北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

近ごろ流行りの?産前起立不能(1)

最近多いと感じている症例のひとつに、

乳牛の産前の起立不能がある。

昔からある症例で、

原因も様々なのだが、

産前に立てなくなる原因の中で

最近特に多くて気になるのが

四肢の疾患である。

股関節脱臼や関節炎や脊椎損傷などによって

四肢がダメージを受けて

お産を前にした乳牛が立てなくなる

という症例が多くて気になるのだ。

飼主さんの稟告は

「乾乳の牛が立てなくなった・・・」

である。

昔はその原因が

栄養不足の低カルシウム血症が多く

カルシウム剤で治療すると多くが治癒した。

ところが今の牛は

原因が栄養不足ではなく

四肢の疾患で立てないので

治癒させるのが難しく

ほとんどの場合

寝たきりになってしまう。

乾乳牛が寝たきりになってしまったら

どうするかといえば

分娩予定日近くなるまで

足場の良いところに寝かせておくしかない。

その間は消炎鎮痛剤などを投与するくらいしか

IMG_4353治療方法がないのである。

お産を前にした乾乳牛が

お産の予定日近くなるまで

寝たきりで飼われている

IMG_0940という牛のいる酪農家は

今や珍しくはない。

当たり前のように

どこの町村の酪農家にも

そのような

IMG_0358産前起立不能牛症

に陥った牛が

寝たきりで飼われている。

足腰の弱った乳牛が

寝たきりで

お産の予定日まで飼われている

という光景が

当たり前のように

見られるように

なってしまったのである。

(この記事続く)

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和牛仔牛の直腸脱(3)

強い怒責が、

何度も繰り返されることによって、

一度出てしまった直腸脱が、

なかなか収まらず、

これといった方法も思い浮かばず、

治療が行き詰まってしまった。

結局

砂糖をまぶして

抗生物質を投与する以外は

何もせずに

放って置くことになってしまった

〓牧場の生後約2ヶ月の和牛の♂。

それから約1ヶ月ほど経った頃

別の用事で〓牧場に行った時

この仔牛のことを記号さんに聞いてみた。

「・・・ところで、あの直腸脱の仔牛、どう?」

「あー、あの仔牛ですか、治りましたよ・・・」

「・・・え、ほんとに?」

「はい、あの後何日か抗生物質も打ったんですげと、元気良くて捕まえるのも大変なんで、もうしょうがないから、注射もやめて放ったらかしにしておいたんです・・・」

「・・・何もしなかったんだ。」

「はい、3週間くらい何もしないで、直腸も出っ放しでした・・・」

「・・・3週間!?」

「はい、で、その後何日間か、直腸が見えなくなったり、出たり入ったりするようになってきて・・・」

「・・・出たり入ったり!?」

「はい、そんな状態が4、5日続いていたんですけど・・・」

「・・・だんだん出なくなってきたんだ。」

「はい、そのあとはもう出なくなって治っちゃいました・・・」

「・・・怒責は消えたの!?」

「そうですね、ふんばらなくなりました・・・」

「・・・便はどう?」

「便はまだ他の牛より柔らかいですけど・・・」

IMG_2667〓さんに見せてもらった

例の仔牛は

他の牛達に混じって

普通に元気だった。

ただ

お尻をよく見ると

他の牛よりも

乾燥した便が多くこびりついて

やや広範囲に汚れていた。

しかし

直腸脱がひどかった頃に比べて

肉付きも骨格もしっかりしてきて

仔牛は普通に成長していた。

  *  *  *

この牛が直腸脱になった原因として

コクシジウム症による下痢が続いたことによる

長期間の強い怒責が考えられる。

だが、普通の仔牛はそれのみで直腸脱にはならない。

〓さんから後で聞いた話だが

この仔牛の母親も

お産が間近になると

直腸脱を起こしていたのだという。

したがって

コクシジウムの怒責に加えて

この仔牛の遺伝的な素因が加わって

結果的に直腸脱になったと考えられる。

そして

その治療の決め手は

抗生物質の注射でもなく

砂糖の直接塗布でもなく

時間の経過であった。

この仔牛の直腸脱を治した決め手は

仔牛が成長するという

「時間の経過」

であった。


(この記事終わり)


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和牛仔牛の直腸脱(2)

排便のたびに強い怒責が起こり、

IMG_2520その結果として、

直腸脱がおこり、

脱出部分を手で戻しても、

再び強い怒責によって、

直腸が出たままになってしまう。

IMG_2518排便はさせぬわけにはいかないし

肛門を外科的に狭く形成術を施したとしても

強い怒責によって

繕った部分の組織が破れて

炎症と感染が起こる危険が大きい。

IMG_2519怒責を抑える薬剤を注射しても

薬剤が効いているうちは良いが

効力が切れたら元に戻ってしまうだろう。

結局これといった治療方法が思い浮かばす

かつて同僚のT獣医師が採用した

IMG_2521砂糖をまぶしておく

という方法だけが

選択肢として残ったので

畜主の〓さんの家で使っている

市販の砂糖をまぶして

その日の治療は終わった。

翌日

〓さんの仔牛を診させてもらうと

IMG_2528「こんな感じです・・・」

「・・・相変わらず、ふんばってるね。」

「はい、外に出てるところが乾いてますが・・・」

「・・・出たところの大きさは変わらないね。」

「そうなんです・・・」

IMG_2527「・・・でも・・・出来ることが思い浮かばない。」

「そうですね、しばらくこのまま放置して見ます・・・」

ということになり

感染を防ぐための抗生物質の注射だけを指示して

私は〓牧場から

次の往診先に向かった。


(この記事続く)


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和牛仔牛の直腸脱(1)

