北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

腹壁ヘルニアか?と思われた1例

フリーバーンで多頭数の酪農家、

▲フアームで治療を依頼された牛の中の1頭は、

IMG_4319写真の様に、

腹部が異常に膨らんだ外見をしていた。

まず第一印象としては、

腹壁ヘルニアを疑った。

続いて、

可能性のある原因として、

乳静脈の破裂、

それによる腹部の大血腫なども疑った。

IMG_4320食欲はあり

起立するのにもそれほど問題ない様なので

この様な腹部の異常な膨らみを

「治療」してくれと言われても

正直言って

なす術がないのだった。

しばらく様子を見ていたが

その約1週間後に

起立不能になり

あっという間に死亡してしまった。

IMG_4321死亡したら詳しく解剖をして

膨らんだ大きな腹部が一体何だったかを

確認しようと思っていたのだが

この牧場で死亡する牛達は

普段、詳しく解剖できない業者が取りに来て

死亡した牛達を処理をしてしまうので

解剖をするタイミングを逸してしまった。

貴重な症例になりそうだったので

生前の写真を撮っておいたのだが

肝心な剖検所見を得ることができず

尻切れトンボになってしまった。

そこで、せめて

これをお読みの獣医師の皆さん

あるいは酪農家の皆さんに

こんな牛を見たことがあるかを

質問しておこうと思う。

生前の写真だけで判断するしかないのだが

いかがだろうか?


