先日のまだ暗い早朝、

子宮脱の往診依頼が入った。

子宮脱の治療は約3ヶ月ぶりか、

子宮脱星を支配する子宮脱大魔王は、

当直の私にビーム照射することを忘れてはいなかったようだ(泣)。

「昨日の夜お産して、今朝来たら子宮が・・・」

「何産目?」

「初産です。」

初産・・・

初産の子宮脱だった。

私はとうとう、初産の子宮脱に遭遇した。

じつは、初産の子宮脱に遭遇することを

私はここ数年

密かに待ち望んでいたのだった。

なぜかというと

それは

血中カルシウム濃度を測ってみたかったからだった。

ここ数年

私は牛の子宮脱に遭遇するたびに

治療の前にまず採血をして

血中カルシウム濃度を測るようにしている。

そして

ここ数年

それらの牛たちの血中カルシウム濃度は

ことごとく、全て、低値だった!

その事実に基づいて

私はある仮説を立てている。

それは

「牛の子宮脱の必要条件の一つは、低カルシウムである。」

というものだ。

但し

ここ数年、私が遭遇した子宮脱の牛は

全て、経産牛だった。

したがって

測定した血中カルシウム濃度は

全て、経産牛のデーターだった。

さて

牛の臨床獣医師であれば

誰もが当然

経産牛の分娩時の血中カルシウム濃度は下がっているものが多いが

初産牛の分娩時の血中カルシウム濃度は下がっていないものが多い

という事を知っている。

今回

ここで、もし

初産牛の子宮脱時の血中カルシウム濃度が

低値になっている事を確認することができたら

私の「牛の子宮脱の必要条件の一つは、低カルシウムである。」という仮説は

仮説から真実へと大きく前進することになる。

私は

IMG_0504初産の子宮脱の牛を目の前にして

内心少しワクワクしながら

採血をして

カルシウム剤を投与してから

IMG_0505子宮脱整復の治療に取り掛かった。

牛は自力では立つことができなかったので

カウハンガーを装着し

吊起しながら

IMG_0508子宮を押し込み、整復した。

整復棒を挿入し、子宮を完納し

外陰部を巾着縫合した頃

牛はようやく立つことができた。

IMG_0511全ての応急処置を終え

事務所に戻り

カルテを書き

臨床検査センターへ

血液検査の依頼書を書いた。

はたして

今回の

初産牛の子宮脱の

血中カルシウム濃度はいかに・・・


(つづく)


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