「食欲不振の牛が4頭いるんですけど、診てもらえますか・・・」

∀牧場の息子さんから、そんな往診依頼が来た。

∀牧場は牛の総数が50頭程度の育成牧場である。 

そんなところの牛が4頭も、

食欲不振になったというのは尋常ではない。

私はとっさに伝染病や食中毒などの、

集団的な病態を思い浮かべた。

∀牧場に着くと

息子さんがやって来た。

「4頭も食欲がないって・・・どうしたの?」

「$さんの預かりの牛なんですけど・・・ファームノートの反芻量が落ちてるんで・・・」 

「ファームノート?」 

「はい・・」 

ファームノートというのは

帯広市に本社のあるIT企業が売り出している牛群管理システムである。

農場の牛の1頭1頭の首にセンサー(首輪型ウェアラブルデバイス、という)を取り付けて 

IMG_3792そのセンサーが感知する情報(歩行数、休息時間、反芻量、など)を

本社にある人工知能へ発信してそこで集約し

契約者のスマートフォンへそのデーターを還元するシステムである。

飼主はその牛群のリアルタイムのデーターを24時間活用することができる。

「ファームノート、か・・・」

私は、これは新しいタイプの稟告だ、と思った。
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「ここ数日、反芻量が落ちている牛がいるんで、ちょっと気になって・・・」

「ファームノートの反芻量・・・ってどうゆう数字なの?」

 「単位はわからないんですけど、正常な時は「6」で、それより下がると落ちているらしいです・・・」

「で、今回の4頭はどれくらいの数値なの?」

IMG_3791「上がったり下がったりするんですけど、「1.7」とか「4.3」とか・・・」

ファームノートが発信する反芻量は

グラフ化されて飼主のスマートフォンに届くようになっている。

私は、その端末の画面を見せてもらった。

「なるほど、これがそのグラフなのね。」

IMG_3793「はい、そうです・・・この緑の棒グラフが反芻量です・・・」

「反芻量が落ちてる4頭、診せてもらおうか。」

「はい。」

私は、連動スタンチョンに入っている牛たちの中から

反芻量の落ちているという4頭を

順次、診察していった。

1頭目は、体温38.7、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

2頭目は、体温38.8、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

3頭目は、体温38.7、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。 

4頭目は、体温39.2、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

であった。

4頭すべて妊娠牛だった。

私はこれらの牛たちが

伝染病や食中毒ではないことを確認した。

「反芻量が落ちてるっていうのは、暑さなのか・・・理由はよくわからないな。」 

「そうですか、$さんから獣医に診てもらってくれって言われたもんですから・・・」

「とりあえず、健胃剤出しておくから、それを飲まして様子見てね。」

「わかりました・・・」 

かくして私は

ファームノートのデーター上で変化の見られた牛の治療(?)を終えた。

治療・・・といってもこれは従来の治療ではなく

予防的な診療行為になるだろう。

考えて見ると

こういう仕事は

私のようなNOSAI診療所の治療型(火消し)獣医師のする仕事ではなく 

牧場専属のコンサルタントの予防型(火の用心)獣医師のする仕事であろう

と、思った。

ちなみに

診察した4頭の中で

2番目に診た牛は非常に気性が荒く 

体温計を肛門に入れようとする時大暴れして

後脚を何度も蹴り上げる牛だったので

私は危うく

1発蹴りを喰らうところだった。 

フアームノートの首輪のセンサーは

牛の気性の荒さは

感知してくれないようだ・・・


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左の写真の道具を使う


「牛のニコイチ捻転去勢法」

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