飼主の‰さんは、

‰さんなりに、

あと3週間後に迫った市場の日までに、

なんとかこの牛の「イボとり」を完了し、

何事もなかったかのような外見に仕上げて、

この牛を市場に連れてゆきたいと考えているようだった。

最初の外科的処置は、

手でむしり取る用手法だけを行っていたので、

むしり取る事が難しい

根の深く大きいイボや

根がくびれていないイボが

よく見ると

まだまだかなりたくさん

残っているのだった。

「今日は、そいつらをちょっと・・・ハサミかなんかで、切ってくれないべか・・・」

「・・・うん、・・・やってみますか。」

‰さんは牛をきつく繋いで待っていた。

76269E3C-FCCB-4525-8C62-C42C45C8F963私は毛刈りバサミを手に持って

先週手だけでむしり取れなかった

手強そうなやつに

毛刈りバサミを当てて

切り取っていった。

A98E483E-532C-46A5-B95B-65BA1767B119切り取るたびに

牛は頭を振ったり

体を揺すったり

痛みがあることを訴えて来たが

飼主さんの要望でもあるし

776829A1-3B99-4E19-930F-5F9308031A5Aここは心を鬼にして

スパッスパッと

イボの根っこの皮下組織に

ハサミを入れていった。

切り口からの出血は

DC66ABD8-C96B-4E88-9DFA-C42B5C75B4E1当然のように

手でむしり取る時より多くなり

切るときに走る痛みも

当然手でむしり取る時より強いはずで

それは

写真を見るとわかるように

0A316284-641C-4A4C-943C-8601851CB9B8牛の目の表情が

全てを物語っている。

牛は息を荒げて

血まみれの顔をして

私が手に持っているハサミの行方を

目で追っていた。

IMG_1499「顔や頭の方はだいぶ取れたな・・・」

「・・・そうだね。」

「でも腹の下の方や内股に、まだ残ってるなぁ・・・、切れるかい・・・」

「・・・いやー、そこらへんにハサミ当てたら・・・足が飛んで来て危ないよ。」

「だよなぁ・・・」

「・・・体の下の方は、診療所に連れていって手術台に乗せてやらないと危ないよ。」
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「んだなぁ、そうしてもらうかな・・・」

ということで

今回のハサミによる外科的処置は

頭部と背側部にとどめ

腹部や鼠径部周辺の外科的処置は

来週に診療所の手術台を使って

ちゃんとした保定と鎮静の下で

牛を寝かせて行うことにした。

今回もまた

牛の顔や体は

血が滲んで血まみれなったので

トラネキサム酸を投与した。

「・・・ヨクイニンも、ちゃんと毎日飲ませてね!」

「あぁ、分かってる、ちゃんと飲ませてるよ・・・」

‰さん宅からの帰り際

私は

内科療法の継続を

だめ押しして

帰路についた。

この牛を出荷する予定の

市場の日まで

あと3週間を切っていた。


(この記事つづく)


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