北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

立て続けの、仔牛の四肢の骨折 (5)

立て続けに3回の骨折治療を行なった仔牛、

その3例とも、

キャストによる外固定だった。

それぞれ、

左橈骨遠位骨折

左中足骨遠位骨折

右中足骨近位骨折

だったが

の仔牛は

腸炎を発症して死亡してしまった。

そして

,了撞蹐

骨融合はしたものの

キャストの巻き方が悪く

変形が激しく

歩行困難と褥瘡の悪化で

廃用処分になってしまった。

makubetsu20-0010000残るは

△虜乎翅骨遠位骨折だけとなった。

その仔牛のキャストを

先日外し

makubetsu20-0030000X線写真を撮った。

写真を見る限り

骨融合が進み

変形も少なく

IMG_0401今度はなんとか

治癒に向かっているようだ。

しかし

キャストを外した後しばらくは

makubetsu20-0230000患肢を使う筋肉は衰え

負重もままならない。

正常な歩行ができるのは

今後どれくらいの時間がかかるのだろうか。

makubetsu20-0220000それまで体調を崩さずに

育ってくれるのだろうか。

それはもう

この牧場の管理者に

2F4DC9EA-6C14-41FD-BA71-EC15519E35F1お任せするしかない・・・

のだが

心配なことはまだまだ

色々と残っている。

ともあれ

今回は

立て続けの

仔牛の四肢の骨折に

久しぶりに対処して

3例のうち2例が

成功しなかった。

牧場の管理もさることながら

我が診療所にも

色々たくさん

課題が残っていることに

気付かされた

今回の症例だった。

(この記事終わり)


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立て続けの、仔牛の四肢の骨折(4)

2件の酪農家で、

立て続けに合計3例の、

仔牛の四肢の骨折事故が起こり、

立て続けに3回の骨折治療を行なった。

3例とも

キャストによる外固定だった。

それぞれ

左橈骨遠位骨折

左中足骨遠位骨折

右中足骨近位骨折

だった。

そのうちの仔牛は

腸炎を発症して死亡してしまった。

IMG_0414そして

先日

残りの症例の,了撞蹐

X線写真の2回目を撮影したところ

makubetsu20-0120000骨折部位が前後に大きく軸ズレしていたが

そこに骨融合が進んでいた。

キャストを巻いて3週間以上たっていたので

キャストを外して様子を見ていた。

makubetsu20-0180000仔牛は元気がよく

ミルクもたくさん飲んでいたが

左の前肢のキャストの不自由さによって

体の右半身の数カ所に大きな褥瘡ができていた。

makubetsu20-0170000感染は局所で収まっていたが

深く広い褥瘡になっていた。

キャストを外した左前肢は

肘のあたりで大きく変形し

IMG_0550歩行はほぼ3本足で歩き

1週間ほど経過を観察していたが

歩様の改善は見られなかった。

そこで先日

IMG_0548飼主さんと相談の結果

この〆顧骨遠位骨折の仔牛を

廃用にすることにし

NOSAIの連合会に

IMG_05573号廃用を認定してもらい

安楽殺処分とした。

以上が

3例の骨折治療のうちの

2例目の結果である。

(この記事続く)


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立て続けの、仔牛の四肢の骨折(3)

先月、立て続けに遭遇した仔牛の四肢の骨折、

その3例の治療の経過を報告すべき時が来た。

仔牛の四肢の骨折の治療は、

普段の診療の中では頻度が低い、

という事を言い訳にして、

なかなか技術レベルが上がらない。

私のような年代の獣医師は

もう30年以上

牛の診療をやっているのに

仔牛の四肢の骨折の治療の技術は

旧態然としてバラバラである。

そんな状況から

なかなか抜け出せずにもがいているのは

私だけではないようだ。

さて

今回の骨折治療の

3例の経過報告の

makubetsu20-0060000その最初は

3番目に

キャストで外固定した

右の中足骨の粉砕骨折。

3番目に外固定した症例の

makubetsu20-0070000結果報告が

なぜ1番早いのか・・・

それは

この仔牛が

外固定した後

IMG_04031週間後に腸炎を発症し

それが重篤に症状になり

下痢がいつまでも治らずに

懸命な点滴治療を続けたにもかかわらず

死んでしまったからである。

キャストの外固定自体は

3例の中で最も上手くできたと思っていた。

ところが思わぬことでつまずき

治癒に至らなかったばかりか

骨融合の経過の写真さえ

撮影することができなかった。

言い訳がましい書き方になってしまうが

こういう症例に遭遇するたびに

仔牛の四肢の骨折治療の

技術レベルが上がらないのは

我々獣医師の意識ばかりではなく

仔牛の飼育環境にも

その原因があるような

そんな気がしてならないのである。

(この記事続く)


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立て続けの、仔牛の四肢の骨折 (2)