「お尻から腸が出てしまうんですが・・・」

そんな稟告の、

〓牧場の、

約2ヶ月齢の和牛の子牛。

IMG_2516診てみると、

肛門から約15センチほど、

直腸が反転して露出している。

露出した直腸の粘膜は

外傷なのか

感染なのか

IMG_2517大小の黄色い壊死組織の塊が

びっしりと付着していて

正常なピンク色の腸粘膜からは

程遠い姿をしていた。

とりあえず

手袋を履いて

脱出した直腸の部分を

用手整復を試みた。

脱出した部分がうっ血を起こし

血液や漿液が溜まって浮腫んでいるので

上手く押し込む事が出来ない。

IMG_2519さらに

押し込もうとしている途中に

強い怒責が起こり

あっという間に元の通りの姿になってしまう。

それを何度か繰り返すうちに

やっと

脱出した部分を全部押し込む事ができた。

IMG_2518ところが

それは束の間のことで

再び強い怒責が押し寄せて

直腸はまた

あっとうまに元の脱出した姿に

戻ってしまった。

私は無力感に襲われた。

IMG_2519「・・・うーん、これは手で戻すだけじゃ駄目だね。」

「駄目ですね・・・。」

「・・・下痢もしてるね。」

「はい、ずっと長いこと下痢していて、コクシの治療はしてるんですけど・・・。」

「・・・外科的に縫ったりしても、怒責の力で組織が千切れてしまうね。」

「でしょうね・・・。」

IMG_2520「・・・コクシも長引くから、怒責はそう簡単にはおさまらないだろうし。」

「でしょうね・・・。」

「・・・感染を抑えるのに、抗生物質の注射は続けましよう。」

「はい・・・。」

「・・・あと、お砂糖ある?」

「砂糖ですか?・・・。」

「・・・うん。普通のお砂糖、まぶすと浮腫みを和らげる作用があるから」

IMG_2519以前、同僚のT獣医師が

ロバの直腸脱に砂糖をまぶして用手整復をして

治癒した事があったので

それを見習って

今回の治療に採用してみることにした。

というか

もう、この子牛の直腸脱の治療法としては

IMG_2520それ以外に良い方法が

思い浮かばなかった

というのが正直なところであった。

〓さんに砂糖を持ってきてもらい

脱出した直腸にまぶしてみた。

「・・・これで、あと抗生物質をしばらく続けて。」

「わかりました・・・。」

IMG_2521「・・・下痢と怒責が治ればいいんだけど。」

「そうですね・・・。」

「・・・また明日様子を見にきますね。」

「お願いします・・・。」

私は〓牧場から

次の往診先へ向かった。


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和牛子牛のちょっと変な出べそ(3)

生後10日目で、

異常に突出した臍帯部分に、

イージーカットのゴムリングを装着し、

4日目に確認した時には、

装着部位から先が綺麗に干からびて、

出血もなく、化膿もほとんどなく、

経過良好だった、

子牛の出べそ。

もう大丈夫だからと思って安心し

その事を忘れかけていた矢先の

施術から12日目の朝

▽牧場の従業員君から電話がかかって来た。

「ゴムリングを付けたところの皮膚が赤くむくれて腫れているんですけど・・・」

「・・・そうですか、わかりました。」

着いて腹部を診ると

ゴムリングより腹側の皮膚が切れて

めくれ上がり

赤い皮下組織がむき出しになっていた。

AC999370-21A2-43FA-B581-F7BED4A291FFその部分を触診すると

硬結した部分が直径約5センチ程度で

腹腔内へとつづいていた。

しかし

一般症状には異常がなく

元気に哺乳しているという。

ここで

前回コメントを寄せていただいた皆さんの

FC0357C3-1BC2-40EF-95B6-B99BCBFA3E38ご助言のように

超音波検査をするべきだったのだが

超音波装置をいつも持ち歩いていないことで

つい、持参するのを忘れてしまい

今回も画像診断をしないままで

治療を施すことになってしまった。

することは簡単だった。

10199F60-1E1C-4DDC-8F63-AE2DECB4430Cなわち

ゴムリングで壊死させた部分を取り外し

皮膚が無事な臍帯部の

数ミリ近位の箇所へ

新しいゴムリングを装着した。

BD15B101-825A-4656-89E7-91D16FFFB074「・・・とりあえずこれで、また様子を見て。」

「わかりました・・・」

かくして

それから2週間以上たった後も

▽牧場からは何の連絡もなかった。

先日、気になって

▽牧場の従業員君に

こちらから電話を入れてみた。

「・・・あの臍にゴムリングつけた子牛、どうなりました?」

「あー、はいあのうしは無事に売れました・・・」

「・・・臍の赤向けの部分どうなりました?」

「あー、あれからリングの先っぽはかさぶたみたいになって取れました・・・」

「・・・赤く剥けたところは小さくなった?」

「やっぱり、500円玉くらいの大きさの乾燥しないところが残りましたけど・・・」

「・・・じゃあ、売れても値段は安かったんじゃない?」

「いえ、赤い部分にヨーチンをかけて、事情を全部話して出したので、普通に売れたと思いますよ・・・」

かくして

ほんとに普通の価格で売れたのかは

定かではないが

とりあえずこの仔牛は

無事に売れたのは確かなようだった。

これから先

この牛の臍に

不具合が起こらないように

祈るのみである。


(この記事終わり)


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和牛仔牛のちょっと変な出べそ(2)

臍帯部からまるで陰茎の様に、

薄赤い組織が変な形で10cm程度露出していた、

和牛仔牛の臍帯炎。

哺乳不振などの全身症状はなかったので、

外見上の突出部だけを取り除く目的で、

イージーカットのゴムリングを装着。

装着した5日後に

IMG_2445どの様な状態になったかを

▽牧場の従業員君に尋ねたところ

「目立たなくなりました。」

とのことで

その仔牛を捕まえて

臍帯部を観察した。

50AB6219-54B6-41A8-B739-32D37F587D61なるほど

これは全く目立た無くなっていた。

そればかりではなく

ゴムリングを装着した部分から先が

血流が止まったことで

赤く生々しかった部分は

2DCA6041-91EC-4C20-A3DE-D24F7D5BC9F4完全に干からびて

茶褐色の干物の様に

臍帯の先端にくっついていた。

「・・・おぉ、これは上手くいってるね。」

「はい・・・。」

「・・・このまま放っておけば、自然に落ちるから、何もしなくていいね。」

「はい・・・。」

私はイージーカットの威力を

あらためて感じていた。

上手くいったと

とても晴れやかな気分で

▽牧場を後にして

次の往診先に向かった。

そして

この仔牛のことは

私の頭からほとんど消えていた。

ところが

それから9日経過した朝に

▽牧場の従業員君から電話がかかって来た。

「あの、ヘソを治療してもらった仔牛なんですけど・・・」

「・・・?。」

「ゴムを付けたところの皮膚が赤くむくれて腫れているんですけど・・・」

「・・・わかりました、診に行きます。」

かくして

私はまたこの仔牛と

再会することになってしまった。


(この記事続く)


