分娩後6日も経過した乳牛の子宮脱に、

CB007284-036E-4787-8E93-35BFE9A8F1291.2mほどある子宮脱整復棒を押し込み、

反転を整復し治癒させることができた、

と、思っていた翌日、

飼主のРさんからその牛の診療依頼の電話がかかってきた。

「昨日の牛の、食欲が全くない・・・」

とのことだった。

私はそれを聞いて、

嫌な予感がした。

そして、最悪な状況、すなわち

長い整復棒を根元まで押し込んだことによる

子宮穿孔・・・

腹腔内出血・・・

さらにその後の腹膜炎・・・

が頭の中をよぎった。

この日からしばらく、私は

往診へ行けない用事が続いたので

Рさんの牛を見に行った同僚獣医師から

後で、話を聞くと

「ただボーッとして、立ってました・・・」

とのことだった。

そしてカルテには

T38.6  P84   食欲不振、呆然起立、被毛粗、子宮脱の影響か?

とあり

抗生物質とブドウ糖等の輸液が施されていた。

さらに、その翌日のカルテには

T38.3  P100   食欲廃絶、起立不能、直検にて子宮輪郭不明瞭

とあった。

牛が起立不能になってしまった・・・

これはまずいことになっている・・・

やはり、子宮穿孔からの

腹腔内出血、腹膜炎になってしまったのではないか・・・

私は、暗澹たる気持ちで

カルテをさらに見ると

血液検査の所見があり

その中で目立った異常値があった。

BlogPaintCa 4.7m/dl・・・

これはかなりの低カルシウム血症だ。

そして、その日から

抗生物質と輸液の治療に

カルシウム剤が加わっていた。

それからさらに2日間の治療が施されたが

牛の食欲は回復せず・・・

自力では起立することができず・・・

腹膜炎の疑いを

拭い去ることができなかった。

「でも、熱発しないし・・・腹膜炎ではなさそうなんですけどねぇ・・・」

5診目にこの牛を治療した同僚獣医師が

そんな感想を言った。

そして、第6病日目

私はようやくРさんの牛を

自分の目で診て

治療する機会が巡ってきた。

牛の目の前に立って

顔の表情を観察すると

眼の輝きは悪くはなかった。

食欲もそこそこで、便もかなりの量を排泄していた。

T39.1  P90  

腹膜炎・・・ではなさうに見えた。

しかし、自力で立つことができなかった。

「この牛、お産してからずっと、立つのが下手になってしまって・・・」

飼主のРさんから、さらに話を聞くと

「前脚がうまく踏ん張れなくて、前の方に行っちゃうんです。」

「・・・吊起すれば立てる?」

「吊起までしなくても、牛を後ろにずらしてやると、いつのまにか立ってるんです。」

「・・・今日はずっと寝てるようだけど。」

「今朝は立ってたので、搾乳したんです。」

「・・・今はうまく立てないし、この牛舎と天井では吊るのは面倒?」

Рさんの牛舎の天井は、吊起をする手がかりがなくて、狭かった。

80D69910-C61D-461B-8371-F671A3FB9A4B「はい、ここではちよっと・・・」

「・・・なんとか吊起できるようにしたいよね。」

「はい、今朝立っている時、外へ出せばよかったんですけど・・・」

「・・・じゃあ、明日までには。」

「はい、外の広くて足場のよい所に出しておきます。」

「・・・じゃあ、今日はまた注射しておきますね。」

私はこの牛に抗生物質を投与し

リンゲル液とブドウ糖とカルシウム剤をセットして

明日また来ることを告げた。

この牛が立てないのは

どうやら

腹膜炎によるものではなさそうだった。

そして

分娩後6日目という珍しい時期の子宮脱の

原因も少し見えた(?!)ような気がした。


(この記事つづく)



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