約2週間のうちに、

立て続けに子牛の骨折の治療が、

我が診療所で3例あった。

そのうちの2例が、

同じ酪農家だった。

仔牛の品種は全て和牛で

ETによるホルスタインの親からの出生だった。

酪農家では普通

仔牛は出生直後に親から離され

人工哺乳をするために

カーフハッチへ運ばれる。

ハッチへ移動した後

足に異常が見付かり

往診を依頼された。

今回の3例は

全てそういう稟告だった。


1例目は

左橈骨骨折。

エックス線写真で診ると

makubetsu20-0110000潰されるような外力によって

粉砕しているような所見が得られた。

キャストを巻いた後の撮影だが

左右(内外)方向の軸のズレは

makubetsu20-0120000それほどでもないが

前後方向の軸のズレが

著しい。

この写真は

キャストを巻いてから

約2週間後に撮影したものである。


2例目は

左中足骨骨折。

エックス線写真では

makubetsu20-0010000遠位端近くまで骨折している

斜骨折だった。

撮影したのは

キャストを巻いた翌日。

makubetsu20-0030000軸のズレは

左右(内外)方向に

乗り越えが見られるが

3分の2程度の

接着面があるので

上手くゆけば

癒合してくれるのではないかと思っている。


3例目は

右中足骨骨折。

makubetsu20-00700002例目よりも

近位で骨折している。

これも潰されるような外力が掛かったのか

骨折片が複数に粉砕したように写っている。

makubetsu20-0060000この骨折は出世直後に診断して

その日のうちにキャストを巻き

その直後にエックス線撮影をした。

この3例目は

事故後の処置が一番早かったので

それがプラスに働いて

なんとか癒合してくれることを願っている。


ところで・・・

骨折の治療に関して

私は症例を当ブログに何回もアップしているのだが

そのたびに

骨折治療に詳しい多くの先生方から

いろいろとアドバイスや

時には

きついお叱りを受けてきた。

そのおかげで

私の骨折治療法も少しは進歩していると思うのだが

なにしろ

遭遇する症例が少なく

せっかく指摘してもらったアドバイスを

何か月もすると忘れてしまったりしている。

今回の骨折治療も

1年以上のブランクがあった。

骨折症例を多数経験されている先生方に

また、忌憚のなきアドバイスをお願いしたい

と思っている。


(この記事の、その後の経過は、2週間後にアップする予定)


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立て続けの、仔牛の四肢の骨折(1)

ここのところ約2週間の間に、

生まれて間もない仔牛の、

足がおかしい、

足がつけない、

足が腫れてる、

という稟告が立て続けあった。

飼主さんや従業員さんは

それ以上の事は認識せず

あとは獣医師が診療して

診断を下すのだが

その診断結果が 

IMG_0414皆全て

骨折だった。

写真の3頭の仔牛は

皆似たようなキャストを巻いているが

よく見ると全て

IMG_0401キャストを巻いている足が違う。

上からそれぞれ

左橈骨骨折

左中足骨骨折

右中足骨骨折

IMG_0403という診断だった。

それぞれについて

キャストを巻いた後

X線検査をして

その折れ具合を診たが

その写真は次回にアップしようと思う。 

IMG_0399それにしても

ここ半年以上

仔牛の骨折など診ていなかったのに

なぜか急に

立て続けに

仔牛の骨折の治療が舞い込んで来た。

続く時は続くものだ

我々の仕事というのはそんなものだ

と言えるのだが

ちなみに

2頭目と3頭目は同じ牧場だった。


(この記事続く) 


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黒色腫!? (2)

往診から帰って来たら、

8カ月齢のホルスタインの育成牛がいた。

95605563_257557592057684_7161677285395791872_n元気いっぱいなのに、

下胸部に人頭大の大きな腫瘤。

その超音波検査では、

膿瘍ではなく、

固体が充満しているように見えた。

IMG_0261摘出手術に当たったのは

同僚のT獣医師とN獣医師と新人のT獣医師の3人

私が用事を済ませて

再びカメラを向けたとき

大きな腫瘤が

術者のT獣医師の手で

牛の本体から外されるところだった。

IMG_0263外された腫瘤は

手術室の床にぐんにゃりと落ちた。

まるで大きな黒いキノコの笠のように

うつ向けに落ちて

平たく止まった。

摘出した切り口には

IMG_0266太い血管はないようで

出血が意外なほど少なかった。

術者の止血方法が良かったからかもしれない。

この腫瘤物は

牛の体にぶら下がっていたときは球形だったが

床に置かれると

IMG_0268重力のせいで扁平な物体となった。

その長さは直径約30cm弱

厚みは約8cmほどだった。

助手をしていたN獣医師が術創から離れ

このおおきなクラゲのお化けの

IMG_0270解剖を試みた。

腫瘤の中央を

刃物で割ってゆくと

真っ黒い均質の

光沢のある割面だった。

血液が凝固したものではなく

IMG_0272それよりも固い

真っ黒い組織だった。

黒色の色素の細胞の腫瘤

すなわち

黒色腫であろうと思われた。

IMG_0269ふたたび

術創の方へ目を移すと

2人の獣医師が

術創をきれいに縫い上げていた。

縫い終わって手術台を下ろし

IMG_0273牛を起こすと

牛は元気よく

家畜車の荷台に飛び乗った。

めでたしめでたし。

(この記事おわり)


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黒色腫!?(1)

