北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

仔牛の臍帯炎(化膿性尿膜管炎)

先日、往診から帰ってきたら、

H獣医師とK獣医師が仔牛の手術を始めるところだった。

IMG_6580何の手術かと聞くと、

仔牛の臍帯炎で、

大きな膿瘍があるようだが、

どうやら腹腔奥深く、

尿膜管の奥の方まで伸びている可能性があり、

手術台に乗せて

IMG_6581慎重に手術することになったらしい。

いわゆる仔牛のデベソは

ピンからキリまであり

小さいものは軽い臍帯炎で

抗生物質を数日打てば治癒する。

大きなものは臍膿瘍になっているものが多く

IMG_6594膿瘍を切開して排膿してから

抗生物質を数日打てば治癒する。

そのとき最も重要な

類症鑑別は

臍ヘルニアであるが

たまには臍ヘルニアを併発した臍膿瘍もある。

IMG_6582さらに

巨大な膿瘍になれば

講師の腹腔へ大きく入り込み

尿膜管への感染からの膿瘍

あるいは臍動脈や臍静脈の観戦による膿瘍

という場合もある。

IMG_6585今回の仔牛のデベソは

上記のパターンのうち

最悪の場合を想定した手術だった。

まずは大きな膿瘍の部分にメスを入れて

切開排膿した。

排泄された膿汁は1リットル程度

IMG_6586排膿して萎んだ臍帯部の深部を探ってゆくと

肥大して太くなった尿膜管と思われる穴が確認された。

その穴の中を探ると

膿汁が残存していた。

ただ幸いなことに

尿膜管の炎症の方は予想していたよりも軽度で

IMG_6590その部分を洗浄しておけば

自然治癒が期待され

肥大した尿膜管自体を摘出する必要はなかった。

洗浄した尿膜管はそのまま残し

排膿して萎んだ膿瘍部分の

肥厚した組織と皮膚を切除したら

IMG_6591縦も横も約20センチほどの大きな円形の切除跡が残った。

その切除跡の周囲の皮膚を寄せて

縦に約数10センチを縫合して

手術を終えた。

終えてみれは単純な行程だったが

検査をして診断して

IMG_6596最悪の場合も想定しつつ

今回の手術を行った

2人の同僚獣医師の仕事は

手慣れたスムーズなものだった。

そのおかげで

私はゆっくりと余裕を持って

写真を撮影することができた。


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IMG_2775
左の写真の道具を使う

「牛のニコイチ捻転去勢法」

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「電動」&「ニコイチ」捻転去勢器具

先日、何気なしに、

酪農・畜産のFacebookグループページを見ていたら、

ニコイチ捻転去勢棒の、

「電動」ドリルバージョンの写真が掲載されていた。

この器具の持ち主は、

足寄町の和牛繁殖農家さんだった。

早速コメントをして掲載許可をもらい、

当ブログにも紹介させていただくことにした。

82840491_1261351964063596_7451558436522688512_oニコイチ捻転棒の先端部を

電動ドリルにセットした

とてもシンプルなもので

これならば

両手を使わずに

電気の力を借りて

簡単に捻転することができるだろう。

私はこの「電動」捻転棒を

977477bf-s実際に見たことはないが

棒の先端部が

私の使っている捻転棒と

同じ形をしているので

ニコイチ式の「手動」棒から

ヒントを得て作ったものであろうと

容易に想像することができる。 

 今や、ニコイチ式捻転去勢棒は

北海道から本州の方まで

普及しているようだが

その多くが「手動」の棒だった。

それを「電動」にした発想は素晴らしい。

九州地方では

それ以前から「電動」の去勢が普及しているようだが

それは「ニコイチ」ではなく

「一個ずつ」の精巣を捻転去勢する方法だった。

今、ここに

「電動」の器具と

「ニコイチ」の方法が

合体して

新しい器具が登場した。

牛の去勢器具の進化は

とどまることを知らず

次々と

新しい発想で

より良いものが生まれてくるのは

大変喜ばしいことである。

私もこの「電動」&「ニコイチ」捻転器具を

いつか必ず

試してみようと思う。


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デメキン牛は乳が出る!?

乳房炎で食欲不振ということで、

輸液治療のために頭部を保定したら、

BlogPaint「この牛、デメキンだね。」 

「そーなのよ。」 

「デメキンの牛って、乳が出るっていうけど、この牛はどうなの?」 

「そーなのよ。出るよー、この牛。」 

「やっぱり。」 

「ガンガン出るやつが乳房炎になっちゃって、がっくりよ。」 

「それはがっくりだね。」 

「デメキンの牛はだいたい乳が出る。」 

「ほんと、それはどこに行ってもよく聞く話たね。」

「何でなんだべ?」 

「さぁー・・・何なのかね。」 

IMG_6875私がこの仕事を30年以上続けてきて

デメキンの牛に出会うのは

よくあることだった。

その多くが

というか

出会ったデメキン牛の全てと言って良いほど

どの牛もみな

高泌乳能力の持ち主だった。

これは一体なぜだろう?

考えてみると不思議なことである。

一つの推論として

「デメキン牛は新陳代謝が良い」

IMG_6874と考えてみるのはどうだろう。

この発想の根拠は

ヒトのバセドウ病である。

バセドウ病の症状のひとつに

眼球突出がある。


 甲状腺のホルモンが上昇する
     ↓
 バセドウ病に類似した状態になる
     ↓
 特徴的な症状として眼球の奥の組織に炎症が起こり
     ↓
 デメキン牛になる
     ↓
 新陳代謝が亢進しているので
     ↓
 泌乳量が増加する



したがって

「デメキン牛は乳が出る。」

そんな仮説を

立ててみたい。

どなたか

この仮説を

デメキン牛と

そうではない牛の

甲状腺ホルモンを測定して

データーを集めて

証明してもらえませんか?(笑)



IMG_2775
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仔牛の「低体温注意報」と「監視不足警報」(ついで)

