北の(来たの?)獣医師

北海道十勝地方で牛馬を相手に働く獣医師の最近考えていることを、 散文、韻文、漢詩 でつづったものです。

牛の診療

大忙しの星の下(2)

帝王切開によって、

側頭位の胎児を無事に摘出したまでは良かったが、

IMG_1949親牛の状態がどうも良くなかった。

それは、手術中に輸液をしようと、

頸静脈に針を刺した時、

留置針がなかなか血管に入らず

結局乳静脈に切り替えたことからも感じていた。

IMG_1950親牛は血圧が下がっているようだった。

血圧が下がっているから

頸静脈を圧迫してもなかなか血管が浮き出ず

針を血管に入れることが難しかったのだ。

IMG_1951その理由はよくわからないが

そのために

前肢の血流も弱くなり

手術台で下になっていた右肩付近の圧迫により

右前肢の神経麻痺が生じてしまったものと思われた。

IMG_1952麻痺によって右腕節(前膝)に力が入らず

カックン、と曲がってしまう。

「キャスト・・・しますか・・・。」

とにかく、この牛には

ちゃんと4本足で立って

IMG_1953家畜車の荷台に乗ってもらわないと困るので

応急的な処置として

右前肢の腕節がカックンとならぬようにキャストを巻くことにした。

キャストを巻き終わった牛は

ぎこちなくも、なんとか歩行して

IMG_1955家畜車の荷台に乗ることができた。

家畜車を見送り

手術室を片付けていると

診療所の職員達が

次々と出勤してくる時刻になっていた。

翌日

この牛が無事でいるかどうか

ちゃんと自力で起立できているかどうか

心配だった。

この牛の飼主さんは

搾乳牛たちを昼夜

繋ぎっぱなしで飼っている酪農家で

敷きわらをたっぷりと敷いた独房というものがない。

そういう独房がないところで飼われている牛は

足腰が弱ると、立ちたくてもうまく立てずに

そのままダメになってしまうリスクが高い。

さらに

牛の前肢にかかる体重というのは

後肢にかかる体重よりもはるかに大きく

特性樹脂のキャストを厚く巻いても

割れてしまうことがあり

この牛に巻いたキャストも簡単に割れて

キャストの効果が無くなってしまうのではないかという

心配があった。

しかし

IMG_1957往診した同僚獣医師の話によれば

牛の前脚の状態は良く

神経麻痺は消失し

寝起きは普通で食欲もあるということだった。

その翌日

IMG_1956牛の状態はさらに改善して

寝起きも食欲も良好だということで

キャストを外すことにした。

この日のキャストは

案の定、腕節から近位の部分が

IMG_1960割れてしまっていた。

しかしそれは

この牛の前肢の神経麻痺が完全に消失し

寝起きが自由にできるようになり

右前肢の機能が

完全に回復した証拠でもあった。

(この記事終わり)


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大忙しの星の下(1)

複数の獣医師がチームを組んで、

仕事についているNOSAIの家畜診療所では、

夜間の当番はその人数によって、

均等に割り振られて、

仕事量の偏りがないようにしているのが普通である。

夜間の往診の数は、

1年間の平均件数を計算してみると、

診療所チーム内のどの獣医師も、

だいたい1件〜2件の間に均等に収まるものらしい。

ところが

1ヶ月程度の短い期間でこれをみると

それぞれの獣医師によって

夜間往診の数が極端に偏ることがある。

ある獣医師は、往診が全くない0件の夜が何回も続くのに

ある獣医師は、毎回深夜まで何件もの往診に呼ばれて睡眠不足になる

という現象が起こる。

夜の往診の忙しさには波があるのだ。

その波は、診療所内の獣医師の仕事内容を

支配下に置く「大忙しの星」の気まぐれなパワーの現れのようである。

先日の

早朝5時頃

私の個人携帯に

その日の夜間当番用の携帯から

電話がかかって来た。

最近、夜間当番で大当たりが続いているS獣医師からだった。

乳牛のお産で、胎児の頭が後ろを向いた側頭位らしい。

緊急の帝王切開をすることになり

私は手術の助手をするべく診療所へ向かった。

診療所へ着くと

手術室にはすでに帝王切開の準備がされていた。

「最近よく当たるね。」

「そうですねー(笑)」

S獣医師は、前回の夜間当番の時も

深夜に乳牛の帝王切開と、早朝の和牛の難産介助をしていた。

その後数日、別の獣医師が当番をした夜は

特に難産や深夜の往診はなかったのだが

昨夜からのS獣医師の当番でまた難産が発生した。

(大忙しの星の下に完全に入っているのだ・・・)

親牛を手術台に寝かせて

術野の毛刈りと洗浄消毒を終えて

さぁこれからメスを入れて

帝王切開を始めようとした時

当番用の携帯電話が鳴った。

和牛の難産で逆子のようなので来てほしい、という往診の依頼だった。

手術に取り掛かろうとしていた私たちは

その往診依頼に対して、事情を説明し

手術をある程度終えるまで、今しばらく待ってもらうように伝えた。

IMG_1947そしてまた帝王切開に取り掛かった。

ホルスタインの母親の子宮の中で側頭位になっていた大きな♂ホル仔牛を

無事に生きて出すことができた。

「あとは、縫うだけなんで、安田さん和牛の往診に行ってください。」

「わかりました、じゃ、後はよろしく。」

私は手術から離れ

診療車に乗って和牛の難産介助に向かった。

(大忙しの星の下に私も入ってしまった・・・)

和牛繁殖農家の◯さん宅は診療所から車で5分程度の近い家だった。

手を入れてみると

確かに逆子だったが

その胎児の後肢の隣に前肢があり

その前肢の隣に頭が来ているという状態

すなわちそれは双子の難産だった。

後肢を押し戻すと

もう片方の前肢がその奥に現れたので

前肢2本と頭が同じ胎児のものであることを確認して

IMG_1946まず正常位の1仔目の胎児を牽引娩出

次に尾位の2仔目の胎児を牽引娩出

無事に介助が終わり

私は再び診療所へと車を走らせた。

診療所の手術室では

S獣医師が術創の最後の皮膚を縫い始めたところだった。

IMG_1948術野の縫合が終わり

牛が手術台から降ろされた。

ところが

この母牛が、今度は

IMG_1949なかなか立つことができない。

カルシウム剤を注射して

気合を入れて起立を促しても

立てなくなってしまったので

仕方なくハンガーで吊起することにした。

IMG_1950ハンガーにてなんとか吊り上げて

立たせたものの

右の前肢の負重ができず

3本足でようやく体を支えるのみ。

どうやら

右前肢の橈骨神経が麻痺してしまったようだ。

これでは歩行することもままならず

家畜車の荷台までどうやって歩かせるのか

(大忙しの星のバワーは容赦がない・・・)

さて、どうするか・・・

(この記事続く)

 

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新生子牛の「左右」中手骨骨折(3)