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和牛仔牛のちょっと変な出べそ(1)

「仔牛の出べそ、診て欲しいんですが・・・」

よくある往診依頼である。

こういう場合、

最も多いのが、

臍帯の細菌感染による、

臍帯炎である。

軽度の場合は

抗生物質の筋肉注射を数日すればよく

熱発や食不振などの全身症状が出た場合は

輸液と抗生物質を数日施せばほとんどが回復する。

次に多いのが

同じく細菌の感染による

臍帯の膿瘍である。

膿瘍が大きければ

切開排膿して

その後は同様である。

続いて多いのが

臍ヘルニアである。

軽度であれば

放置していても治る。

ヘルニア輪が大きい時は

中の腸管などを腹腔に戻した状態で

ヘルニアを塞ぐための

バンデージを巻いたり器具を装着したりすれば治る。

ヘルニアがさらに大きい場合は

外科手術によってヘルニア輪を塞ぐ。

子牛の出べそは

ほぼ上記の対応で治癒させることができる。

さて

今回はどんな出べそなのだろう

と、∇牧場着いてみると

私が今まで経験したことのない

050724DC-0C33-4BB4-991A-22FF800EC457不思議な出べそだった。

生後10日目の黒毛和牛の♂。

二箇所の赤剥けた臍帯が

まるで角のように遺残していた。

「これ、どうすれば良いですか・・・」

「・・・このままじゃ普通の値段では売れないか。」

「ええ、なんとかなりませんか・・・」

「・・・うーん・・・切っても出血して汚くなりそうだし。」

咄嗟に思いついたのは

イージーカットだった。

「・・・そうだ、ゴムリングつけましよう。」

私は一旦事務所に

イージーカットを取りに戻った。

子牛の臍にイージーカットを付けるのは

FCFDE44F-9D2B-4966-9316-DD66823CB211ヘルニアの場合も多いが

こんな大きな臍帯炎の時にも

使えるのではないかと思った。

装着を試みると

臍帯の根元の部分が

直径5センチ程度あり

イージーカットのゴムリングを

2ABD0E33-FE5C-4A80-8383-D561FB45B4BF器具で目一杯拡げて

ようやく装着できるほどだった。

一本のリングだけでは

漿液や尿などの湿気でズレてしまう可能性も考え

駄目押しとしてもう一本

二本のリングを装着した。

D935D878-9084-4F58-8D59-F0CECEF9E390「これで1週間くらい様子見ましょう。」

抗生物質を注射し

∇牧場の従業員君に

残り3日分の抗生物質を渡し

次の往診に向かった。


(この記事続く)


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トンデモ難産・Part2

「お産なんですけど、胎児が奥の方にいて来ないので、診て欲しいんですけど・・・」

〓フアームの従業員の▽君からだった。

「・・・まだ早いんじゃないの?」

「いえ、昨日の夜から産気づいているんですけど・・・」

「・・・わかった、診に行きます。」

「お願いします・・・」

先日、奇形胎児のトンデモ難産を介助した〓ファームから

また難産で呼ばれてしまった。

巡り合わせの悪い時とはそういうものである。

牛舎に着いて

産道に手を入れてみると

前足らしいものが1本と

胎児の頭部が1つ触れ

その奥にもう1本の足に触れた。

足にロープをかけようとして

手前の足を引っ張ってみたが

どうしたものか

足が伸びて来ず

頭の後ろにある足も

伸びて来ずに

頭と合体しているような

硬く固まった印象だった。

・・・これは奇形かな・・・

私の脳裏に一瞬そんな考えがよぎった。

しかし

最近のお産の経験では

奇形かな・・・と思った胎児の半分以上は

奇形ではなく単なる失位であることが多かった。

胎児の奇形による難産は

私が若かった20年ほど前に比べて

かなり減ったな、と思っている。

その理由の一つに

平成14年に改正された廃棄物焼却炉の構造基準

がある。

簡単に言えば、ドラム缶や市販の焼却炉などの

基準を満たさない焼却炉で廃棄物を焼却することが

違法になったのだ。

これが違法になったことで

酪農場の敷地内で安易に廃棄物を焼却することが減り

農場内のダイオキシンなどの催奇形性のある有害物質が減り

結果として、胎児の奇形の難産に遭遇することが減った・・・

・・・のではないかと

私は、自分の経験をもとに推測している。

最近は、胎児の奇形による難産は

20年前頃から比べると

本当に少なくなっている。

これは実感として私が感じていることである。

だから、最近は

・・・これは奇形かな・・・

と思った難産胎児の半分以上は

奇形ではなく単なる失位であったのである。

さて

今回の〓ファームの難産も

胎児が奇形かどうかは半信半疑のままだったが

失位を全く整復できそうもなかったので

即刻、帝王切開をすることにした。

牛が診療所に運ばれて

いつものように手術台に乗せられて

手術が始まった。

腹壁を切開し

子宮の外からの胎児の足を掴み

子宮を持ち上げて

子宮を切開した時

胎児が異常な形をしていることが

IMG_2455明らかになった。

「・・・奇形ですね・・・」

「・・・そうですね・・・」

私は助手のK獣医師と顔を見合わせた。

いつもの切開幅では胎児を摘出することができず

IMG_2453子宮をさらに大きく切開して

とんでもない形をしている胎児を

ようやくチェーンで引き上げることができた。

胎児の形は

反転性裂体と言って良い

IMG_2452重度の奇形胎児だった。

(写真は閲覧注意)

