「乳房から出血してるみたいなんですけど・・・」

そんな往診依頼がまたやって来た。

(またか・・・) 

と思って、話を聞いたら、

今回はさすがに、♯牧場の牛ではなく、

♭ファームの牛だった。

♭ファームに到着して

出血をしているという牛を診ると、

今度の出血は

乳房表面を走る静脈からではなく

乳頭の損傷部からの出血だった。

IMG_1281右後の乳頭が

写真のごとく

縦に裂かれる様に

約10儷瓩損傷している。

しかし、損傷は

乳頭管まで達しておらず

この乳頭の生命線は守られているようだった。

「・・・うーん、縫ったらなんとかなるかなぁ・・・」

「これを見つけた搾乳担当の人が、そうしてほしい、って言ってました。」

「・・・いつ頃、見つけたの?」

「午前中の搾乳の時だそうです。」

「・・・じゃぁまだ、半日くらいしか経っていないね。」

「そうだと思います。」

「・・・んじゃぁやってみるか。」

「お願いします。」

「・・・それにしても・・・汚い乳房だねぇ・・・」

「そうですね。」

IMG_1282♭ファームの従業員君は

どこか他人事の様な口振りだったが

言われた事はちゃんとやってくれた。

損傷した乳頭に触ると

牛が嫌がって暴れるので

枠場に入れて治療をしたいところなのだが

IMG_1283この♭ファームには

枠場がない・・・。

仕方がないので

牛を壁ぎわに繋いで

フリーバーンの扉を寄せて来て

細長い三角形の中に牛を挟み

牛が尻を振らないように保定し

IMG_1284そこで鎮静剤をかけて

扉の外側にしゃがんで

そこから手を伸ばし入れて

乳頭の縫合をすることにした。

損傷部の汚れを洗っていると

この乳頭の乳房が

乳房炎になっていることもわかった。

「・・・乳房炎にもなってるから、ちょっと腫れてるね・・・」

「そうですか。」

「・・・縫ったところがちゃんと付くかどうかわからないよ・・・」

「そうですか。」

「・・・このあと、もっと腫れるよ・・・寝床も汚いしねぇ・・・」

「そうですね。」

「・・・抗生物質の注射も打つからね。」

「わかりました。」

相変わらず他人事のような従業員君だが

言った事はちゃんと理解してくれたようだ。

ともあれ

乳頭損傷の応急的な縫合を終えて

道具を片付けて

帰路に着いた。

乳牛を飼う場所が

スタンチョンの繋留から

フリーストールやフリーバーンのような

繋がない形式にする酪農場が増えた昨今

乳頭損傷の事故は

減って来たように思うのだが

最近はそれが

そうでもなくなったように思う。

その理由として

フリーストールやフリーバーンにおける

牛の過密状態

があるのではないかと

私は思っている。


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