難産で牽引した直後に、

左右の中手骨遠位の骨折を確認し、

左右前肢にキャストを巻き、

その後、3日目にエックス線を撮影し、

それから、さらに11日が経過した。

骨折してから2週間目、

この子牛のキャストを交換する日がやってきた。

今回、私は

今まで経験してきた牛の新生児の

中手骨骨折の治療の中でも

もっとも

いろいろと気を配り

過去の失敗での反省点や

同僚獣医師の意見などを参考にして

自分の技術としては最もレベルの高い

最新の骨折整復法を施すことができたという自負があった。

そういうわけなので

この日が来るのをとても楽しみにしていた。

ギブスカッターと、エックス線装置と

撮影の防護服などを、そそくさと診療車に詰め込み

飼主の#さん宅に到着。

IMG_1837子牛はあいかわらず

非常に元気がよかったので

鎮静剤をかけて寝かせて

まずは

患部のエックス線の写真を

3方向から撮影した。

撮り終わってから

撮影装置をいったん片付けて

今度はギブスカッターによって

キャストを外してゆく

飼主の#さんと

手伝ってくれたS獣医師が

保定しながら見守る中で

私はまず左前肢のキャストを外していった。

ギブスカッターで

キャストを縦半分切り落としたとき

骨折部位の毛色が

なんとなく

暗赤色の滲みが付いているのを確認した。

その部分から遠位を手で触ってみると

なんとなく

温度が低く

子牛の体温ではないような

冷たさを感じた。

「・・・。」

私は、さらにキャストを外していった

「・・・。」

「・・・。」

#さんとS獣医師もまだ無言だった。

「・・・、あ・・・これは・・・」

「・・・。」

「・・・着いて・・・ない・・・のか。」

「・・・。」

「・・・全然・・・融合してない・・・。」

「・・・ダメですか・・・。」

「・・・ショックだぁ・・・。」

BlogPaintキャストを全て外し終わったとき

私たちは

ガックリと

失望感に包まれていた。

左右の中手骨は

両方とも、まったく骨融合しておらず

骨折部位は2週間前と全く同じように

IMG_1840クニャッと曲がってしまった。

骨折部位と外したキャストからは

ほんのりと厭な匂い(壊死臭)が漂ってきた。

治療は完全に失敗に終わった。

子牛は、残念ながら

病畜処理場へ搬入することになってしまった。

その後、私は

悔しい気持ちをずっしりと抱えたまま

隣町の診療センターへ行き

最後に撮影したエックス線画像を見た。

参考のために

IMG_1843IMG_1844






第3病日の画像を左に

第14病日の画像を右に

比較できるように並べてみた。

IMG_1845IMG_1846







骨折部位に望まれるはずの

白く濁ってゆく骨融合の変化は全く見られず

むしろ

3日目(左)よりも14日目(右)のほうが

骨折部位は黒っぽく変化し

壊死が進んでいるように見えた。

(この記事終わり)

と・・・

したいのだが・・・

私は今でも

悔しい気持ちが消えずに続いている。

今回なぜ

骨折整復がうまく行かなかったのか

ちゃんと検証して

何とか今後につながるヒントを得たいと思う。

この記事をお読みの皆さんの

ご指摘やご意見を

ぜひ伺いたいと思う。

どうか忌憚のないコメントを

よろしくお願い致します。


(この記事終わり)


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新生子牛の「左右」中手骨骨折(2)

助産の時に強く牽引し過ぎて、

中手骨を骨折してしまったホルスタインの新生児。

それも、今回は、

「左右」両方の中手骨の骨折だった。

緊急で呼ばれて、

キャストを巻き、

抗生物質を3日間打ってもらい、

今日は、その3日目だった。

「子牛の調子はどう?」

「・・・特に痛がるわけでもなく普通にしてますよ。」 

「お乳は飲んでる?」 

「・・・普通に飲んでます。」 

BlogPaint「下痢とかしてない?」

「・・・大丈夫です。」 

「立てる?」

「・・・ちょっと手伝ってやれば立ちますよ。」 

一般状態は悪くないようだった。

今日はこの牛の

骨折部位のX線写真を撮る日だった。

BlogPaintキャストを巻いたまま

X線装置を当てて

右斜め、左斜め、前方、の
3つの方向から撮影した。

撮影したカセットフィルムを

IMG_1784隣のT町にある診療センターの

デジタル現像装置に差し込んで

画像データーを映し出した。

私は今まで

キャストを巻いた時

骨折部位を真っ直ぐに整復していたつもりでも

X線画像を撮って見てみると

思っていたよりも大きくずれて(騎乗変位して)いたり

思っていたよりも曲がっていたり捻れていたり

IMG_1785していることが多かったので

今回もかなり心配だった。

しかし

画像を見る限り

過去の私の経験した症例に比べると

IMG_1786大きなズレやまがりや捻れはなく

まぁ、そこそこ

問題なく整復できているのではないか

と、自分なりには

ホッと胸を撫で下ろしたのだった。

IMG_1787飼主さんとも相談して

キャストを巻き直すことはせずに

そのままで様子を見て

2週間後に再び往診して

キャストを外して

巻き直すことにした。 

(この記事続く)



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新生子牛の「左右」中手骨骨折(1)

「お産がキツくて、強く引っ張ったら・・・」

前足が折れてしまった、

という稟告。

何度も経験している症例である。

せっかく生きて出せたのに、

前脚が折れてしまった子牛を見るのは辛い。

到着して、

子牛の前脚を触診するまでもなく

中手骨の遠位部が

ポッキリと折れているのを確認した。

IMG_1739「産科チェーン使ったの?」

「・・・そうなんです。」

「あれっ・・・これは両方の足が折れてる・・・」

「・・・やっぱり・・・実は最初に折れた後、マズイと思ってチェーンを外したんです。」

「それからどうしたの?」

「・・・その後、紐に付け替えて引っ張ったんだけど・・・」

「また折れちやった?」

「・・・そう、その時、親が急にバタンと倒れて、その拍子に・・」

「2本目の足も、折れちゃった?」

 「・・・そうなんです。」

IMG_1742我々は、早速

骨折の整復に取り掛かった。

子牛の中手骨骨折については

以前、このブログで

IMG_1749自分の整復方法について 

いろいろとコメントをいただき

自分の方法がかなり旧式な方法で

未熟であることを知らされていたので

IMG_1751今回はそれらのご意見を思い出しながら

できるだけ改善点を取り入れて

キャストを巻いてみた。

まず

患肢をしっかりと牽引する。

IMG_1752今回はとっさの判断で

包帯を患肢の繋ぎに巻いて牽引してもらいながら

持ち合わせの伸縮包帯を巻き

下に巻くものはそれだけで

綿による下巻きはせず

IMG_1753その上にキャストを巻いた。

左右両方の中手骨が折れているので

飼主さんに両方を

写真のように牽引してもらって

キャスト巻きの作業を

IMG_1754左右で繰り返し行った。

キャストは転がすように

腕節から蹄先まで巻いた。

巻き終えてから

患部の感染を予防するために

抗生物質を打ち

それを3日間打つよう指示した。

この日は、金曜日の午後遅くだったので

次回は、月曜日に

エックス線写真を撮ることを告げて

帰路についた。


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デントコーンに「マルチ」

一番牧草の収穫も、

早い組の酪農家から、

遅い組の肉牛・馬産農家まで、

とりあえず今年は、

皆さん無事に収穫を終える事ができたようで、

何よりだったのではないかと思う。

今年は、長雨にもならず、

良い天気が続いている。

一番牧草の作業が終わると

十勝地方では

牧草の次に重要な飼料作物である

デントコーンの発育状態も気になってくる。

昨年のデントコーンの発育は最悪だったようで

収穫時期にも天候が悪く

品質の良いデントコーンサイレージが収穫できなかった。

そのような事を踏まえ

今年の酪農家の※さんのデントコーン畑には

作物の早期成長を促す

マルチ(mulch)が張られていた。

IMG_1604



5月29日

IMG_1687



6月9日

IMG_1756



6月23日

IMG_1812



6月30日

IMG_1861



7月9日 

ご覧の通り

素晴らしい成長ぶりを見せている。

 ※さんによれば

去年の天候を考えると

また今年も同じような事になりかねないから 

その対策として何かしておかなければならない

と、思ったそうだ。

用意周到でアクティブな考え方だと思った。

それをすぐ実行に移す行動力もすごい。

お金は相当かかったらしいが・・・。

ちなみに

マルチ(mulch)とは英語で

「地面を覆う敷き藁」のことで

我々がよく使う「多い」を意味する接頭語の

マルチ(multi-)とは

スペルも発音も違う。

ところが

日本語にすると

「覆い」と「多い」

発音は「オオイ」

表記は「マルチ」

全く同じになってしまって

なんだか紛らわしい(笑)


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育成牛の中足骨骨折(2)