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1日に2度の子宮脱整復

「追加で1頭診て欲しいんだけど・・・流産みたいなんだよね・・・」

往診先ではよくある追加の診療だった。

酪農家の〆さんの、

乾乳にしたばかりというその牛の陰部に手を入れた。

 「ああ、これはもう胎児が産道に来てる、出すしかないね。」

私は胎児の足を2本掴んで、

そこに産科ロープを付けて、

ゆっくりとけん引した。

予定日より約2ヶ月早い流産胎児は

すんなりと頭を出して

そのまま引き出された。

と、その後

胎盤が出てきたと思ったら

それに引き続いて

子宮が裏返って

ズルズルと出てきてしまった。 

「あらら・・・、子宮脱だ。」

胎児を引っ張り出した私は

そのまま

今度は子宮脱整復術へと

治療を切り替えて

半分以上脱出した子宮を押し戻し

車から整復棒を持って来て

それで子宮の反転を直し

ビューナー針で外陰部を巾着縫合した。

「流産した牛が、そのまま子宮脱になるなんて、珍しいね。」

「引っ張りすぎたんでないのかい・・・?」

「いや、そんなことないって(笑)、普通に引っ張っただけだよ。」

「こんなこともあるんだな・・・。」

この日はとても良い天気だった。

過去の私の経験を思い出しても

2ヶ月早い流産の牛が

そのまま子宮脱になり

それを治療したという記憶はなかった。

これはとても珍しいことではなかろうか・・・

写真に撮っておけばよかった・・・

診療帰りの車の中で

私はそう思いながら

写真を撮らなかったことを悔やんだ。

それにしても

子宮脱星を支配する子宮脱大魔王は

突然現れて攻撃を仕掛けてくるから

怖いなと思った。

そして

その日の夕方

時間は午後4時を回った頃

事務所に電話がかかって来た。

「⁂さんの牛が子宮脱だそうです・・・誰か行ってもらえますか?」

今日の夜当番の獣医師は

すでに別の家の難産に向かっているところだった。

「じゃあ俺、行きます。」

⁂さんは和牛の生産農家で

往診の依頼は滅多に来ないところだった。

そんなところでよりにもよって子宮脱。

そして私は今日

午前中にも子宮脱整復をしたばかりだった。

子宮脱星の大魔王は

本当に何をしてくるか解らない・・・

IMG_4538⁂さんの牛は

牛舎で仔牛を産んだ後

そのまま立てずに子宮脱になっていた。

「まず、牛の腰にハンガーを掛けて吊り上げるから。」

⁂さんにリフトを運転してもらって

IMG_4540私は持参したハンガーを牛の腰に装着した。

「もう1人、手伝ってくれる人いるかな?」

「今、うちのやつ呼んだからすぐ来るよ。」

「じゃあ、ぬるま湯をバケツに2杯汲んで来て。」

私はそう言いながら

カッパを着て手袋を履いて

IMG_4543子宮脱整復のスタイルになった。

狭い牛舎の中に小型リフトを入れてもらい

ハンガーをゆっくりと吊り上げた。

奥さんがやって来たので

持参した整復用の板を

⁂さんと2人で持ってもらい

IMG_4544その板の上に

脱出している子宮を乗せた。

親牛の怒責はそれほど強くはなかったが

何度か押し戻されそうになりながらも

子宮を腹腔内に戻し入れ

さらに子宮脱整復棒を挿入し

IMG_4545子宮の反転を取り除いた。

子宮脱整復棒は

本日2度目の出番だった。

その後ビューナー針で

外陰部を巾着縫合した。

IMG_4547ビーューナー針も

本日2度目の出番だった。

その後

牛を吊っていたハンガーをゆっくりと下ろした。

この牛は初産で

⁂さんが昼間畑に行っている間に

誰の介助もなく自力で産んでいたという。

やや衰弱している親牛の採血と

若干の補液をし

仔牛にも栄養剤の注射をして

私はようやく

帰路に着いた。

暗い夜道には星が瞬き始めていた。

そのどこかに

大魔王の支配する子宮脱星も

不気味に輝いているのだろう・・・

翌々日

血液検査の結果が来た。

血中カルシウム濃度は

9.2 m/dl  

・・・正常値だった。

「子宮脱の牛は低カルシウムになっている」

という私の仮説は

あっさりと否定された。

子宮脱大魔王の

笑い声が

聞こえて来た様な気がした・・・


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難産・双子の方程式

「⌘さんで難産なんですけと、行ってもらえますか?」

先日の往診の途中、事務所から追加の電話だった。

「了解。」 

「予定より早いお産で、逆子のようなんだけど、足が曲がっているそうです。」 

「了解。」 

私はそれを聞いて、

このお産はきっと双子だろう、

と想像した。

逆子で足が曲がっている

というのは

すなわち「臀位」のことで

お尻が産道を塞いでいて

2本の後肢の先端は母体の奥へ向いている。

そういう難産が双子だったのを

私は何度も経験している。

胎児が子宮の中で窮屈な格好をしているのだ。

さらに

「予定日よりも早い」お産

というのも

双子である可能性を高めている。

胎児が大きくなって子宮に入りきらなくなり

予定日まで持たないで出てきてしまうのだ。

双子であることの条件が整っているのである。

私の頭の中では

「臀位」+「予定日前」= 「双子」

という方程式が成立した。

⌘さんに到着して

手を入れて見ると 

産道に尻尾があった。

その胎児のお尻をまず強く押す。

さらに右手で飛節を強く押して

そのまま左手を入れて探ると

後肢の蹄に触れた。

左手でその蹄を握り

子宮壁に引っかからないようにしておいて

右手で何度も胎児のお尻を押す。

さらに右手で飛節も押す。

すると左手でつかんでいた後肢の蹄が

クルッと反転してこちらを向く。

1本整復したら

同じ要領で2本目を整復する。

「これで普通の逆子になったから、ロープを付けて・・・」 

胎児が逆子(尾位)で娩出された。

「きっともう1ぴき入ってるはずだから・・・」 

「双子かい?」

「こういう時はだいたい双子なんだよ・・・」 

私はそう言って

再び産道に手を入れた。

ところが

胎児を触ることができない

「おかしいな・・・」

「居ないかい?」

「居ないわけがないんだが・・・」 

私は手に触れている胎盤を握って

その胎盤を引っぱって 

胎盤の一部を娩出させたあと

もう一度手を深く挿入して

子宮の中を探った。

手の先に

胎児の飛節のようなところがコツンとあたった。

「あー居たよ、やっぱり・・・」 

「そうかい。」

私はさらに胎盤を引きつけながら

2頭目の胎児の飛節をつかんで引き寄せた。

胎児の2本の蹄がこちらを向いてきたので

その2本の肢にロープをかけて

⌘さんに引いてもらった。

ところがなかなか胎児が産道に乗って来ない。

「おかしいな、ちよっと待って・・・」

「・・・」

「あ、これは、1本前肢だ・・・」

「・・・?」

ロープをかけた胎児の

後肢のつもりだった2本のうちの1本には

腕節(前肢の手根関節部)があった。

私はその肢のロープを外し

その奥にあるもう1本の後肢に付け替えて

⌘さんに引いてもらった。

胎児の後肢が産道に乗って来た。

「そのまま引いて・・・」

2頭目の胎児が娩出された。

IMG_4487胎児は2頭とも生きていた。

1頭目は♂2頭目は♀のフリーマーチンだった。

「♂♀だったね・・・」

「でも生きててよかったわ。」

「やっぱり双子だった・・・」

「もう1ぴき入ってないかい?(笑)」

IMG_4488 2「そうか!・・・」

私は念のため

また子宮の中へ手を入れて

胎児を探った。

子宮の中には

胎児はもういなかった。


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2頭の起立不能牛の比較

同じΔ農場で、

2頭の産後起立不能症を診療した。

この2頭の牛の耳標番号は1つ違い、

すなわちΔ牧場で続けて生まれた2頭だった。

生年月日はそれぞれ

A牛は、平成25年4月30日

B牛は、平成25年4月15日

誕生日が15日違いの牛同志だ。

この2頭の牛は、生まれてから

ほぼ同じ環境で哺育され

ほぼ同じ環境で育成され

ほぼ同じ環境で受胎して

ほぼ同じ環境で分娩し

ほぼ同じ環境で搾乳され

ほぼ同じ環境で再び受胎して

搾乳牛としての生活を続けていた牛同志である。

2頭の牛が先日

ほぼ同じ時期に分娩した。

A牛は平成30年10月5日分娩

B牛は平成30年10月12日分娩

488FE51B-B9F3-4CD3-925E-AAEBF0A58180両方ともお産の直後に起立不能になった。

どちらの牛も

初診の獣医は私だった。

A牛は

翌日に起立可能となり

そのまま普通の搾乳牛群に戻った。

ところが

B牛は

翌日も立つことができず

その後5日間治療を続けたが

結局立つことができず廃用となった。

両者の運命を分けたものは何か?

