胸部に深い傷を負った育成牛。

創部からは肉片が垂れ下がり、

IMG_5188そこに手をいれると、

手がすっぽりと入り、

指先が肋骨に触れた。

牛は食欲がなく、

呼吸も速く、

呆然と痛みに耐えているようだった。

IMG_5190ただ、

幸いな事に、

肋骨という丈夫な防護壁のおかげで、

胸腔内までの損傷はなく、

肺そのものも無事のようだった。

それは

手を入れた時に

IMG_5192空気の漏れがなかったからだが

あらためて

肋骨という防護壁の機能を

肌で感じることができた。

創部を洗浄して

えぐれた肉片を切除した。

IMG_5196その後

できるだけ奥の方から

筋層を縫合し

皮膚を縫合し

ドレーンを装着した。

縫合したのは

IMG_5202牛の右側胸部の派手な傷で

もう一方の左側胸部の傷は

皮膚が切れておらず

挫滅しているだけだった。

他それは手で押すと

IMG_5187ブカブカと波動感があったが

あえて切開はせず

そのまま放置する事にした。

抗生物質を毎日打つように指示して

飼主の〓さんと牛は帰って行った。

翌日

牛は全く食欲がなく

立っていることが辛いのか

終始横臥していた。

傷口を下にして寝てしまうので

傷の手当てができず

仕方がないので

リンゲルやブドウ糖などの補液をして

全身症状に対する治療を続けた。

手術をしてから5日目

〓さん宅へ往診にゆくと

IMG_5208牛は立ち上がっていた。

「今朝から、すぐ立つようになったんですよ。」

〓さんの奥さんがそう言った。

「餌も、今日からだいぶ食べるようになりました。」

「・・・それは良かった。」 

IMG_5209「でも先生、この傷どうなんですか。」

「・・・。」 

「腫れ上がって来たんですけど。」 

立ち上がった牛の

左右の胸部を見ると

どちらの創部も

ハンドボールくらいの大きさに

IMG_5210腫れ上がっていた。

手術をした右胸の創部には

装着したドレーンが

もう役目を果たさずに

ぶら下がっていた。


(この記事続く) 



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