昨日は夜間当番だった。

冬期の臨床獣医師の診療車内の薬品、

特にリンゲル液などの輸液剤(いわゆる水もの)は、

夜間待機の車内に置いておくと、

凍結してしまうので、

昼間の往診が終った後、

それらを必ず室内に入れておかなければならない。

IMG_6889診療所で夜間待機をする場合は

事務所の暖房のヒートパネルの上に

輸液剤を並べておく。

こうして温めておけば

次の日は一日中暖かい輸液剤を使用でき

凍結することはない。

IMG_6882また

自宅待機をする場合も

適当な大きさの籠の中に入れた輸液剤を

自宅の玄関近くの暖かい場所に置いておく。

IMG_6881こうして

厳冬期の夜間でも

常に温かい輸液剤を使うことができる。

冬期の仕事は

夏期の仕事に比べて

ひと手間もふた手間もかかる。

昨日の

朝6時頃に

糠内地区の酪農家の◎さんから

仔牛が下痢で冷え切って起立不能

との連絡が入った。

昨日の早朝の気温は

帯広市街でマイナス16℃だったから

十勝でも屈指の低温地域である糠内地区では

マイナス20℃位になっていることは間違いなかった。

(グラフは気象庁のHPより転載)

IMG_6896車から降りると

この時期らしいキリキリと

締め付けるような空気が

牧場を包んでいた。

仔牛の体温は36℃以下に下がり

血圧も低下していたので

点滴の留置針を刺す頸静脈は

仔牛を逆さ吊りにして血管を怒張させなければならなかった。

点滴をセットしているとき

また胸のポケットの電話が鳴った。

同じ糠内地区の◯さんからで

仔牛が下痢でぐったりして起立不能だという。

IMG_6884同じ糠内地区なので

◎さんの往診を終えた後

◯さんの牛舎へ向かった。

この仔牛もまた

体温が低下し

血圧が下がっていて

留置針を入れる血管を怒張させるために

仔牛を逆さ吊りにしなければならなかった。

点滴をセットし終えた時

IMG_6887他にも2頭

下痢で調子の悪い仔牛がいる

ということで

残りの2頭にも

点滴治療を施した。

時計の針は

午前8時半を過ぎていた。

厳冬期の夜間当番の早朝に

町内で最も寒い地区の

仔牛の診療に出向くという

この季節の

いかにもこの時期らしい

典型的な仕事が

しばらくは続くだろう。



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仔牛の「低体温注意報」と「監視不足警報」(おまけ)