その最大の理由は

前回の分娩からの日数にあった。

A牛の前産は、平成29年9月2日

分娩間隔は、398日

B牛の前産は、平成28年8月21日

分娩間隔は、779日

約2倍の開きがあった。

623B87D2-AA8E-4BC2-8A41-D9737A603E92これだけの開きがあると

A牛とB牛の体型(ボディコンディション)は大きく違っていた。

どちらがオーバーコンディションだったかは言うまでもないだろう。

2枚の写真はいずれもA牛。

B牛の写真を撮っておけばよかったのだが・・・

ちなみに

血液検査において

差が見られた項目を書いておこうと思う。

A牛

Ca 3.5 、 NEFA 0.59 、Glu 124 、GOT 78

B牛

Ca 7.3 、 NEFA 1.38、Glu 76 、GOT 112

だった。

当然の結果

と言えるだろう。


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天高く「牛馬」肥ゆる秋

「天高く馬肥ゆる秋」という言葉は、

私のような畜産関係者の間では、

まだまだ身近な現実としてある。

しかし、

我が国に飼われている馬が、

これほどに減ってしまうと、

肥えた馬の姿を探すのが大変である。

特に減っているのは農耕馬と言われていた重種馬である。

我が国にはもう農耕馬などは存在しないと言ってよいだろう。

農耕の仕事の合間に生れた「ばんえい競馬」が、

辛うじて北海道の帯広競馬場に残り、

IMG_4040かつての農耕馬が、

ばんえい競走馬として、

辛うじて生きる道(就職先)を与えられている。

かつてはどこの農家にも居た馬が

ばんえい競走用に特化して飼養される様になり

その生産や育成は

ごく一部の農場で細々と行われているにすぎない。

IMG_4365そんなごく一部の農場も

後継者が少なく

多くが廃業してしまった。

「天高く馬肥ゆる秋」

そろそろこの言葉も過去の物になってしまうのではないか

という危機感を感じないでもない今日この頃である。

天高く〇〇肥ゆる秋

肥えるのは

もちろん馬ばかりでは無い。 

先日馬の往診に行った公共牧場には

その何十倍もの数の牛が

妊娠鑑定のために集められていた。

IMG_4366馬に比べて

牛の需要は

全く衰えを見せない。

特にホルスタイン(乳牛)の雌の需要は

かつて無いほど高まっている。

その理由は色々あるのだが

一つだけ挙げておきたいのは

生乳生産の省力化という名の下に

乳牛の雌の

酪農場における

過酷な労働がある。

公共牧場の広々とした放牧地に

のんびりと草を食んでいる牛たちの

IMG_4366幸せな姿は

多分ここで終わる。

彼女たちは下牧した後

しばらくして子牛を産み

その後

搾乳牛としての過酷な労働者となる。

労働環境のよい酪農家で飼われれば

彼女たちは長生きをして

天寿を全うすることもあるが

労働環境の悪い酪農家で飼われれば

彼女たちは疲れ果てて

おどろくほどの短命でこの世を去る。

乳牛の「使い捨て」である。

その結果、乳牛の数は減り

需要に追いつかぬ「負のスパイラル」となる。

最近

そんな労働環境の悪い酪農家が増えている様な気がしてならないのは

きっと私だけではないだろう。

彼女たちの労働環境の悪化に

歯止めをかけることは

農業軽視の我が国の経済状況の中では

なかなか難しい。

彼女たちにはもちろん

「労働基準法」

も、存在しない。


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当直三夜連続の帝王切開

夜の当番は、

毎月5回(5夜)のペースで回って来る。

その時の緊急往診の平均件数は、

年間に均せば1夜につき1件〜2件程度であるが、 

実際は、

1件も往診の入らない夜もあれば、

5件以上も来る夜もある。

またその内容も、

子牛の治療ばかりの夜があったり

乳房炎の治療ばかりの夜があったり

難産ばかりの夜があったり

と色々である。

9月に入って

私の夜当番の日は

なぜか急に往診が沢山入るようになっていた。

その内容は

お産がらみの往診ばかりが増えた。

9月11日の夜は

★畜産の難産だった。

初産で過肥の牛の産道が狭く

正常位にもかかわらず

胎児の頭部が産道に乗らず

経膣分娩をあきらめ

T獣医師に電話して助手を頼み

深夜の帝王切開となった。

胎児は既に死亡していた。

過肥でぶくぶくの親牛の術後の体調が心配されたが

若いのが幸いして普通に搾乳しているようだ。

9月17日の夜は

難産が3件もあった。

そのうち最も時間が掛かったのは

また★畜産の牛の難産だった。

従業員の経験が浅く

逆子(尾位)だろうと判断し

前肢を牽引してしまい

側頭位になってしまった難産だった。

頭部が触れないので

即決の帝王切開

従業員君たちを助手にして

手術室で深夜の帝王切開。

胎児は幸いにまだ生きていた。

9月26日の夜は

◉牧場の牛の子宮捻転だった。

用手整復を試みるも駄目で

ローリング法に切り替えると

捻転は整復されたが

胎児の位置が下胎向のまま

分娩予定日を10日以上も過ぎた大きな胎児の

肢が太く

頭部が産道に乗ってこないので

結局、帝王切開で出すことにした。

T獣医師に電話をして助手を頼み

IMG_4324手術室で深夜の帝王切開。

胎児は大きなホル♂だったが

幸いにまだ生きていた。

夜当番で帝王切開をするのは

よくある事だ。

しかし

当番のたびに

三夜続けて帝王切開をしたという記憶はなかった。

これはもしかすると記録的なことなのかもしれない。

しかも、また次の当直の夜に難産が入り

帝王切開することになるかもしれない。

IMG_4322そうなれば

四夜連続となるが

そうならない事を願うのみである。

9月に入り

私は職場から

休日をもらって

俳句大会やら

コラボ展示会やら

遊び呆けていたので

夜当番の時くらいはしっかり仕事をせよ

という

畜産の神様からのお告げなのかもしれない(!?)

 

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「牛の乳房炎」のガイドブック

北海道はすっかり秋らしい気候になって来た。

普段なら、

秋の爽やかな空の下で、

夏バテ気味の牛たちの健康は回復し、

日々の往診件数は少なくなり、

獣医師の仕事は時間的に余裕が出来る。

出来た余裕で、

秋の学会シーズンを迎え

新しい勉強に励んだり(学問・読書の秋)

色々なイベントに参加して

自分の趣味に打ち込んだり(芸術・スポーツの秋)