先日、往診から帰ってきたら、

手術室ににホルスタインの育成牛が連れてこられていた。

右の下胸部に大きなぶら下げものがついていた。

94566007_163228045075759_4338030167118053376_nまさしく人の頭のような大きさ、

人頭大の腫瘤物だった。

触ると暖かく

根元は大きくくびれていた。

初診をした同僚のT獣医師が

飼い主さんから何とかならぬかと頼まれて

時間のあるときに切除手術を予定していたものが

今日運び込まれてきたという。

95605563_257557592057684_7161677285395791872_n育成牛で

食欲などの一般症状は正常だった。

根元が大きくくびれているコブのような腫瘤を見ると

どこか滑稽で笑ってしまう。

手術室では超音波検査もして

内容は均一な固体で膿瘍ではなく

血腫か肉芽種のような所見だったという。

摘出手術は

T獣医師とN獣医師と新人のT獣医師の3人が行った。

こういう前例のない手術というのは

過去の経験を思い出しながら

複数の獣医師によってアイデアを出し合いながら

試行錯誤をしながら進めて行くことが

良い結果を生むようだ。

しかも

前例がない症例の手探り手術といっても

今回のように患畜の命には関係のない

外科的な摘出手術なので

気分が楽である。

しかも

ビジュアル的に

インパクトが強く

面白い画像が撮れそうなので

まるで小さな探検をしているような

楽しみのある手術だった。

95309135_278345339840146_3804396981854404608_nしかも

私は術者でも助手でもない

傍観者だったので

不謹慎ではあるが

たのしく覗きながら

カメラのシャッターを切らせていただいた。

(この記事続く)


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「胎児の頭部が来ない」牛のお産(3)

牛の深刻な難産「側頭位」の前触れには、

「胎児の頭部が産道に来ない」、

「胎児の頭部が下の方にある」、

「胎児の頭部の向きがおかしい」、

という状態があり、

最近はこの状態で往診の依頼が来ることが多くなった。

飼主さんも獣医師も

「側頭位」は真っ平御免であるから

その前触れを事前にキャッチして

対処することが重要である。

前回書いた▽牧場では

従業員君たちがそれを覚えて

早めの連絡をしてくれるようになり

「側頭位」で苦労することがなくなってきた。

これは進歩と言って良いだろう。

そのかわり

夜間のお産での往診依頼が増えた。

これは安全なお産のためには

仕方のないことなのかもしれない。

IMG_0212先日の夜間当番の夜は

▽牧場から

ひと晩に2回

「胎児の頭部の向きがおかしい」

という往診依頼があり

IMG_0229それぞれ別の牛のお産介助をした。

その内容はほとんど同じだった。

胎児の頭部が奥にあり

後頭部に手が回らなかったので

鈍鈎を胎児の眼窩にかけて

IMG_0232胎児の頭部を引き寄せ

後頭部に手が回るようになったら

胎児の両耳の後ろへ

ループワイヤーをかけて固定し

頭部が後ろ向きならならぬよう

IMG_0234すなわち側頭位にならぬように固定して

胎児の頭部だけをゆっくりと

産道へ誘導し

胎児の頭部が産道に乗ったら

前肢と頭部を同時に牽引する。

IMG_0240頭部のおでこが外陰部の外へ出たら

前肢だけを牽引して

胎児を娩出させる。

ひと晩で同じ難産を

複数回する事は

IMG_0242最近は珍しくなくなったが

あまりにも同じパターンの難産介助だったので

やっていて

時間が巻き戻されたような感覚に陥ってしまった。

ここ数日で

IMG_0244このパターンの▽牧場の難産介助わ

立て続けに3回やったことになるが

興味深かったのは

その3回とも

全て

IMG_0246胎児は

大きなだった

という事である。

「側頭位」になりやすいのは

頭部が小さい♀の胎児である!?


IMG_0249という

科学的根拠の乏しい

私の仮説を

はからずも

裏付ける結果となった・・・


(この記事終わり)


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「胎児の頭部が来ない」牛のお産(2)

牛の難産「側頭位」の予備軍ともいうべき、

「胎児の頭部が産道に来ない」、

「胎児の頭部が下の方にある」、

「胎児の頭部の向きがおかしい」、

というような稟告で、

緊急の往診を依頼されることが増えた。

お産の番をする飼主さんや従業員さん等が

こういう状態の胎児の足を慌てて引っ張ると

「側頭位」という厄介な状態にしてしまう事を

わかってきた証拠であろう。

前回の記事に書いた1例は

その典型的なもので

IMG_0196獣医師がすべきことは

胎児の頭部にループワイヤーをかけて

側頭位にならぬように

頭部を参道へ導くことである。

それさえやれば

あとは普通のお産と全く変わりがない。

IMG_0199ただ

長い年月このタイプの助産をして

なんとなく感じていることがある。

それは

このタイプの難産は

大きな♀胎児で多いのではないか

IMG_0203という事。

小さい胎児ではこういう難産はなく

つるんと生まれて来る。

大きな♂胎児でも

当然このタイプの難産は起こりうるけれども

♂胎児は頭が大きいので

IMG_0204頭が産道の奥での自由度がなく

側頭位にはなりづらいと私は感じている。

♂胎児に比べて

♀の胎児は頭が小さく蹄も小さいが

頭や蹄が小さい割には

腕や胸や腰が立派である。

IMG_0205♀胎児の頭部は

子宮の中で自由度が高く

あちら行ったりこちらへ行ったり

しやすいのではないか。

つまり

「側頭位」難産は

「♀の過大胎児に起こりやすいのではないか?」

IMG_0208というのが

私の感じている事であり

科学的な根拠に乏しい仮説である。

前回の記事に書いた1例は

その典型的なものだった。

IMG_0210介助したあと

胎児の性別を確認したら

♀だった。

たまたまそうだった

とも言えるのだが・・・


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「胎児の頭部が来ない」牛のお産(1)