さらにこの奇形胎児の他に

奇形ではない別の胎児が子宮の中に居て

双子の胎児の片方だけが重度奇形という

IMG_2454私には初めての経験の

トンデモ難産だった。

〓ファームという同一牧場で

奇形胎児の難産に

私は2回連続で遭遇したことになる。

こんなことは今までずっと

ご無沙汰していた事だった。

ちなみに

〓ファームの

牛舎の裏の敷地の奥には

大きなコンクリートの筒状の

簡易の焼却施設があり

最近はそこから

ものを焼く煙が

立ち上っていることが多い。

その焼却施設が

平成14年に改正された

焼却炉の基準を満たしているかどうかは

私にはわからない。


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トンデモ難産

「お産なんですけど、出てこないので往診お願いします・・・」

〓ファームの従業員の◯君からだった。

「・・・どんな状態?」

「前足2本と頭は来てるんですけど、そこから出てこないんです・・・」

「・・・前足2本と頭が来てるんだったら、そのまま引っ張れば出るでしょ。」

「それが・・・出ないんです・・・」

「・・・???。」

なんだかよくわからない稟告だったが

◯君の真剣な声に応える気持ちと

頭の中の「???」の気持ちが

混ざり合ったまま

〓フアームに向かった。

着いて牛を診ると

胎児の上半身が陰部から外へ出ている。

前足と頭は完全に外へ出ているのだ。

「・・・これならそのまま引っ張れば出るんじゃないの?」

「それが・・・出ないんです・・・」

「・・・何で???」

おかしいなと思って

産道に手を入れると

「・・・何だこれは!」

胎児の下半身が

産道の中で

正座しているのだ。

左右の膝関節が畳まれて

さらに飛節も畳まれて

両足の蹄にも触れる。

おすわり状態で

産道に侵入していた。

後肢の整復は

きつくてとても無理だった。

何という体位だろう・・・

「・・・このまま強く引っ張るしかないね。」

私は牽引滑車を用意して

従業員君たちと一緒に

強引に胎児を引いた。

母牛の体がずれるほどの牽引だった。

「・・・キツイなこれは・・・でももう引き切るしかない・・引いて!」

胎児の上半身がわずかに引き出されて来た。

「・・・そのまま引いて!」

IMG_2398ズボッと出て来た胎児は

F1の胎児だった。

下半身をよく見ると

カエルの後足の形に

硬直している。

IMG_2399「・・・何だ?、この形は!?」

「曲がったまま硬くなってますね・・・」

「・・・これじゃあ、引っかかって出ないわなぁ。」

上(前)半身はまともなのに

下(後)半身がおすわりしたまま

IMG_2401硬くなっている

今まで見たこともない

奇形胎児だった。

「・・・こんなフザけた奇形があるのかい!(◎_◎;)」

私と従業員君たちは

苦笑するしかなかった。

「親がまだ力んでますけど・・・」

◯君がそういうので

もう一度産道へ手をいれてみると

「・・・あ、もう1頭いるよ、今度は逆子だ。」

IMG_24062頭目の後肢を牽引し

2頭目はすんなりと出すことが出来た。

それにしても

F1胎児の双子というオチまでついて

1頭目の下(後)半身だけが硬直して

お産を阻んでいるという

こんな難産は

35年も臨床獣医師をやっていて

初めての経験だった。

トンデモない難産だった・・・


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育成♂和牛の出べそ

「育成♂牛の出べそを治して欲しい。」

という稟告。

飼い主の◯さん自らの希望で、

診療所へ搬入して、

手術台での初診となった。

どんな状況かわからなかったが、

現場(◯さん宅)で診療するよりも

診療所に連れて来てくれた方が

様々な対応ができるし

獣医師も複数いるのでありがたい。

出荷を控えた大きな育成牛ならば

それが賢明な方法である。

加えて

最近、私が遭遇するいわゆる腫れ物の治療は

膿瘍だと思ったら血腫だったり

血腫だと思ったら腫瘍だったり

腫瘍だと思ったらヘルニアだったり

と、予想を覆され

現場での診断が不確実なことが多かった。

そのようなわけで

ここはしっかりと

診療所へ搬入してもらって

複数の獣医師による正しい診断のもとで

最適な治療をするのが良いと思った。

IMG_2292牛が運ばれて来て

鎮静剤を投与され

手術台に仰臥になった。

臍帯部の直径約20僂亮陲貶だった。

IMG_2293まずは超音波の画像診断。

画面にはキラキラと浮遊物が見えた。

ここでおおよその見当がつき

次に念のための穿刺検査。

IMG_2295注射器には黄色いクリーム状の膿汁が吸われてきた。

ここで診断は膿瘍と確定。

ヘルニアとの合併があることも念頭に入れつつ

患部の毛刈りをして消毒し

IMG_2301メスを入れる。

クリーム状の膿汁がとろーりと出てきた。

手を入れてヘルニアの無いことを確かめて

さらに大きく切開し

IMG_2305ホースの水道水で洗浄。

十分洗浄し

出血の程度を確認して

抗生物質を注射して

IMG_2308施術はそれで終了。

手術台を下げて

鎮静を解き

牛を起立させて

IMG_2310◯さんには

明日以降投与する抗生物質を渡し

治療を終了した。

今回の腫れ物は

膿瘍だと予想して

その通りに膿瘍だったという

最も簡単な治療で

めでたく終わることができた。


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シダーの「米国仕様」と「日本仕様」・追記

米国で売られている「米国仕様」のシダーが、

我が国で売られいている「日本仕様」のシダーよりも、

IMG_2209スタイリッシュで使い勝手が良いことに気づき、

悔し紛れに、

米国人の手先の不器用さがそうさせたのだ、

などと結論をした前回の記事(笑)。

IMG_2210それを読んでくれた

同窓生でZoetisの社員のI先生より

メッセージが送られて来た。

とても丁寧に

IMG_2212誠実な文章で書かれているので

勝手に変えてしまうのも申し訳なく

また自分の理解力以上の

大切な内容が書かれているようでもあり

IMG_2211いただいたメッセージを

できるだけそのまま

書いておくことにしたい。

ご本人からの了解も得ているので

以下どうぞお読みください。

安田さん、

大変ご無沙汰しております。後輩のIです。お元気ですか?