する季節である。

しかし

今年はちよっと勝手が違う。

先日の大地震と

それに伴う大停電によって

牛たちの、特に乳牛たちの健康が

いつものように回復していない。

我が診療地区の乳牛たちは

JA(農協)や出荷先(よつ葉乳業)の

停電に対する防災意識が比較的高かったおかげで

大事に至る事は無かった。

しかし、乳牛の職業病である

乳房炎はなかなか減ってくれない。

そのような中で

麻布大学のK合先生をはじめ

私の身近に居る

乳房炎に詳しい獣医師の方々から

IMG_4263「乳房炎抗菌剤治療ガイドブック」 

という冊子が

紹介されたので

ここに貼り付けることにした。

酪農関係者の方々に目を通していただき

活用して頂いて

乳牛の健康を少しでも取り戻す為に

役立てて欲しいと思う。 


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牛のピアス

日本で飼われている牛は、

必ず耳にピアスをしている。

ピアスと呼べば洒落てはいるが、

かなりダサいピアスであり、

正式な名前?は、

個体識別番号が印字された、

黄色い下地の四角い耳標である。

全国共通の10ケタの番号で、

個体の識別のために用いられている番号だから

同じ番号の牛は

当然どこにも居ない。 

この耳標は

かつてBSE(牛海綿状脳症・いわゆる狂牛病)の牛が

日本で発見されたとき

牛の生産履歴(トレーサビリティ)すなわち

牛の出どころを突き止めるための法律が整備され

日本国内の全ての牛の耳に

装着することが義務付けられた。

それはとても画期的なことで

私は当時の畜産農政をすばらしいと思ったのを

今でも覚えている。

この牛のピアスに書かれている番号によって

日本の全ての牛の出どころが判るので

伝染病の蔓延などの問題の出どころを

突き止める事が出来るようになったのである。

その事で

日本の牛肉や乳製品は 

他国の牛肉や乳製品よりも 

安心と安全が守られているといっても良い。

外国から輸入する牛肉や乳製品は

日本のような生産履歴はない。

外国から生体で輸入される牛たちも

日本の検疫所で初めて耳標が装着されるので

IMG_3820それ以前の出どころは定かではない。

日本の牛はこのピアス(耳標)によって

外国ら輸入される牛よりも

安全と安心のレベルを保っている。

しかし、最近

この耳標が

IMG_3821外れている牛をよく見かけるようになった。

耳標が外れているものばかりではなく

耳がちぎれて耳標が取れてしまっているものも

少なくない。

どこの飼主の家でも

IMG_39411頭や2頭の

耳標落ちの牛を見かける。

牛の耳標か外れやすい材質になっている

とも聞いている。

日本の牛の安全安心レベルを保つためにも

IMG_3943牛の耳標の落ちた牛は

直ちに装着しなおしていただきたい

と同時に

耳から落ちにくいように

耳標の改良を進めていただきたいものである。



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カーフハッチの使い道

酪農場において、

仔牛の飼育場所は、

色々あるけれども、

その主流になっているのは、

カーフハッチであろう。

我が町で、

もっともポピュラーなのは、

クリーム色の樹脂で出来た

IMG_3796写真のようなタイプの

カーフハッチである。

どこのメーカーなのかは知らないけれど

このタイプのカーフハッチが

一番人気のようだ。

カーフハッチというくらいだから

当然

仔牛(カーフ)が入っているのだが

たまには

それ以外の動物が入っているのを見ることがある。

IMG_3797写真の一番左のハッチには

随分と顔の長いやつが入っていると思いきや

馬だった。

大きさも手頃のミニチュアホース

カーフハッチではなく

ホースハッチ

である。

ただこれでは

運動不足になるなぁ・・・

IMG_4124また別のハッチを覗くと

なにやら小さな動物が・・・

猫の親子だった。

ニャーフハッチ

IMG_4119である。

「ニャンか用か?・・・」

その隣のハッチにも

小さな子猫が

IMG_41221匹だけ

瞑想に耽っていた。

みなしごハッチ

である。


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難産胎児の誤嚥性肺炎

「和牛の難産で側頭位、昼から帝王切開。」

昨夜の当直だったK獣医師から、

そんな連絡を受けていた。

IMG_3965午後から手術室で待機していると、

△さんの牛が運ばれて来た。

「ちょっと手を入れてみるかい?」

「はい。」

胎児を探ってみると

側頭位だったという胎児の頭部の

眼窩と鼻梁を簡単に触れることができ

それを掴んで

押し引きしていると

胎児の頭部がこちら向きに変わり

失位を整復することができた。

「直りましたよ。」

「そうかい!、じゃあそのまま牽引しよう。」

二人の獣医師と△さんの3人で

胎児を経膣で

簡単に引き出すことができた。

「お、まだ生きてるよ。」

「心臓は動いてますね。」

「でも、呼吸がない・・・」

私とK獣医師は

直ちに子牛の蘇生に取り掛かった。

K獣医師が人工呼吸をしている間に

私はジモルホラミン(呼吸刺激剤)を投与。

さらに人工呼吸を繰り返し

子牛はようやく自発呼吸を始めた。

IMG_3963「なんとか助かった!」

親牛を手術室へ運ぶと決めた時点から

約6時間が経過していた。 

側頭位ということで

胎児は死亡している可能性が高かったが

この胎児の場合は

生きていたので

自発的に首を動かし

手術室に連れてこられる間に

胎位が直ったのだと思われた。

IMG_3964「生きててよかったですね。」

飼主の△さんも

喜んで親子を荷台に運び入れ

めでたく帰路に着いた。

ところが

それから3日後

「子牛の様子がおかしくなった・・・」

という連絡が入り

この子牛が

誤嚥性肺炎を引き起こしていることが判明。

高熱と呼吸の速迫が続いた。

それから毎日

点滴と抗生物質の投与を繰り返し

懸命な看病を続けた。

しかし

この子牛は

とうとう

生後9日目に

死亡してしまった。

残念な症例になってしまった。


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乳牛の過敏(アレルギー)症

「牛の顔が腫れて来た・・・」

そんな往診依頼の電話が来た。

酪農家の♭さんの、

その牛の顔を見ると、

両目が開けられないほどに、

IMG_3831眼瞼が腫れていた。

良く見ると、

眼瞼ばかりではなく、

鼻腔や外陰部などにも、

充血と熱性の浮腫があった。

外傷は全く見当たらない。

これは何かの過敏(アレルギー)反応の結果であることは間違いなかった。

IMG_3827頻度はあまり高くはないが

牛ではたまに

過敏反応による体表の軟部組織の

充血と浮腫が起こり

それが顔に出て

治療を依頼されることがある。

IMG_3828「何か変なものを食ったんでしょうかね・・・」

「・・・かもしれないねー」

「カビてるサイレージかな・・・」

「・・・それならまず下痢するかなー」

「何か虫にでも刺されたんでしょうかね・・・」

「・・・どうなんだろうねー」

IMG_3832「ハチとかアブとかかな・・・」

「・・・まぁこういうのは夏に多い気もするけどねー」

「あまりヤバそうな虫は飛んでないですけどね・・・」

「・・・山の中でもないしねー」

「やっぱり何か変なもの食ったんですかね・・・」

「・・・うーん、でも何でこの牛だけこうなるのかなー」

「こいつだけ過敏なんですかね・・・」

「・・・まぁ、そういうことになるのかなー」

飼主さんとの話は

だいたい何時も

堂々巡りになり

ちやんとした診断や

原因の究明は

できぬままになる。

一体、何がどのように

牛の体を刺激して

それがどのような仕組みで

このような過敏反応を起こすのだろう?