「胎児の頭部が産道に来ない」、

「胎児の頭部が下の方にある」、

「胎児の頭部の向きがおかしい」、

というような稟告は、

よくあるものだ。

この状態で

飼主さんが

胎児の足だけを引っ張ってしまうと

胎児の頭部が産道に乗らず

胎児の鼻先が後方へ向いてしまい

側頭位という失位になって

大変な苦労をしなければならなくなることがある。

これは牛の難産で

最も頻度の高いものの一つである。

最近の飼主さんは

さすがにそのような失敗はなくなってきたが

その代わりに

慎重になっているので

側頭位の予備軍ともいうべき

「鼻先は触れるのだけれども・・・」

「胎児の頭部が産道に来ない」

「胎児の頭部が下の方にある」

「胎児の頭部の向きがおかしい」

というような稟告で

緊急の往診を依頼されることが増えた。

そこで役に立つ道具が

お産の時の強い味方

IMG_0212ループワイヤー



牽引滑車(カウヘルパー)

である。

先ず獣医師のやることは

胎児の頭部に

ループワイヤーを取り付ける。

胎児の後頭部まで触れることが出来るならば

ループワイヤーを

胎児の2つの耳の後ろへ掛けるのは容易である。

胎児にワイヤーのモクシを掛けるような要領である。

これで胎児の頭部がキープできたら

頭部にかけたワイヤーだけを

ゆっくりと引っ張る。

すると

頭部がぐぐっと産道に乗ってくる。

そうすると

胎児の前肢の蹄先もそれに伴って陰部に見えてくる。

ここまでくれば

あとは牽引するだけの普通のお産である。

ただし

ここまで時間がかかっている原因として

「胎児の過大」

「産道の狭小」

「陣痛の微弱」

という特殊事情があった訳だから

IMG_0199ここからの牽引は

人力のみではなく

滑車の力を借りて

強めにスムーズに牽引すべきである。

胎児の2本の前肢に

牽引ローブを付けて

それを滑車につなぐ。

先ずはワイヤーをつけた頭部と

滑車をつけた前肢をゆっくりと引き

胎児の頭部が完全に露出したら

IMG_0196滑車をつけた前肢だけを

強い力に切り替えて

一気に牽引する。

先日の

▽牧場でのお産は

その典型的なものだった。


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股関節脱臼の牛のお産

「お産なんですけど、足が触れないんです・・・」

枕元のケータイが鳴ったのは午前0時40分。

▲フアームの従業員からだった。

「了解、すぐ行きます。」 

お産の牛は病畜舎(ホスピタル)に寝ていて

陣痛が来るたびに唸っていた。

産道に手を入れると

前肢が一本と頭を確認できたが

もう一本の前肢が不明だった。

「この牛は、立てないの?」

「はい。乾乳にする前に転んで脱臼して、それからずっと立てないです。」

もうすでに1ヶ月以上立てずにいるらしい。

お産の牛なのに病畜舎(ホスピタル)にいたのは

そんな事情があったからだった。

胎児の失位整復は

陣痛の怒責が強いとうまくゆかない。

さらに親牛が寝たままだと

産道への圧迫が強く

余計に失位を戻しづらい。

普通の牛であれば立たせたいところだが

脱臼して1ヶ月も寝たままの牛はそれができないので

仕方なく、寝たままで

胎児の前肢の整復をすることにした。

手を奥に入れると

2本目の前肢の腕節に触れることができた。

前肢の屈折が腕節からならばなんとかなりそうだった。

産科チェーンをできるだけ球節に近い部分に巻き

そのチェーンにロープをつけて従業員に軽く引いてもらい

私は1本目の前肢と胎児の頭部を思い切り押し込む。

何度か押し込んでいるうちに

2本目の前肢の球節が産道に乗ってきたので

その球節に手を添えて

蹄が恥骨に引っかからない様にして

もう一度従業員にロープを引いてもらうと

2本目の前肢の蹄がこちらを向いて

失位の整復が完了した。

IMG_0133「よし。あとは普通のお産だから、足2本を引っ張って!」

「はい!」

従業員3人で胎児を引っ張るのだが

頭が出てこない。

IMG_0134「産道が狭いからかな、頭がなかなか出てこないね。」

「はい。キツいっすね。」

人力では無理そうだったので

滑車を使って牽引することにした。

IMG_0137ショベルを側に寄せて

胎児に結んだロープと滑車をつないだ。

「じゃあ、これを引いて。」

滑車のロープを牽引しはじめると

IMG_0138「あ、頭が出てきました!」

「どんどん引いて!」

引き出された胎児は全く動かず

すでに死んでいるのか

と思った時

まぶたが動いた。

「あ、生きてます!」

IMG_0139仔牛はまばたきをしたあと

鼻と腹が動いて呼吸を始めようとした。

「呼吸器持ってきて。」

もう1人の従業員が

IMG_0140急いで呼吸器を持ってきて

仔牛の口と鼻にそれを当てがった。

仔牛は頭を上げて

普通に呼吸を始めた。

大きめのF1の♂だった。


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牛のイボ取り大成功

和牛生産の◎牧場から、

「尻尾の付け根に変なカタマリが・・・」

という稟告。

尻尾を上げてみると、

それはまるでウンコの塊がこびりついているような、

しかし、取ろうとしてもしっかりくっついている。

乳嘴腫(にゅうししゅ)あるいは、乳頭腫(にゅうとうしゅ)