前回紹介した、

Poly Dome 社製の calf warmer(カーフウォーマー)は、

IMG_6754生まれたばかりの濡れ仔を温めるのには、

威力を発するようである。

Warmer(ウオーマー)すなわち、

「温め器」であるから、

IMG_6755その目的は、

「仔牛を温める」ことのみで

それ以上でもそれ以下でもない。

その器具をどう使いこなすかが

飼主さんの技術であろう。

注意して欲しいのは

下痢などの腸炎になった仔牛や

熱発して肺炎症状のある牛が

体温が低下したということで

前回の記事の飼主さんのように

calf wormer を使うのは

疑問である。

calf warmer の中に病気の仔牛を入れて

IMG_6750そのふたを開けておいて

点滴治療をしたのだが

それをセットしてその場を立ち去った私も

説明不十分で迂闊だった。

飼主の▽さんはその後

途中で仔牛が震えだした

ということで

仔牛がさらに冷えてきたのではないかと思い

点滴を外して中止して

calf warmer のふたを閉じてしまったのだ。

これを後から聞かされた私は

忸怩たる思いに苛まれた。

仔牛が震えてきたのは

自分の体温回復の反応だったかもしれない。

さらに点滴によって

循環血液量の増加が期待できるのに

それを外して勝手に中止してしまい

calf warmer のふたを閉じて

仔牛を温めようとしたこと。

これは

点滴の効果よりも

calf warmer の効果を優先した行為で

病気の仔牛に対して

点滴治療よりも

保温を優先した行為だった。

それが結局この仔牛の

命を奪ってしまったのではないか。

ここで確認しておきたいことがある。

IMG_6624calf warmer というのは

保温器具であって

治療器具ではない。

病気の仔牛に対して

IMG_6623補助的な使い方は可能だが

点滴を中止してまで

calf warmer の効果に頼るのは

本末転倒の行為である

と言わざるを得ない。



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仔牛の「低体温注意報」と「監視不足警報」

「仔牛がシバれてしまって、立てないんだけど・・・」

そんな診療依頼があった酪農家の▽さん。

牛舎に着いて

仔牛がどこにいるのかと思ったら、

「今この中で温めているんだけど・・・」

IMG_6754それは最近、

地元のJAで補助を出して導入している、

仔牛を温める青いドーム型の装置だった。

頑丈なつくりの中に

電動で温風が充満し

その中に仔牛を入れて

仔牛を温める装置である。

「凍れちゃって・・・」

診ると

体温は35℃以下

心拍数は70

ぐったりと頭部を投げだし

意識は朦朧。

IMG_6749「・・・これは即点滴だね。」

早速

点滴をしようとしたが

血圧が低下していて

頸静脈を堰き止めても血管が浮いてこない。

仔牛を逆さ釣りにしてようやく静脈に留置針を挿入し

写真のように装置の中で点滴を開始。

IMG_6750しかし

この仔牛の意識は

戻ることなく

翌日には

死亡してしまった。

実はこの仔牛は

1週間前に下痢で治療歴があった。

それが完治していないまま

寒気の中で体温を失い

急激に症状が悪化して

手遅れになってしまったと思われる。

仔牛を温める立派な装置があっても

仔牛の状態に気づくのが遅ければ

IMG_6755手遅れになり

仔牛を死なせてしまう。

最近はどうも

手遅れの症状で呼ばれることが

とても多い気がする。

仔牛を温める装置が普及するのは

良いことなのだが

それを使いきれていないようだ。

厳寒期は

「低体温注意報」

が出ているのだが

そればかりではなく

相変わらずの

「監視不足警報」

も鳴り続けている。

なんとかならないものか・・・



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手遅れの子宮捻転

おめでたい令和元年を、

締めくくる話としては、

非常に残念な話であるけれども、

先日の酪農家の▼牧場で、

往診中に言われた追加の診療、

「・・・乾乳の牛なんですけど、1頭追加で診てもらえますか?・・・全然食べなくて・・」

ということで、

乾乳牛舎へ行って診察。

乾乳の牛は分娩予定日が近いので、

まずは必ず胎児が無事かどうか

子宮が無事かどうか

を確認することが重要である。

今回もそのセオリーにのっとって

陰部から手を入れてみると

手が途中で先に進まなくなり

時計の反対回りに吸い込まれるような感覚

「あー、これは捻れてるね、子宮捻転だよ。」

陰部から手を抜いて

その手を肛門に入れて直腸検査をすると

直下の子宮の頚管部分がタオルをねじったように絞られていた。

グリグリの子宮捻転だった。

「いつから食欲がなかったの?」

「・・・たぶん・・・昨日とか、おとといとか・・・2、3日前から食べてなったかも・・・」

「曖昧なんだね。予定日はいつ?」

「・・・あと1週間くらいのはずです・・・」

「帝王切開するから、午後1時半に牛を連れてきて。」

「・・・わかりました・・・」

そんな経過で連れてこられた▼牧場の乾乳牛を

IMG_6364手術台に乗せて

左下腹部を切開して

子宮を探索すると

パンパンに張った子宮が触知された。

IMG_6365腸管や大網をよけて

その子宮のしょう膜面を露出させて

その色をみると

写真のように

紫がかった暗赤色だった。

IMG_6366「これは・・・」

「鬱血がひどいですね・・・」

「時間が経ってますね・・・」

「ダメですねこれは・・・」

「そうですね・・・」

「このままTV廃用にして閉じましょう・・・」

「そうしましょう・・・」

手術に関わった獣医師の意見は一致した。

私は診療用のスマートホンを取ってきて

連合会に第1報を入れた。

IMG_6367折り返し連合会からテレビ電話がかかってきて

第2報でこの牛の術創と子宮を映し

子宮捻転の予後不良ということで

死期切迫の1号廃用を認定してもらった。

それから術創を縫って閉じて

IMG_6368牛を立たせて

家畜車に戻し

その家畜車を見送った。

牛が生きていても死んでしまっても

IMG_6369処理場への搬入は明日という予定になった。

手術室の外は

重たい霙(みぞれ)が降っていた。

おめでたい令和元年を

IMG_6370締めくくるには

あまりにも

残念な結果に終わった症例を書いたが

こういう症例が

最近増えているように思うのは

私だけだろうか。


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難産「双子、頭位」の1例

「お産なんですけど、足は触れるのに、頭が触れなくて・・・お願いできますか?」

深夜1時に枕元の携帯電話が鳴り、

▼畜産の従業員のM君の声が聞こえてきた。

「・・・了解。」

▼畜産は多くの従業員を抱える酪農場だ。

今まで何度も

頭が触れないからということで

従業員が逆子だと判断して

産道に来ている胎児の前肢を後肢だと思い込み

強引に牽引し

側頭位にしてしまって整復できず

帝王切開になったという例が多くあった。

(・・・今回もまたそうだったら嫌だな・・・)