いつもよく解らぬままである。

しかし

治療法はといえば

単純明快で

抗ヒスタミン剤の投与

それだけでよかった。

翌日には

顔の腫れもすっかり引いて

食欲もめでたく回復し

元の牛になったという連絡をもらった。

こういう往診は

いつもこのような流れで

大事に至らず終わるので

記憶にも記録にも

とどまりづらい。

せめて

出た症状の写真を撮り

この場にUPしておくことにした。


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開拓時代の牛。

白黒写真の牛たちは、

IMG_3916北海道開拓時代の牛。

大正から昭和初期に、

撮影された牛である。

先日の俳句イベントの2日目は、

新札幌からほど近い、

IMG_39152北海道開拓の森での吟行だった。

あいにくの天気で人はまばらだったが、

ゆっくりと静かに場内を回ることができた。

さて

この写真の中の牛たちを

もう一度よく見ていただきたい。

IMG_3916牛舎の中に繋がれて

並んでいる写真だ。

牛たちの足元などをよく見ていただきたい。

牛がとても

キレイである。

IMG_3911開拓時代の

どこの牛舎の牛かははっきりしないが

牛がとても

キレイである。

きっと毎日

IMG_3918牛舎から放牧地へ出され

朝と夕方の搾乳の時に帰ってきて

並んで餌を食べている時の写真であろう。

現代の牛たちの足元を思い浮かべてほしい。

今の牛たちは

IMG_3916この写真の牛たちほど

キレイだろうか?

開拓時代と同じくらいキレイに

牛を飼っているところももちろんあるだろう。

しかし

私が毎日往診にゆく酪農家の牛の

多くがキタナい牛たちである。

不衛生でキタナい牛が

病気になって

我々は毎日毎日

往診に呼ばれるのである。

IMG_3050現代の牛たちは

開拓時代の牛と比べて

随分キタナくなってしまったようだ。

IMG_1909特に

フリーストールで

過密に飼われている牛たちは

キタナい牛たちが多い

また

繋がれていても

外へ出されることなく

朝から晩まで繋がれっぱなしの牛たちは

キタナい牛たちが多い。

開拓時代から

現代へと

酪農技術は進歩したと言われるが

それは本当だろうか?

1頭あたりの乳量は確かに増えただろう。

しかし

かつてはキレイに飼われていた牛たちが

キタナく飼われるようにになってしまった

現代の酪農は

牛たちにとって

進歩と言えるのだろうか?



