市場の日の約1ヶ月前に、

内科的治療と外科的治療を、

ほぼ同時に始めたこの牛の、

イボの数と大きさ。

その規模はあまりにも大きく、

飼主の‰さんの思惑通りに、

綺麗に取って市場へ持って行くことは、

できそうにない状況になっていた。

先日、ハサミで

かなりの数のイボを

外科的に除去した後

数日経って

‰さんが事務所にやってきた。

「血止め・・・打ってもらったけど・・・」

「・・・出血ひどかったの?」

「あぁ、しばらく血が止まらなくて・・・また打ってもらおうかと思ったけど・・・」

翌日には

なんとか

血まみれ状態は治まってくれたらしかった。

「よく見ると・・・まだまだ、デカいやつがいっぱいなのよ・・・」

「・・・手術室に連れて来てくれるの、いつにします?」

「市場が近いから、すぐやってもらおうかと思ったけど・・・」

「・・・?」

「今月の市場は、もう、あきらめるわ・・・」

「・・・うん、そうでしょう。」

「来週の末に、牛持って来るから、腹の下のデカい親玉のイボとってもらうかな・・・」

「・・・うん、了解、そうしましょう。」

‰さんも

私も

先日ハサミでイボを外科的に切除した時

IMG_1603あまりにも多いイボと

牛の嫌がりようと

出血の多さに

直近の市場に出すのは

無理ではなかろうかという

考えが浮かんでいたのだった。

これだけ規模の大きいイボ(乳頭腫)の治療の場合

IMG_1604私の乏しい経験を振り返ると

外科的治療だけでは難しく

内科的治療すなわち

ヨクイニンの経口投与がメインになり

最低でも1ヶ月以上の投与が

絶対に必要だと思っていた。

IMG_1605今回

治療のスタートが

市場の1ヶ月前だったということで

私は最初から

直近の市場に出すのは難しく

時間切れになるだろうという気がしていた。

IMG_1607しかし

飼主の‰さんは

そう思っておらず

自分なりに市場に間に合わせるための

治療プランを考えていたようだった。

IMG_1608私と‰さんとの間に

治療プランに対する考え方に

齟齬があったまま治療がスタートしていた。

私の考えは

内科治療を中心にして

時間をかけてゆっくりとするべきだと思っていた。

IMG_1609‰さんの考えは

外科的治療をすることで

予定の市場に間に合わせようと思っていた。

そのせいで

‰さんは

IMG_1610最初はヨクイニンを

ちゃんと必要量を毎日飲ませていなかったようだった。

その後、2回の外科的治療をすることで

だんだんと、この牛のイボ(乳頭腫)の多さに気づき始め

ついに

直近の市場に出荷することをあきらめて

じっくりと治療に専念することへ

IMG_1611考え方を変えてくれたようだった。

私は私で

これだけの規模のイボ(乳頭腫)の

外科的治療は初めての事だったので

初診の時に

内科治療でゆっくりやるしかないとは感じつつも

IMG_1612その場でいきなり

「1ヶ月後の市場は諦めた方が良い。」

とは言えなかった。

‰さんとの考えに齟齬がありながら

そのまま共同作業をして

約2週間の時間が経過して

IMG_1614ようやく

‰さんと私の

この牛に対する治療方針が

同じ方向を向いて来たのだった。

かくして

今回の一連の写真は

IMG_1616この牛を

手術台に寝かせて

一つ一つ

除去して行った時のものである。

かなりの数のイボが

腹部に出来ていた。

いちばん大きな

IMG_1617臍帯部分のイボを取るときは

皮下に局所麻酔を打ち

疼痛と出血を抑えつつ

慎重にやらなければならないほどの

大きなイボだった。

IMG_1618頭部に残っていたイボも

立位では非常に嫌がって

取りづらかったものを

じっくりと取り除くことができた。

市場に出荷するのは

1ヶ月以上

先延ばし

という事になった。


(この記事つづく)


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