災いは忘れた頃にやってくる・・・

という言葉もあるように、

私はこのミニチュアホースのことをほとんど忘れかけていた。

図3そんな私の眼の前に、

救いようのなさそうな腹部の膨隆している、

苦しそうなその馬と再会してしまったのだ。

これはもはや、ダメではないのか・・・

図4そんな第一印象だった。

だが、飼主の△さんは、なんとか命だけでも助からないかという。

ダメもとで、外科的な処置をするほかはない・・・

そんな思いで、診療所に戻り

午後からの開腹手術の準備をした。

ドミトール+ケタラールで倒馬し

GGEとのトリプルドリップ法で麻酔を維持する。

推定の体重がわずか50圓覆里如普段使う量の10分の1だ。

IMG_2997仰臥保定して、バリカンで毛を刈り

パンパンに膨らんでいる腹部に超音波を当ててみた。

どこを当てても、エコーフリーな黒い画面がほとんどで

どこがどうなっているのかは全く把握できなかった。

「切ってみますね。」

私は立ち会っていた△さんにそう言って

正中部を約5僂曚廟擲した。

IMG_5240その途端・・・

黄色く混濁した腹水が飛び出てきた。

まるで、液体を入れた風船に穴を開けたような勢いで

創口から噴水のようにアーチを描きながら飛び出てきた。

IMG_2002「すごい量だ・・・」

手術に参加した人たちの視線が、腹水のシャワーに釘付けになった。

「やっぱり腹膜炎だ・・・」 

黄色い腹水に混ざって

卵とじのようなフィブリン様の絮片も

時折創口から飛出してきた。

腹水がほとんど出終わったところで 

助手をしているS獣医師が

創口から手を入れて、腹腔内を探索した。

すると、骨盤腔の付近に20僉15冂度の塊に触れ

その周りにフィブリン様の物質が付着していたので

それを手で剥がした。

それは、腹腔内膿瘍の自壊であることが想像できた。

(実は、一昨日の十勝獣医師会の学術研究発表会の時、「腹腔内の所見はどうだったのか」、というご質問をいただいた。その時私は、自分では腹腔内に手を入れていなかったので、はっきりした探索所見を答えることができなかった。そこで昨日助手をしたS獣医師に、腹腔内を探索した所見を聞いたところ、上記のような腹腔内の様子を語ってくれたので、ここにあらためて、質問の答えを書かせていただきました。) 

この後はもう

腹腔内を大量の洗浄液で洗うしかない・・・

「タンク、使いましょうか。」

そこで、機転を利かせたのはもう1人の助手のO獣医師だった。

重種馬の子宮洗浄に使う20リットル入りのタンクに生理食塩水を作り

IMG_5245その中に抗生物質を入れて、腹腔洗浄液とし

その液をシリコンチューブで創口へ導き

洗浄液が溢れ出てくるまで注入した。

注入したところで、腹腔内に手を入れて、液を隅々まで行きわたらせ

その後、馬を手術台ごと傾けて、洗浄液をほぼ全量排出させ

その操作を2回繰り返したところ、排液は透明感を帯びてきた。

排液が全て終わった後、生理食塩水のボトルに抗生物質を入れたものを

IMG_5249腹腔内へ注入し、閉腹した。

術後、馬は直ぐに立ち上がり

車に乗って、帰宅した。

(この記事続く)


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左の写真の道具を使う


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