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ボロボロな牛たちの涙

牛が涙もろい動物であることは、

あまり知られていない。 

IMG_3766小中学校の授業でも、

大学の講義でも、

そんなことは教えない。

だが

牛が涙を流しているところを

写真に収めようと思えば

いくらでも集めることができる。

IMG_3761牛が涙を流すのは

不本意なことをされた時のようである。

不本意なことをされて

不愉快になったり

恐怖心が湧いたりした時に

涙を流すようである。

牛の涙の写真を撮るためには

頭をロープで縛らないと

動かれてしまってうまく撮れない。

写真に撮る時は

頭をロープで縛らざるを得ない。

IMG_3762牛の涙は

頭をロープで縛ることによって

涙が涙管を逆流して

物理的に涙が溢れ出るだけだ

という説もあるが

鼻先を目より低く縛った時にも

牛は涙を流すので

その説明には無理があると思われる。

IMG_3844先日は

起立不能で

ボロボロになっている牛が

滂沱の涙を流していた。

この牛は

頭をロープで縛っていないが

弱って大人しく

写真のような

滂沱の涙を流していた。



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ボロボロな乳牛たち

チーズやバターやヨーグルトなどに、

IMG_3649加工しない「牛乳」、

すなわち「生乳(せいにゅう)」の需要が、

本州では、

年を追うごとに、

高まっているという。

IMG_3826それを受けて、

北海道内の酪農は、

減産から増産へと、

大きく転換している。

IMG_3826道内から道外への

生乳の移出の量は 

平成15年を境に

グンと上昇し始めた。

本州の酪農家と

北海道の酪農家は

かつては生乳生産で対抗し

南北戦争

などと言われたものだが

それが平成15年に決着がつき

北海道の酪農の勝利に終わった

と言うこともできる。

勝利に歓喜しているわけではないが

北海道の酪農家は今

生乳の買い取り価格の上昇

子牛の価格の上昇

などで景気が良い。

搾乳すればするだけ収入が増え

そのためにお産させた乳牛は

IMG_3050せっせと乳を搾られる。

生まれた方の子牛も

将来の乳牛候補として

飛ぶように売れてゆく。

北海道の酪農家にとって

IMG_3049これは良いことなのだろう。

しかし

それぞれの酪農家を

一軒一軒よく見てみると

IMG_3048一概に良いとは言えない部分がある。

特に

牛の健康管理

という面から眺めてみると

IMG_1909それは顕著である。

搾乳した生乳を

どの酪農家も同じように販売していて

出荷乳量だけを見れば

IMG_1020どの酪農家も同じように見える。

ところが

搾乳する乳牛の

健康状態には

IMG_0940それぞれの酪農家によって

雲泥の差がある。

私は、最近

よく思うことがある。

IMG_0358「ボロボロの牛が増えたなぁ・・・」

北海道の牛たちは

以前よりも

ボロボロになってきているのではなかろうか。

IMG_0357それは

生乳の需要の増加に伴う

増産体制と

密接に関係しているように思われる。



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新しいタイプの往診依頼

「食欲不振の牛が4頭いるんですけど、診てもらえますか・・・」

∀牧場の息子さんから、そんな往診依頼が来た。

∀牧場は牛の総数が50頭程度の育成牧場である。 

そんなところの牛が4頭も、

食欲不振になったというのは尋常ではない。

私はとっさに伝染病や食中毒などの、

集団的な病態を思い浮かべた。

∀牧場に着くと

息子さんがやって来た。

「4頭も食欲がないって・・・どうしたの?」

「$さんの預かりの牛なんですけど・・・ファームノートの反芻量が落ちてるんで・・・」 

「ファームノート?」 

「はい・・」 

ファームノートというのは

帯広市に本社のあるIT企業が売り出している牛群管理システムである。

農場の牛の1頭1頭の首にセンサー(首輪型ウェアラブルデバイス、という)を取り付けて 

IMG_3792そのセンサーが感知する情報(歩行数、休息時間、反芻量、など)を

本社にある人工知能へ発信してそこで集約し

契約者のスマートフォンへそのデーターを還元するシステムである。

飼主はその牛群のリアルタイムのデーターを24時間活用することができる。

「ファームノート、か・・・」

私は、これは新しいタイプの稟告だ、と思った。
IMG_3794
「ここ数日、反芻量が落ちている牛がいるんで、ちょっと気になって・・・」

「ファームノートの反芻量・・・ってどうゆう数字なの?」

 「単位はわからないんですけど、正常な時は「6」で、それより下がると落ちているらしいです・・・」

「で、今回の4頭はどれくらいの数値なの?」

IMG_3791「上がったり下がったりするんですけど、「1.7」とか「4.3」とか・・・」

ファームノートが発信する反芻量は

グラフ化されて飼主のスマートフォンに届くようになっている。

私は、その端末の画面を見せてもらった。

「なるほど、これがそのグラフなのね。」

IMG_3793「はい、そうです・・・この緑の棒グラフが反芻量です・・・」

「反芻量が落ちてる4頭、診せてもらおうか。」

「はい。」

私は、連動スタンチョンに入っている牛たちの中から

反芻量の落ちているという4頭を

順次、診察していった。

1頭目は、体温38.7、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

2頭目は、体温38.8、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

3頭目は、体温38.7、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。 

4頭目は、体温39.2、聴診による第1胃動ほぼ正常、便正常、眼光良し。

であった。

4頭すべて妊娠牛だった。

私はこれらの牛たちが

伝染病や食中毒ではないことを確認した。

「反芻量が落ちてるっていうのは、暑さなのか・・・理由はよくわからないな。」 

「そうですか、$さんから獣医に診てもらってくれって言われたもんですから・・・」

「とりあえず、健胃剤出しておくから、それを飲まして様子見てね。」

「わかりました・・・」 

かくして私は

ファームノートのデーター上で変化の見られた牛の治療(?)を終えた。

治療・・・といってもこれは従来の治療ではなく

予防的な診療行為になるだろう。

考えて見ると

こういう仕事は

私のようなNOSAI診療所の治療型(火消し)獣医師のする仕事ではなく 

牧場専属のコンサルタントの予防型(火の用心)獣医師のする仕事であろう

と、思った。

ちなみに

診察した4頭の中で

2番目に診た牛は非常に気性が荒く 

体温計を肛門に入れようとする時大暴れして

後脚を何度も蹴り上げる牛だったので

私は危うく

1発蹴りを喰らうところだった。 

フアームノートの首輪のセンサーは

牛の気性の荒さは

感知してくれないようだ・・・


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足元清浄装置

