毎年10月は、

我が町の牛達の予防注射のシーズンである。

牛の予防注射にも色々あるが、

我が町で毎年行われるこの仕事は

主に気道感染症(IBR、BVD-MD、など)のワクチンを、

町役場が事務局になっている自衛防疫組合(略して自防)の事業として、

我が町の牛達のほぼ全頭を対象に、

一斉注射をして回るというものである。

本格的にこの一斉注射が始まったのは、

今からもう10年以上も前だった。

当時はIBR(牛伝染性鼻気管炎)が

酪農家の間でポツポツと集団発生をして

我々を悩ませていた。

その対策として

町内の牛のIBRの予防接種を徹底しよう

ということがそもそもの動機であった。

当時はIBR単味の生ワクチンを

12ヶ月齢以上の全ての牛に接種し

それより若くて3ヶ月齢以上の牛には

BVD-MD(牛ウイルス性下痢粘膜病)をはじめとする

5種混合生ワクチンを接種していた。

その後、6種混合不活化ワクチンになり

一昨年までは全頭を対象に接種をしていた。

そのおかげで

IBRの発生はピタリと鎮まり

町内の牛群の抗体価も上昇し

一定の効果を得ることができた。

ところが、ここ数年

BVD-MDの蔓延が問題視され

予防接種の重点がIBRからBVD-MDへと移行してきた。

予防ワクチン製品の種類も

6種混合不活化ワクチンに加えて6種混合生ワクチンや

その他BVD-MDを主なターゲットとする多彩なワクチンが開発されてきた。

我が町の自防としても

その流れに乗って、新しいワクチンを使うようになった。

しかし、新しいワクチンになればなるほど

免疫効果は高められるのだが

薬価も高くなり

飼主さんの負担が増える

という現実に直面する。

そこで

一昨年からは

町内の牛全頭へのIBR単味の生ワクチン接種をやめて

若齢牛の6種混合生ワクチンの接種を重点的に行い

飼主さんの経済的負担の軽減と

予防体制の効率化をはかった。

現在は

3ヶ月齢以上で約12ヶ月以下の若齢牛に

まず6種混合生ワクチンを接種し

その後の補強として2回の不活化ワクチンを接種する

というL-K-K(生-不活化-不活化)方式を採用している。

すなわちこれは

町内の全ての牛が

生涯に3回のワクチン接種を受ければ良い

という方法である。

これによって

IBRの免疫だけは若干手薄になるかもしれないが

その他の牛の気道感染症に対しては

特に最近問題視されているBVD-MDに対しては手厚い方法であり

とりあえず今のところは

ベストの予防対策になっているのではないかと思う。

EDE2AF49-BDEB-4524-976D-C9404DE0987E一連の写真は

先日、私が担当した

巡回予防接種のひとコマ。

この日は役場の事務局のK野氏と

JAの窓口のN岡氏と

26914A90-6F96-47EC-B5C6-E0E263A52CE0NOSAIの獣医師の私とで

3人の予防接種チームを組み

町内の牛を注射して回った。

このワクチン接種チームのメンバーが

交代交代で

IMG_2495約7日間にわたって

巡回接種が繰り返される。

ちなみに

写真に写っている

役場の事務局のK野氏というのは

1049368A-AB4A-41E2-8E64-E081F225ABBA我が「俳句」仲間の

「俳人」のK野K典さんである・・・。

また、ちなみに

この農家さんの

処理室の扉には

「ねこにげ注意」

という張り紙がしてあった・・・。


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左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

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