「お産の予定日まで、まだあと1ヶ月あるんだけど・・・さっきまで足が出とって・・・」

「・・・お産、始まっちゃったの?」

「それが、さっきまで出とった足が・・・立ち上がったら、引っ込んで・・・」

「・・・それは診に行った方が・・・。」

「ちよっと頼めるかい・・・」

「・・・わかりました。」

午前の往診の途中に

そんな緊急の電話が入った。

和牛の繁殖の◎さんからだった。

牛舎の前に車を停めて

外に出ると

◎さんがいた。

「ずいぶん早いね・・・」

「・・・うん、すぐ近くにいたんでね(笑)、ところで牛は?」

IMG_6336「牛舎につないであるよ・・・」

ストーブ小屋を通って牛舎へゆくと

一頭だけポツンと繋がれた和牛の母牛がいた。

「あれ・・・?、なにか出てるぞ。」

「・・・これは、もう仔牛出ちゃってるね。」

IMG_6337親牛に近づくと

親牛の外陰部からは膜が丸く膨らみ出て

その下に真黒い和牛の仔牛が

呼吸もなく

ぐったりとして横たわっていた。

「死んでるのか・・・?」

「・・・いや、心臓は動いてるみたい。」

「息してないな・・・。」

「・・・ちよっと待ってよ・・・」

IMG_6338私は真黒い早産の胎児の

人工呼吸を始めようと

仔牛に近づき

肋骨に手をかけた。

すると

手をかけただけで

まだ何もしていないのに

仔牛が浅い呼吸をはじめた。

「生きとるのか・・・?」

「・・・生きてるみたい・・・」

IMG_6356しばらく見ていると

仔牛は弱く頭を振り

顔を上げて

再び今度は大きく頭を振った。

「生きとる・・・」

「・・・大丈夫そうだね。」

私はこの仔牛が命を取り留めたことを確信した。

とても小さな和牛の仔牛だった

分娩予定日よりも1ヶ月近く早い早産だから

当然かもしれないが

これだけ小さな仔牛が生まれたら

このお産は

双子なのではないか・・・

という疑いを抱かざるを得ない。

獣医師は難産の診療を終えた時

その仔牛が小さくて

少しでも双子の疑いが生じたときは

必ず双子のもう1子が子宮内に残っていないかを確認しなければならない。

IMG_6357今回も早速

親の外陰部に手を入れて双子かどうかを確認した。

子宮の中には

胎児らしきものは何も触ることができなかったので

今回はこの小さな仔牛1匹のみのお産であった。

和牛の早産というのは

思い出して見てもあまり記憶に残っていない。

ホルスタインの双子の早産に呼ばれるのは日常茶飯事たが

黒毛和種の単子の早産に呼ばれるのは

珍しいことなのかもしれない。


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