¢さん宅の子牛の治療を終えて、

いつものように、

足を洗おうと牛舎の入り口付近に戻り、

水道の蛇口を探していると、

IMG_3779なにやら見慣れぬ物を発見。

それは、

排水溝の上に置かれ、

四角い縦長の二枚組の箱状物で、

内側の左右と底に白いブラシが出ており、

IMG_3782水道からのホースが付いていて、

ブラシの部分に水が噴出するようになっていた。

「これ、足を洗う装置?」

「そう。」 

「へー、すごいなー。」 

「いいでしょ。」

「初めて見たなー。」 

「このあいだ市場に行ったときあって、いいなと思ってね。」

IMG_3780「こうやって足を入れるのね。」

「そう。」 

「あ、キレイになる。」 

「なるでしょ(笑)」 

「これはいい。」 

パイプの手摺りがついているので

それを掴んでいると

足を動かしても体が楽である。

良い装置があるものだと感心して

私は左右の足を洗った。

IMG_3781「でも値段が(笑)」

「いくら?」 

「5万くらい。」 

「やっぱり結構するねー」

「うん。」 

「でもそれだけの値はあるかなー。」 

我々のように

毎日牧場を訪問する獣医師にとって 

どの家にもこのような装置があったら

どんなにか衛生的で

かつ仕事が楽になるか 

そう考えると

各JAさんには

補助を出すなどして

足元清浄装置の

設置を推進してほしいものだ

と思った。 

ただ

ひとつ気になるのは

厳冬期に

凍結しないかどうか

である。


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病気の総合デパート

「お産なんですが、子宮捻転みたいなので、来て欲しい・・・」

そんな電話が診療所にかかって来たのは、

午後3時を過ぎた頃だった。

「・・・わかりました、すぐ行きます。」

電話の主の♭牧場の分娩用の古い牛舎で、

牛は産気づいて少し苦しんでいるようだった。

手を入れると、

産道が普通に捻れていた。

用手法でしばらく

子宮を押していると

何度かの陣痛のうちに

胎児の頭が産道に乗って来たので

子宮捻転は整復され

普通のお産となった。

産道は狭かったが

滑車を使って

F1の♀の胎児を

無事に出産させることができた。

「有難うございます、よかったです!」 

臨床獣医師は

難産介助が成功した後

飼主さんからこう言われるのが1番嬉しい。

「よかったー!」

という

飼主さんの

この一言を聞くと

我々臨床獣医師は生き甲斐を感じる。

この一言を聞くために

我々は仕事をしていると言ってもいいだろう。

満たされた気分で帰路につき

診療所でカルテを書き

夜間当番の時間帯に

入ろうという矢先に

電話がかかって来た。

「さっき子宮捻転で診てもらった牛なんですけど・・・」

♭牧場からだった。

「・・・どうしました?」

「子宮脱になっちゃったんですけど・・・」

「・・・えええーっ!、わかりました、すぐ行きます。」

 ♭牧場に着くと

さっきの牛の産道から

子宮が間違いなく脱出していた。

「・・・立てないですか?」 

「産んでからは立っていないです・・・」

「・・・ハンガーで吊りましょう。」

♭さんが牛を吊る準備をしている間に

私はこの牛に注射するための

カルシウム剤を車から取って来た。

子宮脱の牛は低カルシウム血症になっていることが多いので

いつものように

牛の頸静脈に針を刺すために

頭部を保定しようとした

その瞬間 

牛は大きく頭を振り上げ

私と反対側の床に

バッタリとその頭を打ち付けて

深い息を吐いて 

視線が中空を泳ぎはじめた。

IMG_3685「・・・あっ・・・これは・・・」 

「なんか変ですね・・・」 

「・・・これは、まずいな・・・死んじゃうな・・・」 

「え、マジですか・・・」

「・・・あ・・・だめだ・・・」 

「・・・」 

牛は最後の大きな息を吐いて

あれよという間に死んでしまった。

子宮脱を整復している途中や

子宮脱を整復した直後に 

その牛が死んでしまうことは

私は何度も経験しているが

今回はまだ整復にとりかかる前に

死んでしまうという

あっという間の出来事だった。

IMG_3687「・・・マイッタな、これは。」

「・・・」

「・・・指示書を書きますね。」

「・・・」

私は数時間前の満たされた気分とは真逆の

飼主さんの沈黙「・・・」という

最悪の雰囲気の中で

死亡畜処理の指示書を書いて

♭さんに渡し

解剖の依頼をすることにして

帰路に着いた。

後日

処理場の獣医師から剖検の書見が送られて来た。

BlogPaintそれによると

私が最も疑った腹腔内の出血はなく

うっ血型の心筋症

という所見が記されていた。

この牛はどうやら心臓も相当弱っていたらしい。

それにしても

1頭の牛が1回のお産で

子宮捻転と子宮脱が立て続けに起こったのを

診療した経験は

私には

過去を振り返っても

なかったように思う。

そしてさらに剖検によって

うっ血型心筋症が顕著だったとは

過去の記憶を辿っても

あまりなかったように思う。

この牛は

疲れ切ってボロボロになってしまっていたようで

まさに

病気の総合デパートのような症例だった。



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ついでの難産

この日の午前中の最後の往診は、

和牛繁殖農家の〓さんの、

妊娠鑑定だった。

やっている最中に、

「1頭お産前の牛がいるんだけど・・・ちょっと診てくれます?」 

ついでの仕事を頼まれた。

よくあることである。

妊娠鑑定を全て終え、

その牛に手を入れてみると、

胎児の足がすでに産道に来ていた。

しかし

「中で死んでるみたいで・・・」 

〓さんの話では

ここ数日忙しくて

分娩の監視が疎かになっていて

今朝気づいたらこんな状態だったという。

胎児の足はやや膨れた感じで

手を奥に入れると

死んで膨れ気味の頭部に触れた。

気腫胎のようだった。

「・・・このまま引っ張ってもきっと無理だから、粘滑剤を入れますね。」 

私はバケツ1杯の粘滑剤を作って

それをカテーテルで胎児と子宮の隙間に注入。

胎児と子宮の間に粘滑剤が 行きわたるように手を添えながら 

粘滑剤が溢れてくるまで注入。

「・・・これで引っ張ってみましょう。」

胎児の足に産科ロープを付けて

その先に牽引の滑車をつけて

胎児を牽引する

が、胎児はほとんど動かなかった。

牽引の力に耐えられず

親牛が寝てしまった。

「・・・これは引っ張っても無理だから、帝王切開しましょう。」

 「はい、お願いします・・・」

「・・・胎児はもうダメだけど、親をなんとか助けるということで。」 

「わかりました・・・」 

親牛はその後

なんとか立つことができたので

〓さんの家畜車に乗って

この牛は、診療所の手術室に運ばれて来た。

私は大急ぎで昼飯の弁当を食べて

IMG_3559帝王切開に取り掛かった。

同僚のK獣医師とT獣医師が助手に入ってくれた。

重たくパンパンに張っている子宮から

大きな死亡している気腫胎児を摘出し

子宮と腹膜と筋層と皮膚を縫い上げ

IMG_3560牛が乗った手術台を下ろし

寝ている牛に

起立を促した。

しかし

牛は立つことができなかった。

IMG_3561「・・・ハンガーをつけて吊り上げましょう。」