そんなことを考えながら▼畜産に到着し

カッパに着替えながら

従業員のM君に質問した。

「・・・引っ張ってないかい?」

「まだ引っ張ってないです。頭が触れないときは引っ張るなって、獣医さんに言われてますから・・・」

「・・・本当に?」

私はそう言いながら産道へ手を入れた。

「前肢だと思うんですけど・・・」

「・・・うん、確かに前肢だね。頭も触れるよ。」

「そうですか・・・」

「・・・でも、・・・あれっ?」

「何か・・・」

「・・・肢が3本あるぞ。これは双子だよ。」

「双子ですか・・・」

胎児はまだ産道の奥でうごめいていた。

頭部もぐるぐると動いていた。

「・・・ちよっと待って、ヘッドワイヤー持ってくるから。」

3EC7C1CE-516B-417C-8776-C4B868303701前肢が3本と頭が奥でうごめいているのだが

この頭が動いている胎児の前肢は

その横で触れる3本の前肢のうち

どれがこの子の前肢なのか。

確信が持てない場合は

まだ牽引してはいけない。

こういう場合私は

その頭にヘッドワイヤーをかける。

ワイヤーをかけた頭部を軽く引いてみる。

引いた頭部に連動して産道へ乗ってくる前肢が

この子の前肢である。

その2本の前肢と頭部が同じ胎児のものだと確信したとき

はじめて胎児を強く牽引する。

今回もそのようにして

ワイヤーをかけた頭部をゆっくりと軽く引いてみた。

すると・・・

「・・・うーん前肢が1本しかついてこない。」

「3本の前肢のうちの1本だけですか?・・・」

「・・・そう・・・あっ、もう1本あったよ、4本目が。」

「4本目ですか・・・」

「・・・でも4本目は曲がってる。」

ワイヤーをかけた頭部と連動している前肢は

1本はこちらを向いていたが

2本目は腕節で曲がっている前肢屈折位だった。

曲がった前肢の球節に手が届くようになったので

そこにチェーンをかけて整復し

ようやく胎児の1子目の前肢と頭部がそろった。

F3190B17-ACF9-4CED-BF53-F27980A32970「・・・よし、これで引っ張るよ。」

「わかりました・・・。」

従業員のM君とあと2人の従業員で

胎児が娩出された。

「・・・じゃあ、次にもう1頭引くよ。」

75EF335B-FBD4-4158-9253-0A0F1101C056「はい・・・」

私は2子目の胎児の

頭部が産道に来ていることを確認して

2子目の胎児の前肢にチェーンをつけなおし

従業員君たちに牽引を促した。

6BFE48E3-AB71-4F14-9CA8-73AF70FC463D2子目の胎児も娩出された。

「どっちも結構デカイっすね・・・。」

F1の胎児は

どちらも無事に生きていて

どちらも♂だった。

22C9ABD3-0CB3-470E-81BE-6DE7EEC7AB8C今回は

先に来ていた胎児の前肢の

左前肢の1本が屈折している状態で

難産になったわけだが

従業員のM君が

今までの経験をもとに

胎児の肢を無理に牽引しなかったのが

良い結果を生んだようである。


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難産「臀位」3連発

前回と前々回の記事を書いてから、

次の当番の日の夜中は、

平穏無事だった。

夜が明けて、

そのまま通常勤務時間になるのか、

と思った矢先に、

Ωさんから電話がかかって来た。

Ωさんは前回の記事で「臀位」の難産介助に行った酪農家である。

「・・・初産のお産なんだけど。」

「はい。」

「・・・なんか、また・・・尻から来てて、出ないんだわ。ちょっと来てもらえるかな?」

「はい・・・了解、行きます。」

Ωさんは

前回の記事で臀位の整復をした酪農家である。

その家からまた同じょうな稟告の難産の往診依頼だった。

(マジかよ・・・)

私は半ば呆れた感じで

朝日の昇る道を急いだ。

「あっちの育成舎の裏にいるんだ・・・」

牛舎に到着して産道に手を入れる。

前回と同じ牛舎で

前回と同じ初産の牛で

前回と同じ「臀位」の難産だった。

今回の親牛は自力で立つことができた。

私はカッパを着て

子宮弛緩剤のプラニパートを親牛に注射し

臀位の整復を始めた。

今回の臀位もまた

いわゆる普通の

一般的な臀位だった。

まず、曲がっている後肢の飛節の先の

中足骨のできるだけ遠位にチェーンをかけ

かかったらその部分を

できれば球節を超えて繋の部分へ移動させる。

その状態で産科チェーンを固定し

その後肢の飛節をグイグイと押す。

球節を固定しておいて

飛節をグイグイ押せば

IMG_6497後肢の先端が産道へ進入して来て

後肢の失位が整復される。

その時のコツは

球節に手をあてがって

産道の恥骨に胎児の蹄先が引っかからない様にするとよい。

後肢の片方が整復されると

IMG_6499産道に余裕が生まれ

もう片方の後肢は比較的整復しやすくなる。

両方の後肢が整復されたならば

あとは尾位のお産と同じなので

胎児をひたすら牽引すればよい。

チェーンのまま牽引するよりは

IMG_6501できたらロープに付け替えて牽引した方が

胎児の肢には優しい牽引になる。

ひたすら牽引しようとしたのだが

今回は前回よりも

胎児が大きく

前回よりも時間が経過していたようで

IMG_6505産道と胎児の滑らかさに欠け

大きな負荷がかかった。

滑車を取り付けて牽引すると

親牛ごと引きずられて

親牛はとうとうしゃがんでしまった。

胎児はなかなか出てこなかった。

IMG_6504丁度そこへ

JAの職員が2人やって来たので

その2人にも牽引に参加してもらって

滑車をひたすら牽引し

やっとの思いで

胎児を娩出させることができた。

IMG_6507今回の胎児も

残念ながら

すでに死亡していた。

初産の親の栄養状態と

飼育環境が過密なのが

気になる症例だったのは

前回と全く同様である。



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難産「臀位」介助の一般的な1例

その日の夜は、

前回の記事に書いたごとく、

変則的な「臀位」の難産を終えて、

事務所に戻ってカルテを書き終え、

しばらくウトウトしていた。

すると、当番の携帯電話が鳴った。

「お産なんだけど・・・尻から来てるみたいで・・・診てくれんかい・・・」

「・・・わかった、直ぐ行きます。」

(また臀位かよ・・・)

