第6回微研学術セミナーという講演会が、
ホテルグランテラス帯広で開催された。
そのテーマは、
「若齢牛における感染症コントロールの最新知見」
として、
講演1「子牛の免疫とワクチンに対する新しい考え方」
酪農学園大学 大塚浩道 先生
講演2「生産現場から見た子牛の疾病対策と課題」
酪農学園大学 加藤敏英 先生
という二つの講演を聴く機会に恵まれた。
大塚先生は北里大学から酪農学園大学へ招かれた気鋭の獣医学者。
加藤先生はNOSAI山形の臨床家から酪農学園大学へ転身した気鋭の先生。
どちらも大変興味深く役に立つ情報が満載の話だった。
その中で、特に
私がここで書いておきたいと思った新知見
二人の先生にのそれぞれ講演に
共通する一つの新知見、があった。
それは
新生子牛へのワクチン接種についての新知見だった。
新生子牛というのは
生後1〜2ヶ月間は母乳からの移行抗体を持っているから
その時期にワクチン接種をしても
移行抗体によってワクチンの抗原物質は中和され
その時期の子牛の抗体価は上昇しない、という現象
いわゆるワクチンブレイクという現象が起こることが知られている。
抗体価が上がらないのだから
その間の子牛の免疫力は上がらないだろう
そう考えて
子牛にワクチンを接種するのは
母乳の移行抗体が消失する
生後3ヶ月程度まで待ってからの方が良い
という常識のようなものがあった。
今までのワクチン接種法の常識的なこととして
広く知られていたことだった。
ところが両先生の講演は
その常識をくつがえすものだった。
例えば
新生子牛へBVD-MDのワクチン接種をすると
ワクチンブレイクが起こり
新生子牛のBVD-MDに対する抗体価は思うように上がらない。
今までの常識では
抗体価が上がらないということは
免疫力が上がらないということである
と理解されて来た。
ところが、両先生の話はそうではなかった。
ワクチンブレイクという現象によって
抗体価は上がらないけれども
その子牛が持っている母牛からの移行抗体と
BVD-MDワクチンの抗原物質との結合物が多数生産される。
その後、その結合物が
マクロファージに貪食されて
その結果、BVD-MDの抗原情報がTリンパ球に伝達されて記憶され
その子牛はTリンパ系の細胞性免疫を獲得する
というのである。
つまり
新生子牛にワクチンを接種すれば
ワクチンブレイクによって抗体価は上昇しないけれども
細胞性免疫のほうはしっかりと準備ができるから
いざ本物の病原体の攻撃を受けた時
症状は軽度で済み
ワクチン接種の効果は
十分に現われるのだという。
二人の先生の講演内容は
ワクチンブレイクを気にして
新生子牛にワクチンを打たないという
今までの常識を
くつがえすものだった。
出生後(10日後〜)にはもうワクチンを接種してよい。
その時起こるワクチンブレイクを気にしなくてよい。
むしろ積極的にワクチンを接種すべきである。
ということを
我々に示すものだった。
(この記事つづく)
左の写真の道具を使う
「牛のニコイチ捻転去勢法」
の動画をYouTubeにアップしています。
ここを→クリックして
見ることが出来ます。
ホテルグランテラス帯広で開催された。
そのテーマは、
「若齢牛における感染症コントロールの最新知見」
として、
講演1「子牛の免疫とワクチンに対する新しい考え方」
酪農学園大学 大塚浩道 先生
講演2「生産現場から見た子牛の疾病対策と課題」
酪農学園大学 加藤敏英 先生
という二つの講演を聴く機会に恵まれた。
大塚先生は北里大学から酪農学園大学へ招かれた気鋭の獣医学者。
加藤先生はNOSAI山形の臨床家から酪農学園大学へ転身した気鋭の先生。
どちらも大変興味深く役に立つ情報が満載の話だった。
その中で、特に
私がここで書いておきたいと思った新知見
二人の先生にのそれぞれ講演に
共通する一つの新知見、があった。
それは
新生子牛へのワクチン接種についての新知見だった。
新生子牛というのは
生後1〜2ヶ月間は母乳からの移行抗体を持っているから
その時期にワクチン接種をしても
移行抗体によってワクチンの抗原物質は中和され
その時期の子牛の抗体価は上昇しない、という現象
いわゆるワクチンブレイクという現象が起こることが知られている。
抗体価が上がらないのだから
その間の子牛の免疫力は上がらないだろう
そう考えて
子牛にワクチンを接種するのは
母乳の移行抗体が消失する
生後3ヶ月程度まで待ってからの方が良い
という常識のようなものがあった。
今までのワクチン接種法の常識的なこととして
広く知られていたことだった。
ところが両先生の講演は
その常識をくつがえすものだった。
例えば
新生子牛へBVD-MDのワクチン接種をすると
ワクチンブレイクが起こり
新生子牛のBVD-MDに対する抗体価は思うように上がらない。
今までの常識では
抗体価が上がらないということは
免疫力が上がらないということである
と理解されて来た。
ところが、両先生の話はそうではなかった。
ワクチンブレイクという現象によって
抗体価は上がらないけれども
その子牛が持っている母牛からの移行抗体と
BVD-MDワクチンの抗原物質との結合物が多数生産される。
その後、その結合物が
マクロファージに貪食されて
その結果、BVD-MDの抗原情報がTリンパ球に伝達されて記憶され
その子牛はTリンパ系の細胞性免疫を獲得する
というのである。
つまり
新生子牛にワクチンを接種すれば
ワクチンブレイクによって抗体価は上昇しないけれども
細胞性免疫のほうはしっかりと準備ができるから
いざ本物の病原体の攻撃を受けた時
症状は軽度で済み
ワクチン接種の効果は
十分に現われるのだという。
二人の先生の講演内容は
ワクチンブレイクを気にして
新生子牛にワクチンを打たないという
今までの常識を
くつがえすものだった。
出生後(10日後〜)にはもうワクチンを接種してよい。
その時起こるワクチンブレイクを気にしなくてよい。
むしろ積極的にワクチンを接種すべきである。
ということを
我々に示すものだった。
(この記事つづく)
左の写真の道具を使う
「牛のニコイチ捻転去勢法」
の動画をYouTubeにアップしています。
ここを→クリックして
見ることが出来ます。
しかし、動物種、ワクチンの種類、病気、etc.について多くの検証が必要でしょう。
抗体価だけでワクチン効果を評価するのは無理があったことは否めませんね。しかし、その病原体に関する細胞性免疫能を評価する適切な方法がなかった(いまだに簡単な方法はない)のでしょう。
先日、病院へ行ったら、「50歳すぎたら帯状疱疹のワクチンをうちましょう」というポスターが貼ってありました。私たちの世代は自然感染して水疱瘡の終生免疫を獲得していますが、老化と獲得免疫の低下で帯状疱疹を発症する人が多いです。
最近のこどもたちはワクチン接種で水疱瘡に罹らないので、こどもたちから大人が抗原刺激を受ける機会もなくなっています。
そのうち帯状疱疹のワクチンをうってもらおうと思いました。
そして、ワクチンで免疫を獲得した現代の子供たちが、罹ったことがある今までの大人たちと同じ抵抗力を持っているのかどうか、帯状疱疹の発症率が上がるのか、あるいは下がるのか、わからないんじゃないかと思います。