「ポニーの子宮を洗浄してほしいんですけど・・・」

秋も深まる9月の下旬に、そんな往診が入った。

状況を良く聞いてみると

春に難産をしたポニーが、ようやく最近になって

良い発情を見せるようになったので

昨日の午後、種馬を乗せて交配したら

その翌日、汚い血の混じったオリモノを出したので

膣内が汚れているであろうと思って、子宮洗浄をしてみたらどうかという稟告だった。

「今日は、体も震わせているんです・・・」 

陰部から手を入れてみると

血の混ざったしょう液がべったりと付いてきた。

体温は39.3℃と微熱があり、食欲が無く

腸蠕動が聞き取れず、腹囲が張り気味であった。

「まずは、膣内の洗浄をしましょう。でも、最悪の場合・・・」 

「最悪の場合?」

最悪の場合とは、種付の時に膣が破れて

陰茎が腹腔内に達してしまい、そこから汚染が広がって

腹膜炎になってしまう、という事を

私は畜主の¢さんに説明した。

その後、同僚のN獣医師と膣洗浄を始めた。

洗浄液を少しずつ入れ始めたとき

馬が痛がるように暴れた。

体勢を立て直してさらに慎重に手を奥まで入れてみると

IMG_2431「あ・・・」

N獣医師の表情が変わった。

膣内壁が粗造になっており

その奥の腸管に直接触れたようだ。

このポニーは、春先に側頭位で難産をしていた。

「やっぱり、穿孔しちゃってるか・・・」

私は覚悟を決めて、¢さんに

この馬は、腹膜炎で助からない可能性のある事を説明した。

何もしない訳には行かないので

抗生物質と消炎剤を打ち続けるように指示して

治療はそこで終了した。

腹膜炎であれば、数日中に死亡してしまう可能性もある。

その後

¢さんから、この馬の様態の悪化、あるいは死亡、という連絡を

数日間待ち続けた。

しかし

5日以上経っても¢さんからは、何も連絡が無かった。

心配になったので、こちらから電話を入れてみた。

すると

「あー、あのポニーね、3日目から餌食いだしてね。走り回るようになりましたよ。」

「本当ですか?」

「はい。なんとか命は助かったみたいですね。」

「そうですか!・・・でも、もう・・・」

「はい、わかってますよ。もう種付はしないで、そのまま置いておきます。」

馬の、種付けによる

膣あるいは子宮外口付近の穿孔破裂による腹膜炎で

私は過去に1頭、予後不良になった経験があったので

今回もそれを元に診療したのだが

なんと、あっさりと

命が助かってしまった。

 人気ブログランキング