こんなこともあるのかと

私は少しあきれながら

再び仕事着を着て

夜道を走り

Ωさんの牛舎に到着。

「あっちの育成舎の裏にいるんだ・・・」

着いて産道に手を入れる。

初産の牛の難産だった。

「・・・あー、ほんとだ。これは尻から来てるよ・・・親は立てるかい?」

「今立たせる準備してるるから・・・」

99F25843-070D-40A3-B954-2F6896D66851胎児の失位整復は

親牛を立たせてやるのが基本である。

牛が寝たままの失位整復は

整復する人も寝ながらやらねばならず

怒責もキツくなるので骨が折れるのだ。

Ωさんが牛を立たせる準備をしている間に

416765FC-F560-4555-AFB4-241FC2CCD3B2私はカッパを着て

子宮弛緩剤のプラニパートを親牛に注射した。

今回の臀位はいわゆる普通の

一般的な臀位だった。

まず、曲がっている後肢の飛節の先の

中足骨のできるだけ遠位にチェーンをかけ

FFC18762-42A2-476D-B14D-9ACBA586F21Dかかったらその部分を

できれば球節を超えて繋の部分へ移動させる。

その状態で産科チェーンを固定し

その後肢の飛節をグイグイと押す。

56DF04D7-2419-4EB4-9B70-BC73135FEEFE球節を固定しておいて

飛節をグイグイ押せば

後肢の先端が産道へ進入して来て

後肢の失位が整復される。

FFC87719-B690-419D-8AFB-6445C07695A9その時のコツは

球節に手をあてがって

産道の恥骨に胎児の蹄先が引っかからない様にするとよい。

後肢の片方が整復されると

BD816927-783B-48D6-A1FD-1C6829B4AA9D産道に余裕が生まれ

もう片方の後肢は比較的整復しやすくなる。

両方の後肢が整復されたならば

あとは尾位のお産と同じなので

2D7A4A6D-3885-432E-BA07-1E9BCF468CF4胎児をひたすら牽引すればよい。

チェーンのまま牽引するよりは

できたらロープに付け替えて牽引した方が

胎児の肢には優しい牽引になる。

EA8A7A34-F751-447B-B787-8C337252157D今回の胎児は

残念ながらすでに死亡していた。

初産の親の栄養状態と

飼育環境が過密なのが

ちょっと気になる症例だった。


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難産「臀位」介助の変則的な1例

「お産なんですけど、双子みたいで・・・」

先日の当番の携帯から、

酪農家の♭さんの声が聞こえてきた。

「・・・はい、すぐ行きます。」

双子の難産はよくある事だ。

そして多胎の牛の難産は

単胎の時よりも胎児が小さいので

比較的に整復しやすい。

どんな双子なのだろうと

少し楽しみな気分も混ざりつつ

♭さん宅に到着。

「昼間に1頭産んだんです、でも、またリキみ始めて・・・」 

「・・・2頭目がいたのね。」

「そうなんですけど、なかなか出てこなくて・・・」

「・・・親牛、立てないの?」

「はい・・・昼間は立ってたんですけど・・・」 

とりあえず

寝たままで立てない親牛の

産道に手を入れてみた。

「・・・ん・・・。」

「きついですか・・・」 

「・・・お尻から来てるね・・・でも・・・。」 

「・・・。」 

臀位だった。

しかし普通の臀位よりも

胎児が産道へ進入していて

強い怒責とともに

臀部が産道にはまり込んで

胎児を押すことも引くこともできなかった。

親牛が立てないので

その嵌まり込み様は

にっちもさっちも行かない状態だった。

産道からわずかに覗いているのは

胎児の臀部と

右の飛節の先端だった。

「・・・これは、ちょっと困ったな・・・」 

臀位の場合

IMG_6377普通は胎児の曲がっている後肢を整復して

尾位の状態にしてから

後肢を牽引するのが普通である。

しかし

今回の場合

胎児の後肢を母体の中で整復することは

IMG_6379ほぼ不可能だった。

強い怒責とともに

胎児の臀部と飛節が完全に産道へ進入してしまっていた。

「・・・そのまま引っ張るしかないか・・・」

私は、胎児の後肢の整復はせず

産科チェーンを飛節に掛けて

IMG_6380そのチェーンをロープに取り付けて

♭さんに強く引いてもらった。

後肢が少しづつ

外陰部から姿を現し

さらに♭さんに強く引いてもらうと

後肢の飛節から先の遠位部が

IMG_6381ビュンと

バネが外れた様に 

勢いよく

飛び出て来た。

後肢が1本外へ出て来た。

「・・・よし、そのまま引いちゃおう!・・・」 

IMG_6382私は♭さんに

さらにそのまま引っ張る様に指示した。

ここまで来たらもう引っ張るしか方法がない。

「・・・ずっとそのまま、行っちゃって!・・・」

♭さん夫婦に牽引を促すと

胎児は少しずつあらわれ

IMG_6393腰部から胸部があらわれ

ついに頭部と前肢があらわれ

お産が終了した。

 親牛は頭を投げ出していた。

親牛にリンゲルとカルシウム剤を投与している時

♭さんが

IMG_6396「昼間に1頭目が生まれた後、これで終わりだと思って自分でカルシウム剤を打ったんです・・・」 

「・・・そうしたら、もう2頭目が押されて出ようとして、こうなったのね。」

「はい、まさかもう1頭いるとは・・・」 

