酪農の経営規模の拡大が推し進められてきたこの数十年、

その中で脚光を浴びてきた乳牛の飼養方法に

フリーストールという飼養方法がある。

規模拡大という時代の波によって、導入され続け

いまや、多くの酪農家が採用し、

規模の大きな酪農家では主流の飼い方になっている。

フリーストールというのは、ざっくりと言えば

乳牛の首を繋がずに、大きな部屋の中で放し飼いにする方法だ。

乳牛を個別に繋ぐ施設と手間が無いので、多頭数の飼育に適していると言われている。

その放し飼いの部屋の中に、牛が並んで寝るための簡単な仕切りだけが作ってある。

その仕切った寝床の数は、80床程度のものから数100床もある大きなものまでいろいろだ。

放し飼いにされている牛たちは、その寝床に自由に出入りができる。

乳牛たちはそこで一生自由に、寝起きしながら暮らすことになる。

基本的に放し飼いなので、彼らは自由な感じに見える。

ところが・・・ここに大きな問題が潜んでいる。

791a12b3作られた寝床は

餌場や水場から近いところと遠いところがあったり

風通しの良い寝床や暑苦しい寝床があったりするのは当然である。

フリーストール牛舎という1つの閉ざされた囲いの中で

快適な寝床と不快な寝床、という場所の差ができるのは仕方がない。

その閉じた空間の中で、敏感で正直な牛たちは

快適な寝床を覚え、それを求めて行動する。

db7d9bf5そこに競争が生じる。

牛は自由に放たれていてると言っても

それはフリーストール牛舎という

閉ざされたの囲いの中での話であり

行動範囲は限られている。

フリーストール牛舎という閉じた世界に入れられた牛の数が

寝床の数よりも少ないときは

温厚な牛たちの競争はほとんどない。

しかし

フリーストール牛舎という閉じた世界に入れられた牛の数が

寝床の数よりも多くなると

いかに温厚な牛たちといえども

寝床確保のための熾烈な競争が起こることになる。

自然と、一部の強い牛が最も快適な寝床を独占し

多くの普通の牛たちはそれなりの寝床に甘んじ

一部の弱い牛たちは寝床さえ当たらない惨めな暮らしを強いられる。

自由競争による格差社会がそこに生まれることになる。

cd7108ab寝床さえ当たらない弱い牛たちは

当然のように、体調を崩しやすい。

最近、私が訪れるフリーストール牛舎の酪農家の中で

乳牛の数より、寝床の数の方が多い牧場というのは

驚くほど少ない。

むしろ、ほとんどのフリーストール牛舎で定員オーバとなっており

厳しい格差社会が生まれている。

そんな牧場のなんと多いことか・・・!

そこでは当然

寝床さえまともに当たらない弱い牛たちが

体調を崩し、さまざまな病気になる。

我々が往診で呼ばれて診る牛というのは

そういう生活を強いられてきた弱い牛たちの場合が多い。

彼らが体調を崩す原因が

そういう理由である以上

一次的に隔離して注射を打ったり

外科的処置を施したりして、症状を和らげても

それだけでは完全に治癒したとは言えない。

搾乳を再開するために、フリーストール牛舎という閉ざされた世界に戻れば

再び、厳しい弱者の暮らしを強いられることになる。

格差社会の中で弱い立場の彼らは

残念なことに、負け癖が付いているから

再び体調を崩し、さまざまな病気になる。

決して長生きは出来ない。

そんな乳牛が増えれば増えるほど

乳牛の平均寿命は

短くなってゆく。

(この記事続く)


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