「お産なんですけど、双子みたいで・・・」

先日の当番の携帯から、

酪農家の♭さんの声が聞こえてきた。

「・・・はい、すぐ行きます。」

双子の難産はよくある事だ。

そして多胎の牛の難産は

単胎の時よりも胎児が小さいので

比較的に整復しやすい。

どんな双子なのだろうと

少し楽しみな気分も混ざりつつ

♭さん宅に到着。

「昼間に1頭産んだんです、でも、またリキみ始めて・・・」 

「・・・2頭目がいたのね。」

「そうなんですけど、なかなか出てこなくて・・・」

「・・・親牛、立てないの?」

「はい・・・昼間は立ってたんですけど・・・」 

とりあえず

寝たままで立てない親牛の

産道に手を入れてみた。

「・・・ん・・・。」

「きついですか・・・」 

「・・・お尻から来てるね・・・でも・・・。」 

「・・・。」 

臀位だった。

しかし普通の臀位よりも

胎児が産道へ進入していて

強い怒責とともに

臀部が産道にはまり込んで

胎児を押すことも引くこともできなかった。

親牛が立てないので

その嵌まり込み様は

にっちもさっちも行かない状態だった。

産道からわずかに覗いているのは

胎児の臀部と

右の飛節の先端だった。

「・・・これは、ちょっと困ったな・・・」 

臀位の場合

IMG_6377普通は胎児の曲がっている後肢を整復して

尾位の状態にしてから

後肢を牽引するのが普通である。

しかし

今回の場合

胎児の後肢を母体の中で整復することは

IMG_6379ほぼ不可能だった。

強い怒責とともに

胎児の臀部と飛節が完全に産道へ進入してしまっていた。

「・・・そのまま引っ張るしかないか・・・」

私は、胎児の後肢の整復はせず

産科チェーンを飛節に掛けて

IMG_6380そのチェーンをロープに取り付けて

♭さんに強く引いてもらった。

後肢が少しづつ

外陰部から姿を現し

さらに♭さんに強く引いてもらうと

後肢の飛節から先の遠位部が

IMG_6381ビュンと

バネが外れた様に 

勢いよく

飛び出て来た。

後肢が1本外へ出て来た。

「・・・よし、そのまま引いちゃおう!・・・」 

IMG_6382私は♭さんに

さらにそのまま引っ張る様に指示した。

ここまで来たらもう引っ張るしか方法がない。

「・・・ずっとそのまま、行っちゃって!・・・」

♭さん夫婦に牽引を促すと

胎児は少しずつあらわれ

IMG_6393腰部から胸部があらわれ

ついに頭部と前肢があらわれ

お産が終了した。

 親牛は頭を投げ出していた。

親牛にリンゲルとカルシウム剤を投与している時

♭さんが

IMG_6396「昼間に1頭目が生まれた後、これで終わりだと思って自分でカルシウム剤を打ったんです・・・」 

「・・・そうしたら、もう2頭目が押されて出ようとして、こうなったのね。」

「はい、まさかもう1頭いるとは・・・」 

「・・・思わなかった・・・と(笑)」 

双子の胎児の

2頭目の臀位を

後肢の整復をせぬままに

強引に引っ張ったケースは

あまり記憶がない。

毛の生えていない流産胎児では

何度もやっているけれど

分娩予定日前後の

通常胎児で

こんな牽引をやったのは

あまり記憶がなかった。


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