牛の腰角にハンガーを取り付けて

チェーンブロックで吊り上げた。

しかし

牛は前足を踏ん張ることができず

IMG_3562立つことができなかった。

「・・・ちょっと休ませて、補液治療ましょう。」

リンゲル、ブドウ糖、を投与し

30分程経った頃

再び起立を促した。

しかし

牛は立つことができなかった。

「・・・このままここに置いておきましょう、私は今日当直なんでずっと居ますから。」

〓さんには自宅に帰ってもらうことにして

今日はこの牛が立てるまで

このまま手術室に置いておくことにした。

「・・・牛が立ったら、連絡しますから取りに来てくださいね。」

「わかりました・・・」

私達は牛が寝ているままの手術室を片付け

勤務を終えた。

夜になり

私は手術室に居る牛と

同じ診療所の中で夜を明かすことにした。

午後8時頃、水を与え、補液治療をした時は

IMG_3563牛はまだ立てなかった。

午後11時頃、水を与え、治療をした時は

牛はまだ立てなかったが

牛の頭の向きが変わって居た。

立とうとする意思はあるようだった。

午前1時頃、様子を見に行ったとき

牛の呼吸が少し荒くなって居た。

しばらく観察していたが

牛はやはり立つことができなかった。

午前4時頃、様子を見にゆくと

牛は頭を横に倒し

動いていなかった。

死んでしまった。

私は直ぐ、〓さんに電話を入れた。

「・・・牛、死んでしまいました。」

「そうですか、じゃあ取りにゆきます・・・」

「・・・いや、取りに来なくてもここから処理場へ持ってゆけますから。」

「そうですか・・・」

「・・・指示書のコピーを後で届けます。」

「安田さん、やっぱり取りにゆきますよ・・・」

「・・・ここからそのまま処理場へ持ってゆけますけど。」

「うん、そうだけど、やっぱり取りにゆきます・・・」

私は、それを断る理由はなかったので

〓さんの言うことに従った。

「・・・そうですか、じゃあ指示書を書いて待ってますね。」

30分ほどたち

〓さんは自らこの死亡した牛を取りにやって来た。

そして黙々と

牛の足にワイヤを取り付けて

牽引滑車で牛を荷台に乗せて

死亡した牛とともに

自宅へ帰って行った。

手術室で死亡した牛は

ここから直接

処理場へ運ぶこともできるので

こんな手間をかけることは

無駄な作業と言えるのだが

〓さんは

この牛を

どうしても、もう1度

自宅に連れて帰りたかったのだろう。


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搾乳牛の肩の外傷

「今朝産んだ牛が立てない・・・」

そんな、とてもありふれた稟告で、

§牧場に着いて、治療の牛を探した。

「あっちです・・・」 

§さんの指さすD型倉庫の中で、

牛が立っていた。

「・・・立ったんだね。」

「ええ。立ったんですけど・・・」

牛をよく見ると

IMG_3588左の肩に大きな傷があった。

「・・・これはどうしたの?」 

「搾乳牛舎で寝てる時に、自動給餌機が来て・・・」 

「・・・自動給餌機!、停止しなかったの?」

「はい・・・」

§牧場は繋ぎ飼い牛舎で 

牛の飼槽部を巡るように

箱型のモノレールのような

自動給餌機が

一日何回も行き来して

搾乳牛に餌を与えている。

最近よく見かけるスタイルの

繋ぎ飼い牛舎である。 

IMG_3591自動給餌機というのは障害物があると

センサーが働いて停止する。

この牛が

どんな格好をして寝ていたのかはよくわからないが

自動給餌機は停止せずに

IMG_3592産後起立不能になっていたこの牛の

左の肩の部分をえぐって行ったようだ。

私はこのような牛の怪我を見るのは初めてだった。

「・・・とりあえず、縫っておいたほうがいいね。」

「お願いします・・・」 

IMG_3600鎮静をかけて

傷を見ると

長さは約15僂世 

肩甲骨の軟骨部分が

筋層の切れ目の奥深くに見え

IMG_3602深さもそこそこあるようだ。

まずは筋層を縫合し

それから皮膚の縫合。

皮膚の縫合は四胃変位の時と同じ

吸収糸による皮内縫合をした。

IMG_3605牛がおとなしく

楽に縫い終えることができたが

この傷の部分はよく動く場所なので

傷がちゃんと閉じてくれるかどうかは

全くわからなかった。

抗生物質を5日間駐車するように指示して

治療を終えた。

3日後

IMG_3612この牛の傷の状態は

縫合部の腫れもなく良好で

元気も食欲も正常だった。

さらに

2週間後

この牛の傷の状態を

IMG_3630往診のついでに見ると

縫合部がやや膨れて

触ると波動感があった。

これはもしや

化膿したか・・・

そんな心配が頭をよぎったので

IMG_3632腫れた部分に注射器を指して

内容を吸って見ると

淡黄色透明な漿液だった。

なんとか

化膿は免れているようだった。

 
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子宮脱の多発牧場

「朝産んだ牛が子宮脱に・・・」

そんな稟告で向かった◉牧場。

またか・・・

胎盤や腟脱だったらいいのに・・・

そんな都合の良いことを考えながら診療車を走らせて

◉牧場に到着。

IMG_3565残念ながら子宮脱だった。

子宮に付着している胎盤を剥がして

適当な板切れを洗って用意して

場長の☆君と従業員の▼君に

板の左右を持ち上げて子宮を支えてもらいながら

牛の怒責の合間を見計らいながら

IMG_3567少しづつ子宮を押して

腹腔内へ戻し

さらに子宮脱整復棒を押し込み

反転している子宮の歪みを直す。

次に包帯とビューナー針で

IMG_3569外陰部の巾着縫合。

「・・・それにしても最近、子宮脱多いんじゃないの?」

私は縫いながら☆君にそう言った。

「はい・・・」

「・・・確かこの牛はカルシウム打ったって言ったよね。」 

IMG_3573「はい、子宮脱になってからですけど・・・」 

「・・・子宮脱の牛はほとんどが低カルシウムだからね。」

「今月、2頭目なんです。今年になってもう5頭目なんです・・・」

「・・・そりゃ多すぎるわ!」

◉牧場は搾乳牛150頭程度のフリーストール牧場だ。

IMG_3574従業員は場長の☆君を含めて3名。

「はい、それと・・・」 

「・・・それと?」 

「このごろ、お産の介助が早いんです・・・」

「・・・早い?」

「お産だとすぐ引っぱって出すんです・・・」

「・・・あー・・・それかも。」

「そうなんですか・・・」

「・・・自力で分娩しようとする前に、人が引っぱって子牛を出しちゃうと・・・」

「陣痛がそのあとから始まっておさまらなくて・・・」

「・・・子牛がもう子宮の中に居ないから、陣痛で子宮を産んじゃうゃうのよ。」

「子宮を産んじゃうんですか・・・」

「・・・そう。子牛を引っぱり出す前に、自力でもっとふんばらせないとダメだよ。」

「そうですか・・・」

「・・・子宮じゃなくて子牛を出すためにふんばるんだから。」

「わかりました・・・」

子宮脱の原因は

いまだに謎が多いのだが

4ヶ月の間に5例も出たという

子宮脱の多発牧場には

子宮脱を起こす大きな要因として

早すぎる牽引介助という

人為的なものがあったようである。

この事実は

子宮脱のナゾの解明の

新たなヒントになりそうだ。

 
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