結論から先に言うと

imageこの馬は、初診から数えて4日目に死んでしまった。

「きっと、ダメじゃないかと思うんだけど・・・診て来てくれないかい?」

そんな引き継ぎの言葉を受けて

§牧場のこの馬を診たのは、3診目だった。

image初診時から食欲廃絶、体温38.0、心拍数50

首をのばす動作を繰り返し、流涎が著しく

食道部が腫脹していたので食道梗塞を疑い

カテーテルにて内容を排出させると

image少し楽になったのか、食欲を見せた。

その晩の2診目には、再び苦しそうに同じ動作をし

鼻腔から胃液を流出させるようになった。

腸の蠕動はほとんど停止し、宿糞を少量排泄するのみ。

image激しい疝痛症状は認められず

ふたたび、カテーテルにて胃内容を5リットルほど排出させた。

翌朝、私がこの馬を診たときも

症状は全く好転せず

image鼻腔から何度も何度も、胃液と内容物を吐出させていた。

私はこの時、小腸近位部の閉塞を疑った。

血液のヘマトクリットは52.7(%)

血中クロール濃度は78(mEq/L)

image体温39.0、心拍数90

通過障害とそれに伴う強い脱水が見られた。

「やるだけやってみますか・・・」

諦めきれない§さんの前では、このように言うほかは無かった。

image午後から、診療所へ引きつけて

枠場で再び、カテーテルを入れて胃の洗浄。

その間、ずっと脱水改善のための補液を続けた。

洗浄液をサイフォンの原理で何度も還流させているうちに

出てくる内容物は、固形物がなくなり

最後の方には、黄色い胆汁の混ざったような

黄色透明な液体ばかりが出てくるようになった。

補液と胃洗浄によってなのか

馬は少しだけ気分の良さそうな顔をした。

「でも、腸が全く動いていないんで・・・どこかで詰まっているんじゃないかな・・・」

imageそれが解消されれば・・・というごく僅かな期待よりも

たぷんダメだろう・・・・という予想のほうがはるかに大きく

結局それ以上の事はできずに、馬は帰っていった。

翌日、症状は再び元に戻り

体温39.5、心拍数98、発汗、茫然。

そして翌日、息を引き取った。

mso257C7解剖の結果は「胃破裂」。

当初の予想の、小腸の閉塞は

残念ながら確認ができなかった。

胃破裂に至る原因をあれこれ考えたが

はっきりとした結論は出すことができなかった。

mso1A300この馬は

ばんえい成績の良い仔馬を生む馬で

1年空胎の今年の春、シダープログラムを実施して

やっとの思いで、受胎までこぎつけ

来年の出産を楽しみにしていた馬だった。

 
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