約15ヶ月齢の牛の中足骨の骨折の、

初診から1ヶ月経過したキャストを、

「治癒の見込みが有る」という理由で、

再度巻きなおしたのは、

私は初めてのことだった。

「これはきっと治ってくれるだろう」、

という思い込みがあったせいで、

私の巻いたキャストは、

初診でO獣医師の巻いたキャストよりも

大分薄く、やや短かった。

それで充分だろうと思っていたのだ。

ところが

その日に撮ったX線写真の骨折部位を見ると

思ったよりも骨融合が進んでいないように見え

骨折端の騎乗変位と軸ズレが明らかだったので

それから私は

2回目のキャストの巻き方が甘かったのではないだろうかと

しばらく落ち着かない日々を過ごしたのだった。

もし、2回目のキャストを巻いた後に

骨折の癒合部位に異変が生じたら

せっかくの骨融合が破綻して

この牛の治療は一巻の終わりになってしまう。

冷や汗をかきつつ、悶々とした日々を過ごしたが

飼主の〓さんからの、この牛に関する連絡は来なかった。

だが、便りの無いのは良い便り、だった。

その後は

異変の心配が、次第に治癒への確信へ、と変わってゆき

とうとう、2回目に巻いたキャストを外す日がやってきた。

初診から2ヶ月が経っていた。

体重350kgはゆうに超える育成牛を

IMG_1511鎮静剤で寝かせ

ギブスカッターでキャストをはずした。

キャストを外したところで

エックス線撮影をした。

IMG_1512その後、鎮静の拮抗剤を打って

牛はたちどころに目覚め

4本の肢を着いて

に歩き始めた。

IMG_1513初診は今年の3月12日

キャストを巻き直したのが4月10日

終診が5月8日だった。

もう一度

IMG_1364IMG_1525






4月10日のX線写真と

5月8日のX線写真とを

IMG_1363IMG_1522






左右に並べてみると

骨折部位の変位と軸ズレがあるものの

癒合が進んでいる様子がわかる。 


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育成牛の中足骨骨折(1)

初診は同僚のO獣医師、

当直明けの就業時間直前に、

「育成牛の足が折れている・・・」、

という連絡が入ったという。

右の中足骨骨体部で完全骨折、

鎮静下でキャスト固定し、抗生物質を投与、

と、カルテには書いてあった。

それから1ヶ月が経ち、

この牛のキャストを交換する日がやってきた。

何かと多忙なO獣医師に代わって、

私がこの牛の足の様子を見に行くことになった。

それは、今年の4月10日の事だった。

往診に行く前に、カルテを見直すと

この牛の生年月日は12月19日と書いてあった。

ということは

この牛が骨折をしたのは約3ヶ月齢か・・・

と、一瞬私はそう思い

その程度の月齢での中足骨ならば

よくあることで、何とかなるな・・・

と、思って

O獣医師に経過を聞こうと

もう1度カルテを見ると

この牛の生年月日は、なんと・・・

平成27年12月19日

と書いてあることに気づき

ちょっと驚いた。

「えっ!・・・おととしの12月生まれなの?」

「そう・・・。」

「デカいやつかい・・・。」

「そう・・・、15ヶ月齢の育成で・・・、どうなってるかわからないんですけど・・・。」

私はそう聞いて

恐る恐る

飼主の〓さん宅へ向かった。

「牛はどこ?」

「あー、あの牛かい・・・あそこの小屋の中にいるよ。」

〓さんの親父さんは、何気なくそう言って私を案内した。

IMG_1353「今日は、何か、するのかい?」

「うん。キャストを交換する日なんだけど・・・様子はどう?」

「どーなんだべ・・・」

「歩いてる?」

「うーん、1週間前くらいまでは痛くて全然つけなかったんだけどな・・・」

「・・・。」

「それが、この間から、なんだか、足をつくようになってきたのよ・・・」

「ほんとに?」

「あぁ、ほんとだよ。だいぶん歩けるようになったんでないかな・・・」

「そうなんだ。とりあえず牛を寝かせて、キャストを外したいんだけど。」

「おぅ、わかった・・・息子呼んでくるわ。」

私は、〓さんの息子が来るのを待って

それから鎮静剤を打って牛を寝かせ

ギブスカッターでキャストを外した。

IMG_1355骨折部位は化骨が始まっているようで

周囲の軟部組織には損傷もなく

細菌感染もしていなかった。

キャストを巻き直し

IMG_1359そのあと

この足の骨折部分の

エックス線写真を撮った。

鎮静剤の拮抗剤を打ち

IMG_1361牛はその後

すっと立ち上がって

スタスタと歩き始めた。

私はその後

隣町の診療センターへ

撮影したカセットフィルムを持ち込み

現像した画像データーを

画面に映し出し

IMG_1363さらにそのデーターを

我が診療所でも見られるように

共通フォルダに入れて

帰路についた。

IMG_136415ヶ月齢の育成牛が

中足骨の骨折をして

キャストによる外固定をし

それから約1ヶ月後の状態が

この2枚のX線写真だった。


(この記事続く)


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「いま、牛乳は余っているんですか?」

先日終了したセイコーマートのキャンペーン、

IMG_1541来店者がくじを引くと、

牛乳や乳製品が当たる、

というものだった。

その他のコンビ二、

例えばセブンイレブンも、

セイコーマートほど期間長くはなかったが、

同じようなキャンペーンをやっていた。

それを私が知ったのは

5月の中旬頃だっただろうか

近所のセブンイレブンで買い物をしたときだった。

レジで精算した後、くじを引いて

IMG_1542牛乳が当たった。

それも、なんと

1リットルの大きな牛乳パックが1本!

そっくりそのままタダでもらえたのだった。

あまりにも突然で

しかも

ずいぶんと得したような感じがしたので

そのずっしりとした1リットルパックの重みは

この手にはっきりと憶えている。

それからしばらくして

帯広の街角のセイコーマートに買い物に寄ったとき

同じような牛乳および乳製品がもらえるキャンペーンの

IMG_1543幟とポスターを見つけたので

「ああ、これは本格的なキャンペーンなんだなー・・・」

と、思った。

そして、また

「こんなキャンペーンを全道的にやったら、牛乳や乳製品はどれだけタダで配られるのだろう・・・」

と、思った。

そして、また

「牛乳や乳製品の新製品が出ているわけでもなさそうだが、ずいぶん大盤振る舞いだなー・・・」

と、思った。

そして、また

「牛乳や乳製品をサービスで配れるほど、たくさん余っているのか・・・?」

という疑問が湧いてきた。

そして、また

「しばらく前は、コンビ二ではなくてスーパーでも、牛乳の1リットルパックの安売りやってたよなー・・・」

という事を思い出した。

それにしても・・・

なにかとても

不思議な感じである。

私が毎日仕事で通っている生乳の生産現場

すなわち酪農家のあいだでは

搾乳牛が不足してその値段が高騰して

特に大きな酪農場などでは

搾乳牛を揃えるのに苦労をしている。

搾乳牛を揃えるために

市場から買ってくるだけでは足りず

搾乳用の乳牛を外国から輸入までする状態になっている。

そんな状態が続いているならば

今、生乳の生産力は低下し

生乳の生産量は下がっているはずである。

生産量が低下し

すなわち、供給が不足すれば

価格は上昇するのが

経済の原則ではないのか

と、私のような者は

普通にそう考える。

ところが・・・

消費者に牛乳を販売している

実際の現場では

いま

牛乳パックの安売りが繰り返しおこなわれ

さらに

今回のような

コンビニで、牛乳を

タダでプレゼントするなどというキャンペーンを

大々的にやったりしているのだ。

これはいったい

どういう事なのだろう?