「・・・思わなかった・・・と(笑)」 

双子の胎児の

2頭目の臀位を

後肢の整復をせぬままに

強引に引っ張ったケースは

あまり記憶がない。

毛の生えていない流産胎児では

何度もやっているけれど

分娩予定日前後の

通常胎児で

こんな牽引をやったのは

あまり記憶がなかった。


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黒毛和種の1ヶ月早産

「お産の予定日まで、まだあと1ヶ月あるんだけど・・・さっきまで足が出とって・・・」

「・・・お産、始まっちゃったの?」

「それが、さっきまで出とった足が・・・立ち上がったら、引っ込んで・・・」

「・・・それは診に行った方が・・・。」

「ちよっと頼めるかい・・・」

「・・・わかりました。」

午前の往診の途中に

そんな緊急の電話が入った。

和牛の繁殖の◎さんからだった。

牛舎の前に車を停めて

外に出ると

◎さんがいた。

「ずいぶん早いね・・・」

「・・・うん、すぐ近くにいたんでね(笑)、ところで牛は?」

IMG_6336「牛舎につないであるよ・・・」

ストーブ小屋を通って牛舎へゆくと

一頭だけポツンと繋がれた和牛の母牛がいた。

「あれ・・・?、なにか出てるぞ。」

「・・・これは、もう仔牛出ちゃってるね。」

IMG_6337親牛に近づくと

親牛の外陰部からは膜が丸く膨らみ出て

その下に真黒い和牛の仔牛が

呼吸もなく

ぐったりとして横たわっていた。

「死んでるのか・・・?」

「・・・いや、心臓は動いてるみたい。」

「息してないな・・・。」

「・・・ちよっと待ってよ・・・」

IMG_6338私は真黒い早産の胎児の

人工呼吸を始めようと

仔牛に近づき

肋骨に手をかけた。

すると

手をかけただけで

まだ何もしていないのに

仔牛が浅い呼吸をはじめた。

「生きとるのか・・・?」

「・・・生きてるみたい・・・」

IMG_6356しばらく見ていると

仔牛は弱く頭を振り

顔を上げて

再び今度は大きく頭を振った。

「生きとる・・・」

「・・・大丈夫そうだね。」

私はこの仔牛が命を取り留めたことを確信した。

とても小さな和牛の仔牛だった

分娩予定日よりも1ヶ月近く早い早産だから

当然かもしれないが

これだけ小さな仔牛が生まれたら

このお産は

双子なのではないか・・・

という疑いを抱かざるを得ない。

獣医師は難産の診療を終えた時

その仔牛が小さくて

少しでも双子の疑いが生じたときは

必ず双子のもう1子が子宮内に残っていないかを確認しなければならない。

IMG_6357今回も早速

親の外陰部に手を入れて双子かどうかを確認した。

子宮の中には

胎児らしきものは何も触ることができなかったので

今回はこの小さな仔牛1匹のみのお産であった。

和牛の早産というのは

思い出して見てもあまり記憶に残っていない。

ホルスタインの双子の早産に呼ばれるのは日常茶飯事たが

黒毛和種の単子の早産に呼ばれるのは

珍しいことなのかもしれない。


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仔牛受難の季節到来

全道各地に寒気が入り、

雪が降り、

その後に強い風が吹き、

風が止んで小春日となり、

再び低気圧が来て、

雨や雪を降らせ、

再び寒気が入り、

強い風が吹き、

そんなことが繰り返される季節になった。

本格的な冬のはじめは

風邪を引き易いので

防寒と風邪の予防に

最も気を使う。

寒い場所から暖かな場所へ

自由に行き来できる人間が

もっとも風邪を引きやすい季節。

そんな季節は

家畜たちにとっても

もっとも風邪を引きやすい季節に他ならない。

家畜たちは人間と違って

寒い場所から暖かな場所へ

自由に行き来することが出来ない。

IMG_6332寒ければ

その寒さにじっと耐えるしかない

拘束された身である。

親牛も仔牛もその例外ではない。

特に

仔牛は親牛よりも寒さに弱い。

寒さのダメージというのは

体が大きくなるほど少なくなると言われている。

家畜の体が大きくなればなるほど

体重あたりの表面積が小さくなるので

寒さに影響されづらくなる。

それに対して仔牛たちは

IMG_6333体重の割に

体表面積が大きいので

寒冷のストレスを受けやすく

結果的に風邪を引きやすくなる。

最近の往診にも

仔牛の治療が増えて来たような気がする。

治療ばかりではなく

仔牛の死亡の確認の仕事も増えて来たような気がする。

IMG_6334死んでしまった家畜を処理する

病畜処理場のデーターによれば

夏の暑い時期は

親牛の搬入が増え

冬の寒い時期は

仔牛の搬入が増えるという。

仔牛の管理を今一度

見直してほしい季節である。


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逆子(尾位)と首曲がり(側頭位)の見分け方

「お産なんですけど、頭が触れなくて・・・」、

難産で往診に呼ばれる時、

こういう稟告を言われることは非常に多い。

お産が始まって、

胎児の肢が2本産道に来ているのは確認できた。

正常なお産であれば2本の肢のすぐ奥に

胎児の鼻先、すなわち頭が来ている。

ところがその頭が確認できないと

「頭が触れなくて・・・」

ということになる。

なぜ頭が触れないのか?

