「仔牛のヘソが腫れている・・・」

という症例は日常茶飯事である。

仔牛のヘソの腫れ(いわゆるデベソ)で、先ず、

鑑別しなければならないのは 、

それが臍ヘルニアなのか?

それとも臍帯炎なのか?

である。

ヘルニアは先天的なもので

触診をすると、必ずどこかに

腸管が出てくる穴(ヘルニア輪)がある。

小さなもの(指2本以下の輪径)はそのまま放置しても治る。

大きなもの(指3本以上の輪径)は 圧迫処置をした方がよく

それ以上のものは外科手術の対象になる。

ヘルニアかどうかの診断は、触診の経験を積めば

それほど難しいものではない。

では

ヘルニアではないデベソの場合

すなわち臍帯炎は 

後天的な感染症である。

触診をすると

ヘルニアとは違って波動感がなく硬い。

ヘルニア輪は存在せず

軽く握ると必ず痛みがある。

感染症なので熱発や哺乳不振が見られる。

臍帯炎の初期段階は 

それで簡単に診断できる。

ところが

臍帯炎の症状が急性期を過ぎ

臍帯に膿瘍を形成してしまうと

臍ヘルニアとの鑑別が難しくなってくる。

外見はいずれも大きなデベソであり

触ると波動感がある。

熱も平熱に下がり、食欲もある。

IMG_0221こういう時は

デベソの部分の超音波検査をすればよい。

しかし

超音波装置は常に持ち歩いていないので

IMG_0223急に追加で診断をする時にはそれも使えない。

先日の〆さんの仔牛はそんな状況だった。

「急にデカくなってきたんだよね・・・」

〆さんのその言葉で私は大体見当がついた。

これは後天的な臍帯感染から

IMG_0224臍帯の膿瘍が形成され

それが急激に肥大化した可能性が高い。

触診をしてみると、波動感がある。

しかし、ヘルニア輪のような穴はない。

「針を刺してみるね。」

私は患部に、注射針を刺した。

IMG_0227注射器に膿汁が入ってきた。

「これは化膿してる、切って出した方がいい。」

私は早速

仔牛を鎮静剤で寝かせて

患部にメスを入れて切開排膿した。

IMG_0228切開創の中を消毒液で洗浄して

ヨーチンをスブレーして

抗生物質と鎮静剤の拮抗剤を打って

切開手術を終了した。

後日

IMG_0252膿汁の培養検査の結果が来た。

Proteus (3+)

E.coli (大腸菌)(3+)

ということだった。


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左の写真の道具を使う


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