私にはさっぱりわからない・・・

これをお読みのどなたか

この辺の事情に詳しい方がおられたら

こんな不思議な現状の理由を

教えて頂けないだろうか・・・

「いま、牛乳は余っているんですか?」


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11ヶ月齢の黒毛和種♂の臍ヘルニア

「10ヶ月齢の黒毛和種の、

あまり発育の良くない痩せた肥育素牛を、

市場で買ってきて1ヶ月ほど養ったところ、

おヘソがぷっくりと膨らんできた。」

という稟告。

診てみると

臍ヘルニアだった。

買った時はひどく痩せていて

臍の腫れはなかったそうだ。

しかし食欲が増して成長するにつれて

臍が腫れてきたという。

私の知る限り、牛の臍ヘルニアは

幼少時には目立っていても

成長するにつれて目立たなくなってゆくものだが

今回の場合はその逆パターン(?!) だった。

「放っておいて良いだろうか?」

という飼主さんの問いに

私は首を縦に振る事ができず

早期にヘルニア輪を縫合して閉じる手術を勧めた。

そして昨日

その手術をすることなになった。

ヘルニア輪は4指が入る程度のものだったが

11ヶ月齢の食欲旺盛な若牛だったので

前日から絶食をしてもらって腹圧を減らしておいた。

術前の写真をうっかり撮り忘れたので

術後の写真のヘルニアの部分を加工して

BlogPaint術前の垂れ下がったヘルニア嚢を

黄色い色で塗りつぶして再現してみたのが

最初の写真である。

鎮静剤によって寝かせて

手術台に仰臥保定。

ヘルニア整復の術式は簡単だ。

ただし

♂の場合は臍帯のすぐ後方に尿道口があり

手術中に排尿したり

術後の創部が汚染したりしやすいので

BlogPaint切開部分は写真のように

尿道口を避けるような

前方に弧を描く半円形(U字形)で切開する。

この方法は

十勝NOSAIの同僚のM島獣医師が考案したものである。

こうして切開して

皮下の結合組織を注意深く剥がしてゆき

ヘルニア輪を露出させる。

そこにヘルニア嚢を落とし込み

IMG_1677ヘルニア輪を縫合する。

ヘルニア輪の縫合は

ベストオーバーパンツ縫合という

衣服を重ねるような仕上がりにする縫合法だ。

IMG_1678糸を二重に使い

腹壁への針の入れ方は

上から下 → 上から下 → 下から上 → 下から上

と縫って行けばよい。

今回はそれを3針入れて

IMG_1680ヘルニア輪を十分に閉じる事ができた。

それから

死腔を造らぬように

結合組織の寄せ縫いをして

U字形に離れている臍帯の皮膚を

IMG_1683術創に蓋をするように縫い付けて

整復手術は無事終了した。

鎮静剤の拮抗剤を打ち

牛は数分で元気を取り戻した。

IMG_1684飼主さんに抗生物質を渡し

3日間投与するように指示し

牛を家畜車に乗せて

帰って行く家畜車を見送った。


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乳検データーから見えるもの(10)

非常に興味深い「乳検データー」と、

非常に腹立たしい無責任氏の解説文を、

複雑な気持ちで読んで来た今回の記事も、

やっと「課題編」が終了し、

ここから「技術編」ということになる。

しかし

その「技術編」の内容をざっと見ると

これといって新しいものはなく

無責任氏が自分自身が体験しているものでもなく

おそらく

ベストパフォーマンス会議に出席した人の中の

いわゆる有識者や技術者の先生方が言ったであろう事を

無責任氏が、右から左に羅列して、

ただ単に継ぎ接ぎしたような

まるでまとまりのない代物なので

読む気が全く薄れてしまうのだった。

そんな萎えそうな気持ちを奮い立たせながら、

あえて、続きを我慢して読み進めば・・・

無責任氏曰く

「北海道における課題が見えてきましたね。」

「そこで、どのように乳用後継牛を作出し、出生時の事故を減らしながら、長命連産が可能となるよう効果的に飼養・管理していくかが重要なポイントになります。」

(そんな事はもう言われなくてもわかっています)

「そのための課題発見と検証に必要となる有効なツールや活用方法などもお伝えします。」

(そこ、ですか??)

IMG_1450そして、無責任氏は

「死なせない」

「長持ちさせる」

「増やす」

「死廃牛を減らす」

「除籍牛をを減らす」

「初産月齢分娩間隔の短縮」

という言葉に全て(!)マークをつけて

この6つの技術の目的を強調しているが

それぞれの「技術編」の項目での具体的内容は

先ほど言ったように

会議で出された先生方の発言を

パッチワーク的に継ぎ接ぎしただけの

非常に薄っぺらい内容になっているので

あえて私がここで、検討するほどの価値は乏しいのだが

ひとつだけ

突っ込んでおきたいデーターがあった。

IMG_1463それは

子牛の死産率についてのデーターである。

「飼養形態の違いにおける死産率と双子率」

という表が示されていて

無責任氏は

「飼養形態別に年間を通して変更がない酪農家について、繋ぎ、フリーストール、放牧、ロボットの4つに分類しました。」

などと、まるで自分がデーターを作ったような言い回しで語り、つづけて

「その結果、死産率は放牧酪農家(250戸)が5.4%となり、繋ぎ(2676戸)5.9%、フリーストール(908戸)6.7%、ロボット(56戸)6.4%と比べ低くなりました(表)。」

と書いている、さらに

「牛は放牧するとおよそ4万回噛みながら一日4km歩行する生き物です。本来このような動きで代謝を良くしているのです。」

などと、どこかの論文から取ってきたような知識を付け足している。

それがこの表である

IMG_1464





よく見ると

放牧の死産率を赤字で強調している。

このデーターは

本当に無責任氏が自分で

乳検データーから拾って調べたものなのだろうか?

その真偽は定かではない。

この4つの飼養形態の項目の分け方も

細かいことを言えば

例えば、繋ぎ飼いでも

牛を出しているのか繋ぎっぱなしなのか

などの詳細が、よくわからない部分が多々あるけれど

そう言うことには目を瞑って

子牛の死産率を

飼養形態別で調べたデーター

というのは

なかなか興味深いものが有るように

私には思える。

このデーターによれば

牛の死産率は

放牧の酪農家が最も低く

フリーストールの酪農家が最も高い

ということになる。

無責任氏は、「放牧の死産率5.4%」を

わざわざ赤い字で強調している。

これを読んでいる皆さんはどうお思いだろうか?

私が、無責任氏に突っ込みたくなるところは

あなたたち酪農行政は我々関係者に

放牧が最も良いと言いたいのですか?

ということである。

このページの表をどう見ても

死産を減らすためには放牧が最もよく

放牧を薦めていると読むことができる。

ところが

IMG_1484この冊子の別のページには

畜産クラスター計画との連携を強く薦めている箇所があり

その内容は、飼養規模の拡大、飼養管理の改善、という言葉があり

無責任氏は、「飼養規模の拡大」という言葉を

わざわざ太い字で強調している。

(この冊子はもともとは、規模拡大を薦めている冊子のはず)

これは一体どういうことだろう。

大規模酪農といえば

その飼養形態の大半はフリーストールである。

フリーストールが大規模酪農の代名詞のようなものである。

その死産率は最悪であるというデーターが示されているのである。

毎日酪農家回って仕事をしている私は

放牧酪農家と

大規模酪農家は

その目指すものは全く違うという印象を持っている。

牛の健康を重視し乳量にはこだわらない放牧酪農

乳量を重視して牛の健康は二の次にする大規模酪農とでは

考え方が全く逆であると言って良いだろう。

しかし

無責任氏は

一つの冊子の中で

あるページでは放牧を薦めて

別のページでは規模拡大を薦める

ということを平気でやっている。

(本当はどっちなのですか)

一つの冊子の中で

真逆の考え方を薦めて

それを平然と併記し

全く自覚していないように見える。

この冊子の無責任氏の

無責任たる理由が

はっきりと見えてくるではないか。

結局つまるところ

この冊子には

酪農行政のピジョンもポリシーも何も無く

ただ予算があるだけで

それを消化するために作られたものと想像する。

データー自体は面白いので

我慢して読んできた冊子であるが

さすがにもう

馬鹿馬鹿しくなってきた。

そろそろこの冊子から離れ

普段の仕事に戻ろうと思う。


(このシリーズ記事、終わりにします)


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乳検データーから見えるもの(9)

