「・・・共進会に出す馬が、顔に怪我をした・・・」
そんな電話が、
馬産家の@さんからかかって来たのは、
夜間当番の早朝だった。
馬を枠場に入れて顔を診ると、
馬の長い鼻梁に約15cm程度の切り傷があった。
よくみると、ヨードチンキを塗布した後の色が付いており、
傷口からは出血と漿(しょう)液が垂れた後のような汚れがあった。
「これは・・・何時頃、怪我したの?」
「・・・きのうの晩。」
「ヨーチン付けてあるね。」
「・・・ああ。でも治りそうもないから、縫ってくれ。」
「たしかこの馬、共進会に出すやつだったよね。」
「・・・そう。」
「共進会は何日だっけ?」
「・・・あと2週間。」
「そっかー、うーん。」
「・・・縫って治してくれ。」
「まぁ、やれるだけやってみるか。」
「・・・きれいに治してくれよ。」
「うーん、まぁやってみるか。」
馬に鎮静剤を投与し
鼻捻をかけて保定し
傷の周囲を
ビルコン液を染み込ませたスポンジで
ジャブジャブと洗い
汚れを落として
再び傷を良く見ると
何か鋭利なもので
鼻梁をザクッと切ってしまったような傷だった。
長さは上下に15cm程度
頭部に近いところの傷がもっとも深く
その深さは2cmほどあった。
出血は無く
薄いピンク色の創の断面は
皮下組織がほとんどで
奥のほうは骨に達しているようだった。
私は過去に
こういう筋肉の無い鼻梁の切創を縫合した経験を
思い出せなかったので
行き当たりばったりの処置となった。
洗浄した創口の頭側の深い部分に
角針を刺して、吸収糸をかけて
そこを起点に連続で皮内縫合をしてゆく。
この方法は
牛の開腹手術の最後の
皮膚を皮内縫合する方法と同じだった。
熟慮してそういう縫合法を選択したのではなく
とっさに思い浮かんだのが、この縫合方法だった。
しかし、いつも牛の手術で慣れている方法なので
スムーズに縫いすすみ
縫合処置は数分で終わった。
縫合処置をした切創は
手で広げようとしても広がらないように
針の縫い目もわからないように
皮内縫合された。
この縫合処置によって
なんとかこの1才馬を
十勝共進会に出品させたいという
@さんの願いが叶えられるかどうか。
私は、きっとこれで何とかなるだろうと
抗生物質を投与し
あと三日間の抗生物質の投与を指示して
帰路についた。
(この記事続く)
左の写真の道具を使う
「牛のニコイチ捻転去勢法」
の動画をYouTubeにアップしています。
ここを→クリックして
見ることが出来ます。
そんな電話が、
馬産家の@さんからかかって来たのは、
夜間当番の早朝だった。
馬を枠場に入れて顔を診ると、
馬の長い鼻梁に約15cm程度の切り傷があった。
よくみると、ヨードチンキを塗布した後の色が付いており、
傷口からは出血と漿(しょう)液が垂れた後のような汚れがあった。
「これは・・・何時頃、怪我したの?」
「・・・きのうの晩。」
「ヨーチン付けてあるね。」
「・・・ああ。でも治りそうもないから、縫ってくれ。」
「たしかこの馬、共進会に出すやつだったよね。」
「・・・そう。」
「共進会は何日だっけ?」
「・・・あと2週間。」
「そっかー、うーん。」
「・・・縫って治してくれ。」
「まぁ、やれるだけやってみるか。」
「・・・きれいに治してくれよ。」
「うーん、まぁやってみるか。」
馬に鎮静剤を投与し
鼻捻をかけて保定し
傷の周囲を
ビルコン液を染み込ませたスポンジで
ジャブジャブと洗い
汚れを落として
再び傷を良く見ると
何か鋭利なもので
鼻梁をザクッと切ってしまったような傷だった。
長さは上下に15cm程度
頭部に近いところの傷がもっとも深く
その深さは2cmほどあった。
出血は無く
薄いピンク色の創の断面は
皮下組織がほとんどで
奥のほうは骨に達しているようだった。
私は過去に
こういう筋肉の無い鼻梁の切創を縫合した経験を
思い出せなかったので
行き当たりばったりの処置となった。
洗浄した創口の頭側の深い部分に
角針を刺して、吸収糸をかけて
そこを起点に連続で皮内縫合をしてゆく。
この方法は
牛の開腹手術の最後の
皮膚を皮内縫合する方法と同じだった。
熟慮してそういう縫合法を選択したのではなく
とっさに思い浮かんだのが、この縫合方法だった。
しかし、いつも牛の手術で慣れている方法なので
スムーズに縫いすすみ
縫合処置は数分で終わった。
縫合処置をした切創は
手で広げようとしても広がらないように
針の縫い目もわからないように
皮内縫合された。
この縫合処置によって
なんとかこの1才馬を
十勝共進会に出品させたいという
@さんの願いが叶えられるかどうか。
私は、きっとこれで何とかなるだろうと
抗生物質を投与し
あと三日間の抗生物質の投与を指示して
帰路についた。
(この記事続く)
左の写真の道具を使う
「牛のニコイチ捻転去勢法」
の動画をYouTubeにアップしています。
ここを→クリックして
見ることが出来ます。
ビルコンもよろしくないでしょう。
皮内連続縫合ですか・・・
頭や顔の傷は、鼻翼や口角などの良く動く部位でなければ癒合は良好です。動かないからでしょう。
私なら皮内十字縫合するかな。
外傷では連続縫合はしたくないのです。癒合しないことがかなりの率であるので、連続縫合だと一部で終わらなくなりますから。
こういう部位は治りかけた頃、かゆくなってこすって開いてしまうことがあります。馬房の中で切ったのなら怪我の原因になる金具などがないか探しておかないと、また怪我をする馬がいまs。