CIDRの件、拝読いたしました。米国で購入されたものはCIDR ではあるのですが、プロジェステロンが1.38g含有のものです。日本で流通しているものは1.9gです。米国等では7日間挿入を前提としておりますため、プロジェステロン量の少ない1.38gのものが承認されております。
日本では15日間挿入までの用法が承認されておりますため、1.9gのもののみを流通させております。

ご質問の挿入期間の違いですが、1つは、おっしゃられるようなエストロジェンなども含めての特に搾乳牛に使うホルモン剤類に対する安全認識の差と、もう1つは、現実的には承認時期の違いが背景にございます。

米国では安息香酸エストラジオールが乳牛に使用出来なくなって久しいですが、その後、エストラジオール製剤で唯一、米国で搾乳牛への使用が承認されていたエストラジオールシピオネートも承認を取り下げるように米国政府から依頼されたということが西暦2000年初頭にありました。EU からの影響です。

一方、日本で今のCIDR(1.9g)が承認されたのが1995年でした。イージーブリードの名称です。この時に搾乳牛も肉牛も一緒に承認を得ております。その頃はCIDR単独挿入(他のPGやE2などを用いない)にて7日間、12日間、15日間など、主に卵巣静止など、治療目的での様々な挿入期間での効果確認がなされていました。一方、米国において搾乳牛に承認を取得したのは2003年になります。

この背景には、有名なオブシンクが論文として発表されたのが1995年で、以後、盛んに繁殖プログラムが議論されていました。そして、CIDR 自体の使い方も繁殖プログラムとして、他の薬剤と併用する使い方がメジャーでございました。

このようなことから、米国では少し時間を待って、オブシンクの最初のGnRH投与とPG投与の間の7日間挿入をターゲットに、CIDR 本体における残留(一回使用した後の余剰のプロジェステロンの量)をもっと少なく出来ないか、ということで、より少量のプロジェステロンを含有させた新しいCIDR として1.38gのプロジエステロンのものを作り、承認を取ったということでございますが、日本とは効能効果が若干異なり、繁殖プログラムとしての使用方法での承認になります。

日本では単独挿入でのご使用も当然ございますので、そのまま1.9gを継続しております。

長くなり申し訳ございません。

という

大変丁寧なお答えを頂いた。

I先生

どうもありがとうございました!(^^)。

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帝王切開すべきだったのか・・・(2)

「◉さんの牛、どうでした・・・?」、

昨日の早朝、

臀位の難産で失位を整復中起立不能、

吊起しながら、

やっとの思いで介助娩出させた、

◉さんの初産の牛が気になっていたので、

この日往診に行ったK獣医師に聞いてみた。

「・・・あぁ、あの牛・・・立ってましたよ。」

「立てましたか・・・。」

「・・・はい、でもね・・・子宮頸管あたりに穴があいてますね。」

「え・・・。」

「・・・子宮の漿膜面に直接触れたんで。」

「そうですか・・・。」

「・・・どうしようもないですけどね。」

難産の介助で

膣壁や子宮頸管付近が穿孔してしまうことは

しばしば起こることだったが

穿孔の程度と

穿孔の場所によって

その後の母牛の運命は大きく変わる。

腹腔内出血や

腹膜炎によって

食欲が回復せず

予後不良になってしまう牛がいるかと思えば

傷が自然に塞がって

炎症もおさまり

食欲が戻って治癒する場合もある。

私はそのどちらも何回か経験をしていた。

「・・・あとは運を天に任せるしかないですね。」

「そうですか・・・。」

手は尽くした

とはいえ

失位整復によって

産道に激しいダメージを与え

穿孔させてしまった責任は私にある。

今後の治療としては

感染症の予防として抗生物質を投与し

その後の回復を祈るのみ

という

なんとも歯がゆい治療法しかない。

その数日後

往診に行ったN獣医師から

「・・・◉さんの牛、水飲んで、エサ食べるようになりましたよ。」

「それは良かった・・・」

「・・・◉さん、諦めてないです。」

「それは良かった・・・」

N獣医師は

◉さんに牛の状態を説明し

今後この牛がどのようになる可能性があるか

色々と話しをしてきてくれていた。

このまま治ってくれるのか

再び種付けして妊娠させることができるのか

1乳期だけ搾乳して肉にするのか

色々と選択肢はあるが

初産の牛なので

その価値を損なわずにいて欲しいと

願うのみであった。

その数日後の朝

◉さんから

またその牛を往診して欲しい

という依頼があった。

往診に行ったのはN獣医師だった。

私は別の地区に往診へゆき

昼に事務所へ戻ると

N獣医師も往診から戻っていた。

「・・・安田さん、◉さんの牛、死んじゃいました。」

「え・・・。」

「・・・昨日までエサ食べてたのに、今朝急に様子がおかしくなったらしくて。」

「・・・。」

残念な結果になってしまった。

IMG_2231今回は

初産の難産・・・

予定日より遅れ・・・

臀位の胎児失位・・・

整復途中で起立不能・・・

こういう場合

強引に経膣分娩をさせると

子宮頸管部がダメージを受け

穿孔して

腹膜炎を起こして

予後不良になる

ということが示された

残念な症例になってしまった。

後悔先に立たず・・・

帝王切開すべきだったのか・・・


(この記事おわり)


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帝王切開すべきだったのか・・・(1)

