「お尻から腸が出てしまうんですが・・・」

そんな稟告の、

〓牧場の、

約2ヶ月齢の和牛の子牛。

IMG_2516診てみると、

肛門から約15センチほど、

直腸が反転して露出している。

露出した直腸の粘膜は

外傷なのか

感染なのか

IMG_2517大小の黄色い壊死組織の塊が

びっしりと付着していて

正常なピンク色の腸粘膜からは

程遠い姿をしていた。

とりあえず

手袋を履いて

脱出した直腸の部分を

用手整復を試みた。

脱出した部分がうっ血を起こし

血液や漿液が溜まって浮腫んでいるので

上手く押し込む事が出来ない。

IMG_2519さらに

押し込もうとしている途中に

強い怒責が起こり

あっという間に元の通りの姿になってしまう。

それを何度か繰り返すうちに

やっと

脱出した部分を全部押し込む事ができた。

IMG_2518ところが

それは束の間のことで

再び強い怒責が押し寄せて

直腸はまた

あっとうまに元の脱出した姿に

戻ってしまった。

私は無力感に襲われた。

IMG_2519「・・・うーん、これは手で戻すだけじゃ駄目だね。」

「駄目ですね・・・。」

「・・・下痢もしてるね。」

「はい、ずっと長いこと下痢していて、コクシの治療はしてるんですけど・・・。」

「・・・外科的に縫ったりしても、怒責の力で組織が千切れてしまうね。」

「でしょうね・・・。」

IMG_2520「・・・コクシも長引くから、怒責はそう簡単にはおさまらないだろうし。」

「でしょうね・・・。」

「・・・感染を抑えるのに、抗生物質の注射は続けましよう。」

「はい・・・。」

「・・・あと、お砂糖ある?」

「砂糖ですか?・・・。」

「・・・うん。普通のお砂糖、まぶすと浮腫みを和らげる作用があるから」

IMG_2519以前、同僚のT獣医師が

ロバの直腸脱に砂糖をまぶして用手整復をして

治癒した事があったので

それを見習って

今回の治療に採用してみることにした。

というか

もう、この子牛の直腸脱の治療法としては

IMG_2520それ以外に良い方法が

思い浮かばなかった

というのが正直なところであった。

〓さんに砂糖を持ってきてもらい

脱出した直腸にまぶしてみた。

「・・・これで、あと抗生物質をしばらく続けて。」

「わかりました・・・。」

IMG_2521「・・・下痢と怒責が治ればいいんだけど。」

「そうですね・・・。」

「・・・また明日様子を見にきますね。」

「お願いします・・・。」

私は〓牧場から

次の往診先へ向かった。


(この記事続く)


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