「育成の和牛のアゴからクビにかけて、腫れてるんですけど・・・」

先日追加で診せられた診療は、

そんな稟告(りんこく)だった。

BlogPaint牛の頭を保定してもらって、

触診をしてみると、

硬く膨らんでいる。

これは、どういうタイプの腫れ物だろうか。

常に超音波装置を携帯していれば、

直ぐに超音波検査が出来るのだが、

残念ながら、十勝NOSAIの獣医師はまだ

1人1台づつを携帯するまでには至っていない。

それでも、こういう症例では

穿刺検査が有力な診断方法である。

腫脹している部分の

なんとなくもっとも柔らかそうな部分を

IMG_0261注射針で穿刺した。

「・・・あー、これは・・・」

「膿瘍だね。切開しましょう。」

「・・・お願いします。」

一見して、かなり硬かったので

骨組織の腫れかも?・・・

と思ったのだが

実際は

下顎の深部の肉厚な膿瘍だった。

育成の和牛は売り物でもあるし

あまり長い時間を掛けて治療をしていると

増体に影響し

売るタイミングを逸することもあるので

ここは、即日の切開排膿を選択した。

IMG_0265メスで切開した創口からは

思ったよりも多くの

クリーム状の化膿汁が出てきた。

500mlはあっただろうか。

切開創が肉厚なので

出血がかなりあったが

ここで出血を気にしすぎて

切開創を小さいままにすると

創口がすぐ閉じてしまって

膿汁の出口が塞がって

再び膿瘍が形成されてしまう。

ここは、思い切って大きく切開するべきなのである。

IMG_0267切開創を7〜8センチ程度に開大し

膿瘍の中身を消毒液で洗浄し

抗生物質を投与し

創口は開放のままとして

治療を終えた。

後日

BlogPaint膿汁の

細菌培養の結果が来た。

グラム陽性球菌が検出された。

しかし

菌種の同定までは至らなかったようだ。

ブドウ球菌だったのだろうか?

連鎖球菌だったのだろうか?

それとも

コリネバクテリウムだったのだろうか?  

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左の写真の道具を使う


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