先日の夜間当番の朝、

「お産で、お尻しか触れない・・・」

という酪農家の◉さんからの電話。

臀位の難産である。

これはよくあることなので

まずは双子を想像。

または単体の臀位もありうる。

着いて診ると

本当にお尻だけで

後肢は全く触れない状態だった。

「初産で、予定日も過ぎているんだけど・・・」

という事なので

双子ではなく単体の可能性が高い。

(これはちょっと手ごわいかな)

とは思ったものの

臀位の胎児はほぼ100パーセント

整復できる自信があったので

胎児の失位を整復して

経膣分娩をさせることにした。

かろうじて触れる胎児の太ももに

IMG_2228産科チェーンをかけ

胎児の臀部を何度も押すと

チエーンをかけた後肢の膝蓋部に触れるようになった。

チエーンをできるだけその後肢の遠位に移動させて

再び胎児の臀部を何度も押すと

チェーンをかけた後肢の飛節に触れるようになった

飛節を掴めればしめたものである。

かけているチェーンを飛節からさらに遠位に移動させ

再び胎児の臀部を押すと

胎児の球節に触れるようになった。

球節を手で掴んで

繋ぎの部分へチェーンを移動させて

再び胎児の臀部を強めに押すと

「ズボッ」

と胎児の後肢が一本整復された。

「・・・よし、じゃあもう一本の後肢を直して・・・」

と、思ったところで

母牛がフラフラと腰を振り

ドサッと寝てしまった。

「・・・あー。寝ちゃった・・・これじゃあ整復できないから・・・起こせるかな?・・・」

「さっきも寝そうになったのをなんとか起こしてたんで、起きるかな。」

◉さんと私は

母牛に何度も気合を入れて

立たせようとするのだが

母牛は全く立とうとしなかった。

仕方がないので

失位の整復はひと休みして

母牛にリンゲルとブドウ糖を投与し

しばらく休ませてから

再び気合を入れて

母牛を立たせようとした。

しかし

母牛は一向に立とうとはしなかった。

仕方がないので

母牛の腰にハンガーを取り付けて

それをトラクターのフロントに掛けて

吊り上げることにした。

母牛の腰を私の胸の高さ程に吊り上げて

手を入れて

残りのもう一方の後肢の整復にかかった。

ところが

この後肢の整復が

なかなか思うようにならず

どうしても飛節に触れることができない。

IMG_2229仕方がないので

ここ10何年も使用したことのない

失位制服の道具

マジックハンドこと「ショットラー」を

久々に使うことにした。

かろうじて触れる下腿部に

ショットラーを噛ませて

臀部を押すと

やっとの事で飛節を掴むことができた。

と、その時

母牛が自力で立ち上がったので

腰につけたハンガーを外し

再び2本目の後肢の整復に取りかかった。

2本目の後肢を1本目と同じように整復し

やっとの事で

胎児の臀位を尾位へと整復し

2本の後肢を滑車で牽引し

IMG_2230ようやく

この牛の分娩介助が終了した。

途中のひと休みの時間を入れると

介助にかかった時間は

1時間を超えていた。

胎児は既に死亡しており

IMG_2231母牛は疲れ切って

分娩房の藁の上に

ぐったりと横たわった。

この日の治療は

これで終了した。

その翌日・・・

思わぬことが

起こっていた。


(この記事続く)


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CIDR(シダー)の「欧米仕様」と「日本仕様」

「このCIDR(シダー)、使ってもらえますか?」

繁殖検診に行った麕匸譴離繊璽佞痢君が持ってきたのは、

数年前に麕匸譴亮卍垢、

カナダで買ってきたというシダーだった。

シダーすなわち膣内留置型黄体ホルモン製剤である。

そんなシダーを使うことに

全く問題はないので

IMG_2209了解してパッケージを見ると

包装の袋には「Pfizer(ファイザー)」のロゴが。

世界最大王手製薬会社のファイザーの

動物部門であるファイザーアニマルヘルス製だった。

繁殖検診を始めて

シダープログラムをしようと

パッケージを開けて

アプリケータ(挿入器)に装着しようとした時

いつもと違う感覚がした。

このフアイザー製の欧米仕様のシダーの

羽の部分が薄っぺらくて折りやすかった。

IMG_2213その羽の部分をよく見ると

羽の先端部だけが太くなっていて

手でその羽を折り曲げる時に滑らないように

ストッパーの役割をするようになっていた。

「これ、ちよっと形が違ってるね。折りやすいようになってる。」

「そうなんですか。」

「俺たちがいつも使ってるやつは、こんな形になってないよ。」

「そうなんですか。」

ちよっと興味が湧いてきたので

繁殖検診が終わった後に

自分がいつも使っている日本仕様のシダーを出して

欧米仕様のシダーと比べて見た。

我々がいつも使っている日本仕様のシダーは

IMG_2212Pfizer(ファイザー)のロゴではなく

zoetis(ゾエティス)のロゴがついていた。

ゾエティスはファイザーから動物薬部門で独立した会社のはずだが

薬屋さんというのは数年経つと

名前も組織もくっ付いたり離れたり

しょっちゅう変化し続けるので

いちいち覚えていられない。

ともあれ

欧米仕様のシダーと

日本仕様のシダーに

形の上での違いのあることに気づいたのだ。

IMG_2211その形をよく比較すると

日本仕様の方がシンプルで原始的だ。

欧米仕様は日本仕様に改良を加えて

変化させたと見るのが自然で

IMG_2210形に色々手を加えてあるのだ。

おそらく使っている欧米人の意見や要望を聞き

それを参考にして形状を変えているに違いない。

日本仕様の方は

使っている我々日本人が

シダーの形に対してあまり文句を言わないので

その形状がシンプルな昔のままで済んでいるのだろう。

今私は

実際に欧米仕様と日本仕様を使い比べてみて

思ったのは

欧米仕様の方が確かに手にフイット感が高いが

日本仕様に慣れているせいもあり

この両者の形状の違いが

私の仕事の効率には全く影響は出ないだろう

ということであった。

おそらく

私以外の日本の獣医師たちも

きっと同じような感想を持つに違いない

と思った。

結論として

言えることは

「我々日本の獣医師は

手先が器用でかつ控えめなので

シダーの形くらいではいちいち文句を言わず

どんな形のものでも難なく使いこなせてしまう」

のであろう。

それに対して

「欧米の獣医師は

不器用でかつ自己主張が強いので

シダーの形にもいちいち注文をつけて

自分の使いやすいように形を変えさせないと仕事ができない」

のであろう。

という結論に

しておこう(笑)