この冊子の解説文を書いている無責任氏は、

課題 7 「分娩後に母牛・子牛の死廃事故率が多い」として

「北海道NOSAIの引き受頭数に対する死廃事故頭数・被害率をみても、地域別に差がありますが、毎年高い割合で推移しています。」

と言い、また

「振興局別に除籍率、母牛60日以内死廃率、子牛死産率をみると、地域によって大きな差がみられます。死廃率は全道平均では5.7%ですが、地域でみると4.2〜6.5%となっており、詳細な地域単位や酪農家単位では更に開きがあると推測できます。自らの農場における死産の発生状況を今一度確認して見ましょう。」

IMG_1444などと言っている。

ここで、無責任氏の言っていることに、それほど腹立たしいものはない。

しかし

無責任氏はここで

このデーターについての言及を終わりにしている。

なんだか、あっさりと触れているだけで

そのまま口を塞いで

無口になってしまったかのような印象がある。

気になるので

データーの細かいところを見てみたいと思う。

下に示した表は

北海道の乳検での

IMG_1444除籍率

母牛死廃率

子牛死産率

を地域(振興局すなわち支庁)ごとに並べた表である。

その中で

まず、気になるのは

母牛の分娩後60日以内の死廃率

その14地域(振興局=支所)ごとの内訳の中で

最も少ないベスト3は

  1位  胆振 4.9%

  2位  宗谷 5.2%

  3位  檜山 5.4%

最も多いワースト3は

 12位  十勝 6.4%

 最下位 釧路 6.7% (同率)

 最下位 網走 6.7% (同率)

となっている。

つぎに、気になるのは

子牛の死産率

その14地域(振興局=支所)ごとの内訳の中で

最も少ないベスト3は

  1位  宗谷 4.2%

  2位  檜山 5.0%   (同率)

  3位  留萌 5.0%   (同率)

最も多いワースト3は

 12位   十勝 6.1%

 最下位  釧路 6.5%    (同率)

 最下位  網走 6.5% (同率)


となっている。

私が注目したのは

母牛の分娩後60日の死廃率

子牛の死産率

どちらも

十勝・釧路・網走が

ワースト3
になっている

ということである。

それはなぜなのだろうか?

ここで1つ

興味深いデーターを重ね合わせてみよう。

それは

北海道の畜産振興局が出している

「振興局別家畜飼養個数・頭数」というもので

最新のデーターをホームページから見ることができる。

その中の乳用牛の部分を引用したのが下の表である。

IMG_1588





クリックして大きくして確認していただきたい。

この表の一番下の段に

一戸あたりの頭数

が、14地域(振興局=支所)ごとに示されている。

それによれば

一戸あたりの頭数の多い順に並べて見ると

 1位 十勝  161.7  頭

 2位 釧路  136.8  頭

 3位 根室  134.6  頭

 4位 オホーツク(網走) 118.0 頭


となっている。

これを素直に読み取るならば

一戸あたりの頭数の多い酪農

すなわち

規模の大きな酪農家が全道で最も多いのは

十勝であり


分娩後の母牛・子牛の死廃事故率が

十勝はワースト3 に入っている

ということになる。

さらに

規模の大きな酪農家が全道で2番目に多いのは

釧路であり


分娩後の母牛・子牛の死廃事故率が

釧路はワースト3 に入っている

ということになる。

さらに

規模の大きな酪農家が全道で4番目に多いのは

網走であり


分娩後の母牛・子牛の死廃事故率が

網走はワースト3 に入っている

ということになる。

規模の大きな酪農家の多い地域の

分娩後の母牛と子牛の死廃事故が

軒並み高くなっている


ということが

このデーターから

読み取れるのではなかろうか。

さて、また

前回の記事に立ち戻って

十勝の酪農の乳量の伸びを示した

新聞記事をもう一度

ここに貼り付けてみる

クリックして見ていただきたい。

IMG_1537




「1頭あたり乳量10年で1トン増」

「農家大規模化」

「米国流の飼料管理」

こんな見出しがついていて

喜ばしいことのように書かれているが

私に言わせれば

こんなものは全く

喜ばしいことではなく

憂うべきことである。

なぜ憂うべきことなのか?

この新聞記事の書き出しは

「道内の生乳生産を引っ張る十勝管内で・・・」

という言葉で始まっている。

もう一度言おう

規模の大きな酪農家が

全道で最も多いのは

道内の生乳生産を引っ張るという

十勝であり

分娩後の母牛・子牛の死廃事故率が

ワースト3 に入っているのが

道内の生乳生産を引っ張るという

十勝である。

十勝は

道内の生乳生産を

どこへ引っ張るのだろう?

これだけ事故の多い十勝の酪農

道内の生乳生産

間違った方向へ引っ張っているのではないか?

十勝の酪農家を相手に仕事をしている獣医師として

私は非常に残念で

なんだか

とても情けない。


(この記事続く)



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乳検データーから見えるもの(8)

乳検データーが示す北海道の酪農の、

「死亡や疾病で除籍頭数は増えている」

IMG_1442という課題。

その増加傾向をグラフで見ると

乳牛の除籍の理由である「その他」という項目が

特に2104年ごろから極端に増えていることがわかる。

そして「その他」の項目を詳しく見てゆくと、

その裏には

我々獣医師が

「治療しても治らない」牛たちの存在があることも前回の記事で書いた。

さらに

「治療しても治らない」牛たちの増加は

我々NOSAI獣医師が深く関わっている

「共済廃用」になる牛の増加

という形で現われ

さらに、共済保険の対象にもならない

「自家廃用」になる牛の増加

という形でも現われ

さらに、飼主が公表を避けたい

「伝染病」の牛の増加

という形でも現われている。

また、前回のコメントで指摘のあった

「書き方がよくわからない」

「書くのが面倒」

という理由もあるようであるが

いずれにしても

IMG_1555理由が明記されていない牛の除籍が

2014年頃を境にして

ジャンプアップしている
のは

注目すべき出来事である。

ここで

最近

ちょっと気になる新聞記事が出た。

IMG_1537それは左の写真の

5月12日の道新の

十勝の乳牛の年間の1頭あたりの乳量が

急激に伸びているという記事である。

注目すべきは記事の内容というよりも

掲載されているグラフである。

そのグラフをよく見ると

年間1頭あたりの乳量(折れ線グラフ)と

年間の生乳生産量(棒グラフ)が

IMG_15352014年頃を境にして

ジヤンプアップしている。

これはどういうことを意味するのだろうか?

理由が明記されない乳牛の除籍数の増加と

年間1頭あたりの乳量の増加と

十勝全体の生乳生産量の増加と

が、2014年頃を境にして

ことごとく急増している
のである。

新聞記事の内容は

それを肯定していて

喜ばしいことのように書いてあるが

私に言わせれば

それは全く逆で

非常に憂慮すべきことであると思う。

それを簡単に言えば

「乳量の増加」と

「治療しても治らない牛の増加」が

時を同じくして起っている

ということである。

これはどういうことなのか?

