酪農の経営規模拡大の波に乗って、

繋ぎの古い牛舎からフリーストール牛舎へと、

一大転換をした酪農家がいる一方で、

繋ぎ方式のまま、酪農を続けて、

現在に経っている牧場ももちろん多くある。

IMG_4266繋ぎ牛舎は、フリーストールよりも

乳牛の自由意思は制限されるものの

強い個体を制御し、弱い個体の面倒を見るのには適していて

それぞれ個体の能力に合わせた、きめ細かな管理をすることが出来る。

繋ぎ牛舎の牧場では、朝と夕の2回の搾乳時までの間は

IMG_4267乳牛たちを、牛舎の外の放牧地やパドックに出して

空の下の、広い空間に開放することにより

乳牛たちに適度な運動をさせて

ストレスを発散させることができる。

そして、飼い主はその時の行動を日々観察することによって

発情や体調の変化をいち早く察知することができる。

そんな理由で、繋ぎ飼い方式のにこだわっている酪農家は多い。

しかし、そんな酪農家にも、経営規模拡大の波は

否応なしに打ち寄せてくる。

牛の個体管理を、繋ぎ方式で維持しつつ

繋ぎ牛舎の牛床を増やし、牛舎を伸ばすように増築する酪農家が

ひところ大変多かった。

IMG_1916そうやって、繋ぎ牛舎のままで

搾乳牛の頭数を増やしてきた酪農家たちが

そろって突き当たる問題があった。

搾乳牛を増やすということは

それに授精をした妊娠牛を増やすということであり

搾乳を終えて分娩を控えた乾乳牛が増えることになる。

乾乳牛が増えれば、乾乳牛の居場所も増やさねばならない。

IMG_0623その乾乳牛が皆、分娩をするから

分娩をする場所も増やさねばならない。

分娩する牛が増えれば、仔牛が増える。

仔牛が増えたら、哺乳施設を増やさなければならない。

哺乳が終わった仔牛たちは、育成牛となる。

IMG_3852育成牛の施設も増設しなければならない。

そしてそれぞれのステージの牛に対して

世話をする働き手、すなわち人員が必要になる。

牧場の働き手を、もっと増やさなければならない。

さらに、理想を言えば

牛たちが運動できる広い敷地も

その頭数が増えた分だけ増やさなければならない。

搾乳牛を増やすということは

牧場の全ての施設、全ての人員、全ての敷地面積

を増やさなければ、本当の経営規模拡大ではない。

繋ぎ牛舎の搾乳牛を増やすとは、そういうことであり

当然予測できることではあるが

繋ぎ牛舎を増設しはじめた時に

直ちに、その他の施設や人員や運動場までも増やす準備をするような

そんな用意周到な酪農家は、ほとんどいなかったのが実感である。

多くの酪農家は、まず搾乳牛を増やし

搾乳施設以外の施設や人員は増やさぬままに

だんだんと、色々なステージの牛たちが

それぞれの施設で満員の定員オーバーになって

それぞれのステージの牛が全て満杯で窮屈になり

いよいよどうにもならなくなって

そこで働く人たちの疲労も極限になり

そんな状態になって、ようやく

周囲の施設や人員や運動場をやむなく増やして対応してきた。

さらに牧場の敷地面積までも増頭数に合わせて広げるような牧場は、ほとんどなかった。

牧場で働く適正な人員の確保も

家族だけで頑張るか、従業員を雇うか、で悩むことになる。

今まで頑張ってきた祖父母は老い

自分も妻も老い始め

子供達は後を継ぎそうもない。

そんな状況の中で

これ以上の牛の増頭、増築、増員、は

経済的、肉体的にもう限界。

しかし、ただちに廃業を考える気も起こらない。

今までの繋ぎ牛舎のままで

従業員は雇わず、家族経営のままで

自分のこだわってきた酪農をやれるところまで

続けてゆくためには、どうするか。

これからは、自分たちの体は老いるばかり。

かつてのようなバリバリの体力はもうなく

日々老いてゆく。

そんなことを

ついに悟った酪農家が

繋ぎ牛舎の酪農で、苦渋の選択する

切り札的な、画期的な飼養管理方法が

ここに、ついに出現することになる。

経営規模拡大の波にのまれて、大変な思いをしつつ

しかも、後継者はいない、先行きは見えない

そんな、施設不足、人員不足の

繋ぎ牛舎の酪農家が、苦渋の選択をする

切り札的な、画期的な飼養管理方法が

そこに、ついに出現することになる。

それは、しかし

じつは・・・

乳牛たちにとっては

悪夢のような

天国から地獄へ変わってしまうような

辛く悲しい飼養管理方法でもある。

酪農関係者の皆さんならば

もうお分かりでしょう・・・

(この記事続く)


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左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

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