右後肢が全く着地できないほどの跛行だった和牛仔牛の、

レントゲン写真をようやく撮り終えて、

さてこれを元に、▲牧場の責任者と、

この牛の今後のことを話しに行こうとした矢先に、

従業員のFさんから連絡が入った。

「例の和牛の足が何か変なんですけど、また診てもらえますか?」 

私も、ちょうど診に行こうと思っていたので

「わかりました、すぐ行きます。」

この連絡はタイミングがよかった。

ただ、従業員のFさんはこの仔牛の責任者ではなく

他の仔牛達の哺育を担当しているスタッフなのだが

牛の状態によく気のつく人だった。

IMG_4885「腫れたところから何か出てきているみたいなんですけど・・・」

「あー、これはパンク(自潰)したね。ウミ(膿)がでてきた。」

「化膿してたんですか?」

「そうだね。蹄の上部の関節の中が化膿して腫れたんだね。」

IMG_4963私は、持参したレントゲン写真を出して見せながら

「ちょっと、▲君を呼んでくれるかな。」

▲君というのは▲牧場の社長の息子で

この仔牛の責任者である。

しかし、彼はいつも仔牛を診療する時にはほとんど不在で

IMG_4965獣医との対応は、いつも哺育スタッフに任せきりだった。

だだ今回ばかりは、直接会って病状を説明し

今後の治療方針に対して、同意を得なければならない、と思った。

電話連絡をして、しばらくすると▲君がやってきた。

たまにしか会わないのだが、我々獣医師に対しては物腰の穏やかな好青年である。

IMG_4889「写真見てもわかると思うんだけど、蹄を支える関節のひどい関節炎で、化膿してしまった。骨(骨膜)の炎症もひどいみたい。」

「はい・・・で、治りますかね・・・。」

「それはやってみなければわからないけど、これから鎮静かけて寝かせて、パンク(自潰)した中をよく洗って、薬を詰めてみる。」

「はい・・・。」

IMG_4890「薬をつけて包帯をして、それをまた来週交換する。それと、その日まで毎日抗生物質を打ってもらうから。」

「はい・・・どれくらいかかりますか・・・。」

「来週またもう一度診させて欲しいんだけど、だいたい1ヶ月くらい治療するつもり。それでいい?」

「はい・・・わかりました。」

IMG_4893私の説明をちゃんと理解してもらえたのかどうか・・・

そして、とにかくこの足を治すためにしっかりと治療を続けるという同意が得られたのかどうか・・・

さらに、▲君は父親の▲社長にそれをちゃんと伝えているのかどうか・・・

イマイチ手応えが薄い感じを拭えなかったが

IMG_4895とにかく言うべきことを直接言って

言った通りの治療を施し

その日の治療を終えた。

(・・・どーも、▲牧場の牛の治療って、いつもこんな感じなんだよなー・・・)

私はそう思いながら

帰路に着いた。

(この記事続く)


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左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

の動画を撮りました

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