この現象はすなわち

十勝の乳牛たちは

「乳量が増加」する一方で

病気になり

その病気は

「治療しても治らない」ような

深刻な病気にかかっている

と解釈できるのではなかろうか。

これは

十勝の乳牛を診療している我々にとって

まことに

憂慮すべきことなのではなかろうか。



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乳検データーから見えるもの(7)

私がなぜこれ程まで、

しつこい位に今回のシリーズ記事を書いているかというと、

この乳検協会の冊子の「乳検データー」から、

思い当たる事が、実に多いからである。

最近、私が日々の仕事の中でつくづく感じることを、

この冊子の「乳検データー」が、

みごとに裏付けてくれるデーターだからである。

私が最近つくづく感じていることを一言で言えば、

「治療をしても牛が治らない・・・」

ということである。

30年以上も牛の臨床獣医師をしていれば、

自分の獣医療の技術は少しは向上しているはずであるから、

以前よりも牛が治療に反応して

治癒率が向上してもよさそうなものであるが、

どういうわけか

治癒率が向上したという実感は、全くない。

それどころか

以前よりも牛が治療に反応せず

治癒率はむしろ下がっているのではないか

とさえ思えるのである。

「治療をしても牛が治らない・・・」

こう強く感じる事は

獣医師として、とても情けないことであり

恥ずべきことである。

しかし、現実はそれを日々感じつつ仕事をせざるを得ない。

これは非常にストレスのたまることであり

無力感にさいなまれることもしばしばである。

そんな日々を送っている時に見つけたのが

この乳検協会が出した冊子のデーターだったのだ。

何度もいうが

この「乳検データー」自体はたいへん素晴らしいものである。

ところが

それを解説する文章がまったくダメすぎて、お話しにならない

ということなのである。

では、また

その素晴らしいデーターと

それを解説する超劣悪な文章を

腹立たしさを我慢しながら読んでいきたいと思う。

超劣悪な解説文を書いている無責任氏は

IMG_1442課題5 「死亡や疾病で除籍頭数は増えている」

として

「図は年次別の除籍理由別頭数を示したものです。直近の除籍頭数は12万7千頭となり、増加傾向にあります。」

ここで「除籍」というのは

各酪農場から姿を消した牛のことである。

それぞれの折れ線グラフは、その除籍の理由ごとのグラフである。

無責任氏は続けて

「また、検定での除籍報告で、「その他」の項目が増えていますが、理由をあいまいなまま「その他」で報告しますと正確に除籍理由が把握できませんので、原因をしっかりと把握して除籍報告を行うように心がけましょう。」

などと言っている。

(もう無責任氏は何もわかっていないことに、ほとほと呆れてしまう)

飼主さんが、自分の牛を自分の農場から出すとき

あいまいな理由で出すなどという事は、ありえない事である。

考えに考え、悩みに悩んだ末に

飼主さんは、自分の牛を売ったり処分したりするのだ。

牛を処分する理由があいまいなどということは

実際を考えれば

そんな寝ぼけた除籍など誰もするわけがない。

「原因をはっきり把握して除籍報告を行うように心がけましょう。」

などと

間抜けなことを言っている無責任氏の頭の中こそ

はっきりさせた方が良いだろう。

(本当は、除籍の原因は、はっきりしているのです)

ただその原因を

飼主さんは

「明記したくない」から「その他」なのである。

ここで「明記されている」原因を

少ない方から挙げてゆくと

「消化器病」

「低能力」

「産後起立不能」

「乳器障害」

「乳用売却」

「運動器病」

「乳房炎」

「繁殖障害」

「死亡」

「その他」

となっている。

そして、除籍理由としての「その他」は

2014年から2015年の1年間に

5000頭近くも増えて、ダントツの1位になっている。

飼主さんたちがあえて「その他」として

明記を避ける除籍理由とはいったい何か?

第1に思い浮かぶのは

我々NOSAI獣医師が深く関わっている

「共済廃用」である。

そしてさらに

共済(NOSAI)保険の限度枠を使い切ってしまったために生ずる

「自家廃用」である。

この2種類の廃用は

我々獣医師が

「治療をしても治らなかった・・・」

牛たちである。

転売はもちろん、肉にもできない

飼主さんにとっては最も不本意なものであろう。

不本意な除籍の理由など

飼主さんはいちいち書きたくはないだろう。

そしてさらに

最も明記したくない除籍の理由として

「伝染病」がある。

その最たるものが

「法定伝染病」や「届出伝染病」

であるが

これもまた

「治療をしても治らない・・・」

牛たちである。

伝染病で除籍することは

飼主さんにとって不本意なばかりか

最も恐ろしく忌まわしいものであろう。

世間の目や風評なども気になり

そんな除籍の理由は

飼主さん達が明記することは

絶対と言って良いほど

ないだろう。


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乳検データーから見えるもの(6)

乳用雌牛(主にホルスタインの雌)の飼養頭数は、

この5〜6年の間に、

本州では7万頭も、北海道でも3万5千頭も、

減ってしまった。

それなのに、

今後ますますの「生乳生産拡大 」を目標に掲げている酪農行政の考え方に、

酪農の現場の片隅で働いている私は、

強い違和感を覚える。 

乳用雌牛(ホルスタインの雌)が、

なぜ、こんなに減ってしまったのか?

その理由をまともに検証もせずに、

「生乳生産拡大」という言葉を安易に吐くこと自体が、

信じられないのである。

乳用雌牛(ホルスタインの雌)が減ってしまったのは、

自らが推進してきた酪農行政にこそ、

その原因があるということに、

全く気づいていないような発言は、

まことに腹立たしいものがある。

ではまた、

そんな腹立たしい気持ちを我慢して、

例の冊子の「乳検データー」を解説する無責任氏の言葉を引いてみたい。

IMG_1441無責任氏は

課題4「個体価格も高くなっている」

として

「乳用牛の頭数が少なくなってきたため、最近は初生、育成、初妊、経産牛全てにおいて非常に
高騰してきており、いわゆる酪農バブルと呼ばれる状況にあります。特に、ただちに生乳生産に結びつく初妊牛などは史上初めて70万円を超えるという異常な状況となっています。」


などと言っている。

(今はもうそれ以上に初妊牛は高騰し、腹が和牛ETならば、軽く100万円を超えていますね)

そして、次が

聞き捨てならない問題発言・・・

「この結果、新規に個体を導入している農家は、メガファームやギガファームなどの大規模農家が中心となっており、家族経営の中では、新たに個体を導入することは、価格面から大きな支障が出ています。このため、自家生産でしっかり乳用後継牛を確保する対策が必要です。」

何とも変な文脈でわかりづらい文章だ。

この一文はおそらく

上の方から何度も訂正がかかって

訳のわからない文章になってしまったものと想像する。

「この結果」とは何の結果なのだろうか?

きっと、乳用後継牛が高騰した結果、という事にしたいのだろう。

(本当は、結果ではなく、原因なのに)

で、無責任氏はこう続けている。

「この結果、・・・」

(本当は、結果ではなく、原因でしょうに)

今は、そういう乳用後継牛が

高騰してしまっている状況の中で

目標とする「生乳生産拡大」のために

「我々酪農政策の担当者が推奨する

大規模経営のメガフアームやギガフアームが

それらの乳用後継牛を買わなくてはなりませんから

家族経営の皆さんは

後継牛を買うのは価格が高くて大変だと思いますから

後継牛を買うのはメガファームやギガフアームに譲って

家族経営の皆さんは

自家生産でしっかり乳用後継牛を確保してください。」

という風に読むことができる。

何という身勝手な考え方だろう。

家族経営の酪農家が

メガファームやギガファームの後継牛の生産を

一方的に担わされているような

そんな物の言い方である。

何という身勝手な考え方だろう。

無責任氏たちが奨励してきた大規模経営の

メガフアームやギガファームが

自分で後継牛を育てることを最初から放棄して

ハナから後継牛の育成をすることなど考えない経営で

自家育成を一切せず

ただ乳を搾る牛を確保するために

他所で育成した牛を買いあさっているからこそ

乳用牛の価格高騰が起こっているのではないか。

(価格の高騰は、アナタたちが進めてきた酪農の大規模化が原因で起こっているのでしょう)

それを棚に上げて

家族経営の酪農家に向かって

「自家生産でしっかり乳用後継牛を確保する対策が必要です。」

などと、ツラっとして

よくもまぁ言えたものだと思う。

ここもまた

無責任氏の無責任たる所以であろう。

酪農の大規模化によって

乳用後継牛が不足し

価格が高騰しているのである。


無責任氏が無知なのか

あるいは

知っているのに言わないのか

触れることを避けている

そういう今の酪農の現状を

私は毎日毎日

身に沁みて味わいながら仕事をしている。

次回はその具体的内容を

「乳検データー」から

もう少し読み取ってみたいと思う。


(この記事続く)



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乳検データーから見えるもの(5)