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膿瘍かと思いきや

「横腹が急に腫れてきたんだけど・・・」

という稟告で往診した▽さんの

繁殖用の雌の和牛。

IMG_2021左の下腹部に長径約50僂

波動感のある腫れ物だった。

その表面の一箇所に

小さな外傷があった。

「・・・化膿して膿汁が溜まってきてるかもしれないね。」

私はそう言って

注射器に18ゲージの長針をつけて

穿刺検査をした。

クリーム色の膿汁が出てくるか

と思いきや・・・

IMG_2022薄黄色の透明感のある

漿(しょう)液だった。

化膿はしておらず

急性期の炎症の名残だった。

「切らないで、このまま様子見ようね。」

抗生物質を注射し

数日分を薬治して

そのまま帰ってきた。

その数日後

別の家から

同じような電話がかかってきた。

「下腹が急に腫れてきたんですけど・・・」

という稟告で往診した▶︎さんのホルスタイン

IMG_2082約6ヶ月齢の育成牛。

下腹部に長径約20僂

波動感のある腫れ物だった。

臍帯部だった。

「・・・化膿して膿汁が溜まってきてるかもしれないね。」

私はそう言って

注射器に18ゲージの長針をつけて

穿刺検査をした。

クリーム色の膿汁が出てくるか

と思いきや・・・

IMG_2083薄黄色の透明感のある

漿(しょう)液だった。

化膿はしておらず

急性期の炎症の名残だった。

「切らないで、このまま様子見ようね。」

抗生物質を注射し

数日分を薬治して

そのまま帰ってきた。

最近

このような腫れ物が立て続けにあった。

膿瘍切開の好きな私としては

なんとなく物足りない

症例ではある。


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「牛は泣き虫である」追記

「牛は泣き虫である」、

あるいは、

「牛は家畜の中で最も泣き虫である」、

という仮説を立てている。

仮説を立てるに至った根拠は、

牛が涙を流して泣いている場面に出くわすことが多い

IMG_4739からである。

そして

牛以外の動物が涙を流して泣いているところを

ほとんど見たことがない

からである。

このことについて

IMG_4708私以外の獣医師や

牛の飼主さんたちや

牛に接することの多い人たちの

反応を求めているのだが

今のところ反応がにぶい・・・(笑)

IMG_3843牛についての研究としては

あまりにも馬鹿げている

と思われているのだろうか・・・。

牛についての研究の多くは

「いかにして乳量を上げるか」

IMG_3766とか

「いかにして肉質をよくするか」

とか

畜産の収益に関するものが非常に多い。

また

「いかにして病気を減らすか」

という獣医学の研究でさえ

IMG_3765最終的には

畜産の収益上昇を目的としたものである。

中には

英国の先生の学術論文で

「牛には感情があるのか」

という質問に対してアンケートを取って

集計したものもあった。

これとて

牛にどのように接すれば

収益を上げられるかという論文だった。

IMG_3760牛に感情が無かったら

牛は生きてゆけないし

そのような調査研究は

牛をバカにしている

と私は思うのだが・・・(笑)

ともあれ

私の仮説は

IMG_3757牛に感情があることは当然として

その上で

「牛は泣き虫である」

「牛は家畜の中で最も泣き虫である」

という仮説を立てている。

IMG_3749その根拠は

牛が泣いている写真を

他の動物に比べて

いくらでも山ほど

撮ることができるからである。


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「牛は泣き虫である」という仮説

普段から、

ほとんど「牛」をメインに仕事をしている、

臨床獣医師の立場から申し上げたい。 

「牛は泣き虫である」 

という仮説を立てたいと思う。

IMG_2672日頃から、

体調を崩した牛と接していると、

その牛が

目から涙を流しているのを

IMG_2701何度も見る。

牛をメインに仕事をしている

私以外の

牛の臨床獣医師たちも

IMG_2716牛が目から

涙を流しているのを見ることは

ざらにあると思われる。

そして

私は牛以外の動物が

目から涙を流しているのを

見た記憶がない。

もちろん

IMG_1093目に疾患がある場合は別である。

目の疾患ではない時に

目から涙を流す動物は

牛以外には見た記憶がない

のである。

IMG_5102私の仕事は

牛の診療以外には

馬の診療があるが

馬ではそれを見たことがないのである。

IMG_5170馬をメインに仕事をしている

臨床獣医師からのご意見を

伺いたいものである。

また

犬や猫の場合はどうなのだろう。

IMG_2187犬や猫は

目に疾患がある場合を除いて

目の疾患以外の診療時において

涙を流すことがあるのだろうか。

IMG_5724私は

犬や猫の診療経験はあまりないので

そういう場面に出会ったことはない。

犬や猫をメインに仕事をしている

臨床獣医師の方々にも

ご意見を伺いたいものである。

それらの意見を参考にして

IMG_0476「牛は泣き虫である」

あるいは

「牛は家畜の中で最も泣き虫である」

という仮説を

実証してみたい

と思っている。

これをお読みの獣医師の皆さん

いかがだろうか。

反論や

ご意見があれば

どうかお寄せ下さい。

その時は

できれば「写真の証拠付き」

で、お願いしたいと思う。


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立てない牛を吊る・介護道具!

