「あの牛のイボ、むしって取ってくれないべか・・・」

ヨクイニンとメナドンを渡してから、

1週間ほど経った頃‰さんが診療所にやってきた。

「・・・それは、できないことはないんだけど。」

「来月の市場に間に合わないよ・・・」

「・・・あと1ヶ月先か・・・もう少し我慢して・・・飲み薬ちゃんとやってるかい?」

「ああ、つけ薬もやってるよ、でも変わらない・・・」

「・・・まだ1週間じゃ変わってこないから、とにかく1ヶ月間、飲ませて。」

「来週、もう一度見に来てくれないべか、そこで取れるやつは取って欲しいんだ・・・」

「・・・わかりました、来週ね。」

‰さんは‰さんなりに

この牛を市場へ出すための

イボの治療計画を考えているようだった。

それは外科的に切って取り除く方法を

主に考えているようだった。

話を聞いていると

メナドンは毎日必ず塗布しているようだが

ヨクイニンを指示通りちゃんと飲ませいてるのかどうか疑問だった。

私が初めてこの牛の状態を診た時

あの乳頭腫の規模と数では

いきなりの外科的処置は到底無理だろうという直感があった。

私はヨクイニンによる内科療法をメインにしたかった。

しかし

‰さんは外科的な療法をメインに考えているようだった。

私の診断と説明と

‰さんの考え方との間に

溝があることが分かってきた。

市場の日も1ヶ月後に迫っていた。

こういう時は

飼い主さんとのコミュニケーションを

いつも以上に頻繁に行ってゆく必要がある。

1週間が経ち

‰さんの牛の状態を診た。

ほとんど変わっていなかった。

IMG_1427「デカいやつだけでも、むしり取ってくれないべか・・・」

「・・・うん、やってみましよう。」

牛を簡易枠場に繋ぎ

一番目立つものから

IMG_1430一つ一つ

むしり取っていった。

根元が直径数ミリ程度であれば

簡単にむしり取れるものだが

根元が数センチ以上あるものは

IMG_1429爪を立てて

強い力で取らねばならず

次第に手の握力がなくなってきた。

「・・・たくさんあって、とりきれないよ。」

「血も出てきたな・・・」

「・・・もう少し、薬を飲ませて、柔らかくしてからの方がいいよ。」

IMG_1434「頭や首だけでなくて、腹の下や内股にもたくさんついてるな・・・」

「・・・腹の下のやつをここで取るのは、足が飛んできて危ないね。」

「ああ、もう少し後にするか・・・」

「・・・うん、その方がいいと思うよ。」

IMG_1433‰さん宅で

‰さんの希望する外科的処置をしながら

私はこの牛の治療はかなり手強いと感じていた。

そして

1週間後にまた再診をすることにした。

IMG_1431「・・・飲ませ薬(ヨクイニン)は、毎日、いった通りに、ちゃんと飲ませてね!」

「ああ、分かってるよ、やってるよ・・・」

私は‰さんに

ちゃんと内科療法を続けるように

しつこく言って

その日の治療を終えた。

市場の日までは

あと1ヶ月を切っていた。


(この記事つづく)


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