「犬みたいな牛診てきましたよ。」

隣席の同僚、F獣医師がそんな事を言いだした。

「犬?」

「はい、犬。」 

F君は紙切れに絵を描き始めた。

「普通の牛って、こういう感じで、お腹が出てるじゃないですか。」

「・・・うん。」

「それがペシャンコに、こーんな感じになってる牛、まるで空腹の犬のお腹みたいに。」

「・・・あ、いるいる、こういう牛。」

「そうなんですよ、もうガリガリで救いようないです。」

F君は、そう言いながら自分のカルテ画面の症状欄に

『犬様外貌』という四字熟語書いていた。

IMG_2659「犬様外貌?、うまい言い方だね。何かに書いてあったの?」

「僕のオリジナル。」

「なるほど(笑)」

草食動物の牛は、肉食動物の犬とは違って

お腹が常に食べ物で満たされているものだが

最近、どうもこういうガリガリの牛

食べ物をお腹に満たせない牛が多い。

IMG_2661食べ物が無いのではなく

何らかの理由で、食べる事が出来ず

お腹を満たす事が出来ないのだ。

ちなみにこの牛の血中の遊離脂肪酸(NEFA)は

1.67 (mEg/dL) ・・・正常値は 0.3〜0.5・・・

3倍以上の高値、著しい飢餓状態を示した。

犬のような肉食動物ならば

こういう飢餓状態は正常の範囲内だが

牛のような草食動物では

こういう状態は全く異常である。

その原因は、慢性の肺炎だった。

『犬様外貌』とは

そんな肉食獣と草食獣の比較が暗に示され

なかなか鋭い四字熟語だと思う。

「腹が巻いている」とか

「腹囲捲縮」なんていう言葉も

ほぼ同じ状態を示す言葉だろう。

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