先週の月曜日、
午前の往診の最中の携帯に、
珍しく隣町の先輩のO獣医師から電話がかかってきた。
「馬の難産なんだけど、変だ。胎児は死んでるみたいで、陣痛が全く無い。」
私は、電話口から帝王切開を一緒にやろうという雰囲気を感じた。
とりあえずもう一度、経膣の分娩介助を試みて、
駄目だったら、また電話をしてくるという事で一度携帯を切った。
しばらくしてまた電話が鳴った。
「やっぱり駄目だ。切るしかないから、頼むわ。」
「わかりました。じゃあ、2時に連れて来て下さい。」
案の定の展開だった。
私も覚悟を決め
こちらの診療所の若い獣医師たちに
手術の準備と麻酔の準備としておくように頼み
午前中の往診を終えて
昼食を急いで食べ終えたところへ
隣町のИさんの馬が運ばれてきた。
牛用の手術台を使う、重種馬の帝王切開が始まった。
導入はドミトールとケタラール
維持はGGE+ドミトール+ケタラールのトリプルドリップ
右横臥で左下部を切開。
保定は牛よりも頑丈に縛る。
麻酔がしっかりできれば
あとは牛の帝王切開と同じ流れで
腹腔をあけて
子宮をあけて
胎児を縛って吊り上げて摘出。
今回の胎児はすでに死亡して時間がたっており
70キロ以上はあろうかという胎児で
胎位は尾位だった。
母馬は2日前まで乳を漏らしていたが
その後乳か上がって陣痛も全く消えてしまっていたという。
羊水はほとんど消えて粘調の悪露になりつつあった。
胎盤は無理に剥がすと出血多量になるので臨機応変にすべきだが
今回は胎盤も簡単にはがれたので全部摘出した。
子宮の縫合も牛と同様の一層縫合。
子宮を生食でよく洗い腹腔へ戻した。
腹壁から皮膚までの縫合は
牛よりも頑丈に
腹膜、筋層筋膜、皮筋皮下、皮膚、の4層をそれぞれに縫った。
縫い終わる頃に維持麻酔を止め
リンゲルなどの補液に切り替えた。
右横臥のまま寝ている母馬をそのままにして
スタッフ一同後片付けを始めた。
牛の帝王切開と違って
全身麻酔をしているので
手術が終わってから直ぐに叩き起こしてはいけない。
麻酔が覚めるのをゆっくりと待つことが大切である。
今回は横臥から座位になるまで約30分かかった。
座位になってから起立するまで約10分かかった。
起立してから歩行し始めるまでさらに約10分かかった。
術後約50分でようやく家畜車に乗り
馬は隣町へと帰っていった。
それから3日後
先輩のO獣医師から
電話がかかってきた。
母馬は
食欲も回復し
経過は順調だという事だった。
仔馬は駄目だったけれども
親馬が助かったことで
また次の繁殖への望みをつなぐことができたのは
良い事だった。
診療地区の重種馬の数が
激減してしまった中で
自分の執刀した帝王切開は
じつに3年ぶりだった。
左の写真の道具を使う
「牛のニコイチ捻転去勢法」
の動画をYouTubeにアップしています。
ここを→クリックして
見ることが出来ます。
午前の往診の最中の携帯に、
珍しく隣町の先輩のO獣医師から電話がかかってきた。
「馬の難産なんだけど、変だ。胎児は死んでるみたいで、陣痛が全く無い。」
私は、電話口から帝王切開を一緒にやろうという雰囲気を感じた。
とりあえずもう一度、経膣の分娩介助を試みて、
駄目だったら、また電話をしてくるという事で一度携帯を切った。
しばらくしてまた電話が鳴った。
「やっぱり駄目だ。切るしかないから、頼むわ。」
「わかりました。じゃあ、2時に連れて来て下さい。」
案の定の展開だった。
私も覚悟を決め
こちらの診療所の若い獣医師たちに
手術の準備と麻酔の準備としておくように頼み
午前中の往診を終えて
昼食を急いで食べ終えたところへ
隣町のИさんの馬が運ばれてきた。
牛用の手術台を使う、重種馬の帝王切開が始まった。
導入はドミトールとケタラール
維持はGGE+ドミトール+ケタラールのトリプルドリップ
右横臥で左下部を切開。
保定は牛よりも頑丈に縛る。
麻酔がしっかりできれば
あとは牛の帝王切開と同じ流れで
腹腔をあけて
子宮をあけて
胎児を縛って吊り上げて摘出。
今回の胎児はすでに死亡して時間がたっており
70キロ以上はあろうかという胎児で
胎位は尾位だった。
母馬は2日前まで乳を漏らしていたが
その後乳か上がって陣痛も全く消えてしまっていたという。
羊水はほとんど消えて粘調の悪露になりつつあった。
胎盤は無理に剥がすと出血多量になるので臨機応変にすべきだが
今回は胎盤も簡単にはがれたので全部摘出した。
子宮の縫合も牛と同様の一層縫合。
子宮を生食でよく洗い腹腔へ戻した。
腹壁から皮膚までの縫合は
牛よりも頑丈に
腹膜、筋層筋膜、皮筋皮下、皮膚、の4層をそれぞれに縫った。
縫い終わる頃に維持麻酔を止め
リンゲルなどの補液に切り替えた。
右横臥のまま寝ている母馬をそのままにして
スタッフ一同後片付けを始めた。
牛の帝王切開と違って
全身麻酔をしているので
手術が終わってから直ぐに叩き起こしてはいけない。
麻酔が覚めるのをゆっくりと待つことが大切である。
今回は横臥から座位になるまで約30分かかった。
座位になってから起立するまで約10分かかった。
起立してから歩行し始めるまでさらに約10分かかった。
術後約50分でようやく家畜車に乗り
馬は隣町へと帰っていった。
それから3日後
先輩のO獣医師から
電話がかかってきた。
母馬は
食欲も回復し
経過は順調だという事だった。
仔馬は駄目だったけれども
親馬が助かったことで
また次の繁殖への望みをつなぐことができたのは
良い事だった。
診療地区の重種馬の数が
激減してしまった中で
自分の執刀した帝王切開は
じつに3年ぶりだった。
左の写真の道具を使う
「牛のニコイチ捻転去勢法」
の動画をYouTubeにアップしています。
ここを→クリックして
見ることが出来ます。
馬では珍しい胎仔が死んでしまって時間がたっての帝王切開ですね。羊水を腹腔へこぼすと腹膜炎を起こすので、横臥での帝王切開が有利だったかもしれません。
技術を牛地帯の後輩に伝えておきたいという思いも感じました。
手術時間はどれくらいでしたか?
トリプルドリップの総投与量はどれくらいでしたか?
縫合糸は何を使いましたか?
この方法(横臥、下膁部切開、トリプルドリップ麻酔、子宮の1層縫合、etc.)の欠点は感じていませんか?
私たちのところでやるサラブレッドの帝王切開の方法とはかなり違うのです。