む者として

とても嬉しく、また強い刺激を受けた牛後さんの受賞であった。

同時に

私自身の作句姿勢や俳句で目指す方向を、見つめ直す良いきっかけにもなった。

牛後さん、おめでとうございます!!

これからもよりいっそう、俳句の世界を深め

それを世の中へ発信し続けて欲しい。

鈴木牛後さんに、新ためて

最大級の拍手と賛辞と

そして、感謝の意を表したいと思う。
 
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