あるいはパピローマなどと呼ばれている

IMG_0030いわゆる「イボ」である。

よく見ると

大きな塊の隣に

尻尾の先へ向かって

数珠状の小さなイボが

鈴なりになって

流れるように付いていた。

「どうにかして、取ってくれないべか・・・」

IMG_0031ということになった。

小さなイボであれば

私は強引にむしりとって終わりというのもある。

しかし

これはむしり取れるほど小さくもない。

イボの根っこが細ければ

ハサミで根元をちょん切って終わりの場合もある。

しかし

この場所をハサミで切断すると

切断面がちょうど

肛門と接触する位置なので

糞便の汚染が続き

感染して最悪化膿する恐れがある。

そこで

一番良い方法を考えた結果

イージーカットというゴムリングを装着し

IMG_0032そのまま放置する事にした。

写真のように

この連続したイボは

うまい具合に

イージーカットの小さなゴム輪で

IMG_0034ひとまとめにできる大きさだった。

全てのイボがまとめられ

根元にゴム輪がかかっていることを確認し

一ヶ月間放置した。

私のした事はそれだけだった。

一ヶ月後に

その牛のことを◎さんに尋ねてみたら

「きれいになくなっているよ。」

という返事だったので

牛を捕まえて

その写真を撮らせてもらった。

IMG_0123その尻尾の根元は

綺麗さっぱりとイボが取れて

白い色の瘢痕が残っているだけだった。

今回のイボ取りは

思惑通りの

大成功だった。



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日曜日の手術

NOSAIの診療所の大きさは色々ある。

最近は広域合併によって、

1つの診療所に獣医師の机が数十も並ぶ、

大きな規模の診療所が増えているようだ。

そういう大きな診療所では、

対応する家畜(おもに牛)の数は、

数万頭以上に及ぶ。

そこには大きな手術室が備えられ

毎日いろいろな手術(おもに牛の第四胃変位)がなされている。

大きな診療所であれは

毎日数頭の手術があるのは当たり前になり

多いときは1日に10頭以上の手術をこなすことも

それほど珍しくないようである。

私も以前赴任していた診療所はそんな所だった。

EE40FDD6-07A0-47CD-9F72-CB1499ABF79Cそれが

現在の我が町の診療所に戻ってきてからは

獣医師が7人でローテーションしている診療所なので

1日に10頭以上の手術をすることなどはもちろん無いし

手術自体が1週間近くまったく無いという時もある。

そんな小ぢんまりとした診療所の

日曜日には

出勤している獣医師は2人である。

日祭日には

緊急の診療だけに対応しているので

2人態勢で十分カバーできるのだ。

だが、しかし

年に何度かは

日曜や祭日といえども

緊急の往診がやたらと多い日がある。

昨日の日曜日は

どちらかと言うとそんな日だった。

お産のような

本当の緊急というわけではないのだが

BlogPaint何故か

牛の第4胃変位の手術が

立て続けに3頭入った。

日祭日の第四胃変位手術は

お産ほど緊急事態ではないので

翌日の通常勤務体制の日に

予約の手術を入れることも多い。

しかし

昨日は天皇誕生日で

今日は更に振り替え休日なので

連休明けに手術の仕事を溜めてしまうのは良くない。

1145FA11-A44A-4E7D-93D0-20C5930EE91Dということで

昨日は珍しく

日曜日に牛の第四胃変位手術を3頭やった。

我が診療所ではあまり記憶がないことだった。

手術終えてカルテを書き終わったら

永くなりつつある日がとっぷりと暮れていた。

6B2F3FEA-7EAC-4E08-98E1-6D3ED5655DBB晩の弁当を食べて

一服をしていると

緊急往診の電話が鳴った。

ホル子牛が下痢で立てないという。

夜道を走り

