私が就職してから現在までの約4半世紀の間に、

いろいろな酪農家の牛を診療してきて最近思うのは、

日ごろ診療する乳牛たちが、

以前より若くなってきたという事である。

私が診療する牛というのは健康ではない病気の牛である。

その病気の牛の年齢が若くなってきたように思うのだ。

病気をして獣医師に治療を受ける乳牛たちの

平均年齢、平均産次、が確実に下がってきているように思うのだ。

たとえば、産後の低カルシウム血症である乳熱などは

私が就職した頃は、5産次を超える乳牛でかかりやすい病気だったが

いまや、2〜3産目から頻繁に起こる病気になった。

しかも、かつての乳牛はカルシウム剤がよく効いてすぐ立ち上がったが

最近の乳牛はカルシウム剤の反応が悪く、なかなか立ち上がってくれない。

若いうちから内臓や足腰が弱いのだ。

ちゃんとしたデーターは今は持ち合わせていないが

乳牛が短命になっているのを肌で感じるのだ。

我が国の酪農は、経営規模の拡大を続けてきた。

経営規模が大きくなるにしたがって

飼い主1人当たりの牛の頭数が増えるのは当然の事である。

私はそこに大きな落とし穴があるような気がする。

規模拡大について、私が何度も言ってきた事の一つは

そのデメリットとして

乳牛の命が軽んじられることである。

BlogPaint乳牛の命が軽んじられれば

乳牛は死にやすくなり

乳牛の平均寿命は短くなる。

どうして乳牛の命が軽んじられてしまうのか・・・?

どんなに上手に乳牛を飼う人でも

その面倒をきちんと見れる頭数には限界というものがある。

それは飼い主の能力と、施設の機能によって、様々ではあるが

限界というものはどの牧場にもあり、その限界ラインはなかなか見えにくい。

酪農経営の効率化を進めるのは経営者として当然である。

しかし、その効率化を進めて行くうちに、知らず知らずのうちに

乳牛を健康に飼うことのできる頭数の限界を超えてしまっている

そんな酪農家が、いかに多い事か・・・!

私は毎日々々それを感じながら仕事をしていると言ってもよい。

乳牛が健康を損ね、治療を施すが、思うように治ってくれない。

健康を損ねないように、予防の対策を打とうとしても、労力の限界にぶつかる。

その限界は、意外に単純な乳牛の経営規模に関係があるのではないかと思う。

経営規模が大きくなって、乳牛の命が軽んじられれば

飼主が1頭1頭に対して、細かなケア対策をしなくなる。

乳牛の面倒を見る事ができる頭数の限度を超え

牛たちは様々なストレスが襲ってくる。

しかし、飼主はそれに対して対策を打つ余裕がない。

IMG_1029その結果・・・

乳牛の病気は減らず

乳牛は死にやすくなり

乳牛の寿命は縮まる。

今、我が国では

牛乳が不足しているそうだ。

牛乳を出してくれる乳牛の寿命が縮み

国内の乳牛の数が増えないのであれば

牛乳が不足するのも当然だろうし

乳牛の雌の値段が高いのも当然だろう。

では、その

乳牛の寿命を縮めている原因とは何か?

どんなストレスが乳牛の寿命を縮めているのか?

なぜ乳牛の命が軽んじられてしまうのか?

乳牛の経営規模という側面から

もう少し考えてみたい。

(この記事続く)


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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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