「前足は来ているのに、頭が全く触れないんですが・・・」

そんな電話が来て向かった、〓牧場の牛の難産。

手を入れてみると・・・

なるほど前足ばかりが産道へ侵入していて、

頭には全く触ることができない。

完全な側頭位になっていた。

強い陣痛の隙を狙って、

腕を手一杯挿入して、

その奥を探ってみると、

胎児の耳の先端と後頭部に、

辛うじて指先が触れた。 

胎児の頭は、完全に向こうを向いてしまっていた。

胎児は自らは全く動かなかった。

「直せますか?」

「やってみましょう。」 

私は側頭位の整復を試みることにした。

そのままでは陣痛(怒責)がきついので

IMG_0801子宮内の収縮がを抑えるために

プラニパート(塩酸クレンブテロール)を注射。

羊水が減っていたので

プロサポ(粘滑剤)を約10リットル注入。

IMG_0797そうしておいてから

用手整復に取り掛かった。

今回の難産介助の

ポイントはいうまでもなく

胎児の頭である。

まず胎児の前足を目一杯押し戻したが

胎児の頭の向きは変わらず

IMG_0799手掛かりが耳の先端のみ

というのは変わらなかった。

そこで産科器具のショットラーを使って

胎児の頸を挟むこと数回試みた。

ところが、私はショットラーを1つしか持っていなかったので

2本使った組み合わせ技(たぐり寄せ)ができなかった。

しばらく胎児をゆするなどしたが進展がなかった。

IMG_0795そこで登場させたのが

この産科器具

名前はなんというのかは知らない。

器具の中央には

IMG_0794HAUPTNER

という印字が彫られている。

この器具に

産科チェーンを取り付け

この器具を胎児の頸と胴体の隙間に差し入れる。

IMG_0794胎児の頸の背側から差し入れた器具の先が

胎児の頸の腹側から差し入れた手に辛うじて触れた。

それをたぐり寄せることで

胎児の首に産科チェーンを掛けることができた。

そのチェーンを引きながら

しばらく胎児を強くゆすり

再び手を入れてみると

耳の先端しか触ることのできなかった胎児の頭部の

額と眼窩に手が届くようになった。

眼窩に手が届けばしめたものである。

眼窩に指を掛けることができれば

IMG_0800そこへ今度は

産科鈎(こう)を掛けて

掛けたロープをそのまま保持し

胎児の足を強く押し込む。

と、胎児の頭が

上を向くように

反転し始めて

ついに

こちら向きになった。

これで胎児の頭部の整復が完了した。

次に

押し込むことで屈折してしまった前足2本を

整復した頭部の横に揃えて戻し伸ばして

ようやく

産道の上に

胎児の頭と前足2本が揃った。

「よし、これであとは、普通のお産だね。」

〓牧場のスタッフといっしよに

滑車を使って胎児を牽引した。

IMG_0792大きなメスだった。

しかし

残念ながらすでに死亡していた。

親牛は疲れて寝ていたので

カルシウム剤などの補液をセットして

IMG_0793産科道具を片付けて

次の往診先へと向かった。

朝1番目の診療だったが

時計を見ると

午前11時を回っていた。


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左の写真の道具を使う


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