子牛の診療を終えたら

眠気が襲ってきた。

さっさと布団に入り

一寝入りか二寝入りしたら

枕もとの緊急電話がなった。

乳牛の子牛が下痢で立てないという。

542BD0E8-03CD-4E89-B71A-8B1AA2D5D690夜明けの道を走り

子牛の診療を終え

コンビニによって朝飯を買い

診療所に戻り

食事をしたら

2410E627-953B-4813-919D-64D20E5ACDADちょうど

通常の出勤時間になっていた。

結局いま振り返ってみると

そこそこ忙しい

休日出勤&夜当番だった。


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夜中の12時を過ぎた頃

夜中の12時を過ぎたところで、

枕元の夜間受付用の携帯電話が鳴った。

「▽ファームの◯ですけど、I群の親牛が立てないんで、診にきてください・・・」 

「了解です。」

▽ファームは800頭程度のフリーバーンの酪農場で

I群の牛

というのは

その中で抗生物質などの出荷制限薬剤を使われて

乳を出荷できない牛たちの居る群のことである。

現在治療中の牛が立てなくなってしまったという。

▽ファームに到着すると

従業員の◯君に付いて

I群の三番目のフリーバーンへ向かった。

フリーバーンで1頭だけ

立てずにうずくまっている牛がいるという。

ここのフリーバーン内の他の牛たちは

今搾乳のためにホールディングエリアへ移動していて

この牛だけがポツンと残されていたという。

IMG_6953搾乳が始まって

1頭だけ搾乳に来ないので 

この牛の異変に気付いたようだ。

I群の牛の搾乳時間が

いつも夜中の12時頃なので

その群の牛の異変に気付くのは

いつも決まって夜中の12時を過ぎた頃になる。

我が診療所の

獣医師は皆

夜間当番の日は

夜中の12時を過ぎた頃に

▽ファームからの往診依頼が来るのではないか

と警戒する。

特にこの数年

▽ファームは搾乳頭数を増やしていて

IMG_6952それにつれてI群の

すなわち病気治療群の頭数も

並行して増えており

夜中の12時を過ぎた頃の緊急往診も

それにつれて多くなっている。

◯君に付いて

フリーバーンへ入り

I群で立てなくなっている牛を診察した。

IMG_6949「何回か治療して抗生物質も打っている牛なんですけど・・・」

「熱が出ているね、乳房炎かもしれない。」

「乳房炎はやってないと思うんですけど・・・」

「それはわからないよ。」

立てない牛で乳頭が隠れて

バーンの泥にまみれているので

乳汁を採取することはしなかったが

乳房炎で起立不能になった可能性が高いので

それにかなった治療を施し

治療をしている間に◯君としばし雑談した。

IMG_6955「今日は雪降ったねぇ。」

「はい、でも止みましたね。来るとき道路滑りませんでしたか・・・」

「いや、気温が高くて凍ってなかったから大丈夫だったよ。」

「牛舎の周りにたくさん降った雪も解けてますね・・・」

「ここのフリーバーンはドロドロだね。」

「はい、今日は雪が解けてドロドロで・・・」

「このドロドロはそれだけじゃないんじゃないの?」

「そうですかね・・・」

「最近、麦稈をあんまり敷いてないんじゃないの?」

「いえ、掃除して入れ替えているはずですけど・・・」

「それにしても牛が汚なすぎるよ。」

「そうですね・・・」

「これじゃあ、乳房炎がたくさん出てもおかしくないよ。」

「そうですね・・・」

IMG_6957治療の補液が終わったので

会話はそれまで。

足を洗うために

搾乳パーラーに行くと

I群の牛たちが

次々とバーラーに入り

IMG_6959搾乳されていた。

その牛たちの

足元は

写真のとおりだった・・・



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仔牛の臍帯炎(化膿性尿膜管炎)

