「ホルの育成牛に発情が来たけど、授精できない・・・」

▼牧場からそんな電話がかかって来た。 

よく聞いてみると、

「人工授精の注入棒が、うまく入らない・・・」

のだという。

もう少しよく聞いてみると、

「子宮頸管外口がよく分からず、奇形なのではないか・・・」 

という。

なるほど、

私もかつて何頭か、

そんな未経産の牛に遭遇したことがあった。

せっかく1年以上、その牛を育てて 

めでたく発情が来て

さあ種付け、と思った時に

そんなことになってしまうと

飼主さんの落胆は大きい。

先天的な生殖器の異常では

治療は無理であり

保険金をもらうこともできない。

繁殖用のホルスタインの雌牛が 

いきなり

食肉用の牛になってしまうという

そんな辛い診断をしなければならないのか、と思いつつ

▼牧場へと向かった。

問題の牛は

よく成長した元気なホルの育成牛だった。

「若い授精師さんが、何度も挑戦したんですが、入らないんです・・・」

外陰部が紅潮して緩んでいる。

私は長年愛用の注入棒を差し込んでみた。

すると

その棒の先がスーッと奥に進み

注入口から尿が漏れて来た。

子宮頸管ではなく

その手前の尿道に入ってしまうのだ。

何度やっても

子宮頸管外口ではなく

尿道口に入ってしまうのだ。

「・・・ははー・・・これはもしかして・・・」 

私はかつて

こういう牛にも遭遇したことがあった。

「・・・これは奇形じゃないよ、きっと・・・」

私は即座に

飼主さんに辛い診断を宣告しなくて済むだろうと思った。

「・・・膣鏡を入れてみるからね・・・」

私は注入棒を

膣鏡に持ち替えて

牛の外陰部から

その膣鏡を上向き加減に

膣の背壁を沿うような角度で挿入し

少し力を入れて

さらにその膣鏡を強く挿入した。

プツン・・・

という感触があり

膣鏡は根元まで挿入された。

挿入した膣鏡のネジを巻いて開くと

開いたところから

ドロリ・・・

と白く濁り気味の発情の粘液が流れ出して来た。

IMG_5715発情粘液の後から

鮮血が滲み出して

ポタポタと落ちて来た。

「・・・たぶんこれでよし・・・これは処女膜だよ・・・」

「処女膜ですか?・・・」

「・・・たまに膜が硬くて厚い奴がいるんだよ・・・」

私は膣鏡を抜いて

再び愛用の注入棒に持ち替えて

その棒の先端を膣内に挿入した。

IMG_5713もう片方の手は

直腸から子宮頸管をつかんでいる。

子宮頸管外口と思しきところへ

注入棒の先端を誘導すると

その先端は

子宮頸管外口へスーッと入った。

「・・・今度は普通に・・・頸管に入るようになったから・・・」

「ほんとですか・・・」

「・・・もう大丈夫、次回の発情で普通に授精できるよ・・・」

「ありがとうございます・・・」

私は

久しぶりに

ホルスタインの育成牛の

処女膜破りを経験したのだった。


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