せっかく良いデーターがあるというのに、

それを発信して解説する文章が、

あまりにもひどくて、

ピント外れで、

上から目線の官僚臭プンプン、

という鼻持ちならぬ冊子。

題して

「乳用牛べストパフォーマンス実現に向けて」
   〜乳用後継牛の安定的確保のために〜
    (北海道版テキスト・支援者用・平成28年度)


IMG_1435という

52ページにわたる文書の

その、課題編を

続けてもう少し読んでいこうと思う。

書き手の無責任氏

課題3  「交雑種が増えている」

として

「図は北海道における乳用種並びに交雑種の頭数推移を示したものです。乳用種は2010年1月には108万8千頭でしたが、2016年1月では102万1千頭と6万7千頭も減少しています。これに対して、交雑種は、2010年1月には11万3千頭でしたが、2016年1月では13万6千頭と2万3千頭も増えています。」

と言っている。

さらに

「黒毛の種を付けるとホルスタインに比べて初生での個体価格が高く、また明らかに体が小さいため、分娩時の難産を防ぐことができるということで重宝される傾向があります。」

そして

「近年の肉牛価格の高騰から、交雑種(F1)の場合、飼養期間が短くても、高い収入が得られるということがあります。この結果、乳用種を生産する頭数が減少し、後継牛不足を招いているという負の部分があることも見逃してはいけません。」

(見逃しているのはアナタたち農政の方でしょうが。現場ではそんなことは承知の上でやっているのです。)

IMG_1440しかし、こんな状況になることを

本当に知らずに見逃してしまったというよりは

実は、農政の方々も承知していて

わざと見逃して

そのまま放置しているように

私には思えるのだ。

F1の仔牛の価格は

もう何年も前から

「いつか下がるぞ、いつか下がるぞ」

と言われつづけているにもかかわらず

じりじりと価格を上げて現在に至っている。

それは何故なのか?

ここでもう1つ見逃してはならないのは

交雑種(F1)の価格ではなく

純粋種の黒毛和種の価格である。

F1がお腹に入った初妊牛よりも

さらに価格が高騰しているのが

黒毛和種のET(受精卵)がお腹に入った初妊牛である。

先日は1頭120万円もの値段がついたという話を聞いた。

もうベラボーな価格になっている。

その初妊牛から生まれ落ちた和牛ETの仔牛は

1頭なんと50万円以上で買われてゆく。

これまたベラボーな価格である。

どうしてこんなに高いのか?

こんな価格では

黒毛和種の素牛を仕入れて

育成し肥育して販売する牧場は

コストがかかってパンクしてしまうはずである。

ところが

どういう仕組みなのかはわからないが

黒毛和牛の肥育農家さんには

「絶対に損をしないような手厚い保護政策」

がいろいろ施されているらしい。

そうでなければ

こんなベラボーな価格をいつまでも維持できるはずがないと思う。

この辺の事情に詳しい方々のご意見など

コメント欄への書き込みを

是非お願いしたいところである。

モヤモヤした疑問を

スッキリと解決させてくれるような

情報をお待ちしている。

ともあれ

この冊子の無責任氏は

交雑種(F1)のことを課題にあげているだけで

黒毛和種ETのことには何も触れていない。

無責任氏の無責任たる所以だろう。

IMG_1485交雑種(F1)の高騰の背景には

黒毛和種の生産状況と

それに対する

「手厚い保護政策」

があると思われる。

IMG_1540左の写真の記事には

「肉用仔牛の供給が落ち着けば、連動してホルスタイン種を含め、価格は落ち着くはず。」

などと書いてある。

要するに、肉用仔牛の供給が落ち着かない限り

ホルスタインの価格はずっと落ち着かないままでよいという

身勝手なことを平然と言っているのだ。

ホルスタインの雌の腹を借りて

黒毛和種の仔牛を産ませているのに

これを身勝手と言わずして何というのか!

このような状況になったのは

私が推測するまでもなく

日本の畜産農政の中心は

黒毛和種の生産であり

ホルスタインの生産は二の次

であるからだろう。

黒毛和牛の生産が第一であり

酪農の問題は後回しにされている。

乳検データーから

日本の畜産農政の

基本的な態度が

見えてくる


(この記事続く)



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「牛のニコイチ捻転去勢法」

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 見ることが出来ます。

乳検データーから見えるもの(4)

書き手が誰なのか全くわからないので、

その書き手を「無責任氏」と命名させてもらった冊子。

題して

「乳用牛べストパフォーマンス実現に向けて」
   〜乳用後継牛の安定的確保のために〜
    (北海道版テキスト・支援者用・平成28年度)


IMG_1435という

52ページにわたる文書。

その、課題編を

もう少し読んでいこうと思う。

無責任氏は

「では、北海道において、現状はどのような課題があるのでしょうか?大きく道内での生乳生産基盤が揺らいできた要因はどこにあるのでしょうか?具体的な数値をあげ検証してみましょう。」 

と言い

課題1  「経産乳用雌牛は減少している」 

IMG_1438として

乳用種雌牛の月齢24ヶ月以上の頭数推移のグラフを示し

「この6年間で、北海道では3万5千頭も減少・・・、府県では、更に減少が激しく7万1千頭も減少・・・」 

と言っている。 

さらに

課題2 「後継乳用雌牛も減少している」 

IMG_1439として

乳用種雌牛の月齢23ヶ月未満の頭数推移のグラフを示し

「この6年間で、北海道でも6千頭程度減少・・・、都府県では、3万頭近くも減少・・・」

と言っている。 

そして

「これからも、将来において更に乳用後継牛が減少していくようなことがあれば、今後の生乳生産拡大に向けての阻害要因となってしまいます。」 

と言っている。

(酪農の現場では、国の生乳生産量を考えて仕事をしている人などはいない。こういう事態に対処するのはアナタたちの仕事でしょう。) 

そしてこうも言う

「国内での生乳生産減少を食い止めなければ、海外からの乳製品輸入拡大への口実を与えかねず、TPPがらみでの悪影響も懸念されます。」 

(乳製品ばかりではなく、乳牛そのものさえも今、輸入する事態になっていますね。) 

無責任氏は

我々酪農の現場の関係者に向かってこんなことを言っているのだが

無責任氏は

現場の我々に

何を言いたいのだろうか

何を知らせたいのだろうか

何かをさせたいのだろうか

それとも

無責任氏自身の仕事の

愚痴を聞いてほしいだけなのか?


(この記事続く)


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乳検データーから見えるもの(3)

「乳検データー」それ自体は、

検定員と呼ばれる人たちが、

乳検に加入している酪農家さんの、

搾乳時間に合わせて訪問して、

様々な検定の機器を使って、

乳検の生のデーターを取って回っている。

暑い時も寒い時も欠かさずに、

現場に赴いてデーターを取り続ける仕事をしている、

現場の検定員の方々には、

頭の下がる思いである。 

そういう人たちの働きで集積された「乳検データー」なのであるから

それを活用する酪農家はもちろん

それを総括する我が国の酪農行政も

「乳検データー」をありがたく活用し

そこから見えてくる業界全体の課題を解決するために

様々な政策を待ったなしで実行してゆくべきである。

ところが

その肝心な我が国の酪農行政が

全くわからない意味不明な事ばかりしているのは

何故なのだろう。

ではまた再び

「北海道酪農検定検査協会」のHPにリリースされている資料の

誰が書いたのか全くわからない

文責不明の執筆者である「無責任氏」の文章を読んでみたい。

今回はまずその3ページ目の

IMG_1453題して

「乳用牛BP実現に向けた考え方」

を見てみると

いきなり「BP」などと言われてもわかりづらいが

前回の記事に書いた通り

これは「ベストパフォーマンス」という言葉の略で

その言葉の意味は前回の記事に書いた通りである。

続けて、無責任氏は

「乳用牛ベストパフォーマンス実現に向けた取組を、地域畜産クラスター計画の重点テーマに位置付け、現地支援を推進することで、地域の畜産クラスター協議会が本腰を入れて取り組めるよう、また、地域での連携をより深めていけるようにとの思いがあります。」

と書いている。

ここで出てきた「畜産クラスター協議会」って何だろう。

そもそも「クラスター」って何じゃ?