その理由は、大きく分けると2つである。

‖杙の首が曲がって頭が真っすぐ来ていない。

胎児が逆子である。

この2つの違いをまず見極めることが

助産するにあたって何よりも大事な事になる。

,世辰疹豺腓

絶対にそのまま胎児の肢を牽引してはならない。

牽引してしまうと、側頭位になり、帝王切開をしなければ胎児は助からなくなる。

△世辰疹豺腓

そのまま胎児の肢を牽引すればよい。

,鉢△

対処方法が全く違うので

ここが、助産の何よりも大きなポイントとなる。

,両豺腓梁杙の肢は

「前肢」である。

△両豺腓梁杙の肢は

「後肢」である。

したがって

産道に来ている胎児の肢が

「前肢」なのか「後肢」なのかが判れば

この手の難産の最大の難関をクリアすることができる。

5DA928A6-9FF0-466A-8857-DF9F990DBBF9その判断のポイントは

「腕節(わんせつ)」の有無である。

産道で胎児の肢を手探りすると

まず蹄と球節があり

その手を奥に差し入れて

50〜80センチほど手を入れたところに

誰が触っても明らかな角度のある部分が確認できる。

それは

「前肢」であれば「肘(ひじ)」であり

「後肢」であれば「飛節」である。

ところが

「肘」と「飛節」との違いを

直接触って判断するのは意外に難しい。

頭が触れずに焦って助産をしていると

「肘」の部分を「飛節」と判断して

逆子と判断してしまうことが多い。

,任△襪里豊△犯獣任

そのまま胎児の肢を牽引してしまい

胎児を死なせてしまうケースが

相も変わらず非常に多い。

「頭が触れない・・・」となった時は

5DA928A6-9FF0-466A-8857-DF9F990DBBF9胎児の肢の

「球節」と

「肘」あるいは「飛節」と

その中間の形態を慎重に触ってゆくことが大切である。

「前肢」ならば

「肘」との間に「腕節」という関節がある。

32DC7608-3818-404D-836C-91116E62D3B9「後肢」ならば

「飛節」との間に関節は無い。

中間に関節が一つ有るか無いかが

重要なポイントになる。

こうして

胎児の肢が

「前肢」なのか「後肢」なのかを

100%間違うことなく判断することができる。

牛のお産では相も変わらず

857D734F-2946-4E15-B9FC-3EFDCD7F4F31逆子(尾位)と

首曲がり(側頭位)との

見極めを誤り

胎児を死なせてしまう事故が多い。

仔牛が1頭でも多く

無事に生まれる事を願って

このことは繰り返し

書いておきたいのである。


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嘔吐が治らなかった黒毛和種の仔牛

「食欲はあるのに嘔吐する」

という稟告の黒毛和種の仔牛、

月齢は約4ヶ月。 

牛が嘔吐するというのは、

反芻の時になんらかの理由で食べこぼしただけで、

その後自然と治ってしまう場合が多い。

今回の症例も

そういうケースではなかろうかと予想しつつ

経過を観察しながら

消炎鎮痛剤と抗生物質の投与が続けられた。

ところが

嘔吐が一向におさまらない。

第2診目、第3診目、も嘔吐が消えず

第4診目には血液検査をしたところ

BUN(血中尿素窒素)とγグロブリンの

若干の高値が見られた以外は

異常値は見られなかった。

だが

長引く栄養摂取不足と

飲水不足によって

削痩が進んで行った。

原因への療法が明確にできぬまま

対症療法としての栄養剤の輸液を増やさざるを得ず

毎日の点滴療法をしばらく続けることになった。

抗生物質の種類も変えながら

約10日間の対症療法が続けられた。

しかし

嘔吐は一向におさまることがなく

仔牛は削痩せてゆくばかりだった。

この仔牛はもともと体格が極端に小さく

月齢4ヶ月になったにも関わらず

体重は80kg程度だったので

それがさらに痩せてゆくとなると

みすぼらしさは増す一方だった。

「諦める・・・しかないか・・・」

治療を開始してから20日以上が経った時

飼主の★さんとの間で

遂にそういう話になった。

まず、この仔牛を予後不良として共済廃用とし

その後、帯広畜産大学に搬入して

病理解剖をしてもらおうと連絡を取ったが

秋の学会シーズンということで

大学の先生方を捕まえることができなかった。

止むを得ず

いつものように

地元の病畜処理場へ搬入することにした。

解剖の依頼書を付けて仔牛を搬入し

解剖結果を待った。

IMG_6178すると

処理場で病理解剖を担当しているO星先生から

剖検結果の丁寧な解説文が返ってきた。

その解説に曰く

「食道に異常を認めず、咽頭の粘膜に黒く変色した部分あり。炎症かどうかの判別はできないが、異常所見はその部位のみ。写真を参照下さい。」

IMG_6177という文章とともに

3枚の写真が添えられて

わかりやすく線と言葉が添えられていた。

これで、この仔牛は

「写真の部分の咽頭炎によって嘔吐がおさまらなかった」

ということが判明した。

生前診断が出来ずにモヤモヤとした気分が

これでスッキリとし

飼主の★さんにも説明をすることができた。

今回は残念な結果となってしまったが

明確な解剖の所見が得られたことで

何とか次に遭遇するであろう未来の症例に対して

参考になるものを残すことができた。

いつものことだが

処理場の諸先生方には

特に今回のO星先生には

感謝申し上げたい。



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F1の「半ミイラ」胎児

先日の当直の朝、

搾乳開始頃の時間に⌘フアームに呼ばれ、

乳熱(低カルシウム血症)の牛を診て、

事務所に帰ってカルテを書いていると、

再び⌘牧場から電話がかかってきた。

今度は、難産だという。

さっきついでに言ってくれれば良かったのに

と思ったが

大きな牧場では一晩に何度も往診することは

よくあることだ。

従業員の◎君の手に負えない難産ということで

そう簡単ではないだろうという覚悟をして

その牛の産道に手を入れて見ると

「・・・?」

「逆子だと思うんですけど・・・」

「・・・なんだか硬いね。」

「まだ奥にある感じで・・・」

「・・・直るかな。」

「飛節だと思うんですけど・・・」

「・・・後肢が向こう向いちゃってるね。」

手の長い◎君がそう言う通り

逆子らしき胎児は産道の奥にあった。

子宮外口(頚管)は開いているが

胎児のお尻と飛節だけが触れる

いわゆる臀位だった。

飛節から手を辿って

足根部を掴んで飛節を押してみた。

臀位の場合はこうすると

球節から蹄先が触れるようになり

球節を手で掴んでもう一度飛節を押すと

手を使っただけで後肢が整復される。

ところが今回はそれがうまくゆかない。

関節が異常に硬くて曲がりづらいのだ。

「・・・奇形かな、これは。」

反転性裂胎かもしれないと思いながら

帝王切開も視野に入れつつ

もう一度整復を試みた。

今度は足根部にチェーンをかけて◎君に軽く固定してもらい

私は全力で臀部と飛節をグイグイと押し込んだ。

硬く硬直した飛節と球節が

次第にこちらを向いてきた。

「・・・もう一度!」

◎君がチェーンで牽引している後肢が

ぐぐっと動いて

後肢の1本がようやく整復された。

もう片方の後肢も同様にして整復し

両後肢がこちらを向いた。

「・・・よし、これであとは、引っ張るだけだ。」

異常に硬くて細い感じのする後肢2本にロープを掛け直して

産科器具でで牽引すると

なにやら硬くやせ細った

怪しげな形の胎児の下半身が現れた。

かなりの抵抗があったが

ここまできたら牽引するしかない。

さらに牽引すると

急に大きくなった胎児の上半身が現れた。

そのまま一気に牽引すると

ようやく胎児がすっぽりと娩出された。

「・・・!、なんだこれは。」

「!(◎_◎;)・・・」

出てきた胎児は

上半身はまともなF1胎児だった。

IMG_6124しかし

下半身は干からびたようにやせ細り

スルメイカの様に

足は硬くねじ曲がり

関節は可動性なく

IMG_6122下半身だけミイラ化が進んでいる様な

「半ミイラ」状の胎児だった。

見た目がエグいので

この写真は閲覧注意かもしれない。

だが、こんな胎児のお産を経験することは

IMG_6128これから先

きっと無いだろうと思うので

学術的な記録として(?!)