先日、往診から帰ってきたら、

H獣医師とK獣医師が仔牛の手術を始めるところだった。

IMG_6580何の手術かと聞くと、

仔牛の臍帯炎で、

大きな膿瘍があるようだが、

どうやら腹腔奥深く、

尿膜管の奥の方まで伸びている可能性があり、

手術台に乗せて

IMG_6581慎重に手術することになったらしい。

いわゆる仔牛のデベソは

ピンからキリまであり

小さいものは軽い臍帯炎で

抗生物質を数日打てば治癒する。

大きなものは臍膿瘍になっているものが多く

IMG_6594膿瘍を切開して排膿してから

抗生物質を数日打てば治癒する。

そのとき最も重要な

類症鑑別は

臍ヘルニアであるが

たまには臍ヘルニアを併発した臍膿瘍もある。

IMG_6582さらに

巨大な膿瘍になれば

講師の腹腔へ大きく入り込み

尿膜管への感染からの膿瘍

あるいは臍動脈や臍静脈の観戦による膿瘍

という場合もある。

IMG_6585今回の仔牛のデベソは

上記のパターンのうち

最悪の場合を想定した手術だった。

まずは大きな膿瘍の部分にメスを入れて

切開排膿した。

排泄された膿汁は1リットル程度

IMG_6586排膿して萎んだ臍帯部の深部を探ってゆくと

肥大して太くなった尿膜管と思われる穴が確認された。

その穴の中を探ると

膿汁が残存していた。

ただ幸いなことに

尿膜管の炎症の方は予想していたよりも軽度で

IMG_6590その部分を洗浄しておけば

自然治癒が期待され

肥大した尿膜管自体を摘出する必要はなかった。

洗浄した尿膜管はそのまま残し

排膿して萎んだ膿瘍部分の

肥厚した組織と皮膚を切除したら

IMG_6591縦も横も約20センチほどの大きな円形の切除跡が残った。

その切除跡の周囲の皮膚を寄せて

縦に約数10センチを縫合して

手術を終えた。

終えてみれは単純な行程だったが

検査をして診断して

IMG_6596最悪の場合も想定しつつ

今回の手術を行った

2人の同僚獣医師の仕事は

手慣れたスムーズなものだった。

そのおかげで

私はゆっくりと余裕を持って

写真を撮影することができた。


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「電動」&「ニコイチ」捻転去勢器具

先日、何気なしに、

酪農・畜産のFacebookグループページを見ていたら、

ニコイチ捻転去勢棒の、

「電動」ドリルバージョンの写真が掲載されていた。

この器具の持ち主は、

足寄町の和牛繁殖農家さんだった。

早速コメントをして掲載許可をもらい、

当ブログにも紹介させていただくことにした。

82840491_1261351964063596_7451558436522688512_oニコイチ捻転棒の先端部を

電動ドリルにセットした

とてもシンプルなもので

これならば

両手を使わずに

電気の力を借りて

簡単に捻転することができるだろう。

私はこの「電動」捻転棒を

977477bf-s実際に見たことはないが

棒の先端部が

私の使っている捻転棒と

同じ形をしているので

ニコイチ式の「手動」棒から

ヒントを得て作ったものであろうと

容易に想像することができる。 

 今や、ニコイチ式捻転去勢棒は

北海道から本州の方まで

普及しているようだが

その多くが「手動」の棒だった。

それを「電動」にした発想は素晴らしい。

九州地方では

それ以前から「電動」の去勢が普及しているようだが

それは「ニコイチ」ではなく

「一個ずつ」の精巣を捻転去勢する方法だった。

今、ここに

「電動」の器具と

「ニコイチ」の方法が

合体して

新しい器具が登場した。

牛の去勢器具の進化は

とどまることを知らず

次々と

新しい発想で

より良いものが生まれてくるのは

大変喜ばしいことである。

私もこの「電動」&「ニコイチ」捻転器具を

いつか必ず

試してみようと思う。


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デメキン牛は乳が出る!?

乳房炎で食欲不振ということで、

輸液治療のために頭部を保定したら、

BlogPaint「この牛、デメキンだね。」 

「そーなのよ。」 

「デメキンの牛って、乳が出るっていうけど、この牛はどうなの?」 

「そーなのよ。出るよー、この牛。」 

「やっぱり。」 

「ガンガン出るやつが乳房炎になっちゃって、がっくりよ。」 

「それはがっくりだね。」 

「デメキンの牛はだいたい乳が出る。」 

「ほんと、それはどこに行ってもよく聞く話たね。」

「何でなんだべ?」 

「さぁー・・・何なのかね。」 

IMG_6875私がこの仕事を30年以上続けてきて

デメキンの牛に出会うのは

よくあることだった。

その多くが

というか

出会ったデメキン牛の全てと言って良いほど

どの牛もみな

高泌乳能力の持ち主だった。

これは一体なぜだろう?

考えてみると不思議なことである。

一つの推論として

「デメキン牛は新陳代謝が良い」

IMG_6874と考えてみるのはどうだろう。

この発想の根拠は

ヒトのバセドウ病である。

バセドウ病の症状のひとつに

眼球突出がある。


 甲状腺のホルモンが上昇する
     ↓
 バセドウ病に類似した状態になる
     ↓
 特徴的な症状として眼球の奥の組織に炎症が起こり
     ↓
 デメキン牛になる
     ↓
 新陳代謝が亢進しているので
     ↓
 泌乳量が増加する



したがって

「デメキン牛は乳が出る。」

そんな仮説を

立ててみたい。

どなたか

この仮説を

デメキン牛と

そうではない牛の

甲状腺ホルモンを測定して

データーを集めて

証明してもらえませんか?(笑)



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仔牛の「低体温注意報」と「監視不足警報」(ついで)

昨日は夜間当番だった。

冬期の臨床獣医師の診療車内の薬品、

特にリンゲル液などの輸液剤(いわゆる水もの)は、

夜間待機の車内に置いておくと、

凍結してしまうので、

昼間の往診が終った後、

それらを必ず室内に入れておかなければならない。

IMG_6889診療所で夜間待機をする場合は

事務所の暖房のヒートパネルの上に

輸液剤を並べておく。

こうして温めておけば

次の日は一日中暖かい輸液剤を使用でき

凍結することはない。

IMG_6882また

自宅待機をする場合も

適当な大きさの籠の中に入れた輸液剤を

自宅の玄関近くの暖かい場所に置いておく。

IMG_6881こうして

厳冬期の夜間でも

常に温かい輸液剤を使うことができる。

冬期の仕事は

夏期の仕事に比べて

ひと手間もふた手間もかかる。

昨日の

朝6時頃に

糠内地区の酪農家の◎さんから

仔牛が下痢で冷え切って起立不能

との連絡が入った。

昨日の早朝の気温は

帯広市街でマイナス16℃だったから

十勝でも屈指の低温地域である糠内地区では

マイナス20℃位になっていることは間違いなかった。

(グラフは気象庁のHPより転載)

