「食欲はあるのに嘔吐する」

という稟告の黒毛和種の仔牛、

月齢は約4ヶ月。 

牛が嘔吐するというのは、

反芻の時になんらかの理由で食べこぼしただけで、

その後自然と治ってしまう場合が多い。

今回の症例も

そういうケースではなかろうかと予想しつつ

経過を観察しながら

消炎鎮痛剤と抗生物質の投与が続けられた。

ところが

嘔吐が一向におさまらない。

第2診目、第3診目、も嘔吐が消えず

第4診目には血液検査をしたところ

BUN(血中尿素窒素)とγグロブリンの

若干の高値が見られた以外は

異常値は見られなかった。

だが

長引く栄養摂取不足と

飲水不足によって

削痩が進んで行った。

原因への療法が明確にできぬまま

対症療法としての栄養剤の輸液を増やさざるを得ず

毎日の点滴療法をしばらく続けることになった。

抗生物質の種類も変えながら

約10日間の対症療法が続けられた。

しかし

嘔吐は一向におさまることがなく

仔牛は削痩せてゆくばかりだった。

この仔牛はもともと体格が極端に小さく

月齢4ヶ月になったにも関わらず

体重は80kg程度だったので

それがさらに痩せてゆくとなると

みすぼらしさは増す一方だった。

「諦める・・・しかないか・・・」

治療を開始してから20日以上が経った時

飼主の★さんとの間で

遂にそういう話になった。

まず、この仔牛を予後不良として共済廃用とし

その後、帯広畜産大学に搬入して

病理解剖をしてもらおうと連絡を取ったが

秋の学会シーズンということで

大学の先生方を捕まえることができなかった。

止むを得ず

いつものように

地元の病畜処理場へ搬入することにした。

解剖の依頼書を付けて仔牛を搬入し

解剖結果を待った。

IMG_6178すると

処理場で病理解剖を担当しているO星先生から

剖検結果の丁寧な解説文が返ってきた。

その解説に曰く

「食道に異常を認めず、咽頭の粘膜に黒く変色した部分あり。炎症かどうかの判別はできないが、異常所見はその部位のみ。写真を参照下さい。」

IMG_6177という文章とともに

3枚の写真が添えられて

わかりやすく線と言葉が添えられていた。

これで、この仔牛は

「写真の部分の咽頭炎によって嘔吐がおさまらなかった」

ということが判明した。

生前診断が出来ずにモヤモヤとした気分が

これでスッキリとし

飼主の★さんにも説明をすることができた。

今回は残念な結果となってしまったが

明確な解剖の所見が得られたことで

何とか次に遭遇するであろう未来の症例に対して

参考になるものを残すことができた。

いつものことだが

処理場の諸先生方には

特に今回のO星先生には

感謝申し上げたい。



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IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

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