ここにアップしておこうと思う。


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初産和牛の育児放棄

初産の和牛の難産、

産道が狭く、

陣痛が弱く、

胎児は大きな♂で、

幸い無事に娩出させることができた。

IMG_5939ところが

産んだ後の親牛の行動がよくない。

産んだ仔に近づかない。

まるで恐ろしいものを見るように

警戒して近づこうとしない。

普通ならばここで少しづつ

仔牛に近づいて

我が仔として認識して

舐め初めるなどのスキンシップが始まるのだが

IMG_5938今回の牛は

自分が産んだ仔牛に興味がなく

育児をしようともしない様子だった。

酪農家の初産のホルスタインならば

そのまま普通に親子を離し

別に用意しておいた初乳を飲ませて

普通に人工哺育へ

となるのだが

和牛の繁殖農家は

仔牛を母親のお乳に付かせなければならない。

しかし

今回はそれがうまく行かず

結局

飼主さんが人工哺育することになった。

IMG_6023それから1週間後

この仔牛が下痢をしたという知らせを受け

点滴治療を3日間続けて

なんとか回復させた。

IMG_6022それからまた1週間後

この仔牛がまた下痢をしたという知らせを受け

点滴治療を2日間続けて

再び回復させた。

ここの飼主さん和牛の人工哺育法は

1日3回の授乳である。

もっと授乳回数とかかる時間を増やし

1回に与えるお乳の量を減らして

自然哺乳に近づけることが理想であるが

それは飼主さん側の負担増となり

難しくなってくる。

日本中

どこの和牛生産農家も

きっと同じ問題を抱えているはずである。

  
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飼主さんの「難産」

「仔牛が下痢でぐったりしてるから、すぐ来て欲しい。」

和牛の繁殖農家の§さんから、

電話が来たのは朝の6時頃だった。

§さん宅に着くと、

牛舎の片隅に繋がれて

ぐったりしている仔牛がいた。

仔牛はいるのだが

§さんが見当たらないので

軽くクラクションを鳴らして

往診に来たことを家に知らせた。

ところが§さんはなかなか出てこない。

しばらく待っていると

家の中から

§さんの奥さんが出て来て

少し慌てたようにこちらに向かって歩いて来た。

「・・・おはようございます!・・・」

「おはようございます。治療はこの仔牛でいいんでしょ?」

「・・・はい・・・でも今、うちの父さん、難産で・・・」

「えっ、難産の牛もいるの?、それは大変だ。その牛はどこに?」

「・・・いえ・・・、牛じゃなくて・・・」

「牛じゃない?」

「・・・本人が・・・難産で・・・」

「本人が?」

「・・・トイレからなかなか出てこないんです・・・」

「大の方?」

「・・・はい(笑)・・・」

「うははは(爆)」

§さんの奥さんは

頓知の効いた人だ。

うまいことを言うもんだと

感心しながら

大笑い。

しばらく待っていると

§さんの父さんがやって来た。

心なしか

スッキリしたような顔をしていた。

IMG_5805下痢の仔牛の治療を開始して

輸液をセットして

抗生物質を打ち

仔牛の番号を確認。

治療している間

私は

込み上げてくる笑いを

抑えることができなかった(笑)



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残暑の難産介助

「お産で足が変・・・らしいんだけど・・・」

昼過ぎの暑い時間帯に追加往診が入った。

「よろしくお願いします・・・今、俺共進会場にいるんで・・・ヘルパーが家にいるんで・・・」

「・・・了解。直ぐ行きます。」

きのうはホルスタインの全道共進会。

酪農家のΣさんは、牛を出品している最中だった。

牛舎に着くと、見慣れないヘルパーさんがいた。

分娩房で寝ている牛は

陣痛で力んでいる様子もなく

ぐったりと疲れ切っているように見えた。

陰部からは

胎児の肢が一本だけ見えていた。

手を入れてみると

仔の肢は後肢だった。

もう一本の肢は産道の奥の方にあり

なかなか手が届かなかったが

それも後肢だった。

なんとか球節を掴んで引っ張ってくることができ

それからは普通の尾位(逆子)の分娩介助である。

しかし尾位の介助の時

胎児が生きていると

必ずといって良いほど足を動かすものだが

今回の胎児の肢は全く動かなかった。

胎児の肢に介助ロープと滑車を取り付けて

ヘルパーさんと力を合わせて牽引すると

かなりキツかったが

大きな♂の胎児が出てきた。

胎児はすでに死後硬直が始まっていた。

陣痛微弱だったために胎児が死亡したのか

他に原因があって胎児が死亡したのか

定かではないが

残念な結果になった。

介助を終えてカッパを脱ぐと

カッパの裏側は汗に濡れ

下着も汗に濡れていた。

親牛にカルシウム剤などの補液を施し

足を洗って帰る支度をしていると

33B8249E-2401-42C9-B459-8663165B65E8Σさんのばあちゃんがやってきた。

「・・・安田さん、スイカ食べるかい?」

お盆にのせた角切りのスイカは

目にまぶしい赤い色をしていた。

「・・・あんまり甘くないかもしれんけど。」

18A95441-AF78-49DB-88C4-7A845838A1F3そのひと切れを取って

口に含むと

冷えたスイカの香りとともに

甘い果汁が口の中一杯に広がった。

「ん!、うまーい!」

E5F3BD56-29A0-40B9-AFBC-BAEF307E40D4「・・・そうかい(笑)」

残暑の中で

カッパを着る難産介助は

暑さがより身に堪えるのだが

このスイカの一切れで

それを吹き飛ばすことができた。


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牛だかり

先日の午前中最後の診療中に、

和牛の難産の追加往診が入った。

牛舎の傍に車を止めて、

難産介助を数十分。

子牛は娩出させたものの

時間が経っていたので

残念ながらすでに息は絶えていた。

ほぼ分娩予定日通りのお産だったが

産道が狭く

胎児が大きく

かつ尾位(逆子)だった。

「頭が来ていない・・・」

という稟告だったので

最悪の側頭位を心配したが

その事態は免れて

経膣で牽引するだけで済んだのは

不幸中の幸いだった。

しかし

強い牽引によって

親牛は産後しばらく立てなかった。

親牛の手当をするために

薬を取りに診療車に戻って見ると・・・

「・・・ん?・・・」

開けたままのハッチバックの周りが

IMG_5863なにやら騒々しい。

育成の牛たちが

放し飼いにされていて

それが集まって中を覗いていた。

牛だかり

が出来ていた。

好奇心旺盛な育成牛たちは

私のことに構わずに

診療車内の道具や薬を

あれこれと物色していた。

「・・・こら〜、どけどけ(笑)・・・」

IMG_5864妙に人馴れしている育成牛たちは

なかなかよけてくれなかった。

最近

和牛の子牛を

農場内で放し飼いにしているのを

よく見かけるが

流行っているのだろうか?

誰か推奨しているのだろうか?

子牛のストレスは少なく

良い飼い方なのかもしれない

と、思った。


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