先日の宿直の、

18時30分頃に携帯電話が鳴った。

「今日産んだ親牛と、その仔が元気ないんですけど・・・診てもらえますか?」

酪農家の▽さんからだった。

牛舎に着くと、仔牛がいるカーフハッチに案内された。

「難産だったらしくて・・・でも親のほうは、さっき見たら餌食ってたんで、様子みることにします。仔牛のほうを診てください。」 

仔牛はカーフハッチの中でうずくまっていた。

体温35℃以下、心音が弱く、呼吸も弱かった。

「お産は、だいぶきつかったの?、いつ生まれたの?、親は初産?」

「朝5時頃だと思います。見つけた時はもう生まれてたんですけど・・・親は経産牛です。」

「自力で生まれてたのね。」 

「はい・・・」

よくある事だが

自力で分娩し終わっている牛を見つけた時は

もう事態の山場が過ぎているので

安心して仔牛を移動させて

普通に様子を見ている飼主さんが多い。

しかし

最近のホルスタインは

足腰が弱く踏ん張りがきかなくなっているので

相当な難産であったと想像するべきである。

飼主さんが介助するのが当たり前になっている中で

介助のない自力分娩をした牛の親子は

親子共々相当な体力を消耗をしている可能性が高い。

そういうお産の直後の牛の親子は

いつよりもまして注意を払っておかなければならない。

今回はまさにそういうケースだった。

時間は19時を過ぎ

夜の厳しい寒気が忍び寄って来た。

「仔牛の体温が下がりすぎてるね。外のハッチで治療するのは、ちょっとなー。」

「寒すぎますか?」 

「うん、ここじゃ寒すぎるから、どこか部屋の中に持って行こう。」 

「わかりました。」 

IMG_4973私と▽さんの息子は

冷たくなりかけている仔牛の四肢を持って

処理室の事務机の前に運び込んだ。

処理室の中はプラスの気温だったので

ここで点滴治療をすることにした。

仔牛は体温が下がっているばかりではなく

BlogPaint血圧もかなり下がっていて 

頚静脈がなかなか見つからなかった。

数分後ようやく頚静脈に留置針を差し入れることに成功し

点滴治療を開始して

明日また治療に来ると▽さんに告げて

その夜はそのまま帰路に着いた。

翌朝

事務所の外の温度計の気温は

−16℃を指していた。

診療業務が始まった頃

▽さんから電話がかかってきた。

「昨日の仔牛・・・死んでしまいました・・・」

残念な結果になってしまったが

今の時期にはよくある事だ。

繰り返しになるが

もう一度書いておく。

飼主さんが介助しないで

自力で分娩した牛の親子は

いつも以上に

体力を消耗しているので

要注意!


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左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

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