「仔牛の右肘(ひじ)が腫れて、着けない。」

という酪農家の⌘さんから電話が来た。

休日の当番だったK獣医師が往診へ行き、

とりあえずの処置として、

消炎剤と抗生物質を投与した。

IMG_1286翌日、

K獣医師から伝言を受けた私が、

この仔牛を診た時、

「昨日と変わっていないです。」

という飼主の⌘さんの言葉に、

IMG_1289私はこれはちよっと厄介かもしれないと感じた。

肘の関節の炎症で腫れているのは間違いないのだが、

関節の深部や骨に異常がないないかどうか、

確かめておかねばならない。

「じゃあ、レントゲン写真撮ってみましょう。」

私はそう言って、

昼から出直して、

ポータプルのレントゲン装置を積んで、

この仔牛の右肘(ひじ)の腫れている部分の写真を撮った。

腫れている部分の内側に

立ったままで脇の下にカセットフィルムを当てても

胸部につかえて患部に届かない。

そこで、仔牛に鎮静剤をかけて寝かせ

仰向けの状態にして

前脚を開いた姿勢にして

カセットフィルムを患部の外側に当て

寝かせて仰向きになっている仔牛の

患部の内側から外側に向かって

X線を照射するようにして

なんとか

肘(ひじ)の部分の写真を撮ることができた。

写真の現像は

隣町のT町の東部事業所まで

撮ったカセットフィルムを運び

そこにあるデジタル解析装置の中へ

IMG_1290カセットを差し込めば

デジタル画像化されたレントゲン写真が

画面に現われる。

その結果がこの2枚の写真である。

IMG_1291ちょっと分かりにくいが

よく見ると

上腕骨の遠位端が

ポッキリと折れて

後方へ変位しているのが見える。

BlogPaint最後の写真は

牛の肘の部分の

骨格模型に

その状態を記入したもの。

「あー、これは、いっちゃってますねぇ・・・」

「ほんとだ。」

現像機械を操作してくれたM獣医師と私は

画像を眺めて、ため息をついた。

「これは、厳しいんじゃないですか・・・」

「・・・うん。」

私は、しばらく画像を見て

この牛は我々の手には負えないと判断した。

そして翌日

私はこの仔牛の廃用の認定を

共済の連合会に申請し

そのまま承諾された。

仔牛は約2ヶ月齢だった。

私は

今回のような

上腕骨の遠位の骨折を

X線画像で診断したのは初めてだった。

さて

記事をお読みの獣医師諸君でも

上腕骨骨折の症例を経験された方は

少なからずいると思うので

ご意見を聞きたいと思う。

私には手に負えなかった症例だが

どなたか

仔牛の上腕骨骨折の整復に

成功した方は

おられますか?

(追記)

この記事をアップした後

コメントしていただいたTamさんという獣医師から

黒毛和種仔牛の上腕骨骨折の

治療中の写真を送っていただいたので

以下に貼り付けました。

Tam先生、ありがとうございます!

BlogPaint










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左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

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