「朝産んだ牛が子宮脱に・・・」

そんな稟告で向かった◉牧場。

またか・・・

胎盤や腟脱だったらいいのに・・・

そんな都合の良いことを考えながら診療車を走らせて

◉牧場に到着。

IMG_3565残念ながら子宮脱だった。

子宮に付着している胎盤を剥がして

適当な板切れを洗って用意して

場長の☆君と従業員の▼君に

板の左右を持ち上げて子宮を支えてもらいながら

牛の怒責の合間を見計らいながら

IMG_3567少しづつ子宮を押して

腹腔内へ戻し

さらに子宮脱整復棒を押し込み

反転している子宮の歪みを直す。

次に包帯とビューナー針で

IMG_3569外陰部の巾着縫合。

「・・・それにしても最近、子宮脱多いんじゃないの?」

私は縫いながら☆君にそう言った。

「はい・・・」

「・・・確かこの牛はカルシウム打ったって言ったよね。」 

IMG_3573「はい、子宮脱になってからですけど・・・」 

「・・・子宮脱の牛はほとんどが低カルシウムだからね。」

「今月、2頭目なんです。今年になってもう5頭目なんです・・・」

「・・・そりゃ多すぎるわ!」

◉牧場は搾乳牛150頭程度のフリーストール牧場だ。

IMG_3574従業員は場長の☆君を含めて3名。

「はい、それと・・・」 

「・・・それと?」 

「このごろ、お産の介助が早いんです・・・」

「・・・早い?」

「お産だとすぐ引っぱって出すんです・・・」

「・・・あー・・・それかも。」

「そうなんですか・・・」

「・・・自力で分娩しようとする前に、人が引っぱって子牛を出しちゃうと・・・」

「陣痛がそのあとから始まっておさまらなくて・・・」

「・・・子牛がもう子宮の中に居ないから、陣痛で子宮を産んじゃうゃうのよ。」

「子宮を産んじゃうんですか・・・」

「・・・そう。子牛を引っぱり出す前に、自力でもっとふんばらせないとダメだよ。」

「そうですか・・・」

「・・・子宮じゃなくて子牛を出すためにふんばるんだから。」

「わかりました・・・」

子宮脱の原因は

いまだに謎が多いのだが

4ヶ月の間に5例も出たという

子宮脱の多発牧場には

子宮脱を起こす大きな要因として

早すぎる牽引介助という

人為的なものがあったようである。

この事実は

子宮脱のナゾの解明の

新たなヒントになりそうだ。

 
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左の写真の道具を使う


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