「お産なんですけど、出てこないので往診お願いします・・・」

〓ファームの従業員の◯君からだった。

「・・・どんな状態?」

「前足2本と頭は来てるんですけど、そこから出てこないんです・・・」

「・・・前足2本と頭が来てるんだったら、そのまま引っ張れば出るでしょ。」

「それが・・・出ないんです・・・」

「・・・???。」

なんだかよくわからない稟告だったが

◯君の真剣な声に応える気持ちと

頭の中の「???」の気持ちが

混ざり合ったまま

〓フアームに向かった。

着いて牛を診ると

胎児の上半身が陰部から外へ出ている。

前足と頭は完全に外へ出ているのだ。

「・・・これならそのまま引っ張れば出るんじゃないの?」

「それが・・・出ないんです・・・」

「・・・何で???」

おかしいなと思って

産道に手を入れると

「・・・何だこれは!」

胎児の下半身が

産道の中で

正座しているのだ。

左右の膝関節が畳まれて

さらに飛節も畳まれて

両足の蹄にも触れる。

おすわり状態で

産道に侵入していた。

後肢の整復は

きつくてとても無理だった。

何という体位だろう・・・

「・・・このまま強く引っ張るしかないね。」

私は牽引滑車を用意して

従業員君たちと一緒に

強引に胎児を引いた。

母牛の体がずれるほどの牽引だった。

「・・・キツイなこれは・・・でももう引き切るしかない・・引いて!」

胎児の上半身がわずかに引き出されて来た。

「・・・そのまま引いて!」

IMG_2398ズボッと出て来た胎児は

F1の胎児だった。

下半身をよく見ると

カエルの後足の形に

硬直している。

IMG_2399「・・・何だ?、この形は!?」

「曲がったまま硬くなってますね・・・」

「・・・これじゃあ、引っかかって出ないわなぁ。」

上(前)半身はまともなのに

下(後)半身がおすわりしたまま

IMG_2401硬くなっている

今まで見たこともない

奇形胎児だった。

「・・・こんなフザけた奇形があるのかい!(◎_◎;)」

私と従業員君たちは

苦笑するしかなかった。

「親がまだ力んでますけど・・・」

◯君がそういうので

もう一度産道へ手をいれてみると

「・・・あ、もう1頭いるよ、今度は逆子だ。」

IMG_24062頭目の後肢を牽引し

2頭目はすんなりと出すことが出来た。

それにしても

F1胎児の双子というオチまでついて

1頭目の下(後)半身だけが硬直して

お産を阻んでいるという

こんな難産は

35年も臨床獣医師をやっていて

初めての経験だった。

トンデモない難産だった・・・


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