「クラスター」を調べてみたら、「房」「集団」「群」の意味のようだ。

そういえば近頃

役場の農林課の課長さんなどが「クラスター計画が・・・」どうのこうの

と、よく口にしているが、その事業のことのようである。

要するに畜産関係者の「連携事業」のことなのだ。

「クラスター」などという聞きなれぬ外来語を

またもや登場させて

新しさを出しているつもりなのかもしれないが

こういうつまらぬ「カタカナ語のもてあそび」は関係者を惑わせるだけで

もういい加減にやめてほしい、と私は思う。

さらに資料のページをめくって

IMG_1484その12ページ目には

「畜産クラスター計画について」

と題して

無責任氏は

「現在、地域畜産クラスター協議会は各市町村が事務局となり(一部、農協単位有り)、各関係機関が連携して、地域における収益性の向上の取組を推進するクラスター計画を策定し、その実現に必要な施設整備や機械のリース等をクラスター事業で採択していますが、今回、地域での乳用牛BP実現に向けた取組について、なぜ地域での畜産クラスター計画の中で位置付けることが推奨されるのでしょうか。」

と、読み手に問いかけるように書いている。

もうこの、官僚臭さ丸出しの

非常にわかりづらい、鼻持ちならぬ文章を

こみ上げてくる憤りをぐっと我慢して

もう少し読み進んでゆくと

無責任氏はさらに続けて

「全道展開する手段としては、新たに推進体制を作るのではなく、地域での生産基盤の強化と収益性の向上を図る畜産クラスターの枠組みの中で推進することが、効率的かつ効果的です。何より、この畜産クラスター計画において、特に推進すべき取組のテーマに「飼養規模の拡大・飼養管理の改善」が挙げられており、乳用牛BP実現に向けた取組は、まさにこの重要テーマに合致しているからです。」

と書いている。

ということは

乳用牛ベストパフォーマンス(BP)実現に向けた取組

というのは

畜産クラスター事業の取組

の重要テーマ(課題)と一致していて

その中でも特に推進すべきなのが

「飼養規模の拡大・飼養管理の改善」

というテーマ(課題)であることが

はっきりと明記されている。

なるほど・・・

そうですか・・・

私は何かここに

とんでもない「大きな矛盾点」が

見えてきたような気がする。

「乳検データーから見えるもの」

と題して書き始めた今回のシリーズ記事の

3回目にしてやっと

本題に入ってゆけそうだ・・・


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乳検データーから見えるもの(2)

公益社団法人「北海道酪農検定検査協会」の、

HPに貼り付けられている、

様々な「乳検データー」を総括して、

それに解説を加えた文書がある。

題して

「乳用牛べストパフォーマンス実現に向けて」
   〜乳用後継牛の安定的確保のために〜
    (北海道版テキスト・支援者用・平成28年度)


IMG_1435という

52ページにわたる文書である。 

その執筆者が誰なのかは全く書かれていない。

その文章の第1ページには

「乳用牛ベストパフォーマンス(BP)とは」

という見出しの下に

「乳用牛の増頭に向けた取り組みと併せて、コスト削減を図りながら、現在飼養されている乳用牛の泌乳能力と繁殖力を、牛に負担をかけずに最大限発揮させること。」

と書いてある。

これが要するに「乳用牛ベストパフォーマンス」という言葉の定義らしい。

(こんな都合のいいことばかり、牛に負担をかけずに!?、実現できるのだろうか・・・)

IMG_1451これを読んでいると

あまりにも見事に

机の上だけで書き上げたような文章に

私は辟易してしまう。

執筆者が誰なのかまったく書かれていない不思議な文章

つまり、文責者が誰なのか全くわからず

執筆者が一人なのか複数なのかも、全く不明なのだが

これを書いたのはきっと農水省のお役人だった方に違いない

と思った。

いきなり「ベストパフォーマンス」などという

聞きなれないカタカナ語を題名にあげて

それを「BP」などとアルファペット2文字に省略して

読み手に配慮なく連発してくる。

文責が誰なのか全くわからず

責任の所在が不明なのだが

誰かが書いているのは間違いのな事なわけで

あえてこの執筆者を「無責任氏」、と命名させていただこう。

この無責任氏はまず

「乳用牛のベストパフォーマンスという言葉に市民権を与えることが重要です。」

などと冒頭にぶち上げる。

(言葉に市民権を与える(=広く一般に根付く)のは市民の力であって、言い出した本人がリキんでもしょうがないでしょうに・・・)

そしてその次に

「何の為に、誰のために、それらすべての取組の先にあるのは、酪農経営の安定と消費者に安全で安心できる牛乳・乳製品を届けつづけるという使命があるからです。」

と書いてある。

(酪農家と消費者のためにこの取り組みがある、と一言で言えばいいのに・・・本当はそうではないことが透けて見えるよ・・・)

そしてその次に

「個々における経営の問題なので、各酪農家が、単に対応すればいいのではないかと捉えてしまうと、ゆくゆくは全体としての国内生産基盤が揺らいでしまうという危険性を孕んでいるということを認識しなければなりません。」

と書いてある。

(アナタたち農政こそ、一番それを認識していなかったのではないですか・・・)

そしてその次に

「今一度、なぜ、北海道で新たに策定した「北海道酪農・肉牛生産近代化計画」で「ベストパフォーマンスを発揮させる飼養管理の推進」が位置付けられているのか、皆さんで考えてみませんか?」

などと問いかけてくる。

(アナタたち農政が何も考えてなかったからこういう事態になったんでしょ、アナタたちこそ胸に手を当てて、今一度よーく考えてごらんなさいよ・・・)

まったく

最初の1ページを読んだだけで

たったの1ページを読んだだけで

これほど腹立たしくなる文章を

私は未だかつて読んだことがない。


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乳検データーから見えるもの(1)

いわゆる「乳検データー」というのは、

乳検組合に加入している酪農家の間では、

お馴染みのデーターであり、

酪農家の個々のきめ細かな数字びっしりと並んでいる「あれ」である。 

個々の酪農家はそれぞれ、

自分の牧場の「乳検データー」を見ながら、

自分の牧場の課題を見つけて、

それを個々に解決する努力をしていると思われる。

それが「乳検データー 」の

第1の活用法であろう。

しかし、

それと同時に

個々の「乳検データー」を総合して

北海道あるいは都府県という

大きな括りによって

「乳検データー」の集積統計を眺めてみると

北海道全体の、あるいは都府県、の

酪農情勢の「推移」というものを見ることができ

そこに、大きな「課題」が浮き上がってくる。

昨年から、その大きなデーターが

「北海道酪農検定検査協会」

という団体のHPから発信されている。

なにやら物々しいが、要するに

農水省の外郭団体と富士通という企業が手を組んで

乳検情報をWebで発信しているのだ。


IMG_1435団体の性質上

この情報の発信元は

農水官僚臭が非常に強くて

まったく鼻持ちならない印象なのだが

その内容については

他では得ることのできない貴重なデーターである。

各ページに色々ついている解説文も

その執筆者が誰なのか全くわからないという

まったく鼻持ちならない文章なのだが

腹立たしさを我慢して

数字だけを素直に読み取って見ると

これが意外に面白くためになりそうな数字であり

その数字の先に何か見えてくるものを感じるのだ。

それは

今の日本の酪農業界の抱える「課題」である。

HPでは、この「課題」を5つに分類して挙げている

曰く

「乳用雌牛の減少」

「交雑種の増加」

「個体価格の高騰」

「除籍頭数の増加」

「分娩時事故が多い」


IMG_1437この5つの課題は

乳検データーの推移を見て

採り上げられたもののようだ。

この5つの課題は

私が日頃

現場回りで感じていることと

よく一致しているので

なかなか的を得ているのではないか

という印象を持った。


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