78日という日数が経過していた、

育成和牛の起立不能症。

治療を開始してから42診目の朝、

飼主の○さんが重い口を開いた。

IMG_5801「あの・・・」

「・・・。」

「昨日までは、尻尾を持ちあげて手伝ってやると立ったんだけど、今日はもうそれをやっても・・・」

「どうやっても、立てなくなっちゃいましたか。」 

「うん・・・」 

「そうですか。」 

「立つことさえできれば、水や餌のところへ行っていたんだけど・・・」

「立てないんじゃ、行けないですよね。」

「だんだん、食わなくなってきたんだよね・・・」

「そうですか。」

「水もあんまり飲まなくなっちゃって・・・」 

「そうですか。」

「もう、ちよっとこれは・・・」

IMG_5802「・・・うーん、そうですね。」

「・・・。」

「・・・諦めますか?・・・。」 

「うん・・・そうしてもらえるかな・・・」 

 42回も診療に通っていると

飼主の○さん夫婦はもちろんのこと

我々獣医師の方も

この牛に情が移っていて

この牛の廃用処分決定を下すのは

とても辛いものがある。

しかしここまで来て

好転せずに、むしろ少しづつ

症状が悪化をしているのであれば

致し方ないのだった。

IMG_5800「やるだけやったから・・・」

と○さん。

「頑張ったんだけどね・・・」

と奥さん。

「じゃあ、連合会に電話して、廃用の認定してもらいますね。」

回復に向けての治療という方針から

頭の中を180度切り替えて

廃用すなわち殺処分という方針へ向けて

私は粛々と手続きを始めた。

病名は坐骨神経麻痺。

この牛は治療の間ずっと食欲旺盛だった。

それを飼主の○さん夫婦はずっとサポートし介護していた。

最後は、食欲が落ちてきたといっても

それは内臓に疾患があったわけではなく

足腰が立てなくて食べに行けないだけだった。

最後まで鼻は濡れ

目は普通に輝いていた。

合掌

・・・

ちなみに、この牛の

筋肉の損傷を示すと言われるCK値は 

初診時は 1520  U/L

終診時は 983  U/L

数値だけ見た限りでは

筋肉の悪化はしていなかったようだ。

(この記事もう少し続く)


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