IMG_6896車から降りると

この時期らしいキリキリと

締め付けるような空気が

牧場を包んでいた。

仔牛の体温は36℃以下に下がり

血圧も低下していたので

点滴の留置針を刺す頸静脈は

仔牛を逆さ吊りにして血管を怒張させなければならなかった。

点滴をセットしているとき

また胸のポケットの電話が鳴った。

同じ糠内地区の◯さんからで

仔牛が下痢でぐったりして起立不能だという。

IMG_6884同じ糠内地区なので

◎さんの往診を終えた後

◯さんの牛舎へ向かった。

この仔牛もまた

体温が低下し

血圧が下がっていて

留置針を入れる血管を怒張させるために

仔牛を逆さ吊りにしなければならなかった。

点滴をセットし終えた時

IMG_6887他にも2頭

下痢で調子の悪い仔牛がいる

ということで

残りの2頭にも

点滴治療を施した。

時計の針は

午前8時半を過ぎていた。

厳冬期の夜間当番の早朝に

町内で最も寒い地区の

仔牛の診療に出向くという

この季節の

いかにもこの時期らしい

典型的な仕事が

しばらくは続くだろう。



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仔牛の「低体温注意報」と「監視不足警報」(おまけ)

前回紹介した、

Poly Dome 社製の calf warmer(カーフウォーマー)は、

IMG_6754生まれたばかりの濡れ仔を温めるのには、

威力を発するようである。

Warmer(ウオーマー)すなわち、

「温め器」であるから、

IMG_6755その目的は、

「仔牛を温める」ことのみで

それ以上でもそれ以下でもない。

その器具をどう使いこなすかが

飼主さんの技術であろう。

注意して欲しいのは

下痢などの腸炎になった仔牛や

熱発して肺炎症状のある牛が

体温が低下したということで

前回の記事の飼主さんのように

calf wormer を使うのは

疑問である。

calf warmer の中に病気の仔牛を入れて

IMG_6750そのふたを開けておいて

点滴治療をしたのだが

それをセットしてその場を立ち去った私も

説明不十分で迂闊だった。

飼主の▽さんはその後

途中で仔牛が震えだした

ということで

仔牛がさらに冷えてきたのではないかと思い

点滴を外して中止して

calf warmer のふたを閉じてしまったのだ。

これを後から聞かされた私は

忸怩たる思いに苛まれた。

仔牛が震えてきたのは

自分の体温回復の反応だったかもしれない。

さらに点滴によって

循環血液量の増加が期待できるのに

それを外して勝手に中止してしまい

calf warmer のふたを閉じて

仔牛を温めようとしたこと。

これは

点滴の効果よりも

calf warmer の効果を優先した行為で

病気の仔牛に対して

点滴治療よりも

保温を優先した行為だった。

それが結局この仔牛の

命を奪ってしまったのではないか。

ここで確認しておきたいことがある。

IMG_6624calf warmer というのは

保温器具であって

治療器具ではない。

病気の仔牛に対して

IMG_6623補助的な使い方は可能だが

点滴を中止してまで

calf warmer の効果に頼るのは

本末転倒の行為である

と言わざるを得ない。



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仔牛の「低体温注意報」と「監視不足警報」

「仔牛がシバれてしまって、立てないんだけど・・・」

そんな診療依頼があった酪農家の▽さん。

牛舎に着いて

仔牛がどこにいるのかと思ったら、

「今この中で温めているんだけど・・・」

IMG_6754それは最近、

地元のJAで補助を出して導入している、

仔牛を温める青いドーム型の装置だった。

頑丈なつくりの中に

電動で温風が充満し

その中に仔牛を入れて

仔牛を温める装置である。

「凍れちゃって・・・」

診ると

体温は35℃以下

心拍数は70

ぐったりと頭部を投げだし

意識は朦朧。

IMG_6749「・・・これは即点滴だね。」

早速

点滴をしようとしたが

血圧が低下していて

頸静脈を堰き止めても血管が浮いてこない。

仔牛を逆さ釣りにしてようやく静脈に留置針を挿入し

写真のように装置の中で点滴を開始。

IMG_6750しかし

この仔牛の意識は

戻ることなく

翌日には

死亡してしまった。

実はこの仔牛は

1週間前に下痢で治療歴があった。

それが完治していないまま

寒気の中で体温を失い

急激に症状が悪化して

手遅れになってしまったと思われる。

仔牛を温める立派な装置があっても

仔牛の状態に気づくのが遅ければ

IMG_6755手遅れになり

仔牛を死なせてしまう。

最近はどうも

手遅れの症状で呼ばれることが

とても多い気がする。

仔牛を温める装置が普及するのは

良いことなのだが

それを使いきれていないようだ。

厳寒期は

「低体温注意報」

が出ているのだが

そればかりではなく

相変わらずの

「監視不足警報」

も鳴り続けている。

なんとかならないものか・・・



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