起立不能になった牛を、

吊起(ちょうき)すなわち、

吊り上げるという仕事。

牛を飼う農家では、

特に酪農家では、

この仕事は避けては通れぬ

面倒な仕事である。

体重が700kgほどもある乳牛が

病気や事故で立てなくなったら

それを起こすためには

道具と機械が必要である。

牛というものが大きいだけに

小動物や人間の介護などとは

全くスケールの違う

大掛かりな仕掛けが必要になる。

私も牛の臨床を始めてから35年以上

立てない牛との付き合いが続いている。

ここ数十年

病牛を吊り上げる介護道具といえば

「カウハンガー」

と相場が決まっている。

カウハンガーを牛の腰角に装着して

それをロープで吊り上げるのだ。

屋外では

ショベルやトラクターのフロントに繋いで

引き上げるという方法が主流である。

牛舎内では

梁などにロープとチェーンブロックを取り付けて

同じくカウハンガーを吊り上げる

という方法が定着している。

立てない牛を吊る方法は

ここ数十年

ずっと変わらず

ほぼ同じような道具と

同じような装置を使うことが

酪農家の間で浸透していた。

IMG_2042ところが先日

新聞紙上に

立てない牛を吊るための

新しい介護装置が開発された

という記事が出ていた。

内容は読んでいただければ分かるので

写真を貼り付けておく。

私はまだこの介護装置「モウアンシン」を

実際に見たことがないので

評価をすることはできないけれども

久しぶりに

病牛の介護のための

新しい技術が誕生したことに

嬉しさを感じている

と同時に

この装置を開発し作製した方に

敬意を表したいと思う。

今後は

この介護装置を

実際に使った方々からの

コメントを

ぜひ聞かせていただきたいと思う。


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あわや徹夜の夜当番

先日の夜当番は、

夕方は何も往診依頼がなかったので、

平穏無事だと思っていた。

ところが夜9時頃に難産が入った。

初産のホルスタインで

母牛自体が発育不良で産道が狭く

普通の大きさの胎児にもかかわらず

経膣分娩ができずに

結局帝王切開へ。

夜10時半過ぎに

同僚の2年目のT獣医師と新人のS獣医師を呼んで

なんとか無事に♂のF1胎児を摘出。

片付けが全て終わったのが

午前1時だった。

帰宅して布団に入ったのは午前2時。

ところが30分もしないうちに

枕元の電話が鳴った。

酪農家の〓さんからだった

「・・・親牛が具合が悪くて変なんだけど・・・」

こんな夜中に

お産でもなく・・・

仔牛のぐったりでもなく・・・

親牛の異変とは・・・

(よく見つけたな・・・)

と内心驚きつつ

IMG_1981〓牧場へ着いて診てみると

牛の顔は写真のように

眼球の陥没が著しく

立ち上がるのがやっと。

右の肋骨付近のPingTestをすると

広範囲の金属音が聴こえた。

「あーこれは四ペン。それも右(RDA)だから、捻れてるかな・・・」

「・・・手術かい。」

「それしかないけど、今すぐは無理だから、朝の7時過ぎに持って来てくれる?・・・」

「・・・わかった、朝一で農協に電話して車の手配するわ。」

IMG_1982高張食塩などの輸液をしながら

朝の手術の予定を立てて

帰宅して布団に入ったのが午前4時前。

ところが30分もしないうちに

また枕元の電話が鳴った。

酪農家の◎さんからだった

「・・・お産なんですけどなかなか出なくて。」

再び診療着に着替えて

◎さんの難産介助へ向かい

助産を終えたら

「・・・すみません、もう1頭、体が冷たくてふらついているのがいるんですけど。」

という追加の乳熱の診療を終えて

事務所に戻ったのは午前7時を過ぎていた。

そこに〓さんから連絡が来た。

今日は乳牛市場があって車の手配ができず

牛を運ぶのは9時頃になるという。

とりあえず

早朝のRDAの手術は

勤務時間内にずれ込み

獣医師スタッフの数を揃えて

IMG_1986手術をすることなった。

結局私は

夜間ほとんど

寝ることができなかったが

この日勤務する他の獣医師の配慮で

IMG_1985昼間を休日にしてもらい

RDAの手術は

別の獣医師に任せて

帰宅することができた。

還暦を過ぎてからの

徹夜の仕事はちょっとキツイので

この配慮はとてもありがたかった。


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角(つの)なし牛

乳牛の仔牛の角(つの)を取り除く、

いわゆる除角作業は、

獣医師にとって

あまり気持ちの良い仕事ではない。

IMG_1903飼主の酪農家にとっても

可愛がって育てて来た仔牛に

痛く辛い思いをさせるので

しばらくは飼主を警戒して

寄り付かなくなることもあるというから

きっと嫌な仕事であるに違いない。

IMG_1904我が町の一部の酪農家は

有志で除角チームを作って

年に何回か各家を巡回して

の仔牛の除角を

一気にやってしまうというシステムを作っている。

一件ごとでは負担の大きい嫌な仕事も

チームで済ませれば効率が良というわけだ。

そんな折

新聞にこんな記事が出ていた。

IMG_1930ジェネティクス北海道が

無角牛の精液の販売を開始した

という。

2頭の種牛の写真が載っていて

「エクセルシア GH カイザー ET」

の仔牛は必ず無角になり

「ディベロップ ミスターP ET」

の仔牛は50%の確率で無角になる

という。

牛の遺伝子の改良もここまで来たか

という感じである。

これは

酪農家にとって朗報だろうと思う。

獣医師にとっても

気持ちのよくない仕事が減るというのは

悪いことではないと思う。

牛の立場から考えても

痛い思いをする事がなくなるので

有り難いのかもしれない

だが

牛という生物の自己防衛の武器である

角が生えてこないのは

牛という動物種にとって

侘しく悲しいことかもしれない。

欧州の動物福祉の観点から考えれば

こういう精液の登場は

好ましいことなのだと思う。

しかし

南アジアのヒンズー教の観点から考えたら

こういう精液の登場は

神に手を加える行為として

好ましく思われないかもしれない。

日本に住む

私個人としては

「種なしスイカ」と同じように

「角なし牛」が出回るのかな

という感じである。


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